TS転生して合法ロリになったので、ヒロイヴHappyEndのために頑張ります! 作:青いカンテラ
UA5000突破記念
◆◇◆
「そこのお嬢さん。少しいいかな?」
「はい?」
顔馴染みのコンビニでタバコを買って外に出たあたりで、ユウリは声を掛けられた。見れば、警察の制服を着ている若い男である。
見ない顔だ……とユウリは思った。中身は成人しているが見た目は小学生のようなユウリは、よく見回りの警官に補導されたり職質されたりしている。
そのため、顔見知りがそこそこいる。だが、その若い男は新顔だった。そもそも顔見知りなら、ユウリの顔を見れは「あ、これはこれは」となるが、それもない。おそらくはユウリことを知らない新人だろう。
「こんな夜遅くに、小学生が一人で外を出歩いているなんて危ないよ。親御さんは?」
「あ、えーと……」
完全に、一人で夜に出歩いている子どもだと思われている。芋ジャージにスカジャンを羽織り、サンダルを引っ掛けているとはいえ、見た目は小柄な少女なので無理もない。
「もしかして、親御さんには連絡できない事情があるのか……? はっ、虐待、いやネグレストか……?」
「おーい、新人何やってんだー」
勘違いがおかしな方向へと加速しそうになったところで、同じく警察の制服を着た小太りの中年男がやって来る。
「あ、先輩! この子、ネグレストの疑いがありまして!」
「なにぃ……? うん? あぁー、この子はいいんだ」
「なんでですか先輩! こんな夜中に女の子を一人にしておけって言うんですか!」
「いや、なんというか……。なあ」
若い男の気合いに押される中年の男。ユウリの方をちらりと見て「はあ」とため息を吐いた。
「まあ、とりあえず交番に戻るか」
「はいはい、こちらショップユウナギ。もう今日の営業は終わったよ。何か要件があるなら明日にしてくれ」
家の電話が鳴り、ゲンロウタは受話器を取った。営業時間もとっくに過ぎた時間に掛かってきたそれに、店のことなら明日にしてくれと先に言っておく。
ただ掛けてきたのは非常識な客ではなく、ある意味では馴染みのある相手だった。
「ゲンさんか? うちの若いのが、な……」
「おん? ああ、わかったわかった。今すぐ迎えに行く」
それだけで何のことかゲンロウタは察した。少し前にユウリがタバコを買いに行くと出かけて行ったし、まず間違いないだろうとも。
「いつもすまないな」
「いいってことよ。それより、カツ丼でも用意しといてくれ」
「ゲンさん。今時はそういうのやってないんだよ。それにもう遅い時間で店も閉まってる……。コンビニのでいいかい?」
「カカカ! 冗談だよ、冗談! それじゃ、十分もあればそっちに行けらあ。待っててくれや!」
電話を切って、ゲンロウタは出かけるための準備をするのだった。
「あ、おじいちゃん! 来てくれたんだね!」
「おう、迎えに来たぞ孫よ」
十分後。ゲンロウタは交番に来ていた。ドアを開いて中に入ると椅子に座っていたユウリが立ち上がってやって来る。
「もー、けーさつかんのお兄さんひどいんだよ? 私が大人の年齢なんですけど! って何度言っても信じてくれないんだもん!」
「そりゃオメェ、そんな猫被ってりゃ見た目相応の子供にしか見えねえだろうよ」
「えへへー」
こう言っているが、ユウリも怒ってはいない。むしろ見た目で間違われることは日常のようなものなので、もうすっかり慣れている。それでも今日の相手は手強かったな……と思っているが。
「ゲンさん。うちの若いのがすまんなあ」
「シゲさんか。いいってことよ」
申し訳なさそうに中年の男がやって来る。それに、ゲンロウタは「いいさ、気にするな!」と笑いながらユウリの背中をバシッと叩く。
「夜中に出歩いてたこいつも悪いからな! それに、そっちのお若いのは自分の仕事をきちんとしたってことじゃねえか。俺たち市民としちゃあ、しっかり仕事してくれるってのは安心すらぁな」
「ははは。そう言ってくれると助かるよ」
ユウリも成人済みとはいえ、見た目は小柄な少女だ。夜中に出歩いているところに声を掛けたとしても、それは仕事に熱心だということでもある。
「あ、あの、知らなったとはいえ……。すみませんでした」
「ううん。私は全然気にしてないからいいよ、お兄さん! それよりも……」
がっくりと肩を落としている若い男に、頭を下げるようにと手で示す。それに気づいた彼が中腰になったところで、
「いつもお仕事お疲れ様でーす。けーさつかんのお兄さん❤」
と耳元で囁いた。
「ほら、遊んでないで帰るぞ」
「はーい! それじゃ、またねー!」
にぱっと笑顔で手を振って、ユウリとゲンロウタは交番を後にする。残されたのは、赤くなった耳を手で押さえている若い男と、そんな彼を見て「洗礼を受けたな」と腕を組んで頷いている中年の男だった。
◆◇◆
ある日の午後。ユウリがいつものように店番をしていると、来客を告げる電子音が鳴った。
それまでGBNのネット掲示板などを見ながらぐーたらしていた姿勢から、一秒未満の超速度で看板娘モードのスイッチを入れると姿勢を正してゼロ円スマイルと自身で呼んでいる笑顔を張り付ける。
「いらっしゃいませー!」
やって来たのは、すっかりと顔馴染みとなった新しい常連の青年。いつかGBNのトップに君臨するチャンピオンこと、クジョウ・キョウヤ……のリアル、キスギ・キョウヤだった。
「あ、キョウヤお兄さん! ……と、そちらは?」
「マリアはマリア。キョウにぃのこんやくしゃなのです」
キョウヤの背後に隠れていた、黒髪の少女がぴょこんと顔を出す。マリアと名乗ったその少女は、ふんすと薄い胸を張ってみせる。
「……お兄さん?」
「婚約者」というワードに、ユウリは若干引き気味の視線を向ける。世の中にはユウリのように見た目は小学生もいいところな小柄な女性もいるが、このマリアという子は明らかに見た目と実年齢が同じに見える。
「ま、待ってくれ誤解なんだ。彼女はマリア。僕の姪っ子にあたる子でね……。まあ、見ての通り僕にべったりなんだ」
疑いの目を向けられたキョウヤは、慌てて誤解を解こうとする。彼としても、行きつけの模型屋におかしな印象を持たれたくはなかった。
「ふーん? そうなんだ……。私はユウリ、よろしくねマリアちゃん!」
「ん……。ユウリ、マリアのこいがたきの名前、しっかりと覚えた」
「恋敵……?」
「すまない、どうにも僕と仲良くしている女性というのがお気に召さないようでね……」
「なるほどねー。マリアちゃん、心配しなくてもキョウヤお兄さんを取ったりはしないから安心してほしいな」
キョウヤの左腕にべったりとくっついているマリアは、むむぅ、と頬を膨らませて疑い深くユウリを見る。
「それはウソ……。マリアのおんなのかんが告げてる。キョウにぃの前でしか見せない顔があるってことを」
「ははは……」
別にキョウヤの前でだけ、というわけではないが……半分ほどは当たっているようなものだった。それをズバリと言い当てられて、子どもの勘の良さってこえぇな、とユウリは内心呟く。
「こら、マリア。あまり彼女を困らせるものではないよ」
「むぅ……」
「あはは……。それで、今日はどうするの? 二人でGBN?」
ゲームスペースにはちょうど空きがある。じゃれついている甥っ子と二人でのGBNかと思ったが、キョウヤは首を振った。
「いや、今日はマリアのガンプラを買おうかと思ってね。実は最近、彼女もガンプラを始めたんだけど、ビルダーとしての腕を高めたいらしくてね」
「キョウにぃにわるいむしがつかないように、マリアもガンプラのうでまえを高めて強くなる」
「……と、こんな調子でね。何かいいガンプラがないかと探しに来たというわけさ」
「それでガンダムベースではなくてうちに来るのは、いい選択だと思いますよキョウヤお兄さん」
単純な品揃えだけならガンダムベースは圧倒的だが、そこをあえて馴染みの模型店にガンプラを探しに来てくれる常連の気遣いに、ユウリはにこっと笑顔で返す。
「それじゃあマリア。僕はここにいるから、ガンプラを探して来るといい」
「ん、わかった」
とてとてとガンプラコーナーに消えていくマリアを見送って、ユウリはこそっとキョウヤに小声で話しかける。
「……それで? 実際のところどうなんだよ。ガンプラは」
「うん? ああ、才能はあると感じているよ。手先は器用だし、覚えもいい。あの歳にしてバトルも中々の強さだ。僕もうかうかとはしていられなさそうだよ」
どこか嬉しそうに言うキョウヤ。多少は身内びいきもあるのだろうが、それでも過度な評価はしないだろうと、ユウリは思っていた。
「ふーん。アンタがそこまで褒めるってことは、将来有望かもな」
「はは、そう願うよ」
「むぅ……。少し目をはなしたすきに、なかよくおしゃべり……。どろぼうねこ……」
そんな話をユウリとキョウヤがしていると、ガンプラコーナーの棚からマリアが顔を少しだけ出していた。泥棒猫なんて言葉どこで覚えてるんだこの娘っ子は、と思ったが口には出さない。
「マリア。ガンプラは決めたのかい?」
「うん。マリアはこのガンプラにする」
とてとてとカウンターに向かってきて差し出してきたのは、少しずんぐりとした体形をしたライトグレーのガンダム顔の機体……。
「おー、シルヴァ・バレトか。中々渋いところを」
「それじゃあ、このガンプラを買おうかな。マリア、ここで組んでいくかい?」
「ん。もけいてんで買ってすぐに作るのも、またオツなもの……」
ふふん、と通っぽいことを言うマリア。そんな彼女を、ユウリは背伸びしている子どもは可愛いものだなと会計を済ませながら見ていた。
「製作スペースはゲームスペースの横にありますから、自由に使ってくださいね!」
「ありがとう。……それでは、さっそく作る」
ガンプラを持って製作スペースに向かうと、椅子にちょこんと座って箱を開ける。
「このしゅんかんは、いつだってワクワクするもの……」
ランナーの入った袋を取り出し、説明書を広げて、ワクワクとした表情でガンプラ作りに取り掛かる。
「(ふーん? チャンプが言う通りに、手際はいいな)」
パチパチとパーツを二度切りして、ゲート痕をヤスリやデザインナイフを使って均していく。とても慣れた手つきで、しかも速い。
なるほど、キョウヤが褒めるわけだ……。早くも胴体と頭を組み上げ、手と足、武装類へと取り掛かっているマリアを見ながら思う。
これでキョウヤから見てバトルも中々の強さをしているという。年齢的に伸びしろもあるだろう。生まれる時期が違えば、GPDでも名のあるファイターになっていたかもしれない。
「……できた」
「うん。いい出来だね」
一時間ほどして、シルヴァ・バレトが組みあがっていた。しかも後々バラして塗装などをしやすいように工作もしてある状態だ。
「……キョウにぃが横で見ていてくれたおかげ。これはもう、しょーらいを誓い合った二人の初めてのきょーどーさぎょうと言ってもいいと思う」
「あはは……。まだ誓いあってはいないかな……」
ふんす、と薄い胸を張るマリアに、キョウヤは困ったような表情になる。
「へー、HGとはいえ、こんなに速く組めるなんてすごいね」
「とうぜん。マリアはキョウにぃのこんやくしゃだから」
「キョウヤお兄さんのお嫁さんになる人は、ガンプラバトルも強くないといけないから大変そうだね!」
「あまりからかわないで欲しいかな……」
困ったように笑って、ふと時計を見る。時刻はそろそろ夕方に差し掛かろうとしている。
「マリア、そろそろ帰ろうか。お母さんも心配する頃だろう」
「わかった。キョウにぃとお出かけできて楽しかった」
「それじゃあユウリ。また来るよ」
「はーい。待ってるよキョウヤお兄さん!」
「むぅ、マリアというこんやくしゃがいる前で、みっかいの約束……。どろぼうねこ……」
密会だの泥棒猫だの、本当にどこで覚えているのだろうか。
「マリアちゃんも、また来てね! 今度はガンプラバトルもしようよ!」
「ガンプラバトル……。戦ったらマリアが勝つ、けど、ちょうせんは受け取る」
「こっちがチャレンジャーなんだ」
そんなわちゃわちゃとしてやり取りをしつつも、キョウヤとマリアは帰っていった。二人を見送って、ユウリはふっ、と営業用ではない笑みをこぼした。
「マリア、か……。将来有望なのが増えるのはいいことだな」
GPDには多くの猛者たちがいた。まだまだ始まったばかりのGBNにも、名のある強豪が数多く出てくるだろう。そういった強敵と出会い、戦うのもまた、ガンプラバトルの楽しみなのだ。
「あのー、塗料が欲しいんですけど。ヨノモリってとこの」
「塗料ですね。あちらのコーナーになります!」
来店した客に対応しながら、ユウリはまだ見ぬ強敵たちに思いをはせるのだった。
―――To Be Continued
『マリア』は『TS転生おせいそアラサー女教師がチャンプの夢女になる話(作:(・8・)さん』よりお借りしました。