文化祭で、俺は“
セリフ無し。茶色い布で身をつつみ、両手に“枝”を持ってたつだけ。こんな俺でも一度は主人公の王子役に立候補した訳だが、今日の役目は玉座よりヘビーだ…
本番、王子役の高瀬が舞台の真ん中で止まった。
眠姫を前に、酸欠のブルーギルみてぇに口を動かしている。客席より舞台上の方が静かになる。保護者のざわめきやからかいの声、客席の脇でため息をつくセンコーは、ライトが当たっていないからって堂々と溜息をつき、早くしろと言わんばかりに腕を回している。地引き網じゃないんだぜ。
舞台袖に待機している小人役のクラスメイトの視線も高瀬にとっては痛いだろうよ。そいつらは悪意に満ちた視線なんてしてやいないんだ。でもあがり症で繊細な高瀬は責められてると感じて、トンだセリフが戻ってこないのだろう。普段グループディスカッションで反論する
そんな男だからこそ、奴が主役をやりたいなんて自我を出した時にゃ、俺は主役の座から身を引いたんだ。高瀬がハンサムだから気後れして譲ったんじゃねえ。俺が高々学校の催しと冷笑してた中、まだ役が決まってもいないのにてめえが家の庭で一丁前に練習してたのを俺は頭からつま先まで凝視してたからな。
“ひとはだ”いっちょ“脱ぎ”ますかッッ!!!
俺は直立不動の姿勢で、高瀬の声真似をしながらセリフを読み上げた。
『…こいつぁ、
“えだ”を揺らすと、高瀬がこちらを見た。俺は囁いた
「大きく息を吸うんだな。そして俺とセリフを合わせるんだ」
しかし高瀬はまた吃る。「あ、あ」しか言えていない。彼の頭は真っ白なんだ。
「高瀬、お前は悪い子だ。フィアンセをいつまで待たせる気だ?」
俺の囁きに高瀬の意識は眠姫役のマキコに戻る。
なんとマキコはスケッチブックのカンペを用意してくれていたのだ。
「“色男金と力はなかりけり”でよくって?君の繊細なところがフアンな奴は沢山いるの。その1人が腐れ縁のアタシじゃ満ち足りない?」
中古100円(送料280円)のドレスを着たマキコは仏像の如く穏やかな表情で頬杖をつきながら小声で言った。
高瀬は漢泣きした。
「お前たちには…敵わんな」
──俺たちが繋いだ劇は毎秒がクライマックスだったということサ…
高瀬とマキコの接吻のあと会場はスタンディングオベーションに包まれた。
終演後、先生に怒鳴られたが俺たちは笑い飛ばした。
文化祭の片付けで仲睦まじく話す高瀬とマキコをみて、おれは高瀬のタイツ内、主に股座で変わらず160cmの体を直立不動の姿勢で保ちながら、高瀬の下半身に俺のシルエットを型取り続けた。
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