カドゲ世界で「このカードが君の所に行きたがっている」屋さんになった 作:ユ◯ギさんみたいになりたい
俺は基本的に何でもカード渡し屋さんだが、それを使いこなせるかは本人の素質次第だ。
ソラちゃんは問題ないだろう、ほぼ確実に闇堕ちするが主人公属性なのですぐに復帰できる。
ルーシーさんは微妙なところだった。
<覇天の翼竜>を本気で欲しがっていたら、きっと彼女は呑まれていただろう。
その後に渡したカードは、彼女のデッキにとって有用なカードなので問題ない。
――そう、俺の渡したカードに呑まれてしまう人が、どうしてもこの世には存在するのだ。
とはいえ俺は、それを間違ったことだとは思わない。
人は失敗から学び成長する生き物だ。
俺のカードを使って、取り返しのつかない失敗をする人間はいない。
ただ、どうも俺のカードで失敗した時に、変な現象が起きるそうなのだ。
理由は……正直俺もよくわからない。
■
――ちりんちりん。
「いらっしゃ――」
「ここが例のカードショップ? フン、ウすぎたない場所ね」
おいおい、開幕からえらいハリキリガールがやってきたじゃねぇか。
現れたのは、如何にもいじめっ子という雰囲気の青白い髪とワンピースのやんちゃ少女。
開口一番罵倒から入るその姿は、まさに貫禄のやられ役。
多分、これまでに何度も主人公属性の子にやられてぐぬってきたに違いない。
そういう星のもとに生まれていそうな少女だった。
「ねぇ! アンタがここの店主でしょ!?」
「ああ、そうだよ。俺は――」
「名前なんて聞いてないのよ! アンタが鳥乃にロード教えたんでしょ!? 余計なことしてんじゃないわよ!」
ふむ、どうやらこの少女はソラちゃんこと鳥乃ソラの知り合いだったらしい。
もしかして、彼女の初バトルの相手だろうか。
ありそうだなぁ、というか俺のメタ読み的にはほぼ確定である。
「まぁまぁ、落ち着いて。ここはカードショップ。カードを買ってくお客さんには誠実に対応するし、そうじゃないならここを離れたほうがいい」
「ふん。聞いたわよ、アンタそこら辺の人間にカードをばらまいてるらしいじゃない」
誰から聞いたのかって、まぁこの街だと結構噂になってるし、誰からでも同じか。
噂っていうか、都市伝説とか怪異扱いされてる気がするのは、気にしてはいけない。
「――アタシにも、カードを寄越しなさい」
「ふぅん」
俺はそう言って、視線を後ろに向けた。
彼女のためのカードは、ある。
今すぐにでも彼女の元へ飛びつこうとしている、一枚の暴れん坊カードだ。
「あまりおすすめはしないけどね」
「はぁ?」
「カードは持ち主を選ぶ。だけどそれは、決して好意だけでカードがライダーを選んでいるわけじゃない。時には悪意が持ち主を選ぶこともある」
「訳解んないこと言ってんじゃないわよ! こっちがわかるよーに言いなさいよ!」
言葉通りの意味なんだけど……もうちょっと平易な言葉を使うべきだったかな。
ソラちゃんとはこれで普通に会話できてたので、ついつい同じ感じで話してしまっていた。
とはいえ、あんまり解りやすく言っても今度はバカにしてるの? ってキレて来そうだからこのままでいいや。
こういう子には、言葉よりも実際に行動を示したほうがいいだろう。
「――じゃあ、一応これを君に。えー、こほん」
「ふん、最初からそうしなさいっての!」
「このカードが君の所に行きたがっている」
そう言って取り出したカードは、一言で言うと黒いオーラに包まれていた。
オーラは優秀なライダーでないと見れないため、多分この少女には見えていないだろう。
それでも、なんとなく不穏な雰囲気を感じ取ったのか、少女はごくりとつばを飲んだ。
そしてカード名を読み上げる。
「――<ナインボール・レヴナント>?」
それは、黒甲冑の騎士だった。
フルプレートの鎧に身を包み、厳かな雰囲気でイラストの中に佇んでいる。
思わず吸い込まれてしまいそうな、闇深いカード。
”
そんなカードに対して、少女は――
「――――か、かっこいい」
顔を赤らめて、恋する乙女のようにそういった。
ええ……?
「なんて素敵なカードなの? 何よ、脅かさないでちょうだい! こんなの、アタシにふさわしいカードに決まってるわ!」
「そ、そうかい」
「黒い甲冑の王子様、ああ、なんて凛々しい佇まいなの? きっとその兜の下にはすっごいイケメンな素顔が隠れているに違いないわ!」
な、なるほど……?
まぁなんというか、年相応な女の子らしく、イケメンに目がないようだ。
とはいえ、そういうことならこのカードが彼女を選んだのも納得が行く。
「ただし、このカードを手にするなら一つだけ守らないと行けない約束がある」
「はぁ? なにそれ」
「――この騎士の素顔を覗いてはならない」
「何よそれ……そもそもカードの素顔なんて覗けるわけないでしょ?」
どうやらこの子は、モンスターの精霊と接したことはないらしい。
まぁ、大抵の人はそうなんだけど。
「どれだけ騎士が素顔を見せようとしてきても、それに答えてはいけないんだ」
「何よそれ、もったいない……でも断るだけでしょ? そんなの簡単よ!」
そうして、少女は俺からカードを手にする。
「そうだ、最後に聞いておくけど、君の名前は?」
「名前? アタシはルチア。
ふん、と自信満々に笑って、ルチアちゃんは店を出ていくのだった。
■
――さて、ここからは後にソラちゃんから聞いた話になる。
あの後、ルチアちゃんは手に入れた<レヴナント>に散々入れ込んだらしい。
最初のうちは、取り巻きの子たちもかっこいい騎士の<レヴナント>を羨ましそうにしていたそうだ。
ついでにルチアちゃんはロードバトルでもイケイケになり、数多の相手に連戦連勝。
まさに我が世の春を謳歌していたそうだ。
しかし、そんな状況も長くは続かない。
彼女はあまりにも<レヴナント>を優先するあまり、周囲を蔑ろにしてしまったのだ。
四六時中<レヴナント>を愛でるあまり、食事や入浴などを疎かにし、友人関係もおざなりになってしまった。
ルチアちゃんは、常に取り巻きを連れて好き勝手わがまま放題しているタイプの子である。
それが、だんだんと取り巻きに見捨てられて行ったのだという。
本当であればルチアちゃんもそれに気付いて、取り巻きを引き締め直していたのだろうが、今のルチアちゃんは完全に恋の病を患ってしまっている。
だんだんと、孤立していってしまったそうな。
まぁなんというか、よくある話だ。
色々と問題のある人物が、不思議なアイテム――この世界の場合はカード――を手に入れる。
そしてそれに入れ込み、最初のうちは成功するけどだんだんと破滅していく。
こういう教訓話は古今東西、世界を問わず世に知られている。
俺もカードを渡していると、今回みたいなことは割とよくあるのだ。
良くも悪くも、俺のカードは手にした人間の運命を変えてしまう。
それによって成功するか、失敗するかは人それぞれ。
失敗した場合の末路は――なんかこう、どーん! な感じに落ち着く。
しかし、だ。
いくらなんでも、ただ失敗してそのままっていうのは露悪がすぎる。
そういうのをみたいって人もいるだろうが、ここはホビーなアニメの世界。
教訓は、反省によって締めくくられるのが定番だ。
最終的に、何故か橋の下で<レヴナント>のカードと貧乏ぐらしをしていたルチアちゃんを、ソラちゃんが発見。
ソラちゃんからバトルを挑んだらしい。
ルチアちゃんは<レヴナント>で無双していた時期も、ソラちゃんとのバトルは避けていたのだ。
因縁は収束するものである。
そんなソラちゃんとのバトルの最中、ルチアちゃんに呼びかけるものがいた。
<レヴナント>だ。
自分の兜を脱がせてほしい、とルチアちゃんに頼む。
曰く、愛しているなら、自分の本当の姿も愛してほしいとのこと。
俺が「脱がしてはいけない」と忠告したにも関わらず、ルチアちゃんはこれを承諾。
兜を取ってしまう。
するとそこには、アンデッドな亡者の顔が――
ルチアちゃんはショックのあまり、暴走。
そんなルチアちゃんに裏切られた<レヴナント>も暴走してソラちゃんを追い詰めるが、ソラちゃんがコレを撃破。
最終的に、ルチアちゃんは何かいい感じに落ち着いたらしい。
といっても、離れていった取り巻きとか、突き放してしまった<レヴナント>のこととか色々問題は山積みであるけれど。
きっとここから、彼女は再起していくことだろう。
ところで、ルチアちゃんがショックを受けて暴走した時、ソラちゃんはこんな声を聞いたという。
『罰★ゲーム!!』ド★ン!
はい。
そう、そうなのだ。
俺の渡したカードで失敗すると、この言葉がどこからともなく聞こえてくるらしい。
別に俺が言ってるわけじゃないぞ?
かといって、多分某決闘王でもないと思う。
ないと言ってくれ、ないよな?
俺自身が聞いたことないせいで、いまいち実体が掴めない。
というか本当にあの人なら俺がききてーよ!!!!!!
でも万が一自分の声だったら恥ずかしくて耐えられないよ!!!!!!
なんて、思ったりするのだった。
あ、ちなみに<レヴナント>の中の人は女の人らしいです。
最初は意地悪な少年だったんですがレヴナントを女アンデッドにしたかったので、少女にしました。
主に今後のために。
女の子が二人、来るぞ遊馬!