DELTARUNE チャプター5 side B ネタバレあり。
一話のみです。
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たのしいか?


第1話

 

 終わらない夜が、明けた。

 明けてはいけない夜が、終わった。

 

✻ どんなに よるが ながくても

  あさには かならず 日が のぼる。

 

 今日はお祭りの日だけれど、起きることなんてできやしなかった。

 昨日は教会で死んだはずのガーソンに出会い、タイタンを倒した。

 闇そのものの恐怖と言っていいタイタンを倒したのに、今も恐怖で身体が動かなかった。

 タマシイが燦然と白く塗りつぶすように光り、深い深い闇の中で解放した。

 ……なにから、解放した?

 布団を握り締めた。闇の中の白ではなく、光の中の赤に染まった視界を思い出して。

 

✻

 

 なんで、そんなことをした?

 勇者だから?

 それとも、それが予言にあったから?

 もう、違っているのに……。

 鳥籠の中のそれを思い出した。見たくはなかった。

 

✻ 世界のぐるりを囲むよに

  大きな ろう屋を こしらえた。

  自由の身なのは

 

 いつだか聞いた、色々な声が頭の中を反響する。

 人生のコントロールを失って、自分を操る運命の糸は、自分ごと捨てるしかないほどこんがらがって、どうしようもなくて……。

 自由になりたかった。なんでもできるようになりたかった。

 

✻ 自由てぇのは ビッグなヤツしか

  手に入れらんねぇもんだぁ。

 

 ビッグ。びっぐ。BIG。

 ゴミ箱にいたあのダークナーは、本当にビッグになっていた。糸が身体に纏わりついていても、自由に見えた。

 予言は壊れた。

 スパムトンが、カギだった。

 

      は つかわれた

 

 でも、本当に自由だっただろうか?

 そう考えていると、少し時間が経って、日はどんどん上っていった。

 そして、もう一つ、声が反響した。

 

 アnタが ワタ94の[[指輪]]

 [[悪用]]すると

 気づけなか た…

 

 …イヤ 違いまレた

 始めから そのつもリで

 アnタに 売 たのでレた

 

 ジェビルも、自由と言いながらオリの中だったことを思い出した。

 ジェビルと、スパムトンと、ラム。

 何を言っているのか、わからないところも多かった。

 

✻ 自分でも 何言ってんだか

  さっぱりだぁ。

 

 特にスパムトンは不気味なやつだったと思う。

 強くなれ、とまるでゲームみたいな助言もして、そしてクイーンの館を乗っ取って、ビッグになることに執着していた。

 ビッグになって、自由になることに執着していた。

 だからって、なぜ、あんなものを持っていた?

 シャドウジェムに、いばらの指輪。

 わからない……。

 どうして、こうなったのかも。なにが、どうなっていくのかも。

 でも、何を意味するのかはわからなくても、悪くなっていくことだけはわかる。

 

 こおりの まほうで

 きんだんの みちへ

 

 バードリーを病院に運んで、ノエルから指輪をとっても、無駄だった。

 ……。

 なんだったんだろう。

 全部、無駄になって……。

 望むものが、すべて零れ落ちるような、目の前でバラバラになって壊されていくようだった。

 

 それで本当に 望むものが

 手に入ると思っている…?

 

 思ってなんか、いない。

 

 それよりも…ただ楽しんでいる自分がいる。…図星では?

 昨日だって 楽しんだはず。

 『あれは 自分じゃなかった』と 言い訳できるから。

 

 思ってなんか、いない。

 

 元のゲームなんて、そもそも望んでいなかった。

 それに、ラムの出したゲームは、本当の意味で元のゲームではなかった。

 シャドウマントはサイバーワールドの件も知っていた。ゲームの中から、タマシイの操作するキャラが出てきた。

 本当の元のゲームにはラルセイやスージィ、テナだって出てこない。

 だけど、このまま前進したらどうなるか、それを教えられたみたいで……。

 タマシイのことも知っていて、警戒していたラルセイも、冒険していく内に頼れる仲間だってわかった。

 乱暴者なスージィも、どんどんいい所がわかって、頼れる仲間になった。

 そのラルセイを壊して、そのスージィを塵にしてしまうのだろうか?

 ほんもののナイフで。

 テナは壊されていたけれど、あれは闇の聖域で予言の中にあった気がする。

 ……あぁ、テナと言えば、電話がどうとか言っていて、スパムトンと戦う時にも電話が出てきたけれど、この話は……意味なんて、関係なんてないんだろう。

 これを止めれるのは、止めようとしたのは……。

 

 ……スパムトン。

 

 でも ワタ94を

 せめないで

 

 [[壊れた家]]で

 [[泣]]きながら

 頼れるトモダチ

 スパムトンに

 

 [[殺して]]

 ほしくなっても

 

 あんなものを売ったスパムトンを責めた。

 そして、殺してほしいと、日が昇りきって、明るくなったベッドの上で思った。

 あの時に、終われていたら、タマシイが諦めてさえいれば。

 殺してくれなかったから。

 

✻ ボクたちには 想像もつかない

  もっと もっと 残酷な

  終わり方になるかも…?

 

 『終わり方』を想像した。

 タマシイを入れていないから、腐った肉の色をし始めた自分の身体を見ながら。

 

 

 

 

 ……ゆっくりとしか息をしないバードリーを思い出しすと……手のアザが傷んだ。

 

 そして、ノエルの──。

 ノエルの、あの、あの──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

✻ ありがとう…

 

 

 

 

 

 

 

 幼馴染で、昔はよくイタズラをした。スノーグレイブを唱えるまでは、まるで昔のイタズラをできたみたいで……。

 少し変だけどノエルの反応が面白かった。確かに、楽しかった。図星だ。

 だから、あの笑顔は、囁きは……。

 

✻ めまいがする。

✻ 頭が痛くなってきた…

 

 ……ママの声と、楽しげなお祭りの音が、遠くに聞こえた。

 時間が経って、お祭りはとっくの昔に始まっていた。

 いや、それどころか、日は暮れ始めていた。

 

✻ あした あなたに あうのを

  とても たのしみに している。

 

 息が荒くなる……。

 外から、スージィの声が聞こえた気がした。

 

✻ (…じぶんが なんであろうと

  スージィがいれば だいじょうぶな

  きがした)

 

 ……息が落ち着いた。

 スージィがいることを願って、外から見られないようにベッドの上から窓の外を見た。

 

✻ (うまく ことばに できないけれど

  ノエルが となりに いるのを

  みると…)

 

 ……どこからか、アイスクリームの匂いがした気がした。

 

 息を止めた。

 動かないほど限界だった。

 心も、身体も……。

 だから、タマシイを入れるしかなかった。

 でも……その前に、誰かに助けてほしかった。

 

✻ クリスは たすけを よんだ…

 

(ラルセイ……)

 

✻ しかし だれも こなかった。

 

 考えてみればもちろんだけど、ラルセイはダークナーで、何もできない存在だった。

 だから、助けを他に呼んだ。

 

✻ クリスは たすけを よんだ…

 

 (ママ……)

 (パパ……)

 (おにいちゃん……)

 

✻ しかし だれも こなかった。

 

 F1キーを押す気にはなれなくて、もう一度だけ、そう、もう一度だけ助けを呼んだ。

 

✻ クリスは たすけを よんだ…

 

 (スージィ……)

 

✻ しかし だれも こなかった。

 

 そこで、喉はとっくの昔に枯れているから声なんて出ていなくって、それから、自分はひとりぼっちだと気づいた。

 

 だけど……。

 

 力のない腕を動かして、ポケットから綺麗に包装されたホットチョコレートを取り出した。パパが作ってくれた、大好物。

 仕上げのシナモンも、しっかりかかっていた。

 

✻ ホットチョコレートを のんだ。

✻ おいしくて おいしくて…

  せつなくなった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 タマシイを、入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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