使い続けると死ぬシステムを使って戦う女の子達の戦う理由を消しちゃったチート転生者の話 作:POTROT
協力したい、と言われたからその申し出を受け入れたが。
正直、判断を誤ったかも知れない。
何故か俺の部屋に着いてきたうえ居座りやがったスコグルさんに、そんなことを思わずにはいられない俺であった。
「……ええと」
「はい、何でしょう」
「何故、俺の部屋に居座る? 貴方の部屋はあるだろう?」
「ありますよ。しかし私がこの部屋に居るのは、私たちが仲間だからです」
「仲間だから部屋に入っていいわけでは無いと思うのだけどね」
「まぁ流石に冗談です」
流石に冗談だったか。
全く、異文化のジョークは分かりにくいな……で、済ませていいのだろうか?
まぁいい。
「それで……冗談にしては長い滞在だな?」
「貴方にまだ質問したいことと、相談したいことがありまして」
「まぁ、答えられる限りは答えるが」
「ではまず、私たちの翼と、この体はどうにかできないのですか?」
「それが貴方がたを元の少女の体に戻せという話なら、不可能だと答える」
V-システムの仕様書を流し読みした程度だから、概要だけしか知らんが。
内臓の半分近くを外宇宙的侵略者由来の人工臓器に移植。
肩甲骨含む背中の約半分を機械に置き換え、脊椎と人工心臓に接続。
造血を行う赤色骨髄に働きかけ、造り出される赤血球を変異。
その特殊な赤血球を通じて体中の細胞に新たな遺伝子情報を捩じ込み、背中に埋め込まれた機械で過度な変化を抑制しながらじわじわと体中を造り替えていくとかいう、現代医療に喧嘩を売った代物なのだそうだ。
V-システムの装着に必要な素質というのは、この時の移植ラッシュに拒絶反応を起こさない体質という事なのだろう。
で、この時に変異した細胞が細胞呼吸で生み出すエネルギーがV-システムの翼や武装を動かすための動力源となるわけだが。
あんまりにも無理な負担を全身に強いることになるので、使い続けると全身に不調が生じ始め、どこかのタイミングで肺の細胞が壊死するとか脳の血管が破裂するとかして死に至るらしい。
その前に何度か、猛烈な負荷に耐えるために全身の細胞が更に特異な形に変化を遂げたりするらしいが、それでも耐えられないものは耐えられないのだそうだ。
……まぁ、そこはいい。
問題なのは、既に彼女たちの肉体が機械と怪物の因子ありきで構成されているという点だ。
「変に元に戻そうとすると、多分、死ぬぞ」
「死にますか」
「死にはせずとも、体が過剰に変化してヘルズみたいな見た目になるかも知れん」
「……可能性ですか」
「可能性だ」
あくまで可能性の話であるので、そうはならないかも知れない。
元々の設定からしてだいぶファンタジー的というか、人知を超えた存在の因子が根底に存在する以上、決してこうなると決めつけられるものではないが。
多分、無理。
俺のチート能力が、直感に近い形で俺に囁いている。
「その体とは、一生付き合っていくしか無いだろうな。……まぁ、翼は着脱式な分、日常生活は送れるだろ。接続口は……上手い事埋められるカセットのようなものを用意すればいい」
「そうですか……残念ですけど、確かに、普段通りにしている分には、普通の体よりちょっと頑丈って程度なんですよね」
シュッシュ、と。
口でそう言いながら拳を放つスコグルさんだが、拳の先からは空気の弾ける音がする。
成程、見た目からはとても察することが出来ないが、彼女も相当に人間を辞めているらしい。
…………無論、俺ほどではないが。
「仕方がなさそうなので、私はこの体と付き合っていくことにしますが……」
「何か言いたげだな」
「他の子たちが、ちょっと……」
「ふむ」
他の子たち、というと。
彼女の他にV-システムを搭載された12人のことだろう。
彼女たちが、何かの問題を抱えているのだろうか。
……まぁ、抱えていそうだな。鬱アニメだし。
「それが相談したいことの内容なんですけど……多分、私以外のヴァルキューレ達は、今の状況に絶望していると思うんです」
「戦って死ぬ必要がなくなったのにか」
「戦って死ぬ必要がなくなったから、ですよ」
「…………詳しく聞かせてもらおうか」
それから彼女が語ったのは、非常に興味深い内容だった。
V-システムにより人間を辞め、日常に戻ることなど到底望めない。
その上で、目の前には逃れようのない死が迫っていることで自らの生に意義を見出していたが、俺のせいでその意義がなくなった。
だから今更になって生きる気力も湧かず、どうすればいいかも分からないのだろう、と。
まぁ、感情としては理解できる。
むしろそれくらいが普通なのだろう。
目の前の彼女のように、生きていららればそれでいいやと割り切れる人物はそこまで多くない。
自殺というのは、それが出来ないから引き起こされるものだ。
「体はどうにかできずとも、せめて、心はどうにかできませんか……?」
「ふーむ……」
正直な所感を言えば、そんなことを言われても困る、と言った具合だ。
俺はチート転生者であるが、ニコポもナデポも持ち合わせていないし、女誑しスキルも持ち合わせていない。催眠ならギリできそうだが、彼女が望んでいるのはそう言う事では無かろう。
彼女が望むのは、もっと真っ当で、普通な手法。
「……メンタルケア、ねぇ?」
「はい」
「俺がやる必要、あるか? 貴方か、そうでなくてもカウンセラーくらい居るだろう」
「勿論、私も力を尽くすつもりです。カウンセラーの方は、いらっしゃるには、いらっしゃられるのですが……その」
「翼のないヤツに私たちの気持ちは分からん、と」
「恐らく、そうなるかと……」
何なら実際にそうなった過去があり、以来ヴァルキューレはヴァルキューレ内で互いの精神安定を図り合っていたようだ。
「しかしその理屈だと、俺もダメなのでは?」
「かも知れません。けど、貴方はカウンセラーさんとは違って、強いので」
「強いから何だ、とは思うがなァ……」
「ほら、成功すれば私みたいに味方も増えますから……!」
「ンー……どうするか」
って言うか正直、ヴァルキューレの心を救っても特にメリットがあるようにも…………
…………いや待てよ、そういえば。
確か、ヴァルキューレって何人かが闇落ちしたりするんだったか。
ネタバレを食らった時とかにそんなことを聞いたし、映画のポスターにも誰かが明らかに闇落ちしたっぽい衣装を着ていたこともある。
…………流石に闇落ちされて暴れられては、面倒極まりない、か。
「わかった。出来る限り対応しよう。ただし、あくまで片手間だ。本筋の方を優先させてもらう」
「はい、それでお願いします!」
女心と秋の空は全く読めないというが、今回の女心は女心でも、抱えるものが幾つもある女心だ。
正直なところ、どうにか出来る気は全くしないが。
しかしせめて悪化しない程度には、頑張らせてもらおう。
評価とかが増えると長く続きます