いぬのTS貧乳合法ロリアラサーおまわりさん   作:被告人5

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激烈逮捕!警察24時!

肌寒さが骨身に染みてくる季節。その日は、いつもより少しだけ早い時間に家を出た。理由は単純、今日はテレビの撮影がある。

 

それも、ただの取材ではない。人気番組――『激烈逮捕!警察24時!』の密着取材である。

 

警察に密着し、窃盗犯や不審者との激闘を画面に収めた番組だ。好評のあまり、その題材は日本の警察だけではなく海外の警察まで取り上げるほどの人気シリーズである。朝からラスベガスの噴水に浸かり、ハンバーガーを食べていた不審者が出演した回を見たときは、流石の私も過呼吸になるほど笑った。当時住んでいた姉貴が何事かとすっとんできたほどだった。

 

そんな番組のプロデューサーからオファーがあったのだと、佐藤巡査長は嬉しそうだった。なんでも彼も、この番組は好きだったらしい。格好良く犯人を捕まえ、町の平和を守るおまわりさんに憧れて、本格的に警察を志したそうだ。

 

「……眠い」

 

日が昇りだしても空気はまだ少し冷たい。私は小さく欠伸をしながら、さくら交番へ向かって歩いていた。普段より早い出勤というだけで、身体がいつもより重く感じる。

 

いや、正確には。昨日ちょっとだけ眠れなかったのだ。これまでなし崩し的に何本かテレビ出演をしたものだが、流石に丸一日密着されるのは初めてだ。緊張するのも仕方の無いことだろう。

 

「……はぁ、本当に大丈夫でしょうか」

 

誰に言うでもなく呟き、交番の前まで来る。

 

すると。

 

「おはようございます!」

「……おはようございます」

 

交番の前には、すでにテレビ局のスタッフが数人待っていた。その中でも目立つのが、肩から大きなカメラを提げた、がっしりとした体格の男性だった。なるほど確かに、この人ならカメラを持って全力ダッシュでもなんでも出来そうだ。

 

私を見ると、スタッフの一人が頭を下げる。カンペを持っていて、『もう撮影されています』とある。

 

「犬井巡査、本日はよろしくお願いします」

「はい。こちらこそよろしくお願いしますね」

「本日は密着警察24時の撮影にご協力ありがとうございます」

「はい。もちろん、映せないことも多いですが……私でよければ」

 

そう答える。

 

警察官なのだから、当然ながら撮影できない場面もある。事件や相談の内容によっては個人情報もあるし、捜査上の都合で映せないこともある。というか殺人事件なんて起きようものなら即刻撮影中止だろう。

 

そのあたりは事前にきちんと説明を受けているはずだ。なので私は、

 

「まあ、普段通り仕事すればいいんですよね?」

 

と確認した。いつも通りならば、特段緊張するようなものでも無いだろう。…ハプニングでも無い限りは。

 

「はい。そのつもりです」

 

スタッフが笑う。

 

「今日は犬井巡査の一日に密着させていただきます」

「なるほど」

「出勤から勤務終了まで、できる限りそのまま撮影させていただきます。もし事件などが発生した場合には、対応可能な範囲で撮影します」

「事件ですか……」

 

私は少しだけ遠い目をした。ない、とは言い切れない。この町は、というかこの世界はちょっとだけ治安が悪いのだ。

 

「警官としては、何もないほうがいいんですけどね」

 

複雑なところである。そんな私たちの会話を撮影していたカメラが、こちらを向く。

 

直後。スタッフの一人が、カンペにこう表示した。

 

『――地域に根ざした警察官。その知られざる一日に密着!』

 

「……」

 

私はカメラを見る。なるほど、これは番組でナレーションが読み上げるところなのだろう。

 

「知られざるって……そんな大したものじゃないですよ?」

 

スタッフが満足そうに笑った。

 

「今の感じ、いいですね。今回我々は、ただ事件取れ高を求めて来たわけではないですから」

「え?どういうことですか?」

 

私は少しだけ嫌な予感がした。軽率に受けてしまったとはいえ、大丈夫だっただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

朝、さくら小学校の通学路。

 

最初の仕事は、いつもと変わらない。さくら小学校近くの横断歩道で交通安全旗を持って見守り運動だ。

 

「おはようございまーす!」

「はい、おはようございます」

 

登校してくる子どもたちに声をかけながら、車の流れを確認する。カメラマンは少し離れたところから、私の姿を撮影している。

 

すると。

 

「あっ!」

 

一人の男児が私に気づいた。

 

「ハルねえちゃん、おはよー!」

「おはようございます」

「あれテレビ?」

「そうですよ、テレビ局のお兄さんたちです」

 

私が答えると、男児の目が輝いた。

 

「テレビ!?」

「はい。ほら、こっちに来てテレビに映してもらいましょう」

「ほんと!?」

 

男児が友達を連れてカメラの前へ走っていく。このぐらいの歳の子は、妙にテレビに映りたがるな。

 

「俺、映る!?」

「俺も!」

「おーい!」

 

カメラに向かって手を振ったり、妙なポーズを取ったり。中には、わざわざ一回転してみせる子までいる。その中に混ざるあの青い耳は五右衛門君だ。もう一緒に登校するぐらい仲良くなったのか。

 

「……ふふっ」

 

そんあ光景に微笑ましくなって、思わず笑ってしまう。スタッフも苦笑しながら撮影している。

 

「元気ですね」

「毎朝こんな感じですよ」

「犬井巡査も楽しそうですね。尻尾が揺れてますよ」

「ええ。まあ、元気なのはいいことですから」

 

そんな会話をしていると、別の女の子が私のところへやってきた。

 

「ハルちゃん」

「はい、なんですか?」

「しっぽ触っていい?」

 

私は少し考える。

 

以前より、こういうことを聞かれる機会は増えた。ただ、やっぱり雑に触られるのは困る。ちゃんと手入れをしている自慢の尻尾なのだ。

 

「ちゃんと優しくならいいですよ」

「やった!」

 

女の子がそっと私の尻尾を撫でる。続いて別の子も。

 

「僕も!」

「じゃあ順番ですよ」

「はーい!」

 

気がつけば、数人の子どもたちが順番に尻尾を撫でている。流石にお尻に近いからか、思春期の男子達は遠巻きに見ているだけだったが。別に遠慮しなくても良いのに。

 

カメラも、通学路で警官の尻尾を撫でる異様な光景をしっかり撮っている。

 

そして、スタッフはカンペにマジックで、

 

『子どもたちからも大人気。犬井巡査は、地域の人々との交流を大切にしている』

「……」

 

私はそのナレーションを見て、少し困った顔をした。

 

「……なんか、私が仕事してないみたいになってません?」

 

だが、スタッフは満足そうだった。

 

「いえ、とてもいい画です」

「そうですか……」

「これを求めてましたから」

「…?」

 

よく分からない。まぁテレビは一旦置いておき、時計を確認して私はもう一度、子どもたちを見る。

 

「はい、そろそろ学校の時間ですよ。遅刻しないように」

「はーい!」

 

子どもたちが走っていく。私はその背中を見送ってから、再び横断歩道へ向かった。

 

まあこれも仕事といえば、仕事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

昼になり、私はパトカーでなゆた診療所へ向かった。助手席にはマイクを持ったスタッフと、後部座席に小さめのカメラを持った人が一人。他の人は後ろから車で追いかけている。

 

なゆた診療所は小さく、警備員などは常駐していない。そのため、私たち警察が定期的に巡回している。

 

「あら、ハルちゃん来たの」

「こんにちは。今日も巡回です」

「今日もご苦労様ねぇ」

 

診療所に入った途端、顔見知りの患者さんから声をかけられる。

 

私は帽子を脱いだ。犬耳がぴょこんと姿を現す。

 

「あら、今日もかわいいねえ」

「お元気そうでなによりです」

「ちょっと撫でさせて」

「どうぞ」

 

頭を撫でられる。弱々しい力で耳の付け根を撫でられると、思わず耳がぴくりと動く。

 

「まあ、耳が動いた」

「生き物ですからね」

「ふふふ」

 

その様子を、当然カメラが撮影している。流石のスタッフも少し困惑したように尋ねる。

 

「これは……警備巡回ですか?」

 

私は真顔で答えた。

 

「はい、皆さんの心理的不安解消のためです」

「……はて」

「ここは小さな診療所でして、警備の人員がいないんです。患者さんたちを安心させるためにも、我々が巡回する必要があるんですよ」

「なるほど」

 

ちょうどそのとき、奥から年配の男性が歩いてきた。彼はこの診療所の院長、ちょっぴりうさんくさそうな狐の獣人だ。ギャンブルが好きで、軽井沢巡査とは友人らしい。だが、あの猫とは違い、紳士的な雰囲気だ。

 

「どうもどうも、ハルさん。いつも助かってるよ」

「いえ、こちらこそ。院長先生もお疲れ様です」

 

院長に軽く頭を下げる。

 

すると。

 

「ハルちゃん、こっちもおいで。飴ちゃんあるよ」

 

別の患者さんから呼ばれた。私のことを、お菓子で釣れると思っているお年寄りがどれほど多いことか。

 

「……はい」

 

まぁ、お菓子はもらう。ご厚意だからだ。私はそちらへ向かう。

 

後ろからカメラも追いかけてくる。そしてまた撫でられる。スタッフが無言でカメラを回し続ける。

 

――どう考えても、アニマルセラピーの密着映像だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

午後は商店街の巡回。さくら町の商店街は、この町の経済を支える一柱だ。大型ショッピングモールができた今でも、昔ながらの店が多く残っている。

 

ショッピングモールとは客を取り合うというより、商店街には商店街の良さがある。昼下がりの通りには、買い物をする人の姿があり、店先からは店主たちの声が聞こえる。この温かみが、この商店街の強みなのだろう。

 

「お、ハルちゃんじゃねーか。今日も巡回ご苦労さん」

「いえ、お仕事ですからね。ありがとうございます」

「いつもありがとうね」

 

そう言って、頭を撫でられる。和菓子屋のご主人は、少し豪快にわしゃわしゃと。

 

「……ありがとうございます」

 

私は少しだけ頭を下げる。

 

すると、近くの和菓子屋の店主が店の奥へ引っ込んだ。

 

そして。

 

「ほら、巡回のお礼のおまんじゅうだよ」

 

「え?」

 

紙袋を差し出される。中にはぎっしりとおまんじゅうが詰まっていた。

 

「いやいや、大丈夫です。仕事ですから」

「いいから持っていきな。その人達の分も」

「でも……」

「いいから。これは、うちの宣伝にもなんだろ」

「……そうですね。ありがとうございます」

 

結局、受け取る。普段から打算的な店主さんだが、彼の本意がそれだけではないことを私は知っている。

 

もらったおまんじゅうをスタッフの皆さんに配った。大きいカメラで両手が塞がっている人には、私が強引に口へ突っ込んだ。そのスタッフは、しばらく恨めしそうな目線で見られていた。

 

さらに歩いていると、今度は八百屋のおばちゃんが声をかけてきた。

 

「ハルちゃん!」

「はい、何かありました?」

「おれいのリンゴだよ」

「いや、これも……」

「いいから!忙しくてお昼食べてないでしょ」

「……ありがとうございます」

 

こんな感じで商店街の人からは差し入れをもらい続けてしまい。気がつけば、両手が塞がっていた。

 

カメラが、その姿を正面から撮影している。

 

「犬井巡査」

「はい?」

「かなり餌付けされていますね」

「……餌付け」

 

私は両手の袋を見た。中にはリンゴやら饅頭やら、唐揚げやできたてのコロッケが詰まっている。

 

「……警察官に対して餌付けという表現はどうなんでしょう」

「でも、完全に餌付けですよね」

「否定できないのが悔しいです」

 

私は苦笑した。それでも、受け取ったものを返すわけにもいかない。

 

結局そのまま交番まで持ち帰ることになった。

 

 

 

 

 

 

日も落ち始めた頃、鮮やかな夕日が眩しく私を照らす。事件が起こるとしたら、大体この時間からだ。

 

パトカーで町を巡回する。ようやく、少しだけ『警察24時』らしい撮影になったと言えるだろう。

 

しかし――。

 

「……特に変わったことはありませんね」

 

車窓から町を眺めながら、私は呟く。

 

「事件、起きませんね」

 

スタッフが苦笑する。

 

「そうですね。珍しい日です」

「普段はもっと忙しいんですか?」

 

私は少し考えた。

 

「忙しい日は本当に……まあ、でも」

 

窓の外を見る。綺麗な夕暮れのさくら町。

 

家へ帰る学生。店先を掃除する人。買い物袋を提げた人。軒先からのカレーの匂い。いつもの町の風景だ。

 

「さくら町は穏やかな町ですから」

 

そして、ほんの少しだけ笑う。

 

「ええ。良い町でしょう?」

 

カメラが、その横顔を捉える。夕日が窓から差し込み、犬耳の輪郭を照らす。その映像を、カメラマンは何も言わずに撮り続けた。

 

一日の終わり――そして『警察24時』の撮影も、もう終わりに近づいていた。私はスタッフと一緒に交番へ戻る道を歩いていた。

 

「今日は何もない撮影ですみませんでした」

「いえいえ」

「テレビ的には……ちょっと困りますよね?」

 

その瞬間だった。

 

「――キャーッ!」

 

遠くから、女性の悲鳴。

 

私は足を止める。すぐに表情が変わった。

 

「……事件です」

 

悲鳴の方向へ走ると、座り込む女性を見つけた。手首に強くにぎられたアザがあり、髪が少し乱れている。

 

「バッグを……ひったくられました!」

「犯人は?」

「あっち……!」

 

女性が指差した先。一人の男が路地へ駆け込んでいく。

 

「分かりました。貴方はここで、スタッフさん、すみませんがこの方を見ていて下さい」

 

私はスタッフを置いて、全力で走り出した。

 

犬獣人としての脚力。そして何より、ここは私が何度も巡回してきた町だ。どこに細い路地があり、どこで道が分かれ、どこが行き止まりなのか。私は全部知っている。

 

「……あっちですね」

 

犯人は大通りを避け、路地を抜けようとしている。相手もこの町を知っているのだろう。普通なら、その判断は間違っていない。

 

だが――。

 

「すみませんが、そこは通行止めにしますよ」

 

私は道を曲がった。そして、塀の前で軽く身を低く踏み込み。

 

次の瞬間、ひらりと塀を飛び越えた。反対側へ着地し、そのまま走る。

 

犯人が角を曲がる。そして――。

 

「止まってください!」

「なっ――!?」

 

その先に、私が立っていた。

 

「……え?」

 

犯人が固まる。私は息を整えながら、一歩前へ出る。

 

「逃げても無駄ですよ。おとなしくしなさい」

「くそっ!」

 

犯人が方向を変えようとする。その手には、キラリと光る出刃包丁。あぁ危ない。

 

しかし、遅い。爪を出すまでもなく私はその腕を取り、体勢を崩させる。

 

「ぐわっ!」

 

犯人が地面に倒れ込む。私は素早く制圧し、確保する。

 

「窃盗及び銃刀法違反の現行犯として、あなたを逮捕します」

 

後ろからカメラマンが追いついた。息も絶え絶えといった様子だが、犯人確保が優先だ。申し訳ないが許してほしい。

 

でも、求めていた映像は撮れたのでは無いだろうか。

 

つい数分前まで、穏やかな町の紹介映像だった。それが突然。本物の『警察24時』になった。

 

「こちら犬井、交番南西の住宅街にて窃盗犯確保。応援をお願いします」

 

無線で連絡する。ここは元々、さくら交番に近い場所。ほどなくして、佐藤巡査長が駆けつけた。

 

「犬井巡査、お手柄ですね」

「佐藤巡査長、犯人はこちらです、凶器の包丁はそこに」

「了解しました」

 

私は犯人を佐藤巡査長に引き渡す。

 

「じゃあ、あとはお願いします。私は被害者の元へ」

「えぇ。それが良いと思います」

 

そして私は、すぐに被害女性のもとへ戻った。

 

女性はまだ震えていた。私はしゃがみ込み、目線を合わせる。

 

「大丈夫ですか?」

「……はい……」

「バッグ、取り返しましたよ」

 

バッグを渡す。

 

「中身も確認してください」

「……ありがとうございます……」

「怖かったでしょう。もう大丈夫です。落ち着いてください」

 

女性の手が震えている。私は少し考えた。

 

「……あの」

「はい?」

「よかったら……尻尾を撫でてていいですよ」

「え……?」

「落ち着くなら、そのほうがいいと思います。貴方は高校時代、よく帰りに私の尻尾を撫でてましたよね?」

 

女性は戸惑いながら、そっと私の尻尾に手を伸ばす。ゆっくりと撫でる。

 

「……」

「……大丈夫ですよ」

 

私は静かに声をかけた。

 

「もう、大丈夫ですから。落ち着いたら、ちょっとだけ事情聴取させて下さいね」

 

女性の表情から、少しずつ緊張が抜けていく。その様子も、カメラは静かに映していた。

 

 

 

 

 

 

数週間後、自宅のアパートにて。

 

いよいよ、以前撮影したあの番組の放送日。私は緊張した面持ちでテレビの前に座っていた。

 

そして時間になり、番組タイトルが表示される。

 

『激烈逮捕!警察24時!――さくら町交番・犬井巡査の一日』

「……ごくり」

 

いよいよ、番組が始まる。私は息を呑んで、放送を見守った。

 

『地域に根ざした警察官。その知られざる一日に密着!』

 

その内容は、登校時間に子どもたちに囲まれる私。なゆた診療所で頭を撫でられる私。商店街でおまんじゅうやリンゴをもらう私、

 

テレビを見ている私は、だんだん眉間に皺を寄せていく。

 

「これは……」

 

完全に犬の一日観察ビデオである。今回の放送は、こういった路線で行くつもりらしい。なるほど、密着の最初の方に言っていた意味がようやく分かった。

 

ところが、そんな流れになったと分かった頃。番組も終盤にさしかかると。

 

夕方のパトカーで、窓から町を見る私。

 

『事件のない一日』

 

『それは、地域が平穏であるということなのかもしれない』

 

『穏やかな町――さくら町』

 

夕暮れの町と私の横顔。なんだか、思ってたよりねっとりと顔のアップを撮られている。いくら私の顔が良いからといって、流石に恥ずかしくなってきた。

 

『犬井巡査は、今日も町を見守る』

 

『ええ。良い町でしょう?』

 

「…………なんでこんなに良い感じの音楽を流してるんですか」

 

まるで見せ場と言わんばかりの編集である。こんなに尺をとらなくても良いだろ。

 

そして急に画面が切り替わる。

 

突然の悲鳴。犯人を追う私。制圧する様子。

 

その後、被害者へ駆け寄り、バッグを返し、尻尾を撫でさせていた。

 

『強さは、誰かを守るために。』

 

『優しさは、誰かを安心させるために。』

 

『今日も犬井巡査は、さくら町を走る。』

 

「…………」

 

私はしばらく黙っていた。そして顔が、じわじわと熱くなる。

 

「なんでこんな格好いい番組になってるんですか……」

 

自分の知らないところで、ものすごく都合の良いように編集されている。私はただいつも通りの仕事をしていただけだ。

 

恥ずかしい。ものすごく恥ずかしい。私はソファに沈み込んでもだえる事になった。

 

 

 

 

 

 

その翌朝、さくら交番。

 

「おはようございます」

「おはようございます、犬井巡査」

 

佐藤巡査長が、妙にニコニコしている。彼がここまで嬉しそうなのも珍しいな。彼女でも出来たのだろうか。

 

「……何か嬉しいことでもあったんですか」

「昨日の番組、見ましたよ」

「……それは」

「真面目で格好良い犬井巡査の良さがつまった番組でしたね」

「……忘れて下さい」

 

犬耳が、ぺたんと伏せる。まさか彼から言われることになるとは。

 

軽井沢のからかうような言い方とは違い、本当に心から嬉しそうに言葉を投げてくる。こんなストレートに人を褒めることが出来るのは、正直凄いと思う。

 

「……もう、お世辞は結構です」

「お世辞じゃないですよ。かわいいだけじゃない、あんな感じで頑張ってる犬井巡査が私は好きなんです」

「それはシラフでやってるんですか?ナンパするときの軽井沢巡査みたいな台詞を…」

 

彼のまっすぐな目線に負けて、私はゆっくりと顔を伏せる。

 

それでも。

 

私の尻尾だけは、少し嬉しそうに揺れていた。

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