一話のみです。
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終わらない夜が、明けた。
明けてはいけない夜が、終わった。
✻ どんなに よるが ながくても
あさには かならず 日が のぼる。
今日はお祭りの日だけれど、起きることなんてできやしなかった。
昨日は教会で死んだはずのガーソンに出会い、タイタンを倒した。
闇そのものの恐怖と言っていいタイタンを倒したのに、今も恐怖で身体が動かなかった。
タマシイが燦然と白く塗りつぶすように光り、深い深い闇の中で解放した。
……なにから、解放した?
布団を握り締めた。闇の中の白ではなく、光の中の赤に染まった視界を思い出して。
✻
なんで、そんなことをした?
勇者だから?
それとも、それが予言にあったから?
もう、違っているのに……。
鳥籠の中のそれを思い出した。見たくはなかった。
✻ 世界のぐるりを囲むよに
大きな ろう屋を こしらえた。
自由の身なのは
いつだか聞いた、色々な声が頭の中を反響する。
人生のコントロールを失って、自分を操る運命の糸は、自分ごと捨てるしかないほどこんがらがって、どうしようもなくて……。
自由になりたかった。なんでもできるようになりたかった。
✻ 自由てぇのは ビッグなヤツしか
手に入れらんねぇもんだぁ。
ビッグ。びっぐ。BIG。
ゴミ箱にいたあのダークナーは、本当にビッグになっていた。糸が身体に纏わりついていても、自由に見えた。
予言は壊れた。
スパムトンが、カギだった。
は つかわれた
でも、本当に自由だっただろうか?
そう考えていると、少し時間が経って、日はどんどん上っていった。
そして、もう一つ、声が反響した。
アnタが ワタ94の[[指輪]]
[[悪用]]すると
気づけなか た…
…イヤ 違いまレた
始めから そのつもリで
アnタに 売 たのでレた
ジェビルも、自由と言いながらオリの中だったことを思い出した。
ジェビルと、スパムトンと、ラム。
何を言っているのか、わからないところも多かった。
✻ 自分でも 何言ってんだか
さっぱりだぁ。
特にスパムトンは不気味なやつだったと思う。
強くなれ、とまるでゲームみたいな助言もして、そしてクイーンの館を乗っ取って、ビッグになることに執着していた。
ビッグになって、自由になることに執着していた。
だからって、なぜ、あんなものを持っていた?
シャドウジェムに、いばらの指輪。
わからない……。
どうして、こうなったのかも。なにが、どうなっていくのかも。
でも、何を意味するのかはわからなくても、悪くなっていくことだけはわかる。
こおりの まほうで
きんだんの みちへ
バードリーを病院に運んで、ノエルから指輪をとっても、無駄だった。
……。
なんだったんだろう。
全部、無駄になって……。
望むものが、すべて零れ落ちるような、目の前でバラバラになって壊されていくようだった。
それで本当に 望むものが
手に入ると思っている…?
思ってなんか、いない。
それよりも…ただ楽しんでいる自分がいる。…図星では?
昨日だって 楽しんだはず。
『あれは 自分じゃなかった』と 言い訳できるから。
思ってなんか、いない。
元のゲームなんて、そもそも望んでいなかった。
それに、ラムの出したゲームは、本当の意味で元のゲームではなかった。
シャドウマントはサイバーワールドの件も知っていた。ゲームの中から、タマシイの操作するキャラが出てきた。
本当の元のゲームにはラルセイやスージィ、テナだって出てこない。
だけど、このまま前進したらどうなるか、それを教えられたみたいで……。
タマシイのことも知っていて、警戒していたラルセイも、冒険していく内に頼れる仲間だってわかった。
乱暴者なスージィも、どんどんいい所がわかって、頼れる仲間になった。
そのラルセイを壊して、そのスージィを塵にしてしまうのだろうか?
ほんもののナイフで。
テナは壊されていたけれど、あれは闇の聖域で予言の中にあった気がする。
……あぁ、テナと言えば、電話がどうとか言っていて、スパムトンと戦う時にも電話が出てきたけれど、この話は……意味なんて、関係なんてないんだろう。
これを止めれるのは、止めようとしたのは……。
……スパムトン。
でも ワタ94を
せめないで
[[壊れた家]]で
[[泣]]きながら
頼れるトモダチ
スパムトンに
[[殺して]]
ほしくなっても
あんなものを売ったスパムトンを責めた。
そして、殺してほしいと、日が昇りきって、明るくなったベッドの上で思った。
あの時に、終われていたら、タマシイが諦めてさえいれば。
殺してくれなかったから。
✻ ボクたちには 想像もつかない
もっと もっと 残酷な
終わり方になるかも…?
『終わり方』を想像した。
タマシイを入れていないから、腐った肉の色をし始めた自分の身体を見ながら。
……ゆっくりとしか息をしないバードリーを思い出しすと……手のアザが傷んだ。
そして、ノエルの──。
ノエルの、あの、あの──!
✻ ありがとう…
幼馴染で、昔はよくイタズラをした。スノーグレイブを唱えるまでは、まるで昔のイタズラをできたみたいで……。
少し変だけどノエルの反応が面白かった。確かに、楽しかった。図星だ。
だから、あの笑顔は、囁きは……。
✻ めまいがする。
✻ 頭が痛くなってきた…
……ママの声と、楽しげなお祭りの音が、遠くに聞こえた。
時間が経って、お祭りはとっくの昔に始まっていた。
いや、それどころか、日は暮れ始めていた。
✻ あした あなたに あうのを
とても たのしみに している。
息が荒くなる……。
外から、スージィの声が聞こえた気がした。
✻ (…じぶんが なんであろうと
スージィがいれば だいじょうぶな
きがした)
……息が落ち着いた。
スージィがいることを願って、外から見られないようにベッドの上から窓の外を見た。
✻ (うまく ことばに できないけれど
ノエルが となりに いるのを
みると…)
……どこからか、アイスクリームの匂いがした気がした。
息を止めた。
動かないほど限界だった。
心も、身体も……。
だから、タマシイを入れるしかなかった。
でも……その前に、誰かに助けてほしかった。
✻ クリスは たすけを よんだ…
(ラルセイ……)
✻ しかし だれも こなかった。
考えてみればもちろんだけど、ラルセイはダークナーで、何もできない存在だった。
だから、助けを他に呼んだ。
✻ クリスは たすけを よんだ…
(ママ……)
(パパ……)
(おにいちゃん……)
✻ しかし だれも こなかった。
F1キーを押す気にはなれなくて、もう一度だけ、そう、もう一度だけ助けを呼んだ。
✻ クリスは たすけを よんだ…
(スージィ……)
✻ しかし だれも こなかった。
そこで、喉はとっくの昔に枯れているから声なんて出ていなくって、それから、自分はひとりぼっちだと気づいた。
だけど……。
力のない腕を動かして、ポケットから綺麗に包装されたホットチョコレートを取り出した。パパが作ってくれた、大好物。
仕上げのシナモンも、しっかりかかっていた。
✻ ホットチョコレートを のんだ。
✻ おいしくて おいしくて…
せつなくなった…
……。
タマシイを、入れた。