カドゲ世界で「このカードが君の所に行きたがっている」屋さんになった   作:ユ◯ギさんみたいになりたい

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3 この世界も色々

 ──とりあえず、興奮するアメリカンビキニことルーシーさんを引っ剥がす。

 この人はルーシー・ハイレアリティという名前らしい。

 すげぇ名字だな。

 とはいえ、カドゲ世界ならよくあることだ。

 ソラちゃんだってそうだし、俺が相手の事情を察して渡し屋さんをする時の情報集めに、名前は非常に重要な要素である。

 知っていれば、この展開は予想できただろう。

 ただ今回は、海外からふらっと店に立ち寄ったことで、何かしら明確にほしいカードがあるだろうという判断をした。

 実際それはそのとおりで、名前に関してはまぁちょっとびっくりしたけど、全体からすれば些事ではある。

 さて、それはそれとして──

 

「──私の周りには、生まれた時からレアカードがあったデース。私の両親も、私と同じ用にレアカードハンターだったのデス」

 

 俺が事情を聞かせてくれ、と言うと素直にルーシーさんはそれを話してくれた。

 直接聞き出すのも、事情通っぽく振る舞うためには時に重要である。

 それで、レアカードハンター。

 この世界では時折聞く存在だ。

 様々な理由から、高レアリティなカードを求めて世界を流離う存在。

 アメリカンビキニなガンマンスタイルなのは、ハンターだからか。

 

「レアカードに囲まれてると、幸福な気持ちになれたデス。なんだかお腹がむずむずして、ほわほわーってするデース」

「ええと……」

「あ、あの……店主さん……」

「しっ、センシティブな話だから、そっとしておこう、ね」

 

 ルーシーさんの方がそっち方面の知識がないんかーい。

 顔を真っ赤にして両手で覆いつつ、指の隙間からチラチラルーシーさんを見ているソラちゃんが、あわあわしている。

 カドゲ世界だからピュアな人は多いけど、ソラちゃんが普通に知識あるのは俺びっくりだよ。

 

「──でも、そのレアカードはほとんどが間違っているレアカードだったデス」

「というと?」

「盗(・)品(・)デシタ」

「ああ……」

 

 先ほどルーシーさんは俺に求婚してきたけど、それは正規の方法で<覇天の翼竜(バハムート・ドラゲリオン)>を入手する方法がそれしかないからだ。

 本人は、人からカードを奪いたくないと言っていた。

 光のライダーと本人も発言してたけど、理由はここにあるんだな。

 

「父と母は、ダークライダーデース。私には優しく、時には厳しい良い両親でしたが、多くの人からカードを奪ってもいたのデス。デスから、今は捕まってプリズンにいマース」

「そうして、両親の悪行に気付いてしまうと、彼らのレアカードが色褪せて見えてしまった」

「……そのとおりデス。でも、正しい形で集めたレアカードの輝きは、変わってませんデシタ」

 

 いやはや何とも、言動と見た目と性癖は変な人だけど、真面目な人だ。

 だけど、だからこそ思う。

 この人は本音をまだ隠している。

 

 

「──だけど、君だって本当は父や母のように好き勝手カードを手に入れたいんじゃないかい? ルーシーさん」

 

 

 故に、俺は踏み込むことにした。

 

 

 ■

 

 

 ルーシー・ハイレアリティは真面目な人間だ。

 そもそも今の格好も、映画の中でレアカードハンターをしていた女性のそれを真似たもの。

 郷に入っては郷に従え、この国の言葉は実に素晴らしい。

 そんな彼女はジャポーンの地方都市で、運命的な出会いを果たした。

 

「カードが君の所に行きたがっている」

 

 なにそれ────

 変なネーミングセンスの店だ。

 カード所、というのが店としての名前なのかもしれない。

 看板の文字がそこだけ大きかったし。

 それはそれとして、そこにいたのは一人のどこか胡散臭さもある店主。

 正直、あまり期待はしていなかった。

 狭苦しい場所にある、小さなカードショップだったからだ。

 品揃えに自信はあると言っていたが、流石に出てくるのはそこそこ程度のレアカードだろう……と。

 

 ──が、出てきたのは世界最高のレアカードだった。

 

 一瞬脳が停止して、それから発情した。

 何とか向こうが落ち着かせてくれたが、ルーシーは未だにどこか気分がふわふわしている。

 今も、眼の前の店主を見ると顔が少し熱くなってしまう。

 死ぬほど現金な女であった。

 だが──

 

「──だけど、君だって本当は父や母のように好き勝手カードを手に入れたいんじゃないかい? ルーシーさん」

 

 そう言われて、言葉に詰まった。

 ルーシーは真面目な人間だ。

 だから、間違ったことをする父と母が許せなかった。

 それで手にしたレアカードなんて、間違ったレアカードだ。

 しかし同時に、レアカードハンターとしての本能は、間違いなく両親から受け継がれたものである。

 それは、絶対に否定しようがない。

 

「俺はね、人に迷惑をかけなければカードを奪うことは、決(・)し(・)て(・)間(・)違(・)い(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)と思うんだ」

「ワッツ!? 意味がわからないデース! 矛盾してマス!」

「まぁ、そりゃそうだ。要するに、ロードバトルで勝って譲り受ければいいんだよ。無論、強引にバトルを持ちかけてはいけないけど」

 

 レアカードハンターが、レアカードを手に入れる方法は幾つかあるだろう。

 山奥の神殿など、それっぽい場所から発掘する。

 あるいは、他人から奪う。

 購入するという選択肢もあるが、それを取れるハンターは稀だ。

 その中で、ルーシーは発掘などでレアカードを探す探検家タイプのハンターだ。

 両親は、奪うタイプのハンターだった。

 

「で、デスが……普通に考えて、カードを譲るためにバトルを受けてくれる相手はいないデス」

「そう、そのとおり。だったら──代価を提示すればいい」

「……わ、私のレアカードを賭けるデス!? そ、それでカードを失ったら、私は……耐えられないデス!」

 

 ルーシーは恐怖する。

 合法的に奪う方法(アンティ)を思いつかなかったのは、本人が真面目だからというのもあるが、レアカードを失うことを無意識に避けていたからだ。

 そこに店主が、一言声をかけた。

 

「けど、考えて見なよ。──もしそれで勝ってカードを奪われず、自分のカードも守れた瞬間を」

「────ッ!?」

 

 ──想像もしていなかったことだ。

 ルーシーは、思わず息を呑み、そして想像する。

 すると、むずむずとした感覚が脳と腹の奥から湧いてきた。

 焼け付くようなそれは、いうなれば──

 

「Oh.Oh.Oh.Yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeees!!」

 

 

 ──性癖が破壊される感触。

 

 

「て、店主さん……」

「ち、ちが……俺はただ、この人の本当の衝動を理解してほしかっただけで……」

「さ、最低……」

「はい……好奇心に負けました……」

 

 脇で店主が怒られているが、ともかく。

 理解した。

 してしまった。

 両親は、この感覚が欲しくてレアカードハンターになったのだ。

 考えてみれば、二人がプロレスごっこをしている時も、よくレアカードに取られるとかどうとか言っていた。

 強引な方法でカードを奪うときもあったからか、今は二人とも捕まっているけれど。

 カードを奪(・)い(・)合(・)う(・)事に関する情熱は本物だったんじゃないか?

 

「──君なら、両親みたいな間違いは犯さないさ。そして、そんな君の所へ……」

 

 店主は、カウンターの裏から一枚のカードを持ってくる。

 それはルーシーにとって、あまりにも光り輝いている一枚に見えた。

 

「このカードは、行きたがっている」

 

 そのカードは、間違いなくレアカードだ。

 世界に一枚しかない、下手すれば〈バハムート〉よりもずっと価値のあるカード。

 しかし同時に、ルーシーのためだけのカードでもあった。

 

「さて、君はそのカードを使いこなせるかな」

「……や、やってみせるデス! デスから──」

「ですから?」

「使いこなせたらマリッジプリーズ!」

「遠慮しておきます」

 

 ああ、すっかり自分はこの店主にやられてしまった。

 きっとこれ以上の運命の出会いは、きっとルーシーには訪れないだろう。

 

 だ(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)、ふと思う。

 この店主は恐ろしい人物だ。

 こちらの事情を見抜く洞察力もそう、まるで今この瞬間カードを生み出したかのように的確にカードを用意するのもそう。

 だけれどもそれ以上に、彼はこちらの本質を見抜いて試(・)し(・)て(・)く(・)る(・)のだ。

 もしもルーシーが〈バハムート〉の魔力に負けてしまっていたら、果たしてどうなるだろう。

 

 もしも彼が渡すカードに選(・)ば(・)れ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)者がいたら。

 果たしてどうなってしまうのか、ルーシーは考えずには居られなかった。

 




やばい人だ……

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