妹樋口という概念を見て生まれたギスギスノクチル 作:湿気りきって腐った弾丸
原作:アイドルマスター
タグ:R-15 アイドルマスターシャイニーカラーズ アイドルマスター ギスギス 樋口 樋口円香 市川雛菜
ノクチルの4人には、誰が口にしたわけでもない暗黙の了解があった。
――プロデューサーに対して、誰も一歩踏み込みすぎないこと。
4人とも、プロデューサーに特別な感情を抱いていた。
けれど、それぞれがそれを察しながらも、誰か一人だけが彼の「特別」になることは避けてきた。
そんな均衡が、ある日崩れる。
「……円香先輩が、妹役?」
雛菜は、机の上に置かれた台本とイメージ資料を覗き込みながら言った。
「うん。そうみたい」
「へぇ〜……♡」
その声は、いつもと変わらない。
いつもの雛菜の表情。
柔らかくて、どこか楽しそうで。
だからこそ、円香は嫌な予感がした。
「なに?」
「ううん? 別に〜」
雛菜は手に持っていたイメージ資料をテーブルに戻すと、次に台本を手に取って、表紙を眺める。
そして、パラパラと適当に台本を捲りながら問いかけた。
「円香先輩、こういうの嫌いだったよね?」
「……仕事なんだから、やるでしょ」
「そうだねぇ」
雛菜はカラリと笑った。
「円香先輩って、こういう可愛い妹役とか、絶対やりたがらないと思ったのに」
「やりたいかどうかと、仕事としてやるかどうかは別でしょ」
「……ふぅん」
雛菜は少しだけ目を細めた。
そしてまた。
パラリと開いた台本に視線を落とす。
「じゃあ、雛菜の気のせいなのかな〜」
「何が」
「円香先輩が、これ受けたこと」
「……どういう意味?」
「だってぇ〜」
雛菜は台本を閉じる。
パタン、と。強く、わざとらしく音を立てるように。
「円香先輩。こういう仕事、前だったらもっと嫌そうな顔してたよ?」
「…別に。もう今更、いちいち顔に出してないだけ」
「ふ〜ん?」
「それだけ」
「そっかぁ♡」
雛菜はまたにこにこと笑う。
「じゃあ、雛菜の気のせいなんだね♡」
「…………そう」
「あは〜♡」
円香は、じっと雛菜を見る。
この笑い方。
何かを考えているときの雛菜は、いつもこうだ。
何も考えていないように見えて、実際には妙なところだけよく見ている。
「……何」
「ん〜?」
「さっきから」
「何もないよ〜」
「嘘」
「え〜?」
雛菜は楽しそうに笑った。
「円香先輩、怖いなぁ」
「そういう顔してるだけでしょ」
「じゃあ、聞いていい?」
「……どうぞ」
「これ、プロデューサーが持ってきた仕事なんでしょ?」
一瞬。
円香の指が止まった。
ほんのわずかな間だった。
けれど、雛菜は見逃さなかった。
「……そうだけど?」
「そっかぁ〜♡」
「それが?」
「ううん」
雛菜は首を傾げる。
「円香先輩、プロデューサーが持ってきた仕事だと、最近ちょっと凄い素直だなぁって思って」
「……気のせい」
「そうかなぁ」
「そうだよ」
「でも、前はもっと嫌そうな顔してたよ?」
「さっきも言ったでしょ?
仕事なんだから今更、顔に出してないだけ」
「ふ〜ん」
雛菜はまた台本を開いた。
今度は、さっきよりもゆっくりページを捲っていく。
「じゃあさぁ」
「何」
「プロデューサーが持ってきたから、やったわけじゃないんだ?」
「……仕事だから」
「やりたいかどうかと、やるかどうかは別?」
「そう」
「なるほど〜」
雛菜は嬉しそうに頷いた。
「じゃあ、聞き方を変えるね」
「……何」
「プロデューサーと、何かあった?」
「…………」
円香は答えなかった。
雛菜も急かさない。
ただ、にこにこと円香を見ている。
「……何もない」
「ふ〜ん」
「本当に」
「そうなんだぁ」
雛菜は笑っていた。
けれど、その笑顔にはさっきまでとは少し違うものが混じっていた。
「じゃあ、雛菜の気のせいなんだね」
「……だから、そう言ってるでしょ」
「そっかぁ」
雛菜は再び、台本を閉じた。
「じゃあ、円香先輩」
「何」
「なんで、そんな顔するの?」
「……どんな顔」
「今の顔」
「……」
円香は黙る。
雛菜は楽しそうに笑った。
「やっぱり、何かあるんじゃない?」
「……雛菜」
「なぁに?」
「仕事の話でしょ」
「うん」
「だったら、それでいいじゃない」
「そうだねぇ」
雛菜は頷く。
そして、少しだけ声を落とした。
「でもさ」
「……」
「ノクチルって、そういうの、ちゃんと話してきたよね?」
円香の眉が僅かに動いた。
「……何の話?」
「プロデューサーのこと」
「……」
「透も、小糸ちゃんも、雛菜も」
雛菜は指を一本ずつ折っていく。
「みんな、プロデューサーのこと好きだったとしても」
「……」
「誰かが近づきすぎたら、他の誰かが止める」
「……そんな大げさなものじゃないでしょ」
「そうかなぁ?」
雛菜は首を傾げる。
「でも、ずっとそうだったよ?」
「……」
「誰も、決めたわけじゃないのに」
「……」
「誰も、一線を越えなかった」
円香は黙っている。
雛菜の声は相変わらず柔らかい。
責めているようには聞こえない。
だからこそ、余計に逃げ場がなかった。
「雛菜たちってさぁ」
雛菜は小さく笑う。
「ずっと、誰も一線を越えなかったよね」
「……」
「たぶん、自然にできた不戦協定だったんだと思う」
「……不戦協定?」
「うん」
雛菜は頷いた。
「誰か一人が特別にならないように」
「……」
「誰か一人だけが、プロデューサーの近くに行かないように」
円香の視線がわずかに逸れる。
雛菜はそれを追わない。
ただ、静かに続けた。
「でも」
一拍。
「円香先輩だけ、先に行っちゃった」
「…………」
「違う?」
円香は答えない。
「雛菜、別に怒ってないよ?」
「……そう」
「うん」
雛菜は笑う。
「ただ、ちょっと寂しいなぁって思ってるだけ」
「……」
「円香先輩が一人で特別になるのは、なんか嫌だなぁ」
その言葉だけは、少しだけ本音に聞こえた。
円香は雛菜を見る。
「……別に、特別になったつもりはない」
「でも、なったんじゃない?」
「……」
「円香先輩、前と違うもん」
「……何が」
「プロデューサーの話をするとき」
雛菜は笑った。
「あは〜♡」
「……」
「今もそうだよ?」
「何が」
「ちょっとだけ、困ってる」
「……雛菜のせいでしょ」
「そうかも〜♡」
雛菜は楽しそうに笑った。
「でも、円香先輩が分かりやすいからだよ」
「……最悪」
「え〜、ひどいなぁ」
雛菜は少しだけ頬を膨らませる。
それから、また笑った。
「でもさ」
「……何」
「雛菜たち、仲間でしょ?」
「……そうだけど」
「じゃあ」
雛菜は、円香の目をまっすぐ見る。
「ちゃんと話そうよ」
「……何を」
「プロデューサーのこと」
「……」
「誰が好きとか」
「……」
「誰が先に近づいたとか」
「……雛菜」
「うん?」
「それ、喧嘩する気?」
雛菜は少しだけ目を細めた。
そして――
「やは〜♡」
いつもの、柔らかな笑顔。
「うん」
「……」
「だって、円香先輩」
雛菜は楽しそうに言った。
「私たち、仲間でしょ?」
円香は小さく息を吐く。
「……そうだね」
「じゃあ」
雛菜は笑う。
「ちゃんと仲良く喧嘩しようね♡」
妹樋口…だと…?
ふつう樋口こんなのやらないでしょ?
あー多分、Pとヤッた後にPが持ってきた仕事なんじゃね?
ヤッた後のメロってる樋口なら多分やってくれるでしょ。
というカスみたいな会話の中で生まれた、ギスギスノクチルです。
絶対、雛菜には速攻バレて詰められるよ樋口は。
そういう女だよ樋口は。
というカスみたいな推定で生まれました。
対戦、何卒宜しくお願い致します。