カドゲ世界で「このカードが君の所に行きたがっている」屋さんになった 作:ユ◯ギさんみたいになりたい
──とりあえず、興奮するアメリカンビキニことルーシーさんを引っ剥がす。
この人はルーシー・ハイレアリティという名前らしい。
すげぇ名字だな。
とはいえ、カドゲ世界ならよくあることだ。
ソラちゃんだってそうだし、俺が相手の事情を察して渡し屋さんをする時の情報集めに、名前は非常に重要な要素である。
知っていれば、この展開は予想できただろう。
ただ今回は、海外からふらっと店に立ち寄ったことで、何かしら明確にほしいカードがあるだろうという判断をした。
実際それはそのとおりで、名前に関してはまぁちょっとびっくりしたけど、全体からすれば些事ではある。
さて、それはそれとして──
「──私の周りには、生まれた時からレアカードがあったデース。私の両親も、私と同じ用にレアカードハンターだったのデス」
俺が事情を聞かせてくれ、と言うと素直にルーシーさんはそれを話してくれた。
直接聞き出すのも、事情通っぽく振る舞うためには時に重要である。
それで、レアカードハンター。
この世界では時折聞く存在だ。
様々な理由から、高レアリティなカードを求めて世界を流離う存在。
アメリカンビキニなガンマンスタイルなのは、ハンターだからか。
「レアカードに囲まれてると、幸福な気持ちになれたデス。なんだかお腹がむずむずして、ほわほわーってするデース」
「ええと……」
「あ、あの……店主さん……」
「しっ、センシティブな話だから、そっとしておこう、ね」
ルーシーさんの方がそっち方面の知識がないんかーい。
顔を真っ赤にして両手で覆いつつ、指の隙間からチラチラルーシーさんを見ているソラちゃんが、あわあわしている。
カドゲ世界だからピュアな人は多いけど、ソラちゃんが普通に知識あるのは俺びっくりだよ。
「──でも、そのレアカードはほとんどが間違っているレアカードだったデス」
「というと?」
「
「ああ……」
先ほどルーシーさんは俺に求婚してきたけど、それは正規の方法で<
本人は、人からカードを奪いたくないと言っていた。
光のライダーと本人も発言してたけど、理由はここにあるんだな。
「父と母は、ダークライダーデース。私には優しく、時には厳しい良い両親でしたが、多くの人からカードを奪ってもいたのデス。デスから、今は捕まってプリズンにいマース」
「そうして、両親の悪行に気付いてしまうと、彼らのレアカードが色褪せて見えてしまった」
「……そのとおりデス。でも、正しい形で集めたレアカードの輝きは、変わってませんデシタ」
いやはや何とも、言動と見た目と性癖は変な人だけど、真面目な人だ。
だけど、だからこそ思う。
この人は本音をまだ隠している。
「──だけど、君だって本当は父や母のように好き勝手カードを手に入れたいんじゃないかい? ルーシーさん」
故に、俺は踏み込むことにした。
■
ルーシー・ハイレアリティは真面目な人間だ。
そもそも今の格好も、映画の中でレアカードハンターをしていた女性のそれを真似たもの。
郷に入っては郷に従え、この国の言葉は実に素晴らしい。
そんな彼女はジャポーンの地方都市で、運命的な出会いを果たした。
「カードが君の所に行きたがっている」
なにそれ────
変なネーミングセンスの店だ。
カード所、というのが店としての名前なのかもしれない。
看板の文字がそこだけ大きかったし。
それはそれとして、そこにいたのは一人のどこか胡散臭さもある店主。
正直、あまり期待はしていなかった。
狭苦しい場所にある、小さなカードショップだったからだ。
品揃えに自信はあると言っていたが、流石に出てくるのはそこそこ程度のレアカードだろう……と。
──が、出てきたのは世界最高のレアカードだった。
一瞬脳が停止して、それから発情した。
何とか向こうが落ち着かせてくれたが、ルーシーは未だにどこか気分がふわふわしている。
今も、眼の前の店主を見ると顔が少し熱くなってしまう。
死ぬほど現金な女であった。
だが──
「──だけど、君だって本当は父や母のように好き勝手カードを手に入れたいんじゃないかい? ルーシーさん」
そう言われて、言葉に詰まった。
ルーシーは真面目な人間だ。
だから、間違ったことをする父と母が許せなかった。
それで手にしたレアカードなんて、間違ったレアカードだ。
しかし同時に、レアカードハンターとしての本能は、間違いなく両親から受け継がれたものである。
それは、絶対に否定しようがない。
「俺はね、人に迷惑をかけなければカードを奪うことは、
「ワッツ!? 意味がわからないデース! 矛盾してマス!」
「まぁ、そりゃそうだ。要するに、ロードバトルで勝って譲り受ければいいんだよ。無論、強引にバトルを持ちかけてはいけないけど」
レアカードハンターが、レアカードを手に入れる方法は幾つかあるだろう。
山奥の神殿など、それっぽい場所から発掘する。
あるいは、他人から奪う。
購入するという選択肢もあるが、それを取れるハンターは稀だ。
その中で、ルーシーは発掘などでレアカードを探す探検家タイプのハンターだ。
両親は、奪うタイプのハンターだった。
「で、デスが……普通に考えて、カードを譲るためにバトルを受けてくれる相手はいないデス」
「そう、そのとおり。だったら──代価を提示すればいい」
「……わ、私のレアカードを賭けるデス!? そ、それでカードを失ったら、私は……耐えられないデス!」
ルーシーは恐怖する。
そこに店主が、一言声をかけた。
「けど、考えて見なよ。──もしそれで勝ってカードを奪われず、自分のカードも守れた瞬間を」
「────ッ!?」
──想像もしていなかったことだ。
ルーシーは、思わず息を呑み、そして想像する。
すると、むずむずとした感覚が脳と腹の奥から湧いてきた。
焼け付くようなそれは、いうなれば──
「Oh.Oh.Oh.Yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeees!!」
──性癖が破壊される感触。
「て、店主さん……」
「ち、ちが……俺はただ、この人の本当の衝動を理解してほしかっただけで……」
「さ、最低……」
「はい……好奇心に負けました……」
脇で店主が怒られているが、ともかく。
理解した。
してしまった。
両親は、この感覚が欲しくてレアカードハンターになったのだ。
考えてみれば、二人がプロレスごっこをしている時も、よくレアカードに取られるとかどうとか言っていた。
強引な方法でカードを奪うときもあったからか、今は二人とも捕まっているけれど。
カードを
「──君なら、両親みたいな間違いは犯さないさ。そして、そんな君の所へ……」
店主は、カウンターの裏から一枚のカードを持ってくる。
それはルーシーにとって、あまりにも光り輝いている一枚に見えた。
「このカードは、行きたがっている」
そのカードは、間違いなくレアカードだ。
世界に一枚しかない、下手すれば〈バハムート〉よりもずっと価値のあるカード。
しかし同時に、ルーシーのためだけのカードでもあった。
「さて、君はそのカードを使いこなせるかな」
「……や、やってみせるデス! デスから──」
「ですから?」
「使いこなせたらマリッジプリーズ!」
「遠慮しておきます」
ああ、すっかり自分はこの店主にやられてしまった。
きっとこれ以上の運命の出会いは、きっとルーシーには訪れないだろう。
この店主は恐ろしい人物だ。
こちらの事情を見抜く洞察力もそう、まるで今この瞬間カードを生み出したかのように的確にカードを用意するのもそう。
だけれどもそれ以上に、彼はこちらの本質を見抜いて
もしもルーシーが〈バハムート〉の魔力に負けてしまっていたら、果たしてどうなるだろう。
もしも彼が渡すカードに
果たしてどうなってしまうのか、ルーシーは考えずには居られなかった。
やばい人だ……
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