時系列は適当
「ヤオヨロ〜! 神々のみんな、今日も神業かましてるかーい? 月見ヤチヨだよ〜!」
ヤチヨがパチンと指を鳴らすと、ツクヨミの夜空を、満開の花火のような色とりどりの弾幕コメントが埋め尽くした。空に浮かんだ同時接続者数のカウンターが、景気のいい音を立てて跳ね上がっていく。
《ヤオヨロ〜〜〜!!》
《ヤッチョ今日も顔が良い》
《待機列見たこと無い数字になってて草》
《今夜は何の配信なんだ!?》
「たっくさん来てくれて嬉しいな。感謝感激雨アラモード! さて、今日はね、ヤッチョひとりじゃないんだ〜。なんと超豪華なゲストが来てくれてまーす!」
ヤチヨが満面の笑みで振り返ると、横に並んだ三人が画面に映し出された。
「まずは進行役! だららららら……みんなの忠犬〜?」
「どうもー! みんなのために、わんわんお! 『NEWS TSUKUYOMI!!』より参戦いたしました、忠犬オタ公です! 本日はこの尊き場にてMCを務めさせていただきますッ!!」
「わー、最初からトップギアだ〜」
「当たり前です! 推しと推しと推しが同じ画角に収まっているんですよ!? 気合は常に臨界点突破の120%! 神々のみんなも刮目して楽しもうぜーッ!」
《オタ公wwwww》
《開幕からうるさい。もっとやれ》
《限界オタク犬、本日も絶好調》
「頼もしいね〜」
鼻息荒くマイクを握りしめるオタ公にヤチヨが楽しそうに笑いかけ、その隣に視線を移す。
紹介を待ちきれないかぐやがぴょんぴょん跳ねながら両手をぶんぶん振り回し、その袖が顔に直撃した隣の彩葉が、露骨に眉をひそめていた。
「そしてそして! 今夜の主役、かぐやといろPでーす!」
「かぐやっほ〜! みんな、かぐやだよー!」
「……えっと、いろPです。よろしくお願いします」
《うおおおおおおおおおおお!!》
《いろPキターーー!》
《ちょっと緊張気味のいろP助かる》
《生きててよかった……合掌》
怒涛の勢いで流れるコメントの波に、彩葉の口元がわずかに緩む。だがすぐに真顔へ戻ると、ヤチヨの方を向いた。
「……で、ヤチヨ。今日は何するの? 私、ただ呼ばれただけで何も聞いてないんだけど」
「ふふ〜ん、それはお楽しみなんだ〜」
「私以外みんな知ってるんでしょ? そろそろ教えてよ」
ヤチヨはそんな困った様子の彩葉を見て楽しげな表情を浮かべている。そんなとき彩葉の横から声が響いた。
「かぐやはね、ぜーーーったい負けないから!」
「……負ける? ちょっと待って、猛烈に嫌な予感がしてきた……」
「あーあ、かぐやちゃんフライング! もうちょっと引っ張りたかったのに〜。しょうがないにゃあ〜。オタ公、お願い!」
「承知いたしましたァ! それでは本日の特別企画、発表です!!」
オタ公が待ってましたとばかりに腕を振り上げると、暗転したツクヨミの夜空に、ゲーミングレインボーに輝く巨大なネオン文字が炸裂した。
『いろP争奪! ヤチヨ対かぐや、ゲーム三番勝負!』
「いろPを巡って、ヤチヨとかぐやが真っ向から激突だーッ!」
「彩葉はかぐやがもらう!」
オタ公の絶叫に被せるように叫んで、かぐやが彩葉の右腕をぎゅっと抱え込んだ。
「はい? もらうって何。というか争奪って何」
彩葉が信じられないものを見る目で、宙に浮かぶ巨大文字を二度見する。
「勝ったほうはね〜」とヤチヨがいたずらっぽく人差し指を立てた。「次のスペシャルライブで、いろPとふたりっきりで一曲踊れる特権が与えられまーす!」
「なんで私が賞品になってるわけ!? そもそも踊るとか聞いてないし、勘弁してよ」
《!?!?!?!?》
《争奪戦wwwwww》
《公式の企画でいいんかこれ》
《いろPが景品扱いされてて草》
「一曲だけ! 一曲だけだから!」
かぐやが顔をぐいぐい寄せてきて、上目遣いで訴えかける。
「彩葉、かぐやと一緒に踊りたくないの……?」
「……そういう聞き方されると、断りづらいでしょ」
彩葉は深いため息をつき、今度は隣で微笑んでいるヤチヨを見た。
「ヤチヨも踊りたいの?」
「うん。ヤッチョも勝ったら、彩葉と踊りたいな〜って」
ヤチヨはいつものふわふわした口調で答えたつもりだった。彩葉はヤチヨの顔を見つめ、ふいと視線を泳がせた。咳払いをひとつして、腕にまとわりつくかぐやの手をそっと外す。
「……分かった。一曲なら。ただし、あんまり無茶な振り付けは出来ないからね」
「やったー!」
「かぐや、まだ勝ってないよ〜。ヤッチョが勝ったら、いろPはヤッチョがもらうからね~」
「やだ! 負けないからね、ヤチヨ!」
二人が同時に彩葉の手を握ろうと伸ばした瞬間、彩葉が「はいストップ、まずはゲームでしょ!」と両手で押し返した。
《てぇてぇ……》
《いろPのママみ最高》
《両手に花すぎるだろ代われ。いや、やっぱ代わるな。一生見てる》
* * *
「第一種目はバーチャル・ハイウェイ・バトル! 特設サーキットを駆け抜けるカスタムカート対決だァ!!」
オタ公の絶叫とともに、スタートグリッドに二台のマシンが召喚される。……しかし、カートと呼ぶには、どちらもあまりに珍妙な代物だった。
《乗り物のクセが強いwwww》
《なんだあのカート》
《ヤチヨの神輿浮いてるぞ》
《かぐやのは……犬バイク!?》
ヤチヨが乗り込んだのは、金ピカの装飾が施されたホバー仕様の『サカバン神輿カート』。虚無の目をした古代魚サカバンバスピスが神輿を担ぎ、低くブーンとホバリング音を響かせている。
対するかぐやが跨がったのは、犬DOGEを模したカウルが睨みを利かせるアメリカンチョッパー風の『バイクDOGE』。ふかふかの尻尾がマフラー代わりに激しく震えていた。
「ふっふ〜ん、ヤッチョのサカバン神輿は反重力リニア駆動だよ〜」
「かぐやのバイクDOGEだって負けないもん! 最高速全振りカスタムなんだから! いっけーーー!」
『3、2、1……GO!!』
シグナル点灯と同時に、バイクDOGEが爆音をあげてロケットスタートを決めた。タイヤから白煙を噴き上げ、とんでもない加速で一気に先行する。
「おおっと! スタートダッシュを決めたのはかぐや! バイクDOGEの凄まじいトラクションが路面を噛み砕くッ!」
「わははは! 速い! 彩葉、見ててねー!」
だが、第一コーナーが迫る。鋭角のヘアピンカーブ。
「あ、曲がれな――ぎゃあああ!」
——ドガガガガァン!
スピードに振りすぎて曲がりきれなかったバイクが外壁にド派手に激突し、火花を散らしてスピンした。
《曲がれてなくて草》
《直線番長すぎるwww》
《壁と熱いキッス》
「あーっと! かぐや選手、豪快に壁面へクラッシュ! そこへインベタから静かに滑り込むのは――」
スィーーッ……。
サカバン神輿カートが、虚無の顔のまま異次元のグリップ力でヘアピンを直角に曲がり、壁に刺さったかぐやの横を涼しい顔ですり抜けていった。
「ヤチヨ選手、物理演算を嘲笑う完璧なインベタ走行で、一気にトップへ躍り出たァッ!」
「むきーっ! 待てー! ニトロ点火だーっ!」
かぐやがハンドル脇の骨型レバーを引くと、DOGEのマフラーから青い炎が吹き荒れた。直線で猛然と差を詰める――が、次のカーブでまた壁に吸い込まれる。そんな追走劇を何度か繰り返すうち、ヤチヨはバックミラーをちらりと一瞥し、神輿の上から優雅に手を振った。
「ばいば〜い。サカバン神輿の四次元ドリフト、舐めちゃダメだよ〜」
そのままサカバン神輿は神々しい後光を放ちながら、一足先にチェッカーフラッグを駆け抜けた。
「第一種目。勝者、ヤチヨーーーッ!」
「ぐぬぬぬ……! このコース、カーブが多すぎる! 絶対ヤチヨの細工だ!」
「自分で選んだコースでしょ〜?」
《ヤチヨつっよwww》
《サカバンの虚無顔じわる》
《かぐやどんまい》
* * *
「気を取り直して第二種目! 制限時間内に最高のスイーツを焼け! バーチャル・クッキングバトル!」
オタ公がパネルを展開する。宙に浮かび上がったお題のホログラムを見て、彩葉が「あ」と小さく声を漏らした。
『お題:パンケーキ』
「パンケーキ!」
かぐやが弾かれたように彩葉を振り返る。
「見て彩葉! パンケーキだ! 昔を思い出すね!」
「……かぐや。配信中。その話は今しなくていいから」
「おっとォ!? なにやらエピソードがありそうだ。どういうことでしょうか、いろP!」
オタ公のマイクが、獲物を見つけた猛獣のように突き出される。彩葉が天を仰いで片手で額を押さえると、その横からかぐやがひょこっと顔を出した。
「昔、彩葉がパンケーキ作ってくれたの。小麦粉と水だけで!」
「し、仕方ないでしょ! あの時は高校生で、お金なかったんだから!」
「ぺたーってしてて、全然膨らんでなくて、甘くなくて。不味かった!」
《粉と水wwwwww》
《く、苦学生……》
《それすいとんでは?》
《泣けてきた……》
《いろP……生き抜いてくれてありがとう……》
《涙で画面が見えない》
「うわああああん!」
オタ公が感涙のあまりマイクを濡らしながら絶叫する。
「苦学生いろPの哀愁エピソードに、全ツクヨミが咽び泣いておりますッ!! 食べたいです! その涙と貧困の味がする粉水ぺたぺたパンケーキ、後生ですから私に恵んでくれ~~!?」
「オタ公は一回ミュートにするよ?」
彩葉の冷ややかなツッコミの横で、ヤチヨは手元のボウルを持ち上げたまま、肩を震わせて笑いをこらえていた。
あのパンケーキのことは、ヤチヨもよーく覚えている。
学校へ出かける前の彩葉が、慌ただしく焼いてくれた粉と水のパンケーキ。
もちろん味なんてしなかった。粉っぽくて、ボソボソして、何の甘みもないただの小麦粉の塊。お世辞にも美味しいなんて言えた代物じゃなかった。
あのときはこれで一日を過ごさなければいけないのかと、本気で絶望したものだ。それが今では、思い出すだけで頬が緩んでしまうくらい、どうしようもなく懐かしい。
「……ヤチヨ。さっきから何笑ってるの」
ジトッとした視線が飛んできた。
「え〜? 何のことか分からないな〜」
彩葉が目を細めて睨む。ヤチヨは慌ててボウルに視線を戻すが、口角は上がったままだった。
「彩葉、見て! ふっくらしてる!」
隣で手際よく生地を焼いていたかぐやがフライパンを掲げる。会場にはふわっと、甘く香ばしい匂いが立ち上った。
「……美味しそう」
「でしょ!」
満面の笑みを浮かべるかぐや。その誇らしげな顔に、ヤチヨも思わず「じょうずだね〜」と視線を向けてしまった――その瞬間。
ピピッ、ピピッ、ジュウウウウ!
ヤチヨのフライパンから、容赦ない警告音と黒煙が上がった。
「わっ、焦げた!?」
「あーっ! ヤチヨが真っ黒にしてるー!」
「あちゃ~。真っ黒こげなのです。ぐすん」
「ふふん、これは食べるまでもなくかぐやの勝ちだね!」
かぐやの勝ち誇ったように腰に手を当てる。まあ、そもそもツクヨミの中では味は分からないのだが。
それを見て、オタ公がすかさず腕を振り上げた。
「第二種目、勝者かぐやーッ!」
「よし! これで一対一! 彩葉、次も絶対勝つからね!」
《焦がしヤッチョ助かる》
《これでイーブン! 熱い!》
《勝負の行方は最終戦へ……!》
* * *
「さあ神々のみなさん、運命の最終種目がやってまいりました! 舞台は電脳の武舞台――VR対戦モード『KASSEN SETSUNA』ッ!!」
夜空が暗転する。足元に石畳が敷き詰められ、周囲に円形の壁がせり上がった。
向かい合うかぐやは、竹と三方を模したハンマーを両手で構えている。ヤチヨは和傘を肩に担いだ。視界の上方で、二本の体力ゲージが光る。
《SETSUNAキターーー!》
《いろPを賭けたガチ対戦》
《二人ともがんばれ!》
「特別ルールは一本先取! さあ、勝つのはどっちだ⁉ 最終ラウンド、ファイッ!」
かぐやが先に動いた。石畳を蹴り、頭上からハンマーを叩きつけてくる。ヤチヨは半歩だけ身を引いた。鼻先をハンマーがかすめる。石畳が砕け、破片が跳ねた。
ヤチヨはその隙にかぐやの脇腹へ石突きを突き入れる。
「あ、痛っ!」
「隙あり〜。ちょっと大きく振りすぎだよ」
かぐやがハンマーを引き戻すより早く、ヤチヨは横へ抜けた。開いた傘をかぐやの背に当て、そのまま壁際まで押し込む。
「ヤチヨ選手、開幕の大技をかわして反撃! かぐや選手、早くも壁際へ追い込まれたァッ!」
「まだまだ!」
かぐやが体をひねり、ハンマーを横薙ぎに振るった。ヤチヨは傘を傾けて受け流す。腕に重い衝撃が走り、靴底が石畳を滑った。
「やるねぇ」
「これくらいで勝ったと思わないでよ!」
かぐやが距離を詰める。ヤチヨはしゃがんでハンマーの下をくぐりながら、閉じた傘で足首を払う。
「わっ――」
かぐやの体勢が崩れた。ヤチヨは立ち上がりざまに石突で、その胸元を打つ。かぐやが後ずさる。追ってもう一歩。振り下ろされたハンマーをかわし、逃げ道を塞ぐ位置へ回る。
かぐやはヤチヨから距離を離そうとして、——背中から壁にぶつかった。
「あーっと、かぐや選手、再び壁際へ! ヤチヨ選手、逃げる先を誘導していたかァッ! さあ、ゲージは残りわずか! 逆転はあるのかぁー!?」
《ヤッチョつよっ》
《かぐやちゃん逃げてー!》
《完全に動き読まれてる》
「ヤチヨ、そこどいて!」
「どいたら、いろPと踊れなくなっちゃうもん」
「かぐやだって踊りたいの!」
その言葉と同時に、かぐやが壁を蹴った。跳ね上がった体が、ヤチヨの視界いっぱいに迫る。高く掲げたハンマーに光が集まった。まともに受ければ、体力は残らない。
起死回生の一撃。
でも。
(当たらないよ)
ヤチヨは傘を閉じたまま、あえてかぐやへ向かって踏み込む。ハンマーの頭がヤチヨの背後を通り過ぎ、石畳を激しく打った。
「えっ」
「ごめんね。いろPとの一曲、ヤチヨも譲れないんだ」
着地したばかりのかぐやは、まだハンマーを持ち上げられない。ヤチヨは両手で傘を握り、がら空きの胴へ石突きを突き入れた。
かぐやの体力ゲージが消える。
『K.O.!!』
「勝者……ヤチヨーーーーーーッ!!」
夜空にヤチヨの勝利演出がドカンと打ち上がり、闘技場を囲んでいた結界が消えた。
負けたかぐやはハンマーを握りしめたまま、信じられないものを見るように立ち尽くしていた。
「……っ!」
そして、顔を真っ赤にして叫んだ。
「ずるい! ヤチヨずるいじゃん!! ずっと端っこに追い込んで、あんなのハメじゃん!」
「あはは、それが勝負だよ〜?」
「ずるい! 絶対ずるい! そんなの……そんなの……!」
かぐやの大きな瞳から、ぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちた。
「い゛や゛だぁぁぁぁぁぁぁ! かぐやも彩葉と踊りだい゛ーーーーーーッ!!」
「わっ、ちょっと!?」
叫ぶなり、かぐやは猛烈な勢いで彩葉の胸へ飛び込んだ。腰にがっちりとしがみつき、服をぐしゃぐしゃに濡らしながら全力で泣きじゃくる。
「ヤチヨのバカ! ゲームうますぎるんだよぉ! もう一回! 泣きの一回やろうよぉぉぉ!」
「うーん。三本勝負って約束だからね~……」
「い゛や゛ぁ……彩葉ぁぁぁ……!」
《大号泣たすかる》
《完封されて泣いちゃったww》
《赤ちゃんになっちゃったww》
さっきまでの威勢はどこへやら、彩葉の胸に顔を押し当ててわんわん泣いている。
彩葉は「自分で勝負するって言ったんでしょ」と呆れつつも、その背中をぽんぽんと優しく叩いてあやした。そして、困ったような笑顔でヤチヨを見やる。
ヤチヨは、込み上げる愛おしさとおかしさをこらえきれず、ぷっと吹き出した。
目が合った瞬間、彩葉までつられて吹き出してしまう。
「ふ、ふたりとも笑わないでぇぇぇ!」
「ごめん、ごめん。もう、しょうがないなあ」
彩葉はかぐやを抱いたまま、もう片方の手をヤチヨへ伸ばした。
「……ほら、ヤチヨもこっちおいで」
「え?」
言われるがままにヤチヨが一歩近づいた瞬間、彩葉の腕がヤチヨの首筋へふわりと回され、そのままぎゅっと抱き寄せられた。
彩葉の温もりに包まれる。
「……最初の曲は、約束どおりヤチヨと二人で踊る」
二人を抱きしめたまま、彩葉が静かに言う。
「その次にかぐやが入ってくればいいでしょ。……三人で、踊ろうよ」
かぐやがぴくっと顔を上げた。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった目で彩葉を見つめ、それからヤチヨを見る。
「……ほんと?」
「うん。ヤチヨも、それでいいよね?」
「もちろん」ヤチヨは目を細め、二人をぎゅっと抱きしめ返した。「ヤッチョも、三人で踊りたいもん」
「……ぐすっ。次は、絶対に勝つから」
かぐやも、彩葉越しにヤチヨの背中に手を回してきた。
三人でぎゅうぎゅうのハグ。
「いいよ〜。ヤッチョも負けないもん」
「はいはい。次があるとは一言も言ってないんだけどね」
彩葉がやれやれと呆れて笑う。だがその腕は、二人の背中に回されたまま、決して離そうとはしなかった。
《あああああああ(尊死)》
《光の空間すぎる》
《実質全員優勝》
《オタ公生きてるか???》
「げ、現場のオタ公より……臨時中継です……ッ!!」
背後で、オタ公の激しい嗚咽とマイクのノイズが響いた。
「勝者も敗者も、まとめていろPに回収されました……! 神々よ見よ、これがツクヨミの誇る完全無欠の光のトライアングル……! 私は今、この時代に生まれてきて本当によかったと感動しています……ッ!!」
その魂の絶叫に、かぐやが鼻をすすりながら「オタ公も泣いてる!」と吹き出した。
彩葉とヤチヨも顔を見合わせて笑い出す。
夜空を埋め尽くす祝福の弾幕コメントに包まれながら、三人の温かな笑い声が、ツクヨミの空へと溶けていった。