ベルナ村へ続く道を、一人の青年が歩いていた。
背中には、長い刀身を持つ太刀。腰には必要最低限の道具を収めたポーチ。身につけているのは、幾度もの訓練と狩猟を経て馴染んだユクモノシリーズだった。
青年の名は、織斑一夏。
この世界に迷い込んでから、もう一年近くが経とうとしている。
最初は何もわからなかった。見たこともない村、見たこともない生き物、そして自分の常識が通用しない環境。そんな中で生き残るために、彼は師匠であるエルドのもとで身体を鍛え、武器の扱いを学び、狩人としての基礎を身につけてきた。
背負っているユクモノ太刀も、今では自分の身体の一部のように扱える。
「龍歴院、か……」
一夏は手元の案内を確かめた。
今回、彼のもとに届いたのは、龍歴院からの調査協力者募集の案内だった。新たに確認されるようになったモンスターについて調査を行うため、協力できる狩人を募っているらしい。
詳しい話は、ベルナ村の奥にある龍歴院で説明されるという。
「新種のモンスターの調査、ね。危険そうだけど、放っておくわけにもいかないよな」
モンスターがどれほど危険なのかは、身をもって知っている。
だからこそ、何か異変が起きているのなら、できる範囲で力になりたいと思った。
一夏は案内をしまい、村の入口をくぐった。
ユクモ村以外の村を見るのは初めてだった。
村人たちの間を通り抜け、建物の並ぶ道を奥へ進んでいく。
やがて、目的地である龍歴院が見えてきた。
「ここか」
一夏は建物を見上げ、気持ちを切り替えるように小さく息を吐いた。
そして、受付で案内を見せると、集合場所へと通された。
◇
龍歴院の指定された場所には、すでに一人の青年がいた。
黒髪の青年は、背中に二振りの短剣を携えている。身につけているのはハンターシリーズ。使い込まれた装備には、これまでの訓練と狩猟の跡が見て取れた。
桐ヶ谷和人ことキリト。
彼もまた、この世界に来てから狩人として生きる術を学んできた一人だった。
ココット村でリオルに師事し、双剣の扱いを一から覚えた。最初はツインダガーを手にすることすら思うようにいかなかったが、今では二本の刃を状況に応じて使い分けられるようになっている。
ただし、どれだけこの世界で経験を積んでも、彼の胸から消えないものがあった。
元の世界に残してきた人たちのことだ。
アスナ。ユージオ。アリス。
自分が突然いなくなったことで、彼らがどうなっているのか。それを確かめる方法は、今のところ見つかっていない。
「……必ず帰る方法を見つける」
誰に聞かせるでもなく、和人は呟いた。
そのとき、部屋に一夏が入ってきた。
「あ、こんにちは。もしかして、龍歴院の募集で来た人?」
和人は振り向いた。
「そうだけど。君も?」
「ああ。俺は織斑一夏。よろしく」
一夏が気さくに手を差し出す。
和人は少し意外そうな顔をしたあと、その手を握った。
「桐ヶ谷和人。よろしく」
「桐ヶ谷か。俺は一夏でいいよ」
「わかった。俺のことも、和人でいい……と言いたいところだけど」
和人は少し考え、言い直した。
「キリトって呼んでくれないか?」
「キリト?」
「ああ。普段からそう呼ばれてるんだ」
「そっか。じゃあ、キリト。よろしくな」
一夏が笑うと、キリトもわずかに表情を和らげた。
「よろしく」
一夏はキリトの背中にある二振りの短剣へ視線を向けた。
「武器は双剣なんだな」
「そういう君は太刀か。ずいぶん使い込んでいるみたいだ」
「まあな。師匠にかなり鍛えられたから」
「俺も師匠には世話になったよ。まだまだ教わることは多いけどな」
互いの武器を見て、自然と話が続く。
もっとも、二人ともまだ相手のことをほとんど知らない。どこから来たのか、どうして狩人になったのか。そうした事情を聞くには、まだ早い気がした。
「ほかにも参加者がいるんだよな?」
一夏が尋ねる。
「案内には、そう書いてあった。もう少し待つことになりそうだな」
「そうか。どんな人が来るんだろうな」
そんな話をしていると、入口からもう一人の青年が姿を現した。
◇
比企谷八幡は、部屋に入るなり、まず中の様子を確認した。
知らない場所。知らない人間が二人。
そして、背中に背負ったボーンシューター。
こちらの世界に来てから、八幡の生活は大きく変わった。
ポッケ村にたどり着いた当初は、雪山で生き延びることだけで精一杯だった。そこからガルドに鍛えられ、身体を動かす訓練を重ね、ヘビィボウガンを扱う技術を身につけた。
現在では、通常弾や貫通弾などの弾の性質を理解し、状況に応じて使い分けることも覚えている。
だが、狩人になったからといって、八幡の性格まで変わったわけではない。
「……知らない奴らと顔合わせか。面倒なことにならなきゃいいけどな」
心の中でぼやきながら、二人へ近づいた。
「君も龍歴院の募集に参加する人か?」
一夏が声をかける。
「ああ。比企谷八幡だ」
「俺は織斑一夏。こっちはキリト」
「よろしく」
キリトが短く挨拶した。
「……おう」
八幡も軽く返す。
愛想よく振る舞うのは得意ではない。初対面の相手に積極的に話しかける理由も、特に思いつかなかった。
もっとも、二人とも別に気にした様子はない。
一夏は八幡の背中にある武器を見た。
「それ、ヘビィボウガンか?」
「そうだ。ボーンシューターっていう」
「へえ。俺は太刀で、キリトは双剣だ」
「武器が全然違うな」
八幡は二人の装備を見比べた。
太刀と双剣、そしてヘビィボウガン。
接近戦を得意とする二人と、距離を取って戦う自分。戦い方は大きく異なるが、それぞれが自分に合った武器を選んでいるのだろう。
「……で、残りの一人はまだ来てないのか?」
八幡が尋ねた。
「そうみたいだな。俺たちが先に着いたのかもしれない」
一夏が答える。
「集合時間には間に合ってるはずだけどな」
キリトは案内を確認しながら言った。
「何か事情があるのかもしれないし、もう少し待とう」
「まあ、そうだな」
八幡は壁際に立った。
内心では、初対面の人間と三人で待つ時間というものに、何とも言えない居心地の悪さを感じていた。
こういうとき、誰かが話題を提供してくれると助かるのだが、今のところ誰も積極的に話そうとはしない。
いや、正確には一夏が何度か話しかけようとしているのだが、キリトも八幡も必要以上に話を広げないため、会話が長続きしないのだ。
人見知りが三人集まると、こうなる。
もっとも、一夏はそこまで極端な人見知りではないのだが。
「……遅いな」
八幡がぽつりと呟いた。
「まだ、そこまで遅れているわけじゃないだろ」
キリトが答える。
「いや、待ってる側からすると、十分長いんだよ」
「何かあったのかもしれないぞ」
一夏は少し心配そうに入口を見た。
「道に迷っているとか、何かトラブルに巻き込まれたとか……」
「この村の中で迷うか?」
「初めて来た人なら、可能性はあるだろ」
「……まあ、否定はできないけどな」
八幡はそれ以上言わず、壁に背を預けた。
キリトも入口へ視線を向けていたが、無理に相手の事情を決めつけるつもりはなかった。
三人とも、まだ知らない。
最後の一人が、集合のことを知らされてすらいなかったという事実を。
◇
一方、その頃。
ベルナ村の中を、吉井明久が歩いていた。
背中にはベルダーハンマー。身につけているのはベルダーシリーズ。
明久は、このベルナ村で生活してきた狩人の一人だった。
もちろん、最初から狩人としてやっていけたわけではない。こちらの世界に来てから、何もわからない状態で暮らし始め、ハンマー使いの師匠に拾われ、ベルダーハンマーの扱いを学んできた。
その師匠との生活は、つい昨日、一区切りを迎えたばかりだった。
そして、昨日になって発覚した借金の問題。
「はあ……どうしてこうなったんだろう……」
明久は肩を落としながら歩いていた。
師匠と別れたことも、借金のことも、まだ頭の中で整理できていない。
せめて今日は落ち着いて過ごしたい。そう思っていたのだが。
「おや、明久。今日は龍歴院に行かなくて大丈夫なのかい?」
村人から声をかけられ、明久は足を止めた。
「え? 龍歴院?」
「そうだよ。今日、龍歴院でハンター募集の集まりがあるんだろう?」
「…………え?」
明久は目を丸くした。
「きょ、今日?」
「そうだよ。新しいモンスターの調査に協力する狩人を集めているって話じゃないか」
「えええええっ!?」
思わず大声が出た。
今日の昼。
龍歴院。
調査協力者の集まり。
そんな話は、聞いていない。
少なくとも、師匠からは一言も聞かされていなかった。
「ちょ、ちょっと待って! 僕、そんな話、聞いてないんだけど!?」
「そうなのかい?」
「そうなのかい、じゃないよ! どうしよう、もう始まってるかもしれないじゃないか!」
明久は慌てて龍歴院のある村の奥を見た。
そこまでの道のりが、いつもよりずっと長く感じられる。
「…………師匠」
明久の顔が引きつった。
「師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
明久は天を仰いだ。
「もう! 師匠のやつ、どうして大事なことを教えてくれないんだよ!」
昨日、借金の件が判明したばかりで、まだ納得できていない。
そのうえ、今日の予定まで知らされていなかった。
「借金のことだって、昨日になってからわかったばかりなのに! なんで今日の集まりのことまで黙ってるんだよ! せめて一言くらい教えてくれたっていいじゃないか!」
明久はベルダーハンマーを背負い直し、走り出した。
「うわあああっ! 間に合ってくれえええっ!」
村人たちが驚いて振り返る中、明久は龍歴院へ向かって全力で駆けていった。
「師匠のバカ!絶対帰ったら文句言ってやる!いや、もう師匠どっかに行っちゃったんだった!ちくしょ~~~!!! 借金のことも説明不足だし、今日のことも説明不足だし! 僕にどうしろっていうんだよおおおっ!」
叫びながら走る明久の姿は、村の奥へとあっという間に遠ざかっていった。
◇
龍歴院では、三人が引き続き待っていた。
「……まだ来ないな」
八幡が再び呟く。
「何かあったのかな……」
一夏は落ち着かない様子で入口を見ていた。
「もう少し待とう。集合時間を過ぎたとしても、事情があるのかもしれない」
キリトがそう言った直後だった。
「すみませええええんっ!」
廊下の向こうから、切羽詰まった声が響いた。
三人がそろって振り向く。
次の瞬間、息を切らした明久が部屋に飛び込んできた。
「はあっ……はあっ……! す、すみません! 遅れました!」
肩で息をしながら、明久は深く頭を下げた。
「えっと……君が最後の参加者か?」
一夏が尋ねる。
「そ、そうです! 吉井明久です! あの、今日集まりがあるって、さっき村の人から聞いて……!」
「さっき?」
キリトが聞き返す。
「はい! 僕、今日だなんて知らなくて! 師匠から何も聞いてなかったんです!」
明久は息を整えながら、腰のベルダーハンマーを押さえた。
「本当にすみません! もう始まっちゃってますか!?」
「いや、まだみたいだぞ」
一夏が答えた。
「よかったあ……!」
明久はその場に崩れ落ちそうになり、慌てて踏みとどまった。
「……師匠、いつか絶対に文句言ってやる……」
小さく呟いた言葉を、八幡は聞き逃さなかった。
「師匠に集合日を教えてもらえなかったのか?」
「そうなんです! 昨日いろいろあったばかりなのに、今日のことまで知らされてなくて……!」
「いろいろ?」
「うっ……そ、それは、またあとで……」
明久は気まずそうに口をつぐんだ。
八幡はそれ以上追及しなかった。
人には事情がある。初対面で根掘り葉掘り聞くほど、八幡は社交的ではない。
キリトも、明久の様子から、何か事情があるのだろうと察したようだった。
「とりあえず、間に合ってよかったな」
一夏が笑いかける。
「はい……本当に……」
明久はようやく一息ついた。
これで、参加者は全員そろった。
ほどなくして、龍歴院の職員が部屋に入ってきた。
「皆さん、お待たせしました。これより、今回の調査協力者募集について説明いたします」
四人は、それぞれ姿勢を正した。
◇
「まず、今回の募集に至った経緯について説明します」
職員は手元の資料を確認しながら、話を始めた。
「近頃、これまで確認されていなかった種のモンスターが、各地で目撃される事例が増加しています。龍歴院では、それらの正体や生態、そして出現した状況について調査を進める必要があると判断しました」
「新種のモンスター、か……」
一夏の表情が引き締まる。
新種のモンスター。
それがどの程度危険なのかは、実際に調査しなければわからない。
「本来であれば、このような危険を伴う調査は、経験豊富なベテランのハンターに依頼するのが適切です。しかし、現在はほかの地域でも異常な事例が相次いでおり、多くの狩人が各地の対応に追われています」
職員は一度、四人を見渡した。
「そのため、今回の調査に協力できるハンターを募ることになりました」
「つまり、ベテランだけでは人手が足りないってわけか」
八幡がぼそりと呟いた。
新種のモンスターの調査。しかも、各地で異常が起きているためにベテランが不足している。
どう考えても、気楽にこなせる仕事ではなさそうだ。
「そのとおりです。もちろん、皆さんに無理な調査を強制するつもりはありません。調査内容や危険性を十分に説明したうえで、協力できる範囲を相談していきたいと考えています」
「具体的には、どんなことをするんですか?」
キリトが質問した。
「はい。皆さんには一つのパーティを組んでいただき、原則として四人で行動しながらモンスターの調査を進めてもらいます」
「四人で、ですか」
一夏は隣にいる三人へ視線を向けた。
太刀を使う自分、双剣を使うキリト、ヘビィボウガンを使う八幡、そしてハンマーを使う明久。
武器も戦い方も、それぞれ違う。
だからこそ、うまく連携できれば互いの弱点を補えるかもしれない。
「わかりました。俺もできる限り協力します。みんなで力を合わせれば、できることも増えるはずですから」
一夏はまっすぐに答えた。
「そうだな。武器も戦い方も違うから、最初にお互いの得意なことや苦手なことを把握しておいたほうがいい」
キリトも同意する。
実際、調査中に何が起こるかはわからない。互いの戦い方を知らないまま現場に出るより、事前に連携を考えておいたほうがいいだろう。
「……初対面の四人で、いきなりパーティを組めってことか。しかも、新種を相手に命がけの調査になる可能性もあるっていうのに、人間関係の構築まで仕事に含まれるとは、なかなか面倒な話だな」
八幡は小さく息を吐いた。
とはいえ、断れば済むという話でもない。
狩猟に危険が伴うことは、すでに理解している。だが、正体のわからないモンスターを相手にする以上、普段以上に慎重になる必要があるだろう。危険を避けたい気持ちはあるが、現実から目を背けていても仕方がなかった。
八幡は背中のボーンシューターを意識した。
自分はヘビィボウガンを使う。遠距離から攻撃できるとはいえ、弾には限りがあるし、接近された場合の危険も大きい。
調査だからといって、無闇に突っ込むわけにはいかない。
「で、でも、せっかく一緒に行動するんですから、協力していけば何とかなると思います!」
明久は少し不安そうにしながらも、三人に向かって言った。
「僕もまだまだ勉強中ですけど、足を引っ張らないように頑張ります!」
「最初から完璧な連携を求めているわけではありません」
職員は穏やかに答えた。
「皆さんには、調査を通じて互いの技量や特徴を理解し、協力していただきたいのです。調査内容や役割分担については、皆さんの経験や装備を踏まえ、こちらから指示を出します」
「わかりました。まずは一緒に行動して、少しずつ連携を覚えていけばいいんですね」
一夏が確認すると、職員は頷いた。
「そのとおりです。危険な状況では、一人の判断が全員の命に関わることもあります。無理な行動は避け、互いに情報を共有することを忘れないでください」
「了解です」
キリトは短く答えた。
「……まあ、情報共有くらいはきちんとやらないとな」
八幡も頷く。
「僕も頑張ります!」
明久は拳を握った。
職員は四人の返答を確認すると、手元の資料を閉じた。
「以上で本日の説明は終わりになります。この後は互いに情報交換をしていただいて構いません。何か気になることがあれば、遠慮なくお尋ねください。」
そう言って職員は部屋から出て行った。
職員の言葉を受け、四人は互いに顔を見合わせた。
最初に口を開いたのは、一夏だった。
「じゃあ、改めて自己紹介しようか。俺は織斑一夏、使っている武器は太刀で、今はユクモノ太刀を使っています。まだ経験が足りないところもありますけど、できる限り協力したいと思っています。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる。
次に、キリトが続いた。
「桐ヶ谷和人です。武器は双剣で、ツインダガーを使っています。よろしくお願いします」
そこで少し間を置き、付け加えた。
「ただ、普段はキリトと呼ばれているので、そう呼んでもらえると助かります」
「わかった。よろしくな、キリト」
一夏が応じる。
「よろしく」
キリトは小さく頷いた。
続いて、八幡が口を開く。
「比企谷八幡です。武器はヘビィボウガン。今使ってるのはボーンシューターです。……まあ、できる範囲でやります」
必要なことだけを伝えて、八幡は口を閉じた。
最後に、明久が慌てて背筋を伸ばす。
「よ、吉井明久です! 武器はハンマーで、ベルダーハンマーを使っています! えっと、まだまだ勉強中ですけど、よろしくお願いします!」
四人の自己紹介が終わった。
四人の間に、短い沈黙が流れる。
先ほどまでの説明を聞いていた一夏は、まずは互いのことを知るのがよさそうだと思った。
「せっかく集まったんだし、もう少し話してみないか?」
「そうだな。調査で一緒になる可能性もあるし」
キリトが同意する。
「……まあ、必要な情報交換ってことなら」
八幡も否定はしなかった。
「僕も賛成です。あ、でも、何から話せばいいんだろう……」
明久が困ったように笑う。
そんな中、八幡は先ほどの自己紹介を思い返していた。
織斑一夏。
桐ヶ谷和人。
比企谷八幡。
吉井明久。
四人の名前を頭の中で並べる。
そして、ふと気づいた。
「……なあ」
三人が八幡を見る。
「お前らって日本から来たんじゃないのか?」
「「「えっ!!??」」」
八幡の言葉に三人は驚きの声を上げた。
「名前が織斑に桐ヶ谷に比企谷に吉井……」
八幡は一人ずつ顔を見た。
「全員、日本人の名前っぽくないか?」
その言葉に、一夏が目を見開いた。
「……あ」
キリトも、はっとしたように顔を上げる。
明久は最初、何を言われたのかわからない様子だったが、少し遅れて表情を変えた。
「えっ? ちょ、ちょっと待って……。じゃあもしかして……」
八幡は続けた。
「俺は比企谷八幡。日本から来た。少なくとも、ここに来る前はそうだった」
「俺も……日本から来たんだ」
一夏がゆっくりと口を開く。
「気がついたら、この世界にいた。最初は何が起きたのか、全然わからなかった」
キリトも二人を見ながら言った。
「俺も同じだ。気づいたときには、元の世界とは違う場所にいた。アスナたちがいる世界に帰る方法を、ずっと探している」
アスナの名前を口にした瞬間、キリトの表情がわずかに曇った。
だが、今はそれ以上を語らなかった。
「僕も……!」
明久が勢いよく手を挙げた。
「僕も日本から来たんだ! 最初は何が何だかわからなくて、ここで生活するしかなくなって……!」
言いながら、明久は三人の顔を見比べた。
「えっ、じゃあ……やっぱり、みんなも?」
「そういうことになるな」
八幡が答える。
「偶然にしては、できすぎてるな……」
キリトは考え込むように腕を組んだ。
自分たちは、それぞれ違う場所で目を覚ました。違う村で生活してきた。
それなのに、今こうして同じ場所に集まり、互いに日本から来たと話している。
「俺たち、みんな別の世界から来たってことなのか……?」
一夏が呟く。
「たぶん、そう考えるのが自然だろうな」
八幡は小さく息を吐いた。
「まさか、こんなところで同じ境遇の人間に会うとは思わなかったけどな」
「僕もです! ずっと、僕だけがこんな目に遭ったんだと思ってました……!」
明久の声には、安堵が混じっていた。
元の世界へ帰れる保証はない。
それでも、自分と同じように別の世界から来た人間がいる。それだけで、これまで抱えてきた孤独が少しだけ薄れた気がした。
キリトも、静かに頷いた。
「俺たちがどうしてここに来たのか、まだわからない。でも、同じ立場の人間がいるなら、何か手がかりが見つかるかもしれない」
「そうだな。俺も、元の世界に戻る方法を見つけたい」
一夏は力強く頷いた。
「俺も、できることなら帰りたい」
八幡も、目を伏せながら答えた。
「僕だって、帰りたいです……!」
明久も続いた。
四人は、互いの顔を見た。
ここに来た理由も、元の世界での暮らしも、まだすべてを知っているわけではない。
それでも、ひとつだけ共通する願いがあった。
元の世界へ帰ること。
そして、その方法を探すために、これからも生き延びなければならないこと。
「だったら、情報を共有しよう。俺たちがそれぞれ経験してきたことが、何かの手がかりになるかもしれない」
キリトの提案に、一夏が頷いた。
「賛成だ。せっかく出会えたんだし、協力しよう」
「……まあ、一人で探すよりは効率がいいだろうな」
八幡は肩をすくめた。
「僕も賛成です! みんなで協力すれば、きっと何か見つかりますよね!」
明久が明るく言った。
こうして、四人の狩人は出会った。
織斑一夏。桐ヶ谷和人――キリト。比企谷八幡。吉井明久。
異なる場所で生き延び、それぞれの武器を手にした四人。
彼らはまだ知らない。
これから先、未知のモンスターを追う調査が、自分たちの運命を大きく動かしていくことを。
そして、この世界に来た理由を探す道のりが、四人を新たな仲間へと変えていくことを。
龍歴院に集った四人の狩人。
その物語が、ここから始まる。
こんばんわ!19号です!
久しぶりに自分が出した小説の様子を見て、お気に入りされたので嬉しくなって続きを投稿しました。
また時間が空くかもしれませんがよろしくお願いします。
ちなみに、全員の師匠の名前も決めたので、これまでの話の内容を一部修正しました。
何か間違いとか、こうやったほうがいいんじゃない?みたいなことがあったら是非感想とかで送っていただければと思います。(できれば評価も……)