カドゲ世界で「このカードが君の所に行きたがっている」屋さんになった 作:ユ◯ギさんみたいになりたい
――カードゲーム世界に転生して、二十年と少しが経った。
俺は
最初のうちは大興奮したね。
仮にもカードゲーマーだったし、カドゲアニメもそこそこ見ている方だ。
現代世界だから、ファンタジー世界のように文明レベルが低くて苦労することもない。
楽しいことだけの最高の世界、そう思っていた。
いや実際、最高の世界なんだ。
バトルは楽しい。
ディスティニー・ロードは遊戯王みたいなコストが存在しないカードゲームで、世界が創造された時からカードはあるからカードプールも豊富。
もともといろんなデッキを組むのが好きなので、こりゃあデッキを組みまくって遊ぶしかないな、と思っていたのだ。
――が、高い。
こういうカードが全ての世界だと、高価なカードっていうのはとことん高い。
自分の運命デッキ以外を組んで回すってなると、下手したらデッキの値段が国一つを買えてしまうくらいになる。
運命デッキっていうのは、自分と運命によって結びつけられたデッキ。
ディスティニー・ロードは運命のカードゲームだからね、運命力が働いて自然とカードと人が惹き寄せられるんだ。
そういうカードなら、畑から取れるレベルでカードが集まる。
しかし運命が結びつかないデッキはそうもいかない。
コレに対して、俺はカードを創造することで対処することにした。
カードの創造はカドゲアニメの基本ですからね。
運命力を高めた上でカードをドローすれば、望み通りのカードを生み出すことが可能。
どうやって運命力を高めるのかって? 気合。
ただまぁこれをやってしまうと、今度はあらゆるカードを創造してしまえば良くなってしまう。
要するに、俺は強くなりすぎたんだ。
結果、チャンピオンを目指したり世界を救うなんて、物語の主人公みたいな運命から俺は逸れてしまった。
ただ、そのことへの後悔はあんまりない。
そもそも考えてみれば、別にそういう世界の一大事に関わるなんて柄じゃないのだ。
俺はそういうのを横目に見ながら、楽しくカードで遊べればそれでいい。
世界を救うべく奮闘する人々にちょっとした助力をするのもいいだろう。
このカードが君の所に行きたがっている、は最高に楽しい行為ですからね。
というわけで、気がつけば俺はカドショの店主になっていた。
これがまぁ、カドゲ世界を遠巻きに楽しむ一番の方法なのだ。
やってくる客に助言を送ったり、ショップ大会を開いたり。
はっきり言って、儲かってはいない。
見込みのある客にはすぐにカードを送ってしまうし、創造したカードを販売したりしていないからだ。
店員のアリスには常々「このままだと店が潰れる」と文句を言われるし、そもそも繁盛しているともいい難い。
ただまあ、生きて行くための稼ぎは他に持ってるし、道楽と言われれば道楽である。
でも別にいいじゃないか、楽しい世界で楽しく生きて行く。
それより素晴らしい運命が、俺には存在してないんだから。
――それはそれとして、まぁ。
ライダーには変人がめちゃくちゃ多いけどな。
■
「つまり、ディスティニー・ロードはどんな方法でもいいから、相手を負かせれば勝ちなんだ」
「な、なるほど……た、楽しそうですね!」
その日、俺は店にやってきたソラちゃんに色々とコーチをしていた。
ソラちゃんは先日俺の店にやってきたのが、初めてのライダーデビューの日。
その後色々あって初バトルをすることになり、初勝利を飾ったそうな。
が、それはそれとして、ソラちゃんが初心者であることには変わりない。
家には父親がおらず、友人もいないソラちゃんがコーチをしてくれる俺がいる店に足繁く通うのは、至極自然な流れと言えた。
そんなある日のこと――
「お邪魔するデース!」
「ひゃうっ!?」
突然、来客があった。
ちりんちりんと、鈴の音。
ソラちゃんがびっくりして肩を震わせている。
俺はと言えばその人物が初見の客であるため、これはカード渡し案件だろう、とカウンターへ向かっていた。
「いらっしゃい。今日はどんなご要件かな?」
「はるばるジャポネーズまでやってきたら、こんなところにカードショップがあったデース! ちょっと寄ってみたデース!」
――なるほど。
現れたのは銀髪で長髪の女性だ。
年齢は俺と同じくらい、二十代半ばかな?
服装は一言で言うと……アメリカンビキニ。
西部劇から出てきたガンマン風の。
ええ……なんか怖い……この世界こういう人が多いんだよなぁ。
何にしても、如何にもって感じの片言キャラ。
ちょっとトゥーンは無敵デースとか言ってみてほしい。
「うちは、小さいけど商品のラインナップには自身があってね。――君のほしいカードを聞かせてくれないかな」
「ワオ! エクセレント! そうデースねぇ――」
Hmm……みたいな感じで腕組みをするアメリカンレディ(仮称)。
果たして何を所望するのだろう。
はっきり言って、まったく読めない。
もしかして、ガンマンとして射出するためのカードの弾だろうか。
だ、ダメだぞ? うちのカードは大切なカードなんだ。
そういうことのためには……ダメだぞ!
と、思って彼女の言葉を待っていると――
「――――<
――アメリカンレディは、それまでのアメリカンなテンションを引っ込めてシリアスにそういった。
その言葉に、ソラちゃんがはてなマークを浮かべながらスマホを操作している。
うーん、現代人。
そして――
「<覇天の翼竜>!? せ、世界一高価なカードなんですか!?」
「そのとおりデース。”奴”はかつて、かのキングライダーと世界を二分したという最強ライダーが愛したとされる伝説のカード。その価格は、国を丸ごと一つ買えてしまうといいマース」
そして世界に数枚しかないカードで、中には行方が解っていないものも多い。
見つかれば、それだけで世界を動かす騒ぎになるだろう。
「私はそれを、生まれた時からずっと追いかけ続けてきたデース」
「何故?」
「――衝動が、私を突き動かすのデス。運命を感じてしまったデス。この気持ちを愛と呼ばないなら……なんと呼ぶのでショウ!」
「なるほどね」
――変な人だ。
いや、変な人の中では普通の部類に入るかも知れないけど、見た目からして変な人だ。
とはいえ、彼女が運命というのなら――それが彼女をここに導いたのだろう。
であれば俺はカード渡し屋さんとして、彼女を”試さなくては”ならない。
というわけで、カウンターの裏側に置いてある”それ”を取り出した。
「――
「――へ?」
「――ワッツ?」
はい。
しっかりきっちり、PSA的なケースにはいった<バハムート>を取り出す。
カウンターの裏に置いておいた奴だ。
これを見ながらオリパ作ると、幸せな気持ちになれるんですよ……
ちなみに創造した奴じゃないぞ。
俺が想像すると必ずイラスト違いになるので、既存のカードの価値が崩れることはない。
創造したカードの価値……? 知らない問題ですね。
「……あ、あのあのあの!?」
「――――――――」
「――君がこれを本当に必要としているなら、俺はこれを君に渡してもいいと考えている」
「――――――――――――」
このカードは、俺がある友人から送られたカードだ。
大事なカードで、他人に渡すなんて基本は以ての外。
だが、運命というのは引っ掻き回したほうが面白くなる事が多い。
なら、引っ掻き回そうぜ?
その友人も、高らかに笑いながら許可してくれることだろう。
それはそれとして――
「――本当に君がこのカードを手にする運命を宿しているなら、だが」
――俺は鋭い視線で、アメリカンレディを見つめる。
このカードに宿る運命は生半可なものではない。
持たざるべき人間が手にすれば、すなわち破滅を招く。
果たして、その覚悟が彼女にはあるだろうか。
そうして沈黙した――というかなんか気絶してない? いやまぁいいけど――アメリカンレディの言葉をまつこと、しばし。
アメリカンレディは――
「
ガシッと俺の手を掴んでそう言った。
そ、そう来たかぁ。
「遠慮しておきます……」
「ふす! ふすふすふす! ほ、本物の<バハムート>デス! レレレレレ、レアカードデース! ほ、ほぉっぁああああ! ほああああああ! レアカードデーーーース!」
「あ、あう!?」
「ぺ、ペロペロしたいデス、ふんすふんすしたいデース! んああああああ辛抱たまらんでーーーす!」
ああー。
そ、そういうタイプかぁ。
「人からレアカードを奪うのはダークライダーデース。私は光のライダーデース! でも<バハムート>を買うお金なんてないデース」
「うん」
「――――家族になれば、実質私のモノでもあるデース」
「そっかぁ」
「ひと目見た時から愛してたデス! 結婚してプリーズ!」
「いやです」
「Nooooooooooooooooo!!」
へ、変な人だぁ。
うちにはこういう人しか来ないのどうなってるんだよ。
そもそも、俺は君の名前すら知らないんだからな!?
変な人が多い。