さくら交番の午後は、今日も平和だった。窓口に届けられた落とし物の書類を整理し、巡回連絡の記録をまとめ、ついでに先日提出した書類の不備を修正する。
警察官という仕事は、テレビで見るような派手な事件ばかりではない。むしろ、こういう地味な仕事の積み重ねこそが大切なのだ。
……などと、真面目なことを考えながら書類を片付けていたところで。
「犬井巡査」
「はい、どうされました?」
隣の机で仕事をしていた佐藤巡査長が、こちらに顔を向けた。
「今度の土曜なんですが、ちょっと予定を空けておいてください。緊急です」
「……何かありました?」
「いえ、まだ何も」
「もしかして、事件でも起こる予定が?」
「私はエスパーではありませんよ。むしろ、良い話です」
「良い話のときに呼び出されるの、なんか怖いんですけど」
思わず眉をひそめる。
良い話というのは、たいてい本人の意思とは関係なく進められているものだ。
少なくとも、最近の私の人生ではそうだった。なんか褒められる。注目される。期待される。そして気付けば、面倒な仕事が増えている。
……いや、最後のは私の被害妄想かもしれないけれど。
「広報のお仕事です。隣のけやき市の警察署へ行ってもらいます」
「あれ?そこ、アキ警部のいるところですよね」
「そうですね」
「……広報のお仕事で姉貴に会ったら嫌なんですけど」
私の姉、犬井アキ。優秀で、綺麗で、仕事ができて、ついでに妹への愛情表現が少々過剰な警察官である。
そんな姉に、私が広報の仕事をするところを見られたらどうなるか。想像するだけで、胃がきゅっとなる。絶対にからかわれる。それも、あとから何度も蒸し返されるタイプのやつだ。
「犬井警部はちょうど、別の仕事で外に出ているようですよ」
「……なるほど」
それは朗報だ。
少なくとも、当日は姉貴の魔の手から逃れられるらしい。私はほっと胸をなで下ろした。
……いや、待て。
「……でもどうせ、後で姉貴には知られますよね」
「はい。つべこべ言わずに行くのが吉ですよ」
「ですよねぇ……」
即答だった。この人、たまに妙に容赦がない。
私は机の上に視線を落とし、深々とため息をついた。
「はぁ、仕方ないです」
「ありがとうございます。詳しいことは向こうで説明があるそうです」
「……ちなみに、何をするんです?」
「広報のお仕事、としか聞いていませんね」
「そこは知っておいてくださいよ」
「私も詳しい内容までは知らされていないんです」
佐藤巡査長は困ったように笑った。どうやら、本当に詳しいことは知らないらしい。
仕方がない。警察官たるもの、命令があれば従うのが基本だ。もちろん、内容を確認したうえで、という前提だってあるけれど。
「分かりました。行ってきます」
「よろしくお願いします」
こうして私は、警察署に出頭することになった。
数日後。私は一人、隣のけやき市にある警察署を訪れていた。
「……大きい」
思わず、そんな感想が漏れる。さくら交番とは比べものにならない。敷地も広いし、建物も立派だし、出入りする警察官の数も多い。同じ警察組織の施設なのに、どうしてこうも違うのだろう。
いや、交番と警察署を比べるのが間違っているのは分かっている。分かっているけれど、普段は小さな交番で働いている身としては、どうしても圧倒されてしまう。
私は制服の襟元を軽く整えた。
私服で来てもよいと言われたものの、何を着ればいいのか分からなかったので、結局いつも通りにしたのだ。別に、服を選ぶのが面倒だったわけではない。
……いや、半分くらいはそうだけれど。
受付で用件を伝えると、担当者がすぐに案内してくれた。通されたのは、警察署の中でも少し奥まった場所にある広報県民課の部屋だった。
「こちらでお待ちください。すぐにお繋ぎいたします」
「はい。ありがとうございます」
部屋の中には、書類の束や広報用の資料が並んでいた。
壁には防犯ポスターが何枚も貼られている。交通安全、特殊詐欺対策、子どもの見守り。なるほど、こういうところが警察の広報を担っているのか。
私がそわそわきょろきょろしていると、奥の扉が開いた。
「お待たせしました!」
明るい声とともに、一人の女性警察官が姿を現した。
見た目は三十代くらいだろうか。整った顔立ちで、表情も若々しい。きびきびした動作からは、仕事のできる人という印象を受ける。後から聞けば、もう四十後半で、子供も数人育った後なのだとか。見た目詐欺過ぎるだろ。
「犬井巡査だね。初めまして。警察本部の警務部、広報県民課で課長をしている荒巻です」
「犬井ハル巡査です。本日はよろしくお願いします」
「いやあ、実物を見るのは久しぶりだね!」
「……え?」
久しぶり?初めましてでは?
私が首を傾げていると、荒巻課長は楽しそうに笑った。
「ごめんごめん。直接会うのは初めてだったね。犬井姉妹のことは、ずっと気にかけていたものだから」
「姉妹のことを、ですか?」
「うん。ずっと昔からね」
その言い方には、どこか含みがあった。けれど、荒巻課長はそれ以上詳しく説明することなく、私に席を勧めた。
……何だろう。私たち姉妹に、何か関係がある人なのだろうか。
確かに、姉貴は警察官として長く働いている。警察組織の中に知り合いがいてもおかしくはない。
ただ、目の前の女性が、私たち姉妹がかつて研究所から救出された頃のことを知っている人だとは、この時の私はまだ気付いていなかった。
直接、私たちを救い出したわけではない。それでも、あの出来事を知る人間の一人として、その後の姉貴の歩みを見守ってきた人だった。そして、妹である私のことも。
「いやあ、犬井巡査。最近よく頑張っているね!」
「……あ、ありがとうございます?」
何のことだろう。私はとりあえず頭を下げた。ふわりと耳が揺れる。一瞬、彼女の耳への視線を感じた。
褒められるようなことをした覚えはない。ただ、お仕事を真面目にこなしているだけだ。
私の疑問を察したのか、荒巻課長は机の上に資料を広げた。
「まず、先日のテレビ番組。見たよ!」
「……ああ」
あれか。
警察密着番組『激烈逮捕!警察24時!』。さくら町の日常を撮影され、最後にはひったくり犯を捕まえたところまで放送された、あの番組だ。思い出すだけで、少し恥ずかしい。
「もともと人気だったけど、放送後はSNSでハルちゃんの知名度がさらに上がったんだよ」
「ハルちゃん……」
「地域の人たちからの評判もいい。若い世代にも、犬井巡査のことを知っている人が増えた。それに、市の観光関係者も注目しているみたいだね」
「観光関係者まで?どうしてです?」
「うん。ほら、さくら町って、昔ながらの商店街もあるし、のどかでいい町でしょう?」
「はい、確かに良い町ですが」
逆に言えば、それぐらいだ。特段大きなイベントや有名人がいるわけでも…
そこで気づいた。え、これ、もしかして私を使おうとしてるのだろうか。
「それでね。市長からも相談があったんだ」
「市長から?」
「うん。最近、若い世代への防犯啓発がなかなか届かない。どうにか警察の広報活動に活用できないか、ってね」
荒巻課長は、別の資料を取り出した。
「従来の警察広報って、ポスターを貼ったり、学校で講習をしたり、テレビや新聞で呼びかけたりするのが中心でしょう?」
「そうですね」
「もちろん、どれも大切な活動だよ。ただ、若い人たちには、なかなか情報が届かないこともある」
確かに、私も学生だった頃を思い出すと、警察の防犯ポスターをじっくり読んだ記憶はあまりない。廊下に掲示されていることには気付いても、内容まで意識していたかと聞かれると、少々怪しい。
「でも、今のハルちゃんには知名度がある。『犬井ハルが出ている』というだけで、動画を見てくれる人がいるかもしれない」
「……私、そんな大層なことしましたっけ?」
「だからこそいいんだよ」
荒巻課長は、きっぱりと言った。
「ハルちゃんは、特別なことをしようとして人気になったわけじゃない。普段通りに仕事をして、地域の人たちと接していた。それが結果として、多くの人に好感を持ってもらえたんだ」
「はあ、そ、そうなんですか……」
「その知名度を、今度は防犯のために使いたい。ハルちゃんに啓発活動へ協力してほしいんだ」
私は、資料に目を落とした。
そこには、動画撮影の予定や、啓発する内容が簡単にまとめられている。
闇バイト、SNSを通じた犯罪やトラブルや高齢者を狙った特殊詐欺。どれも、実際に被害が起きているものだ。さくら町でも、何度か被害に遭われている人もいた覚えがある。
私が出演することで、一人でも多くの人に注意を向けてもらえるのなら。
「……私にできることであれば、協力します」
そう答えると、荒巻課長の顔がぱっと明るくなった。
「ありがとう! それじゃあ、台本は用意しているから、早速動画を撮ろう!」
「分かりました。……あの、らいぶ? ではないですよね?」
「……? いや、違うよ。何かあったの?」
「いえ、個人的な話で。気にしないでください」
危ない危ない。ちょっと前の休日出勤日での惨事を思い出しかけた。今回は流石にあんなことにはならないだろう。……ならないよね?
ともあれ、渡された台本を開く。演技が得意というわけではないが、書いてあることを読むくらいなら何とかなるだろう。
そう思っていた。思っていたのだが。
「……えっと」
台本を読み進めるにつれて、私の眉間にはしわが寄っていった。
そこに書かれていたのは、どう見ても私の知能を疑いたくなるような台詞の数々だった。何だ、これ。私は本当に、こんなキャラクターとして認識されているのだろうか。
「……荒巻課長」
「ん? どうしたの?」
「この台本、私の役って……」
「うん。犯罪に巻き込まれそうになる役だね」
「そうじゃなくてですね」
私は台本を指さした。
「……私、こんなに簡単に騙される人だと思われてるんですか?」
「ははは。大丈夫、大丈夫。あくまで啓発用の演技だから!」
「それは分かってますけど……」
分かっている。分かっているけれど、これは少々不服だ。
もう少しこう、警察官としての知性を感じさせる役柄でもいいのではないだろうか。いや、そもそも啓発動画なのだから、分かりやすさを重視しているのだろう。
……そういうことにしておこう。私は深く息を吐き、台本を閉じた。
「分かりました。やりますよ」
「ありがとう! それじゃあ、最初の撮影からいこうか!」
こうして私は、警察官としての仕事とは少し違う、妙な一日を過ごすことになった。
「はい、それでは最初のテーマは、闇バイトです」
撮影のスタッフさんの説明を聞きながら、私は台本を確認した。
最近、SNSなどを通じて、犯罪の実行役を募集する手口が問題になっている。短期バイトや単発バイトアプリなどで、高額報酬、即日即金、ホワイト案件、簡単な仕事。そうした言葉で人を誘い、実際には特殊詐欺や強盗などの犯罪に加担させる。応募した人間は、最初から犯罪をするつもりなどなくても、気付けば抜け出せない状況に追い込まれてしまうことがある。
「今回は、簡単な仕事だと思って応募してしまう、という流れですね」
「はい。若い人にも身近なSNSを入口にして、危険性を分かりやすく伝えたいと思っています」
「なるほど。わかりました」
説明を聞けば、意図は理解できる。理解できるのだが。
「それでは、犬井巡査。こちらの台詞からお願いします」
私は台本を見た。そして、書かれている台詞を読み上げる。
「わぁ、住宅街でモノを受け取ったり、車の種類を観察するだけでこのお給料ですか!ハル、やります!」
「………ハルさん、棒読みですよ」
そう言って撮影スタッフが、じっとこちらを見ている。
私は台本を持ったまま、ゆっくりと顔を上げた。
「……すみません。今の、もう一度確認していいですか?」
「はい?」
「そもそも、何ですか、この一人称」
ハル、屈辱。
誰やねんこいつ。私はそんな喋り方をしたことがない。
いや、普段の自分の喋り方だって、特別に立派なものではないと思う。口下手だし、話すのは得意ではない。
だけど、これは違う。何というか、こう……。
「……私、こんなアホっぽいキャラだと思われているんですか?」
「いえいえ! あくまで、簡単な仕事だと信じ込んでしまう人を分かりやすく表現するためで!」
「分かります。分かりますけど……」
不服だ。ものすごく不服だ。
私だって、警察官として犯罪の危険性を理解している。そんな私が、こんなにも簡単に怪しい仕事へ飛びつく役を演じることになるとは。
……いや、仕事なのだから仕方がない。私は諦めて、台本を持ち直した。
「では、撮影を再開します。抑揚をつけて演技して下さい」
「…分かりました」
合図でカメラが回る。
「わぁ、住宅街でモノを受け取ったり、車の種類を観察するだけでこのお給料ですか!ハル、やります!」
今度は、何とか言い切った。自分の中の何かが、少しだけ削れた気がする。
続いて、ナレーションが入る。
『荷物を受け取って指定された相手に渡す仕事など、一見すると簡単に見えるものでも、特殊詐欺の「受け子」などとして犯罪に加担させられるおそれがあります』
『また、住宅や車両を観察するよう指示され、強盗などの下見に利用されるケースもあります』
……なるほど。先ほどの台詞は、そういう流れを想定したものらしい。
撮影スタッフが説明を続ける。
「最近は、応募した段階で個人情報を送らせ、それを使って脅迫するケースもあります。途中でおかしいと思っても、個人情報を知られているせいで、抜け出せなくなることがあるんです」
「……それは、怖いですね」
「そうなんです。だから、怪しい募集には応募しないこと。身分証や住所などの個人情報を送らないこと。そして、もし応募してしまっても、一人で抱え込まないことを伝えたいんです」
私はうなずいた。ここは、ちゃんと伝えなければならないポイントだと思う。自分の演技が多少不本意でも、目的は啓発なのだから。
再びカメラが回った。今度は、最後のメッセージだ。
「楽にお金を稼げる仕事だと思って応募したら、犯罪に巻き込まれることがあります。怪しいと思ったら応募しない。個人情報を送らない。そして、もし応募してしまっても、一人で抱え込まず警察に相談してください」
先ほどとは違い、今度は自然に言葉が出た。台詞を読み上げるというより、目の前にいる誰かに話しかけるつもりで伝える。私は警察官ではあるけれど、それ以前に、理不尽に誰かが搾取されてしまうのは許せないと思うから。
「……はい、カット!」
撮影スタッフが顔を上げた。
「いいですね! 最後のところ、すごく自然でした」
「ありがとうございます」
「最初の場面とのギャップもいいです。これなら、最後まで見てもらえそうですね」
「……ギャップ」
私は小さくつぶやいた。
褒められているのは分かる。分かるのだけれど、最初の場面については、あまり触れてほしくない。
しかし、どうやら私は、次の撮影もあの役柄を引きずることになりそうだった。
「次は、SNSを通じたトラブルについてです」
荒巻課長が次の資料を差し出してきた。テーマは、SNSで知り合った相手とのトラブルや、個人情報の流出。こちらも若い世代を対象にした啓発動画らしい。
「ハルちゃん自身も、SNSで有名になったんだよね。とった賞も凄かったんだけど」
「……そうですね」
「先日のテレビ番組のあとも、かなり話題になっていたんだよ」
「……なんか複雑ですね」
別に、SNSそのものが嫌いなわけではない。
ただ、自分が知らないところで自分の写真や映像が広まっていくというのは、どうにも落ち着かないものがある。
しかも、私の場合は見た目の問題が大きい。画面に映る私は、どう見ても小学生くらいの女の子だ。実年齢は二十八歳なのに。軽井沢巡査から、合法ロリと話題だったと聞いている。なんだよ警察にロリって。
……いや、そこを考え始めると、また面倒なことになる。
「でも、ハルちゃんが出ているからこそ、見てもらえる動画になると思うんだ」
「それは、ありがたいんですけどね」
「うん。だから、今回もよろしく!」
荒巻課長は、実にいい笑顔だった。
私は台本を受け取った。そして、読む。
「…………あの」
何だ、これは。
またしても、私の知能が疑われそうな台詞が並んでいた。
「この人、DMでやりとりしたけど楽しいな!ハル、気になる!」
「ハルさん、また棒読みですよ」
……スタッフから指摘される。もういい。この際、何も言うまい。どうせ言ったところで、啓発動画なのだから、分かりやすくするためです、と返されるに決まっている。
私は諦めて、台本を読み進めた。
『よかったら会いませんか。私のとっておきのリンゴとおまんじゅうをごちそうするので、家にきてください』
「りんご……おまんじゅう……!よ、よし、会ってみよう!」
「…………ふふ」
撮影スタッフが、微妙に笑いをこらえている。やめてほしい。
私だって、好きでこんな台詞を言っているわけではないのだ。そもそも、リンゴとおまんじゅうで釣られる警察官とは何なのだろう。
いや、リンゴもおまんじゅうも好きだけれど。好きだけれど、そういう問題ではない。
「……はい、カット!」
スタッフが笑顔で親指を立てた。
「いいですね! すごく分かりやすいです」
「ありがとうございます……」
もう、早く終わってほしい。しかし、啓発動画はここからが本番だった。
カメラの位置を調整し、照明を整える。今度も、私が視聴者に向かって注意を呼びかける場面だ。私はもう一度、台本にしっかり目を通す。
SNSで知り合った相手が、本当に信頼できる人物とは限らない。プロフィールも、写真も、年齢だって簡単に偽ることができる。連絡していた女の子が、本当は男だバーカとほくそ笑んでいるかもしれないし、親切そうに見える人でも最初から何かを企んでいるかもしれない。
だからこそ、個人情報を簡単に渡してはいけない。
住所、学校、電話番号、顔写真。それらが知られることで、思いもよらないトラブルにつながることがある。そして、何かあったときには、一人で抱え込まないこと。
それは、警察官として伝えたいことでもあった。
「それでは、お願いします」
カメラが回る。
私は少しだけ口調を柔らかくして、ゆっくりと話し始めた。
「SNSで知り合った人だからといって、本当に信頼できる人とは限りません」
「住所や学校、電話番号、顔写真などの個人情報を、簡単に送らないようにしてください」
「困ったことがあれば、一人で解決しようとせず、信頼できる大人や警察に相談してください」
そして、最後に。私は少しだけ首を傾けた。
「ネットだから大丈夫、じゃないですよ」
柔らかい声で、しかし、はっきりと。
「……はい、カット!」
スタッフの声が響いた。
「いいですね!最後の一言、見出しとして使わせてください!」
「えっ、あれですか?」
「はい! 短くて分かりやすいし、印象にも残ります。アドリブで良くあんな言葉出てきましたね」
「はあ……」
何だか、少し照れくさい。
先ほどまでの台詞に比べれば、こちらのほうがずっと私らしい。それを褒められた思うと、少しだけ気分がよくなった。
荒巻課長も、満足そうにうなずいている。
「うん。いい動画になりそうだね」
「そうだといいんですけど……」
私はそう答えながら、次の台本に目を落とした。そこには、白髪の老人のイラストが描かれていた。
「……次は、これですか?」
「そう! 最後は高齢者向けの特殊詐欺対策だよ」
「……ですよね」
私は、何となく嫌な予感がした。