「ん、先輩何してるの。」
「シっ、シロコちゃん!?」
「?驚きすぎだと思う。」
「い、いやあ……。
そんなことないよ?」
「本当に?」
「私は嘘つかない!」
「……なら、いいけど……。
それより、次はどこまで行く?」
「うーん……しばらくはここでいいかな。」
「ん、分かった。」
——————————
「シロコちゃん、怪我大丈夫?」
「ん……大、丈夫……じゃない。」
「だよね……。
しばらくここで寝ててね。」
「……先輩、どこ行くの……?」
「見回りだよー。
……(それに、シロコちゃんの誕生日プレゼントも……ね。)」
「ん……なんて……?」
「!なんでもないよ。
それじゃあまた後でね、シロコちゃん。」
——————————
「……先、輩っ……!」
◆◆◆◆◆◆
「ん……」
夢を見ていた気がする。
『おはようございます、先生!』
「ん、おはよう、アロナ。」
アロナを横目にパソコンを起動する。
シッテムの箱のモモトークやパソコンのメールソフトには多くの通知が来ていた。
『ここ数日間、シャーレに関する噂もたくさん広まってるみたいですし、
他の生徒達から助けを求める手紙も届いています。』
「それって良い事?」
『良い兆候です!私たちの活動が始まるということですから!』
「良かった。」
『ですがその中に……ちょっと不穏な、こんな手紙がありまして。』
「ん?」
アロナはそう言って机の中から3枚の紙を取り出した。
『これは先生に一度読んでもらった方が良いかなと。』
アロナが広げた手紙を私は読んでみた。
[newpage]
連邦捜査部の先生へ
こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。
今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、
こうしてお手紙を書きました。
単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。
それも、地域の暴力組織によってです。
——————————
こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。
どうやら、私たちの学校の校舎が狙われているようです。
今はどうにか食い止めていますが、
そろそろ弾薬などの補給が底を突いてしまいます……。
このままでは暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。
——————————
それで、今回先生にお願いできればと思いました。
先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?
◆◆◆◆◆◆
「(アビドス……)」
私は少し前のことを思い出した。
『うーん……アビドス高等学校ですか……。
昔はとても大きい自治区でしたけど、
気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました。』
なるほど、やっぱり極寒の地に……。
『どれほど大きいかというと、
街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです!』
「ん!?!?!?」
遭難!?
アビドスで!?
街のど真ん中で!?
『あはは、まさか、そんなことあるんでしょうか……?
いくらなんでも街のど真ん中で遭難だなんて……。
流石にちょっとした誇張だと思いますが……。』
流石に噂だよね。
良かった良かった。
『それより学校が暴力組織に攻撃されているなんて……
ただ事ではなさそうですが……。
何があったんでしょうか?』
「なんでだろう……。」
もしかしたら、私の時と同じかもしれないし、
だとしたらロクなことにならない。
そうでなくとも、アビドスがピンチというなら。
「アロナ、アビドスに出張しよう。」
『すぐに出発ですか!?さすが、大人の行動力!』
「そのためにも、まずは準備をしよう。」
『かしこまりました!準備が終わり次第すぐに出発しましょう!』
私は荷物を引っ張り出したり探したりしながら、準備を始めた。
リュックに色々物を詰め込んで、食事のゼリーはお忘れず。
寒いだろうしマフラーは巻いておいて、先輩からもらったニット帽もしっかりと。
銃も手入れをして、諸々が終わったら後は盾を持って外へ……。
『先生!アロナを忘れないでください〜!』
「ん、ごめん……。」
シッテムの箱を忘れるところだった。
完全に準備を終わらせた私は、軽い上着を着てロードバイクに跨った。
そしてアロナのカーナビに従ってアビドスへ向かった。
ちなみに準備中、なぜかアロナに寒がりなのか聞かれた。
なんで……?
◆◆◆◆◆◆
アビドス到着から数日後。
私は上着もマフラーもリュックに突っ込んで自転車を押していた。
ニット帽だけはそのまま。
「寒がりなのかってそういうこと……。」
私の記憶に反して、こっちのアビドスはバカみたいに暑かった。
噂では巨大な砂漠もあるみたい。
「ゼリーは……もうない……。」
『これは……あれですか……?』
「ん、あれだね。」
アロナと2人でため息をついた。
「『遭難した……。』」
歩きすぎて疲れたので、道端に座り込むことに。
「飲み物……無いか……。」
残念ながら飲み物も無いみたい。
あれ、詰んだ?
「……ん?」
(キキーッ)
ん?
誰かの声が聞こえたと同時に、自転車のブレーキ音が響いた。
妙に聞き覚えがある……。
「……あの……。
……大丈夫?」
「……大丈夫……じゃないかな……凄い助けてほしい。」
そうして顔を上げた時、そこには……。
「あ、生きてた。
道の端でぐったりしてるから、死んでるのかと。」
「実は……。」
頭は納得と混乱で埋め尽くされたけど、
できるだけ落ち着いて、なんでこうなったかの説明をした。
「……え?空腹と疲れで動けなくなった?」
(こくこく)
「……ホームレス?」
「そんなことない。」
もう少し説明を続けた。
——————————
「……えっと……。」
少女は立ち上がった。
私もそれに合わせて立ち上がった。
少し休憩したらかなり楽になった。
「用事があって数日前この街に来たけど、
お店が一軒もなくて脱水と空腹で力尽きたと。
ただの遭難者だったんだね。」
「ん。」
(こくこく)
そういえば。
「道中で店を見かけなかったけど……。」
「ああ。
ここは元々そういう所だから。
食べ物がある店なんかとっくに無くなってるよ。」
「なる……ほど……。」
私の知ってるアビドスとは少し違うみたい。
「こっちじゃなくて、もっと郊外の方に行けば市街地があるけど。」
「そうなんだ。」
ダメだ、同じ名前の別の場所すぎて何もわからない。
知らない場所であることを少女に伝えた。
「土地勘がない?
……なるほど、この辺は初めてなんだね。」
「そうだね。」
実質初めてではある。
「……ちょっと待って。」
「?」
そう言うと、少女は自分の鞄の中を探り始めた。
「はい、これ。
エナジードリンク。」
鞄の中からそれを出して私に差し出した。
「ライディング用なんだけど……今はそれぐらいしか持ってなくて。
でも、お腹の足しにはなると思う。」
「ほんとにありがとう……助かったよ。」
「えっと、コップは……。」
コップを探す少女をよそに、私はそのままエナドリをごくごく飲み始めた。
「……!
……それ……。」
「……ん?」
「……ううん、何でもない。
……気にしないで。」
そのままエナドリを飲み干した後、私は少女にお礼を伝えた。
「飲み物、ありがとう。」
「うん。」
すると、少女は私をまじまじと見つめ始めた。
「見た感じ、連邦生徒会から来た大人の人みたいだけど……お疲れ様。
学校に用があって来たの?
この近くだと、うちの学校しかないけど……もしかして……。」
少女はその名を口にした。
「”アビドス”に行くの?」
「……うん。」
私は頷いた。
「……そっか。
久しぶりのお客様だ。」
「それじゃあ、私が案内してあげる。
すぐそこだから。」
「ん、分かった。」
私は、少女と一緒に自転車に跨ると、そのままアビドスに向けて漕ぎ出した。
◆◆◆◆◆◆
「あ、くれたエナジードリンクのペットボトル、私が始末しておくよ。」
「ん、ありがとう。」
因みにこの後、新鮮なアビドスの景色に見とれていたら思いっきり横転して、
少女におんぶで連れて行ってもらうことになったのは別の話。
◆◆◆◆◆◆
「ただいま。」
「おかえり、シロコせんぱ……い?」
少しだけ沈黙。
「うわっ!?何っ!?そのおんぶしてるの誰!?」
「わあ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
拉致じゃない。
「拉致!?もしかして死体!?
シロコ先輩がついに犯罪に手を……!!」
死体じゃない。
「みんな落ち着いて、速やかに死体を隠す場所を探すわよ!
体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから、それを……。」
「「……。」」
私と少女……シロコは目を合わせた後、シロコは私を地面に落とした。
「いや……普通に生きてる大人だから。
うちの学校に用があるんだって。」
「えっ?死体じゃ、なかったんですか……?」
「拉致したんじゃなくて、お客さん?」
「そうみたい……。」
じゃあ挨拶を……あ、でも私がシロコって知れたら困惑するか……。
アビドスではニット帽外さないようにしよう。
幸い、私は髪真っ白だし、少し長いし、耳が見えなければ大丈夫……だよね。
「えっと……どうも。」
「わぁ、びっくりしました。
お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね。」
「そ、それもそうですね……でも来客の予定ってありましたっけ……。」
「連邦捜査部”シャーレ”担当顧問の先生、よろしく。」
その瞬間、教室に衝撃が走った……気がする。
「……え、ええっ!?まさか!?」
「連邦捜査部”シャーレ”の先生!?」
「わあ⭐︎支援要請が受理されたのですね!
良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで……弾薬や補給品の援助が受けられます。」
良かった……で良いんだよねこれは。
私の時は支援が受けられなかったから……あ、そうか。
私の世界には”先生”が———
「あ、早く”ホシノ”先輩にも知らせてあげないと……あれ?ホシノ先輩は?」
……。
「ん、先生どうかした?」
「……あっ。
いや、なんでもない。」
「?」
「委員長は隣の部屋で寝てるよ。
私、起こしてくる。」
……まだ、生きてる。
分かってる。
私の知ってる先輩とは違う人だって。
でも……まだ生きてるんだ……良かった。
(ダダダダダダダダッ!)
「っ!」
「じゅ、銃声!?」
「!!」
お陰で現実に意識が戻ってきた。
「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!
カタカタヘルメット団のようです!」
これが噂の暴力団……の内の1つかな。
窓の外を見ると、かなり多くの数いるのが見えた。
「……学校の占領……。」
外で騒いでる声を聞く感じ、ここ、アビドスを占領しようとしているみたい。
考えてる間にも銃声が鳴り響く。
「あいつら……!!性懲りも無く!」
さてどうしたものかと考えていた……その時だった。
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」
「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー。」
「(……ん?)」
「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方はシャーレの先生です。」
「ありゃ〜そりゃ大変だね……あ、先生?よろしくー、むにゃ。」
「よ……よろしく……。」
なんか……私の知ってる先輩というより、先輩の先輩に似てる……。
「先輩、しっかりして!出動だよ!装備持って!学校を守らないと!」
「ふぁあー……むにゃ。
おちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー。」
「すぐに出るよ。
先生のおかげで、弾薬と補給品は十分。」
「はーい、みんなで出撃です⭐︎」
「私がオペレーターを担当します。
先生はこちらでサポートをお願いします!」
「……あ、うん。
分かった。」
「……。」
先輩が自分を見つめていたことに、私は気づいていなかった。
◆◆◆◆◆◆
「先輩、この人たち誰?」
「うん?
ああ……、前の卒業アルバムね。
ノノミ先輩たちは私が1年生の頃の卒業生なんだ。」
「そうなんだ。」
「……その後、すぐにあの襲撃が起きたんだけどね。」
「……そっか。」
シロ先世界の一部ネームドキャラの情報はどっかで出します。