ノクチルの4人には、誰が口にしたわけでもない暗黙の了解があった。

――プロデューサーに対して、誰も一歩踏み込みすぎないこと。

4人とも、プロデューサーに特別な感情を抱いていた。
けれど、それぞれがそれを察しながらも、誰か一人だけが彼の「特別」になることは避けてきた。

そんな均衡が、ある日崩れる。


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ギスギスノクチル in 妹樋口

 

「……円香先輩が、妹役?」

 

雛菜は、机の上に置かれた台本とイメージ資料を覗き込みながら言った。

 

「うん。そうみたい」

 

「へぇ〜……♡」

 

その声は、いつもと変わらない。

いつもの雛菜の表情。

柔らかくて、どこか楽しそうで。

 

だからこそ、円香は嫌な予感がした。

 

「なに?」

 

「ううん? 別に〜」

 

雛菜は手に持っていたイメージ資料をテーブルに戻すと、次に台本を手に取って、表紙を眺める。

そして、パラパラと適当に台本を捲りながら問いかけた。

 

「円香先輩、こういうの嫌いだったよね?」

 

「……仕事なんだから、やるでしょ」

 

「そうだねぇ」

 

雛菜はカラリと笑った。

 

「円香先輩って、こういう可愛い妹役とか、絶対やりたがらないと思ったのに」

 

「やりたいかどうかと、仕事としてやるかどうかは別でしょ」

 

「……ふぅん」

 

雛菜は少しだけ目を細めた。

そしてまた。

パラリと開いた台本に視線を落とす。

 

「じゃあ、雛菜の気のせいなのかな〜」

 

「何が」

 

「円香先輩が、これ受けたこと」

 

「……どういう意味?」

 

「だってぇ〜」

 

雛菜は台本を閉じる。

パタン、と。強く、わざとらしく音を立てるように。

 

「円香先輩。こういう仕事、前だったらもっと嫌そうな顔してたよ?」

 

「…別に。もう今更、いちいち顔に出してないだけ」

 

「ふ〜ん?」

 

「それだけ」

 

「そっかぁ♡」

 

雛菜はまたにこにこと笑う。

 

「じゃあ、雛菜の気のせいなんだね♡」

 

「…………そう」

 

「あは〜♡」

 

円香は、じっと雛菜を見る。

 

この笑い方。

何かを考えているときの雛菜は、いつもこうだ。

何も考えていないように見えて、実際には妙なところだけよく見ている。

 

「……何」

 

「ん〜?」

 

「さっきから」

 

「何もないよ〜」

 

「嘘」

 

「え〜?」

 

雛菜は楽しそうに笑った。

 

「円香先輩、怖いなぁ」

 

「そういう顔してるだけでしょ」

 

「じゃあ、聞いていい?」

 

「……どうぞ」

 

「これ、プロデューサーが持ってきた仕事なんでしょ?」

 

一瞬。

 

円香の指が止まった。

ほんのわずかな間だった。

けれど、雛菜は見逃さなかった。

 

「……そうだけど?」

 

「そっかぁ〜♡」

 

「それが?」

 

「ううん」

 

雛菜は首を傾げる。

 

「円香先輩、プロデューサーが持ってきた仕事だと、最近ちょっと凄い素直だなぁって思って」

 

「……気のせい」

 

「そうかなぁ」

 

「そうだよ」

 

「でも、前はもっと嫌そうな顔してたよ?」

 

「さっきも言ったでしょ?

仕事なんだから今更、顔に出してないだけ」

 

「ふ〜ん」

 

雛菜はまた台本を開いた。

今度は、さっきよりもゆっくりページを捲っていく。

 

「じゃあさぁ」

 

「何」

 

「プロデューサーが持ってきたから、やったわけじゃないんだ?」

 

「……仕事だから」

 

「やりたいかどうかと、やるかどうかは別?」

 

「そう」

 

「なるほど〜」

 

雛菜は嬉しそうに頷いた。

 

「じゃあ、聞き方を変えるね」

 

「……何」

 

「プロデューサーと、何かあった?」

 

「…………」

 

円香は答えなかった。

 

雛菜も急かさない。

ただ、にこにこと円香を見ている。

 

「……何もない」

 

「ふ〜ん」

 

「本当に」

 

「そうなんだぁ」

 

雛菜は笑っていた。

けれど、その笑顔にはさっきまでとは少し違うものが混じっていた。

 

「じゃあ、雛菜の気のせいなんだね」

 

「……だから、そう言ってるでしょ」

 

「そっかぁ」

 

雛菜は再び、台本を閉じた。

 

「じゃあ、円香先輩」

 

「何」

 

「なんで、そんな顔するの?」

 

「……どんな顔」

 

「今の顔」

 

「……」

 

円香は黙る。

雛菜は楽しそうに笑った。

 

「やっぱり、何かあるんじゃない?」

 

「……雛菜」

 

「なぁに?」

 

「仕事の話でしょ」

 

「うん」

 

「だったら、それでいいじゃない」

 

「そうだねぇ」

 

雛菜は頷く。

そして、少しだけ声を落とした。

 

「でもさ」

 

「……」

 

「ノクチルって、そういうの、ちゃんと話してきたよね?」

 

円香の眉が僅かに動いた。

 

「……何の話?」

 

「プロデューサーのこと」

 

「……」

 

「透も、小糸ちゃんも、雛菜も」

 

雛菜は指を一本ずつ折っていく。

 

「みんな、プロデューサーのこと好きだったとしても」

 

「……」

 

「誰かが近づきすぎたら、他の誰かが止める」

 

「……そんな大げさなものじゃないでしょ」

 

「そうかなぁ?」

 

雛菜は首を傾げる。

 

「でも、ずっとそうだったよ?」

 

「……」

 

「誰も、決めたわけじゃないのに」

 

「……」

 

「誰も、一線を越えなかった」

 

円香は黙っている。

雛菜の声は相変わらず柔らかい。

責めているようには聞こえない。

 

だからこそ、余計に逃げ場がなかった。

 

「雛菜たちってさぁ」

 

雛菜は小さく笑う。

 

「ずっと、誰も一線を越えなかったよね」

 

「……」

 

「たぶん、自然にできた不戦協定だったんだと思う」

 

「……不戦協定?」

 

「うん」

 

雛菜は頷いた。

 

「誰か一人が特別にならないように」

 

「……」

 

「誰か一人だけが、プロデューサーの近くに行かないように」

 

円香の視線がわずかに逸れる。

雛菜はそれを追わない。

ただ、静かに続けた。

 

「でも」

 

一拍。

 

「円香先輩だけ、先に行っちゃった」

 

「…………」

 

「違う?」

 

円香は答えない。

 

「雛菜、別に怒ってないよ?」

 

「……そう」

 

「うん」

 

雛菜は笑う。

 

「ただ、ちょっと寂しいなぁって思ってるだけ」

 

「……」

 

「円香先輩が一人で特別になるのは、なんか嫌だなぁ」

 

その言葉だけは、少しだけ本音に聞こえた。

円香は雛菜を見る。

 

「……別に、特別になったつもりはない」

 

「でも、なったんじゃない?」

 

「……」

 

「円香先輩、前と違うもん」

 

「……何が」

 

「プロデューサーの話をするとき」

 

雛菜は笑った。

 

「あは〜♡」

 

「……」

 

「今もそうだよ?」

 

「何が」

 

「ちょっとだけ、困ってる」

 

「……雛菜のせいでしょ」

 

「そうかも〜♡」

 

雛菜は楽しそうに笑った。

 

「でも、円香先輩が分かりやすいからだよ」

 

「……最悪」

 

「え〜、ひどいなぁ」

 

雛菜は少しだけ頬を膨らませる。

それから、また笑った。

 

「でもさ」

 

「……何」

 

「雛菜たち、仲間でしょ?」

 

「……そうだけど」

 

「じゃあ」

 

雛菜は、円香の目をまっすぐ見る。

 

「ちゃんと話そうよ」

 

「……何を」

 

「プロデューサーのこと」

 

「……」

 

「誰が好きとか」

 

「……」

 

「誰が先に近づいたとか」

 

「……雛菜」

 

「うん?」

 

「それ、喧嘩する気?」

 

雛菜は少しだけ目を細めた。

そして――

 

「やは〜♡」

 

いつもの、柔らかな笑顔。

 

「うん」

 

「……」

 

「だって、円香先輩」

 

雛菜は楽しそうに言った。

 

「私たち、仲間でしょ?」

 

円香は小さく息を吐く。

 

「……そうだね」

 

「じゃあ」

 

雛菜は笑う。

 

「ちゃんと仲良く喧嘩しようね♡」

 





妹樋口…だと…?
ふつう樋口こんなのやらないでしょ?
あー多分、Pとヤッた後にPが持ってきた仕事なんじゃね?
ヤッた後のメロってる樋口なら多分やってくれるでしょ。

というカスみたいな会話の中で生まれた、ギスギスノクチルです。
絶対、雛菜には速攻バレて詰められるよ樋口は。
そういう女だよ樋口は。

というカスみたいな推定で生まれました。
対戦、何卒宜しくお願い致します。

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