ガチで何も辛いことなんて持ってないお気楽達観系スーパーポジティブ二面性主人公が、世紀末世界で飯を作るだけの話です。


 え? 逃避行、の部分は何だ、って?
 そうっすね、それについて話すと長くなるんすけど...。

 まあまず俺が皆の胃袋掴んで笑顔になってもらうのが好きなのはみんな知ってると思うんすけどまあ俺の料理がうますぎるんで移動した後にもその場所突き止めてなんか追ってくるんすよねその中にはなんか狐系虚狩りさんがいたりだいたいアラサーに見える雲嶽山のとこの人とか怪談好きの奴とかあとちっちゃいのだのだ系とかサメとか狼さんとか幽霊さんとかおっちょこちょいっぽい子とかが来るもんだからまあそれがさ、逃げるってことになるかな――――っていうのはまあ半分嘘でぇ......

 なーんか、そのさ......俺がまあ、そのぉ...エーテリアスなんじゃないか、っていう噂がね。まことしやかに囁かれてるんすよね。

 でなんか、まあ追っ手がさ。来るよねって感じ...っすね。

 (オリ主の設定は多分あんまし機能しません)



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 君が君であることを、誰が証明できるというのだろう。
 そも、人は、個人は、何によって区別され、存在しているのだろう。

 答えのない問だ。これに、絶対的な答えを出そうとしていることが、間違いなのだと思う。

 そんな風に、わからないことを、わからない以外の言葉で片付けてしまえれば、どれだけよかっただろうか。
 わからないことはわからないだけだ。わからない以上の情報はない。価値も、大体ない。
 『わからないもの』がどんなものかもわからないから、対処法も何もわからず、悶々と抱えて生きていくしかないのだ。

 わからない。
 俺には、俺が俺だということをどのように証明すればいいのかわからない。

 でも、俺は間違いなく俺だ。
 俺には、生きてきた人生も生まれた場所も時代も関わってきた人間も見てきた景色もある。

 俺は間違いなく俺だ。俺は、理由もなく俺なんだ。

 だからこそ、それを俺だけは信じていたい。

 俺は人間か? エーテリアスか? それとも、そんな風に分かりやすく分けられない、何か別のモノなのか?

 わからない。だから、わからない。

 でも、俺は俺だ。本当に、いたちごっこで終わりもない。
 俺が思えるから『俺』で、なんで思えるのかと聞かれれば、それは俺が思えるから『俺』だ。答えになっていない。でも、俺の答えはそれだ。

 俺が思えるから。俺が、そう信じているから。

 俺は俺だ。生きてきた人生を、一丁前に持っている。




 俺は、そう信じてる。俺だけは、俺のことをそう信じていたい。


 シリアス終了!!!! これより俺は、スーパーお気楽系おふざけ屋台店長への道を歩むぜ!! じゃあな!!!!!! そんで俺は超絶スーパーかわいいお姉さん系彼女の胃袋を掴むんだ!!!! じゃあな!!!!!!!!!

      .........(日記はここで途絶えている)



世紀末逃避行

 

 

 

 

 

 

 

 

 開店準備、ってやつだ。

 大体の場合、それは朝から始まる。

 手を動かしながら、仕込みの準備を整えながら、外の景色を横目でちらちらとみてみた。

 

 静かな朝だ。外では小雨が降りしきっている。昨日の夜からこんな調子だ。でも寝るときには邪魔にならなかった。それくらいの強さで、それくらい優しい雨だった。

 

 水たまりが少しは出来ているが、道路に大きく水を残すような強さではない。もっといい感じのたとえでいうとすれば―――傘をさすか差さないか迷って、丁度差さないくらいだ。10分くらいなら別に濡れてもいいや、と思えるくらい。

 

 とはいえ、雨は雨だ。

 晴れとか曇りと比べれば、微かでもしっかり客足に変化が出るのが雨という天候だ。

 

 来るかな。来ないかな。別に繁盛しているわけではないから、こんなキャンピングカー形式の屋台に一人でも来るかは怪しい。いや、まあ1人、いや20は来るだろ、とふんぞり返っている自分は、確かにいる。

 

 そう思いながら、仕込みをしていく。うちは大体中華だ。そう。大(・)体(・)中華だ。

 

 メニューを見てみればまあ中華だし、うちの屋台も中華風にしてあるが、大(・)体(・)中華だ。なぜならうちはテイクアウトでバカみたいな量のメニューがあるから。

 いやまあ中華なんで? 小籠包、肉まん、中華まん、常連さんが時折買ってくチャーシューまん。焼売だってあるぜ。結構お手軽価格でな!!!

 

 でも、それ以外になぜかスイーツがある。アイスクリームとか、マリトッツォとか、シュークリームとか。中華の匂い混ざるくね? って。まあそこはね、このっ、両腕っすよ。

 誰に見せているんだろう。どや顔で腕に力こぶを作って叩いている俺の顔がシンクに反射していて恥ずかしくなる。

 

 和洋折衷どころか、中洋折衷というか、和中洋折衷というか。普通にバグだろマジで。と、真顔で言うのは俺であるし、お客さんも「ん? バグじゃね?」という顔をしているのは珍しくない。

 わかるよ。バカだろマジで。

 

 ま、それは一旦どうでもいいんだ。

 拭き終わった机が、キラリと光る。淡い輪郭で、俺が反射していた。

 朝の準備時間、第二段階終了。

 

 綺麗になった屋台の中を見回し、ナイスファイトー、と声をかける。まあとはいえ屋台だし、そんなに広くもない。

 自分一人と、あともう一人は密になれば入れる位の幅があり、必要最低限の設備――アイスボックスより一回り大きいくらいの冷凍庫が一つ。冷蔵庫が一つ。ピッカピカにしてやったシンクに、作業できる広さを充分に備えた机。

 

 機能性バツグン。やるね俺。

 

 収納されていた椅子を一つ引っ張り出し、そこに腰を落ち着ける。机の上で腕を組み、顎をそのうえに乗せて外を見やる。

 

 あまり人だかりは多くない。屋台なのにこんなに早く準備する必要はあるのだろうか、クレープ屋でもあるまいし、と、頭の中の業務スケジュールを今一度見直してみる。

 

 朝5時には仕込みも完成させた状態で、いわゆる今のこの状態へ。

 昼になったら自分で作った中華まんを頬張り、午後6時位には一旦閉店。一時間休み兼準備をして、7時からはうちの裏の顔――ガ(・)チ(・)居酒屋だ。

 

 そう――師匠直伝のラーメンとチャーハン、そして餃子の三銃士に、マグロの叩き、モツ煮、たたききゅうり、焼き鳥だったりの酒のつまみ。

 完璧だ...美しい!!!

 

 ま、とはいえこっちの顔は『裏』だ。インターノットではホームページはやってないし、アナログな広告とかも出してない。

 だから、来るかどうかは完全な運。よく言うなら巡り合わせ、縁、ってやつ。

 

 巡り合わせ。か。

 

 頭の中で思って、口のなかでつぶやく。

 よく言いすぎだろ。

 

 さて、そろそろ誰か来るだろうか。

 人だかりの少ない時間だが、だからこそまばらに通る車と、ふだんは気に掛ける暇もない街路樹とか道端の猫が目立つ。

 

 と、外でぽてぽてと動く影が目に入った。

 

 影、それはぽてぽてという足音がきっちり似合う、そんな形をしていた。

 

 そう。それは――

 

 「ンナ!」

 「あ、ビデオ屋さんのボンプさん。どったんですか一人で」

 「ンナ! ンナナ!!」

 「え?」

 

 屋台の前まで駆け寄ってきて、嬉しそうな声を発しながら右手を挙げる。

 ビデオ屋のボンプさんは、可愛らしいカッパを着ていた。小さめの雨粒がまばらに浮いている。

 

 勢いよく上げている右手を、そのまま、ボンプさんが通ってきた道の方に振り返りながら向ける。

 その先から、一人、女の子が飛び出てきた。ビニール傘を差して、勢いよく、細い道から駆け出して来た。そして振り返り、人を呼ぶような仕草をすると、もう一人男の子が出てくる。

 

 最初の子よりも背が高い、銀髪の爽やかな青年――というのが正しいだろうか。

 大きめのビニール傘を差しながら、頭の裏を掻いて苦笑しながら細道から出てくる。

 

 視線をボンプさんに戻すと、嬉しそうな顔をしながら「ンナ!」と言っている。

 かわいい。カウンターから身を少しだけ乗り出し、ボンプさんの頭をちょんちょん、とつついた。この場所からではそれが限界だった。

 

 腕の長さが足りなくて、撫でるとまではいかなかったけど、それでもボンプさんは、いつもより高い声で鳴いた。

 

 「ひさしぶりー店長ーーー!!」

 「お久しぶりですぜ、リンちゃんさん」

 「うぃ。首尾はどうだい?」

 「上々ですぜぇ、姉御」

 

 そう。彼らは近所のビデオ屋『Random Play』の店長さん達。れっきとした知り合い、そして常連さんだ。裏(・)の方もね。

 駆け寄ってきたリンさんへふざけながらも挨拶を交わし、遅れて来たアキラさんへも軽くお辞儀をする。

 

 お辞儀を返しながら、彼は口を開いた。

 

 「お久しぶりです。店長さん」

 「店長なんて、堅苦しい名前で呼ばないでよ」

 「無自覚天然幼馴染っ!?」

 「なんだいそれは」

 「いえ、すみません。こっちの話です」

 「今の流れでそっちだけの話の訳がないよね」

 

 思ったより驚いてくれた。今日最初に来てくれたお客さんにぶっこむつもりでさっきから練習しといたやつだ。

 嬉しいね。

 

 「じゃあ、リュウさん」

 「うんっ、アキくん」

 「やばいっ! 光で僕の目がッ!?」

 「お兄ちゃんしっかりして!!」

 「で、リンちゃんさん姉御、どうしますか今日は」

 

 どうだ。無自覚天然幼馴染からのヤクザの子分、このコンボは!

 隣で目を押さえている銀髪は放っておこう。

 

 「あ、そうだ! 店長、肉まんを...えーと12個ください!!」

 「12個!? 何に使うんですかそんな数」

 「そのぉ、親戚の方に泊まりに行くことになったんだけど、そのお土産的にさ」

 「...うちよりもっといいのがあるのでは? ルミナススクエアとか、というかまず俺の店で買ったものでいいんですか? もっと、なんかこう―――」

 「いいの。すっごくおいしいんだから! それに、店長の肉まんは食べれるうちに食べてほしくて!」

 「―――そうっすよねーーー!!!!! やっぱ中華まんだったらうちっすよ、うちうち!!!!」

 

 うちも結構おいしいし。とはいえお土産に買っていくようなものなのかはわからないが。というかそんなに保存のきくものではないが、どこまで行くんだろうか。

 まあ、それは俺には関係なさそうだ。

 でも12個? まあいいか。育ち盛りでもいるんだろ。それにそういうの全部含めて、ただの屋台の店長には、関係のないことだ。

 と、復活したアキラことアキくんが、目元をさすりながらもこちらを見てきた。

 

 「とはいえ、リュウさんがまたうちの近くに来てくれてよかったです」

 「はは、こちらこそ。場所を頻繁に変える、とかいうことして、大変迷惑をかけてる自覚はあるんですけどね。リンちゃんさんや、アキくんたちみたいに来てくれる人がいるので、助かってますよ、ほんと」

 

 今回は結構長めに滞在できそうですしね、と付け足しながら、俺は手早く作業に入った。カウンター奥のせいろに手を伸ばし、ほわほわとした湯気をあげている竹せいろに手を伸ばす。

 厚めの手袋をつけて、せいろの蓋を慎重に、少しだけずらす。瞬間、吹き出す熱気。

 ――ゴオォオォ......!!

 勢いよく解放された真っ白な熱い蒸気が、雨で冷えた空気に目いっぱいに広がった。

 屋台を包み込むような、暖かな熱気。それが鼻腔にすっ、と、うまみの溢れた肉まんの香りを運んでくる。

 

 「うわぁああ......!! めっっちゃいい匂い!!!」

 

 リンちゃんさんが目を輝かせながらカウンターを覗き込んでくる。今にも手に取って食べそうなくらい、ていうかもはや食べてるところを想像してるんじゃないかってくらいに、頬がぷっくりと膨れている。

 さながらリスの様だった。むふー、と言いながら、肉まんの一挙手一投足を眺めている。

 

 せいろの中で並んでいるのは、俺が朝一番に仕込んだ自慢の肉まんだ。薄く打ち粉の振られた、ふっくらとした白い生地は、蒸気を含んで赤ん坊の肌みたいにキメ細かくツヤツヤと輝いている。綺麗に刻まれたヒダの頂点から、今にもあふれ出しそうな肉汁の気配。

 透明感の溢れた生地には、目を細めれば肉汁の色がうっすらとにじんでいる。

 トングでひとつ掴み上げると、ずっしりとした重みとともに、ぽよんと弾力のある柔らかさが手元に伝わってきた。

 

 トングで掴まれた肉まんを、リンちゃんさんが瞬きをせずにキラキラした瞳で追ってくる。

 

 そんな顔を見て、一つ思い出した。

 

 「あ、そういえば二人の分はいいんですか? 12個の中に含まれてるとか?」

 「...くっ、お兄ちゃん......!!」

 

 なんだか覚悟の決まった瞳でリンちゃんさんがアキくんの方を振り返る。

 アキくんも、蝶を追う子供のような視線で肉まんを見つめていた。

 

 「...いつもだったら、だめだよ、と窘めるんだけどね...でもこれは、わかるよ、リン」

 「だよねお兄ちゃん!! ...どうする!?」

 「これは...難しいな。店長!!!!」

 「うおい。どうしました?」

 

 アキ君はズボンのポケットに手を突っ込み、しなやかな手つきで電子端末―――スマートフォンを引き抜いた。そのまま少し画面を操作し、こちらへと向けてくる。

 絶妙な手さばきだ...美しい......!!!!

 

 じゃなくて。

 その画面には、うちの店の名前と、『会員様限定贅沢クーポン』の文字、そしてバーコードが一つ映し出されていた。

 

 「僕のっ...!! 切り札だ!!!!」

 「なん、なんだって―――――………・・・・・クーポン...やるな、アンタ」

 「ふっ、この程度のこと、造作もない!!!」

 「店長、このクーポン使ったらどうなる!?」

 「そうですね――知らんのか、ウチの会員様限定、月一回かぎりの、10個以上お買い上げいただいた場合、全数から一律で30%引きよォ!!!」

 「お兄ちゃん!!!!」

 「ああ、勝負は今!!! ここで決め―――待て、待て待て待て、いったん待とう」

 「どうしました?」

 

 俺は運んでいた肉まんを丁寧に専用の袋に入れると、素早くクーポンに刻まれているバーコードを読み取るための電子機器を、カウンターの端から引っ張り出した。

 アキくんは、クーポンをたたきつけるようにそれにかざす―――寸前で、勢いを収めた。

 

 顎に手を当て、冷静に計算を始める。

 

 「リン、いったん考えよう。何個追加する?」

 「むむ......私たちの分を追加するとして...6個!!!」

 「てことは......え、合計で18個持ってくつもり!?」

 

 マジかよ。そこまでとは思わなかったぜ、姉御。

 アキくんが手で制するように姉御の前に手を伸ばした。

 

 「待とう。いったん待とう。18個は流石に重さ的にも持ちやすさ的にも......」

 「えーっ!! でも、こんな場面、もしかしたら二度とないかもしれないよ!?」

 「...否定できない...」

 「ごめんね、俺が移転しまくるせいで」

 「店長が悪いんじゃないの! でもこんなに思い切って10個以上買うなんて私たちでもあんましないんだから!! 今日のうちにさ!」

 「くっ、僕は......」

 「良いんだよ別に? そんな悩むほどか?」

 

 話しながらもせいろの中の肉まんを袋に詰めていく。既に注文の12個は入れ終わった。なんだこの重さ。丁寧に入れてあるから形が崩れはしないだろうが、それでもかなりみっしりと肉まんが敷き詰められている。

 袋の空いた口から、蒸気がふわりと香り立つ。

 甘く香ばしい小麦の生地の匂いと、ゴマ油と醤油が隠し味に効いた豚肉のコクのある旨味の匂い。

 

 すでに屋台には飯テロに充分な香りが充満していた。

 

 「でも、店長―――肉まん6個追加ァ!!!」

 「いっけ―――――――――!!!!!!!!!!」

 「全部で肉まん18個、ご注文ありがとうございまァす!!!!!!!」

 「これが僕の、全力だああぁあああああ!!!!!」

 

 ピッ。バーコードを読み取った。画面に『会員様限定贅沢クーポン』の文字が浮かび上がる。

 疲れた様子で、アキくんは肩を揺らしていた。

 

 「肉まん18個、まいどあり~♪」

 「やられたよ店長...ここまで計算づくかい?」

 「ま、そういう世界線もあったかもね。マジびっくりしましたよふつーに」

 

 18もいかれるとは思っていなかったぜ。アキくん。

 バーコードを読み取る用の機械を収め、12個詰め終わったテイクアウト用の特性紙袋の口を閉じ、先にカウンターに置く。流石にもう6個は入らないから、2つに分けよう。

 出来立ての熱気をしっかりと閉じ込めた紙袋からは、うまみの溢れる肉まんの香りが、隙間からあふれていた。

 

 香り立つ熱気。冷えた空気から体をじわじわと包み込み、胃腸にダイレクトに届く。

 リンちゃんさんのお腹からきゅるり、とかわいらしい音が鳴った。

 それに被せるように声を出す。

 

 「にしても、ここまで買ってくれるとはね...ここに戻ってきて、初めてのお客さんが君たちでよかったです」

 「そういえば、長く滞在できそう、て言ってましたよね。よかったです。ここに戻ってきてくれて。前は急にいなくなっちゃったから...」

 「そうですね。少なくとも、前よりは」

 「よかった...あ、でもそうか。僕達、もう少しで泊まりに...」

 「合わないねぇ...ま、俺はずっとここにいるわけじゃないから、なんかのきっかけでそっちに行くこともあるだろうさ。どこかは知らんけども」

 「縁、ですか?」

 「縁、かもねぇ」

 

 残りの6個を詰め終わる。袋の口を閉じている間、アキくんはその中身を少しでも長く焼き付けておこうと覗き込んでいるようだった。

 リンちゃんさんが少しだけ顔を赤くして、またしゃべりだす。お腹からまた音が鳴らないようにするためか、手を添えていた。

 

 「今更だけど...移転する時は、どうやって決めてるの?」

 「そうですね...まあ、基本は風任せですよ。俺が行きたいところに行きたいときに行き、そこで屋台を開く。まあ、他にもいろいろありますけどね」

 「ちなみに、ここに戻ってきてくれた理由は?」

 「実は俺...実家を抜け出してきてるんですよ」

 「えっ、じ、実家!?」

 「そうです」

 

 オフレコですよ、という風に口元に一本、人差し指を立てた。同委に目を丸くする二人。顔を見合わせ、足元のボンプさんはンナ、といいながらこちらの顔を見上げてきた。

 

 「ちょいと訳ありでしてね。追われる立場、ってやつです。だから、ほとぼりが冷めるまで、ここらへんで居座ってようかと思いまして」

 「そ、そっか...衝撃の新事実...!」

 

 にしし、と笑いながら、6個を詰めた紙袋を差し出した。

 胸元で疼く、かすかな違和感を覆い隠す。こんな風に場所を変えなければいけない理由が、こんな面倒くさいしがらみのせいだなんて、口が滑っても言えないけれど。

 まあ変に隠してミステリアスを気取るよりは、こちらの方が違和感は持たれないだろう、と思って作ったエピソードが、思ったよりも効果を発揮してくれて助かっている。

 

 雨が降っている。違和感を思考の隅から追い出すように、俺は顔を上げた。

 

 「さ、請求はー、一個200ディニーなんで、18個で3600...のところを30%引きで、2520ディニーかな」

 「助かります。相変わらず手ごろで」

 「ふっふっふ、これがうちのモットーだからね。安く美味しく、そして早く」

 「ありがとー店長さん」

 「はいよー」

 「あ、そうだ、リュウさん、今日って夜の...裏(・)の方やってますか?」

 「ん? やるつもりだけども、いつも通り19時からね。何か食べたいものでもありますか?」

 

 顔を近づけてきたので、同じように近づける。

 なんだか別に普通に居酒屋について話しているだけなのに、悪いことをしている気分になって落ち着かない。

 

 「いえ......ただ、あったかいラーメンでも食べながら、静かに話したいことが出来そうなので」

 「ん、そう。わかりました。じゃあ、今日待ってますね」

 「ちょっとー、今は肉まんのことで頭いっぱいにしようよー」

 「はいはい。じゃ、また夜」

 「ほいほーい」

 

 俺が歯を見せて笑うと、アキくんは落ち着いた笑みを浮かべてカウンターの肉まんの袋を二ツとも手に取った。

 やはり思ったより重かったようで、リン、こっちを持ってくれ、と言って一つずつに分ける。

 

 「まいどありー」

 

 ンナーと嬉しそうに鳴くボンプさんを先頭に、二人は傘を揺らしながら、雨の六分街に戻っていく。

 

 途中、リンちゃんさんが待ちきれなくて袋を開けたらしく、ちょっと、リン、という声と、仕方ないじゃーん、こんなの体に毒だよー!! と反抗している声が聞こえてきた。

 

 遠ざかる背中から目を逸らし、俺は再び椅子へと座りこみ、机に肘を置いた。

 せいろから上がっていた蒸気が、白色をとかして空中へと消えていく。やがて店の中には、肉まんの肉汁を思わせる香りと熱だけが残った。

 

 ふと視線を空に上げる。

 なんだかんだで長かった小雨の雲が、少しづつほどけていた。

 

 「......夜には、やみそうですかね」

 

 ぽつりとつぶやくと、俺のお腹からきゅるる、と音が鳴った。

 俺は冷めないうちに、自分用の肉まんを口にほおばった。肉汁が溢れて、ふっくらとした生地の弾力とお肉の甘みが流れ込んでくる。口一杯にほおばったそれを咀嚼していると、隣から猫の声が聞こえた。

 

 「んっ、はむっ、んぐっ......どうしました? 新しい、お客さんですかね?」

 

 屋台の外で、調理側には入らず、こちらを見つめている。衛生に配慮した猫だなーと思ってから、その姿に思い当たった。

 前にここに店を開きに来た時に、寝起きの俺の腹の上で寝ていて、猫が食べられるご飯を作って与えてたら、いつの間にか看板猫みたいになっていた子だ。

 

 「...久しぶり。ご注文は?」

 

 知ってか知らずか、そのまま一度鳴いて、こちらの膝の上に飛び込んできた。丸くなって寝始める。

 アキラさんの言葉が頭に浮かぶ。

 『縁、ですか?』

 

 「俺の膝...高いっすよ、それ。猫さんや」

 

 こちら、ククリ屋千結(ちゆい)。ただいま六分街で、開店中です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






   ・リュウさん/店長/エスナ・リウド・アグライア

 ・大体呼ばれ方はアグライア、アグライアさん、エス、リュウさん、リュウ、etc......本人としてはさんはいらず、呼び捨てで構わない。
  ちなみに本名はガルダ・リューグレイ・エル。つまりエスナ・リウド・アグライアは偽名になる。

 ・リューグレイが家名。実家から抜け出してきたのは真っ赤な嘘で、家族とはホロウ災害で生き別れになっている。家族構成は、母、父、姉、リュウの4人で、生き別れになったのち独自に調査ししっかりと3人で生き延びていることを確認。その後軽く手紙を出し、自身が無事であること、屋台を営んでいること、訳あって顔を出せないけれど、みんな幸せそうで良かった、待って、マジで勘違いしないで!ほんっとに幸せそうで良かったんだからね!!! と伝えてある。
  定期連絡は欠かさず、月に1回程度、短文と、屋台で言った場所付近の絶景を写真に撮っておくっている。家族の全員は無事であったことを素直に喜んでおり、手紙での生存報告が続いているおかげであんまし曇ってない。

 ・お姉さん属性、または天然系などを求めて旅をしており、のちに再会しそうな儀玄師匠とかリナとか、あとはヴェリナさんとかアンビーとか盤岳先生とかに弱い。プロメイアさんとか朱鳶さんとかイヴリンとかもそうかも。年下? ああ、そういう世界線もあったんじゃないかな。
  今回の話ではなかったけど、普通にえっちだね.../あのお姉さんえっらいどえっちやなぁ...!! という感情はある。

 ・得意料理はラーメン、餃子、チャーハン、肉まん、あと儀(・)玄(・)さ(・)ん(・)が(・)頼んでくるため上手くなったチャーシューまんとか。基本中華。
  ちなみに中華の師匠はみんな大好きあの人――ではない。

 ・好きなものはご飯を食べること、人がご飯を食べていることを見ること、写真を撮ること、お姉さん、天然、猫、ゲーセン、あとは買い物で悩んでる時間、温泉、物珍しい料理。ちなみに海より山派。
  嫌いなものはご飯を粗末に扱う人、モノを大切にしない人。自分に似てる人、必要以上にキラキラしてたりごついもの。あとどっかでなくした日記(黒歴史)。大きい音。

 ・屋台の方式上いろんな場所に行くので、行った先で色んなところをめぐるのにハマっている。
  屋台の情報は、実際に店に訪れてくれた人はQRコードを読み取ることで手に入れることができ、アプリと連携することで現在開店している場所、開店時間、クーポンを受け取ることができる。
  今回のように、常連さんから他の人に伝わっていく、というのも一つの縁の形だと考えており、一度つながったのなら縁があり、来なくなった、訪れないなどの場合は縁はない、ということになる。

 ・エーテリアス疑惑について
   マサマサとは違う病気。ホロウ災害によって生き別れになった時、同時にホロウ内の強大なエーテルを浴びてしまい、体の中で常にエーテリアスへ変化を続ける症状が出ている。なんでそんな爆発寸前のエーテルがホロウ外で形をとどめているのかは不明。
   これはエーテリアス化する一歩手前の段階で止まっている感じで、めちゃくちゃに不安定。日ごろから正規のルートではない方法で手に入れた特殊な薬剤を数種類配合し、それを一日に3L程度飲み続けることで進行を防いでいる。なお非常に微量に症状は進行している様子。

   このままいけば余命は多分結構ある。

  エーテルが常に体の中で爆発と収縮を繰り返している状態で、それを抑えるために作った自前の薬は結構革命的。インターノットに匿名で発表したため、この世界ではエーテル結晶が生えてしまった状況から生還する可能性を著しく上昇させている。
  また本人はこのおかげでエーテル適正が非常に高いが、ホロウ内のエーテルによって入ると症状が進行するためトントン。もはやマイナス。
  これらの症状に気付くまでホロウを出入りしていた時期があり、勘は鋭い。ちなみにバカほど弱い。

 多分あんまりこの設定がいい方向に働くことはないし、作者が使えるかもわからない。
 おそらく曇るためにしか使われないであろうことだけが確定している。

 リンとアキラが何らかの裏の仕事をしていることには勘付いていて、プロキシじゃね? とまでは行きついている。

  今までやったことリスト
   ・プロキシ兄妹を小さいころに引き取ったりした。
   ・儀玄師匠がチャーシューまんを食べれるようになった。
   ・潘さんと料理勝負した。
   ・雲嶽山の奥の方からやば気な気配を感じて儀玄師匠に聞いた。
   ・こっそり行ってみた←!!!!????
   ・その先で料理を振(・)舞(・)っ(・)た(・)←!!!!!??????
   ・リナに料理を教えた。
   ・なんかめっちゃすり減ってるお姉さまに料理を振舞った。
          ↑テレビで見るようになってびっくりした。
   ・静かでやばい格好してるお姉さまに料理を振舞った。
   ・ヒューゴが甘いものを食えるようになった。
   ・ビビアンを泣かせた(やばい!! 俺大罪犯した!!)。
   ・お狐様虚狩りは油揚げが好きだと思っていた。

    リンとアキラのことは一切良くない眼で見ていない(ガチ)。


   ・リン

  ・伝説的プロキシ。言わずと知れたパエトーン。かわいい。
   時折リュウからえっちだね...という幻聴が聞こえるため、複雑な感情に悩まされている。
   現在絶賛肉まんなどの中華まんに加え夜のラーメンを食べることにより体重が爆増。悶々としてはその手を抑えられないのだとか。

  ちなみに今回の肉まんの内訳は最初の12個中10個がお土産、残り2個が自分たち用だったがそのあとの6個追加により3個ずつ自分用を得た。
  なお一日で食い切った模様。

  プロキシであることを勘付かれているとは思っていない。

  リュウとは以前に六分街で開店していたところで知り合いになっており、付き合いはかなり長い。零号ホロウの秘密を解き明かそうと決意した頃位からは知り合い。
  好きなメニューは肉まん、ピザまん、ラーメン、餃子、チャーハン、および半チャーハンラーメン、マリトッツォ。

   将来の夢は、
   ・リュウとお酒を飲むこと
   ・すべてのメニューを一度に頼むこと
   ・肉まんを気が済むまで食べること
               である。
 
  これより向かうは雲嶽山。なんか、いろいろ波乱がありそうですね。

 リュウとアキラのことをじゃっかん良くない眼で見ている←!!!!!!???

   ・アキラ

  ・伝説的プロキシ。言わずと知れたパエトーン。スーパーメロ男。時折リュウからえっちだね...という幻聴が聞こえるため嘘だろと頭を抱えつつ意見を交換したいと思っている。
   現在絶賛肉まんなどの中華まんに加え、夜のラーメンを食べることにより体重が爆増中。悶々としてはその手を抑えられないのだとか。

   今回の買い物で合計して4個の自分用肉まんを得た。
   一日で全て食い切っている。

  ・リュウが何かを隠しているだろうことに気が付いており、酒の席に引きずり込んでは話してくれないか祈っている。
   好きなメニューは肉まん、カレーまん、あんまん、ラーメン、餃子、チャーハン、および半チャーハンラーメン、マグロのたたき、抹茶アイスクリーム。

   リンより夜の店(語弊)に行くことが多い。

   将来の夢は、
   ・リュウとお酒を飲むこと
   ・すべてのメニューを一度に頼むこと
   ・肉まんを気が済むまで食べること
   ・リュウと性癖を開示しあうこと
               である。

   これより向かうは雲嶽山。なんだか波乱が起きそうな気配を感じ、リュウへ今夜指南を乞うつもり。

 リュウのことをじゃっかん良くない眼で見ている。←!!!!!!???

  




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