新エリー都にて、世紀末逃避行   作:縁、ですかねぇ

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 君が君であることを、誰が証明できるというのだろう。
 そも、人は、個人は、何によって区別され、存在しているのだろう。

 答えのない問だ。これに、絶対的な答えを出そうとしていることが、間違いなのだと思う。

 そんな風に、わからないことを、わからない以外の言葉で片付けてしまえれば、どれだけよかっただろうか。
 わからないことはわからないだけだ。わからない以上の情報はない。価値も、大体ない。
 『わからないもの』がどんなものかもわからないから、対処法も何もわからず、悶々と抱えて生きていくしかないのだ。

 わからない。
 俺には、俺が俺だということをどのように証明すればいいのかわからない。

 でも、俺は間違いなく俺だ。
 俺には、生きてきた人生も生まれた場所も時代も関わってきた人間も見てきた景色もある。

 俺は間違いなく俺だ。俺は、理由もなく俺なんだ。

 だからこそ、それを俺だけは信じていたい。

 俺は人間か? エーテリアスか? それとも、そんな風に分かりやすく分けられない、何か別のモノなのか?

 わからない。だから、わからない。

 でも、俺は俺だ。本当に、いたちごっこで終わりもない。
 俺が思えるから『俺』で、なんで思えるのかと聞かれれば、それは俺が思えるから『俺』だ。答えになっていない。でも、俺の答えはそれだ。

 俺が思えるから。俺が、そう信じているから。

 俺は俺だ。生きてきた人生を、一丁前に持っている。




 俺は、そう信じてる。俺だけは、俺のことをそう信じていたい。


 シリアス終了!!!! これより俺は、スーパーお気楽系おふざけ屋台店長への道を歩むぜ!! じゃあな!!!!!! そんで俺は超絶スーパーかわいいお姉さん系彼女の胃袋を掴むんだ!!!! ガチでじゃあな!!!!!!!!!

      .........(日記はここで途絶えている)



世紀末逃避行

 

 

 開店準備、ってやつだ。

 大体の場合、それは静かな朝から始まる。

 手を動かして仕込みを進めながら、俺はチラチラとキャンピングカーの窓から外の景色を伺っていた。

 

 静かな朝だ。外では小雨がしとしとと降りしきっている。昨日の夜からこんな調子だが、眠りを妨げるほどじゃない。それくらい優しくて、心地いい雨だ。

 

 道端には小さな水たまりができているけれど、水煙が立つほどの強さじゃない。例えるなら――そう、傘を差そうか迷って、結局差さずに歩いてしまうくらいの雨。10分くらいなら「まあ濡れてもいっか」と思えるような、曖昧な雨。

 

 とはいえ、雨は雨だ。

 晴れや曇りの日に比べれば、微かでも確実に客足に響くのがこの天候ってやつである。

 

 来るかな。それとも来ないかな。

 元々大繁盛している店ってわけでもないし、こんなキャンピングカー形式の変な屋台に、雨の朝から客が来るかはかなり怪しい。……いや、まあ1人、いや20人は来るだろ! と謎の自信でふんぞり返っている自分も、確かにいるんだけど。

 

 そんなことをくだらなく考えながら、手元では淡々と仕込みを進めていく。

 うちのメインは、大体中華だ。そう、《大体》中華。

 

 メニューを見れば確かに中華寄りだし、屋台の外観もそれっぽく作ってあるけれど、あくまで大(・)体(・)。なぜなら、うちにはテイクアウト用にバカみたいな種類のメニューがあるからだ。

 

 小籠包、肉まん、中華まん。常連さんが思い出したように買っていくチャーシューまんに、プリプリの焼売。どれもお手頃価格で取り揃えております!

 ……で、なぜかそこにアイスクリームやマリトッツォ、シュークリームなんかの洋菓子が並ぶ。

 「中華の匂いと混ざらない?」って? ふふん、そこはね、この俺の両腕の技術っすよ。

 誰も見ていない車内でどや顔を作り、力こぶを叩いてアピールしてみる。……ピカピカに磨いたシンクに自分の間抜けな顔が映っていて、猛烈に恥ずかしくなった。

 

 和洋折衷どころか、中洋折衷、いや和中洋折衷。普通にカオスだろこれ。

 「ん? バグか?」という顔をするお客さんは珍しくない。わかるよ、俺だって「バカだなあ」って思いながら作ってるんだから。

 

 「よしっ、第二段階完了!」

 

 拭き上げたテーブルが、朝の薄光を弾いてキラリと輝いた。

 綺麗になった狭い屋台の中を見回し、自分に向かって「ナイスファイトー」と小さく声をかける。

 屋台だから広いわけじゃない。自分一人と、もう一人がギリギリ肩を寄せ合って入れるくらいのスペース。そこに、冷凍庫、冷蔵庫、ピカピカのシンク、仕込み用の作業台が所狭しと機能的に収まっている。

 

 機能性バツグン。やるね俺。

 

 折りたたみ椅子を引っ張り出して、どっかりと腰を落ち着けた。

 カウンターに肘をつき、顎を乗せてぼんやりと外を眺める。人通りはまばらだ。朝の5時に仕込みを終えて待機なんて、クレープ屋じゃあるまいし気が早すぎたかもしれない。

 

 頭の中で今日のスケジュールを反芻する。

 昼になったら自分で作った中華まんを頬張り、午後6時頃には一旦閉店。1時間ほど仕込みと休憩を挟んで、夜7時からはうちの『裏の顔』――ガ(・)チ(・)居(・)酒(・)屋(・)の開店だ。

 

 師匠直伝のラーメン、炒飯、パリパリの餃子三銃士。そこにマグロのたたき、トロトロのモツ煮、叩ききゅうり、焼き鳥といった酒の肴がズラリと並ぶ。

 ……完璧だ。美しすぎる。

 

 まあ、こっちの顔はあくまで『裏』。インターネットにホームページがあるわけでも、チラシを出しているわけでもない。

 だから、誰が来るかは完全に運。よく言うなら――巡り合わせ、縁ってやつだ。

 

 「巡り合わせ、ねぇ……」

 

 口の中でぽつりと呟く。ちょっと綺麗に言いすぎただろうか。

 

 そろそろ誰か来ないかな。

 普段なら気に留めない路地裏の雑草や、濡れた道路をトコトコ歩く野良猫の姿ばかりが目につく。

 

 ――と、雨の霞む視界の向こうで、ぽてぽてと揺れる小さな影が目に入った。

 

 影、というよりは、その足音が世界一似合う可愛い丸み。

 

 「ンナ!」

 「あ、ビデオ屋さんのボンプさん。どったんですか一人で」

 「ンナ! ンナナ!!」

 「え?」

 

 カッパを着た小さなボンプが屋台の前まで駆け寄ってきて、嬉しそうに右手を掲げる。

 カッパの表面には細かな雨粒がキラキラと光っている。

 ボンプは掲げた右手をそのまま後ろへ向け、自分がやってきた路地を指さした。

 

 その先から、ビニール傘を差した女の子が勢いよく飛び出してきた。細い路地から駆け出し、振り返って「おーい!」と後ろを振り返る。

 続いて出てきたのは、彼女より背の高い銀髪の青年だ。大きめのビニール傘を手に、頭の後ろを掻きながら苦笑いで追いついてくる。

 

 「ンナ!」と、ボンプが鼻が高そうに胸を張る。

 あまりの愛おしさに、俺はカウンターから少し身を乗り出し、届くギリギリの距離でボンプの頭をちょんちょんとつついた。撫で回すには腕が足りなかったけれど、ボンプは「ンナ~♪」と高い声で喜んでくれた。

 

 「久しぶりーーーっ、店長!!!」

 「あら、お久しぶりですぜ、リンちゃんさん」

 「――うぃ。首尾はどうだい?」

 「上々ですぜぇ、姉御」

 

 彼女たちは近所のビデオ屋『Random Play』の店長さん兄弟。れっきとした知り合いで、うちの常連さんだ――もちろん、《裏》の居酒屋の方も含めて。

 駆け寄ってきた妹のリンさんとふざけた挨拶を交わし、遅れて歩いてきた兄のアキラさんにも軽く会釈をする。

 

 「お久しぶりです、店長さん」

 「店長なんて、そんな堅苦しい名前で呼ばないでよ」

 「……無自覚天然幼馴染!?」

 「なんだいそれは」

 「あ、いえ、すみません。こっちの話です」

 「今の流れでそっちだけの話なわけないでしょ!」

 

 思ったより良いリアクションをしてくれた。今日一番に来てくれたお客さんにぶち込もうと、さっきから練習していた甲斐があったというものだ。

 

 「じゃあ……リュウさん」

 「うんっ、アキくん!」

 「やばいっ、光で僕の目がっ!!!!!!」

 「お兄ちゃんしっかりして!!」

 「で、リンちゃんさん姉御。今日は何にします?」

 

 どうだ、無自覚天然幼馴染からのヤクザの子分という謎のコンボは。隣で目を押さえているアキくんは放置しておこう。

 

 「あ、そうだ! 店長、肉まんを……えーと、12個ください!」

 「12個!? 何に使うんですかそんな数を」

 「そのね、親戚の家に泊まりに行くことになったんだけど、そのお土産にと思って!」

 「……うちよりルミナススクエアのちゃんとしたお店の方がいいのでは? というか俺の店の肉まんでいいんですか?」

 「いいの! すっごく美味しいんだから! それに、店長の肉まんは食べられるうちに食べておきたくて!」

 「―――そうっすよねーーー!!!!! やっぱ中華まんと言ったらうちっすよ、うち!」

 

 いやあ、味には自信があるけれど、お土産にしては渋すぎないか? そもそもそんなに日持ちするもんじゃないし……どこまで行くんだろう。

 まあ、ただの屋台の店長が深掘りすることでもないか。

 

 「でも、リュウさんがまたこの近くに来てくれて良かったです」

 

 目の不快感が引いたアキくんが、柔らかく微笑みながら俺を見た。

 

 「はは、こちらこそ。頻繁に場所を変えちゃって迷惑かけてる自覚はあるんですけどね。こうして来てくれる人がいるのは、本当に救われますよ」

 

 今回は結構長めに滞在できそうですしね、と言い添えながら、俺は手早く仕込み用の竹せいろへ手を伸ばした。

 厚手の手袋をはめ、蓋を慎重に少しだけずらす。

 

 ――ゴオオォッ……!

 

 閉じ込められていた熱気が勢いよく噴出し、真っ白な蒸気が雨の冷えた空気を一瞬で包み込んだ。香ばしい小麦と、ゴマ油と醤油のコク深い肉の匂いが、ふわっと鼻腔をくすぐる。

 

 「うわぁあ……っ! めっちゃいい匂い!!」

 

 リンさんが目を輝かせてカウンターに身を乗り出してきた。今にもかぶりつきそうな勢いで、ほっぺたをぷっくり膨らませている。

 まるで餌を待つリスだ。むふー、と息を荒らしながら肉まんの動きを追いかけている。

 

 竹せいろの中に並ぶのは、俺が朝一番に仕込んだ自慢の肉まんだ。打ち粉の振られた白い生地は、蒸気を吸って赤ん坊の肌みたいにキメ細かくツヤツヤと輝いている。綺麗に寄せられたヒダの頂点からは、今にもあふれ出しそうな肉汁の気配。

 トングでひとつ掴むと、ずっしりとした重みと、ぽよんと弾力のある柔らかさが手元に伝わってきた。

 

 「あ、そういえばお二人自身の分はいいんですか? 12個の中に含まれてる感じ?」

 「……くっ、お兄ちゃん……っ!!」

 

 リンさんが覚悟を決めた瞳でアキくんを振り返る。アキくんもまた、熱烈な視線で肉まんを見つめていた。

 

 「……いつもなら『だめだよ』って窘めるんだけどね。でも、これは……わかるよ、リン」

 「だよねお兄ちゃん!! ……どうする!?」

 「これは……難しい問題だ。店長!!!」

 「うおい。どうしました?」

 

 アキくんはポケットからスマートフォンを滑らかに取り出すと、画面をサッと操作してこちらに向けてきた。見事な手さばきだ。……美しすぎる!!

 

 じゃなくて。画面に表示されていたのは、うちの店のロゴと『会員様限定贅沢クーポン』の文字。

 

 「僕の……切り札だ!!!!」

 「な、なんだってー!? ……クーポン……やるな、アンタ」

 「ふっ、この程度のこと、造作もない!」

 「店長、このクーポン使ったらどうなる!?」

 「そうですね――知らんのか! ウチの会員限定、月一回かぎりの『10個以上買い上げで全品30%引き』クーポンよォ!!」

 「お兄ちゃんっ!!」

 「ああ、勝負は今! ここで決め――待て、待て待て待て、一旦待とう」

 

 俺は12個の肉まんを専用の紙袋へ手際よく詰めながら、バーコードリーダーを引き寄せた。アキくんはクーポンをかざす……直前で、ピタッと動きを止める。

 顎に手を当て、真剣な顔で計算を始めた。

 

 「リン、冷静になろう。何個追加する?」

 「むむ……私たちの分を追加するとして……6個!」

 「ってことは……合計で18個持っていく気!?」

 

 マジかよ。そこまで買い込むとは思わなかったぜ、姉御。

 

 「待とう、一旦待とう! 18個は流石に重さ的にも……」

 「えーっ! でも、こんな機会、もしかしたら二度とないかもしれないよ!?」

 「……否定できない……」

 「ごめんね、俺が移転しまくるせいで」

 「店長が悪いんじゃないよ! でも、こんな風に10個以上思い切って買えるチャンスなんて滅多にないんだから!」

 「くっ……僕は……」

 「悩むくらいなら買っちゃいなよー?」

 

 リンさんが悪戯っ子のような笑顔を浮かべながら、アキくんを急かしている。

 その裏で、俺は12個入りの紙袋の口を丁寧に閉じる。ずっしりとした重み。熱気とともに、甘く香ばしい生地の匂いと旨味が溢れ出していて、すでに空間全体が飯テロ状態だ。

 

 「店長――肉まん6個追加で!!!」

 「いっけえええええええ!!!!」

 「はいっ、合計18個のご注文、ありがとうございまーす!!!」

 「これが僕の、全力だああああっ!!!」

 

 ピピッ、とリーダーが電子音を鳴らした。画面にクーポンの適用が表示される。アキくんは全力を使い果たしたように肩を揺らしていた。

 

 「肉まん18個、まいどあり~♪」

 「やられたよ店長……ここまで計算済みかい?」

 「はは、まさか。流石に18個もいかれるとは思ってませんでしたよ」

 

 専用の紙袋をもう一袋用意し、残りの6個を手早く詰めて口を閉じる。出来立ての熱気を閉じ込めた紙袋からは、食欲をそそる香りが漏れ出していた。

 

 きゅるり、とリンさんのお腹から可愛らしい音が鳴る。俺は聞こえなかったフリをして、笑顔で言った。

 

 「にしても、こんなに買ってくれるとはね……ここに戻ってきて最初のお客さんが二人で良かったです」

 「そういえば、今回は長く滞在できるって言ってましたよね。本当に良かったです。前は急にいなくなっちゃったから……」

 「そうですね。少なくとも、前回よりはゆっくりできると思います」

 「よかった。……あ、でもそうか。僕たち、もう少ししたら泊まりがけで出かけちゃうんだ」

 「すれ違いですねぇ。まあ、俺もずっとここにいるわけじゃないから、またどこかで会えますよ」

 「『縁』、ですか?」

 「縁、かもねぇ」

 

 袋の口を閉じ終える。アキくんはその温もりを愛おしそうに見つめていた。リンさんはお腹を押さえながら、少し照れくさそうに尋ねてくる。

 

 「今更だけど……移転する時って、どうやって決めてるの?」

 「んー、基本は風任せですよ。行きたい時に行きたい場所へ行って、そこで屋台を開く。まあ、他にもちょっとした事情はありますけどね」

 「ちなみに、今回ここに戻ってきた理由は?」

 「実は俺……実家を抜け出してきたんですよ」

 「えっ、じ、実家!?」

 「そうです」

 

 オフレコですよ、と口元に人差し指を立ててみせる。二人は目を丸くし、足元のボンプも「ンナ?」と顔を見上げてきた。

 

 「ちょいと訳ありでしてね。追われる立場、ってやつです。だからほとぼりが冷めるまで、このへんに居座ろうかと」

 「そ、そっか……衝撃の新事実……!」

 

 にしし、と笑いながら、6個入りの紙袋を差し出した。

 胸の奥で微かに疼く冷たい違和感を、笑顔の裏に隠す。本当は場所を変えなきゃいけない理由が、病気やもっと面倒な宿命のせいだなんて、口が滑っても言えないけれど。

 変にミステリアスを気取るより、こういうわかりやすい裏事情を作っておいた方が余計な心配をされずに済む。自分でも上出来な嘘だと思う。

 

 窓の外を見ると、小雨の雲が少しずつ解け始めていた。

 

 「さ、お会計は1個200ディニーだから、18個で3,600……のところ、30%引きで2,520ディニーですね」

 「助かります。相変わらずお手頃で」

 「ふっふっふ、安くて美味くて早い! これがうちのモットーですから」

 「ありがとー、店長さん!」

 「はいよー」

 「あ、そうだ。リュウさん、今日の夜の……《裏》の方はやってますか?」

 

 アキくんが少し顔を近づけて静かに訊いてきた。

 

 「ん? やるつもりですよ、いつも通り19時から。何か食べたいものでもあります?」

 「いえ……ただ、温かいラーメンでも食べながら、静かに話したいことができそうなので」

 「了解です。じゃあ、今夜待ってますね」

 「ちょっとー、今は肉まんのことで頭いっぱいにしようよー!」

 「はいはい。じゃ、また夜に」

 「ほいほーい!」

 

 俺が歯を見せて笑うと、アキくんは落ち着いた笑みを返し、ずっしりと重い二つの紙袋を受け取った。リンさんとひとつずつ分け合い、雨の街へ歩き出す。

 

 「まいどありー!」

 

 「ンナー!」と嬉しそうに声をあげるボンプを先頭に、二人はビニール傘を揺らしながら六分街の路地へと消えていく。

 途中、「ちょっとリン、開けないで」「だって我慢できないんだもん、こんなの良い匂いすぎて体に毒だよー!」なんて賑やかなやり取りが聞こえてきて、思わず口元が緩んだ。

 

 遠ざかる背中を見送り、俺は再び折りたたみ椅子に腰を下ろした。

 せいろから上がっていた白い蒸気は、すっかり雨の空気に溶けて消えている。

 

 ふと空を見上げる。雲の切れ間から、微かな光が差し込み始めていた。

 

 「……夜には、やみそうですね」

 

 ぽつりと呟いた瞬間、俺のお腹からも「きゅるる」と盛大な音が鳴った。

 俺は冷めないうちに自分用の肉まんを手に取り、大きく口にほおばる。溢れ出す温かい肉汁。ふっくらとした生地の甘みと、ジューシーな豚肉の旨味が広がる。

 

 モグモグと咀嚼していると、足元から「ニャー」と甘い声が聞こえた。

 

 「んぐ……おや、新しいお客さんですか?」

 

 カウンターの足元で、濡れないように身を縮めた猫がこちらを見上げていた。

 前にここで店を開いていた時、寝起きの俺のお腹の上で丸くなっていた猫だ。食べられそうなご飯を分けてやっていたら、いつの間にか看板猫みたいになっていたやつ。

 

 「……久しぶり。ご注文は?」

 

 猫は知ってか知らずか、ひと声鳴くと、俺の膝の上へひらりと飛び乗ってきた。そのまま慣れた様子で丸くなり、目を閉じる。

 

 『縁、ですか?』

 

 頭の中で、さっきのアキくんの声が蘇る。

 

 「……俺の膝、高いっすよ。猫さん」

 

 ふっと笑いながら、俺は猫の背中を優しく撫でた。

 

 こちら、ククリ屋千結(ちゆい)。

 ただいま六分街で、絶賛開店中です。

 

 

 






   ・リュウさん/店長/エスナ・リウド・アグライア

 ・大体呼ばれ方はアグライア、アグライアさん、エス、リュウさん、リュウ、etc......本人としてはさんはいらず、呼び捨てで構わない。
  ちなみに本名はガルダ・リューグレイ・エル。つまりエスナ・リウド・アグライアは偽名になる。

 ・リューグレイが家名。実家から抜け出してきたのは真っ赤な嘘で、家族とはホロウ災害で生き別れになっている。家族構成は、母、父、姉、リュウの4人で、生き別れになったのち独自に調査ししっかりと3人で生き延びていることを確認。その後軽く手紙を出し、自身が無事であること、屋台を営んでいること、訳あって顔を出せないけれど、みんな幸せそうで良かった、待って、マジで勘違いしないで!ほんっとに幸せそうで良かったんだからね!!! と伝えてある。
  定期連絡は欠かさず、月に1回程度、短文と、屋台で言った場所付近の絶景を写真に撮っておくっている。家族の全員は無事であったことを素直に喜んでおり、手紙での生存報告が続いているおかげであんまし曇ってない。

 ・お姉さん属性、または天然系などを求めて旅をしており、のちに再会しそうな儀玄師匠とかリナとか、あとはヴェリナさんとかアンビーとか盤岳先生とかに弱い。プロメイアさんとか朱鳶さんとかイヴリンとかもそうかも。年下? ああ、そういう世界線もあったんじゃないかな。
  今回の話ではなかったけど、普通にえっちだね.../あのお姉さんえっらいどえっちやなぁ...!! という感情はある。

 ・得意料理はラーメン、餃子、チャーハン、肉まん、あと儀(・)玄(・)さ(・)ん(・)が(・)頼んでくるため上手くなったチャーシューまんとか。基本中華。
  ちなみに中華の師匠はみんな大好きあの人――ではない。

 ・好きなものはご飯を食べること、人がご飯を食べていることを見ること、写真を撮ること、お姉さん、天然、猫、ゲーセン、あとは買い物で悩んでる時間、温泉、物珍しい料理。ちなみに海より山派。
  嫌いなものはご飯を粗末に扱う人、モノを大切にしない人。自分に似てる人、必要以上にキラキラしてたりごついもの。あとどっかでなくした日記(黒歴史)。大きい音。

 ・屋台の方式上いろんな場所に行くので、行った先で色んなところをめぐるのにハマっている。
  屋台の情報は、実際に店に訪れてくれた人はQRコードを読み取ることで手に入れることができ、アプリと連携することで現在開店している場所、開店時間、クーポンを受け取ることができる。
  今回のように、常連さんから他の人に伝わっていく、というのも一つの縁の形だと考えており、一度つながったのなら縁があり、来なくなった、訪れないなどの場合は縁はない、ということになる。

 ・エーテリアス疑惑について
   マサマサとは違う病気。ホロウ災害によって生き別れになった時、同時にホロウ内の強大なエーテルを浴びてしまい、体の中で常にエーテリアスへ変化を続ける症状が出ている。なんでそんな爆発寸前のエーテルがホロウ外で形をとどめているのかは不明。
   これはエーテリアス化する一歩手前の段階で止まっている感じで、めちゃくちゃに不安定。日ごろから正規のルートではない方法で手に入れた特殊な薬剤を数種類配合し、それを一日に3L程度飲み続けることで進行を防いでいる。なお非常に微量に症状は進行している様子。

   このままいけば余命は多分結構ある。

  エーテルが常に体の中で爆発と収縮を繰り返している状態で、それを抑えるために作った自前の薬は結構革命的。インターノットに匿名で発表したため、この世界ではエーテル結晶が生えてしまった状況から生還する可能性を著しく上昇させている。
  また本人はこのおかげでエーテル適正が非常に高いが、ホロウ内のエーテルによって入ると症状が進行するためトントン。もはやマイナス。
  これらの症状に気付くまでホロウを出入りしていた時期があり、勘は鋭い。ちなみにバカほど弱い。

 多分あんまりこの設定がいい方向に働くことはないし、作者が使えるかもわからない。
 おそらく曇るためにしか使われないであろうことだけが確定している。

 リンとアキラが何らかの裏の仕事をしていることには勘付いていて、プロキシじゃね? とまでは行きついている。

  今までやったことリスト
   ・プロキシ兄妹を小さいころに引き取ったりした。
   ・儀玄師匠がチャーシューまんを食べれるようになった。
   ・潘さんと料理勝負した。
   ・雲嶽山の奥の方からやば気な気配を感じて儀玄師匠に聞いた。
   ・こっそり行ってみた←!!!!????
   ・その先で料理を振(・)舞(・)っ(・)た(・)←!!!!!??????
   ・リナに料理を教えた。
   ・なんかめっちゃすり減ってるお姉さまに料理を振舞った。
          ↑テレビで見るようになってびっくりした。
   ・静かでやばい格好してるお姉さまに料理を振舞った。
   ・ヒューゴが甘いものを食えるようになった。
   ・ビビアンを泣かせた(やばい!! 俺大罪犯した!!)。
   ・お狐様虚狩りは油揚げが好きだと思っていた。

    リンとアキラのことは一切良くない眼で見ていない(ガチ)。


   ・リン

  ・伝説的プロキシ。言わずと知れたパエトーン。かわいい。
   時折リュウからえっちだね...という幻聴が聞こえるため、複雑な感情に悩まされている。
   現在絶賛肉まんなどの中華まんに加え夜のラーメンを食べることにより体重が爆増。悶々としてはその手を抑えられないのだとか。

  ちなみに今回の肉まんの内訳は最初の12個中10個がお土産、残り2個が自分たち用だったがそのあとの6個追加により3個ずつ自分用を得た。
  なお一日で食い切った模様。

  プロキシであることを勘付かれているとは思っていない。

  リュウとは以前に六分街で開店していたところで知り合いになっており、付き合いはかなり長い。零号ホロウの秘密を解き明かそうと決意した頃位からは知り合い。
  好きなメニューは肉まん、ピザまん、ラーメン、餃子、チャーハン、および半チャーハンラーメン、マリトッツォ。

   将来の夢は、
   ・リュウとお酒を飲むこと
   ・すべてのメニューを一度に頼むこと
   ・肉まんを気が済むまで食べること
               である。
 
  これより向かうは雲嶽山。なんか、いろいろ波乱がありそうですね。

 リュウとアキラのことをじゃっかん良くない眼で見ている←!!!!!!???

   ・アキラ

  ・伝説的プロキシ。言わずと知れたパエトーン。スーパーメロ男。時折リュウからえっちだね...という幻聴が聞こえるため嘘だろと頭を抱えつつ意見を交換したいと思っている。
   現在絶賛肉まんなどの中華まんに加え、夜のラーメンを食べることにより体重が爆増中。悶々としてはその手を抑えられないのだとか。

   今回の買い物で合計して4個の自分用肉まんを得た。
   一日で全て食い切っている。

  ・リュウが何かを隠しているだろうことに気が付いており、酒の席に引きずり込んでは話してくれないか祈っている。
   好きなメニューは肉まん、カレーまん、あんまん、ラーメン、餃子、チャーハン、および半チャーハンラーメン、マグロのたたき、抹茶アイスクリーム。

   リンより夜の店(語弊)に行くことが多い。

   将来の夢は、
   ・リュウとお酒を飲むこと
   ・すべてのメニューを一度に頼むこと
   ・肉まんを気が済むまで食べること
   ・リュウと性癖を開示しあうこと
               である。

   これより向かうは雲嶽山。なんだか波乱が起きそうな気配を感じ、リュウへ今夜指南を乞うつもり。

 リュウのことをじゃっかん良くない眼で見ている。←!!!!!!???

  



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