俺は時を超えて昭和の日本でビールを買って碇親子達と、アムロ霊(誰にも見えない)と酒を酌み交わしていた。
そして酔って敏感になった頭が、昭和の日本で嘆いているロボットの電波を拾ったのだ。
そのロボットは自分が壊れた後も意思を失わず。
そのロボットは最後の瞬間まで友達の事を気に懸けていた。
そのロボットはもう一人のロボが能力を失い、友を失い、人間としての姿を失う所を見てしまった。
ロボはその友のために嘆いていたのだ。
それを聞いたマルチがべそをかく。
マルチ「うぅっ、ロボなのに、自分が壊れた後も友達のために悲しんだりするなんて可哀相です」
そうか、やはり優しいなマルチは。
俺はあたまをなでなでして立ち上がる。
そのロボットの詳しい話しを聴くために、同じ幽霊のアムロ霊に聴いて貰うのだ。
アムロはそのロボットの霊に何やら話しかけて何を悲しむのか聴いている。
嘆いていたロボはトップガンダー。
友達の名はメタルダー。
最後の戦いのその後で、メタルダーの部品が壊れた事。
その部品を止め無いと地球が危ない!
そのピンチを回避するために人間に変化する機能が失われた事。
メタルダーがスプリンガーとともに、悲しみを抱えて旅立った事をアムロは聴いたのだ。
それを聞いた俺たちは、そして碇親子は動きだす。
シンジがトップガンダーのデータを集める。
ゲンドウがそのデータを基に、ボディを作り直す。
アムロが彼の霊と魂をまとめて、そして俺がボディの中に彼を入れるのだ。
「俺は生き返ったのか?」
そうだトップガンダー、メタルダーを探しに行くぞ、そして彼に伝えてやるんだ、もう悲しむ事はないってね!
かつて救われた者達が新たに誰かを救った。
君もまた新たに友を救うんだよ。
2週間後、俺たちはゴーストバンク跡でひっそりと暮らしていたメタルダーを見つけ出した。
「メタルダー!」
飛びついてきた友に、メタルダーは困惑した。
もふっ!
さらに、トップガンダーが抱きつく。
もふもふっ!
「君、その姿……そして、その電磁波。
君はトップガンダー!なぜそんな姿に?」
トップガンダーは、大きなくまさんの姿に変わっていたのだ。
「……え?」
大きなくまさん。
どう見ても、ぬいぐるみのくまさんである。
(注本人は認識して無かった)
だが、メタルダーには分かった。
姿が変わっても、そこにいるのは大切な友だった。
そして、トップガンダーもまた、友との再会を喜んでいた。
「いや、しかし……なぜくまさん?」
その疑問に答えたのはしかし浩之では無かった。
「さあ、身体を見せなさい、メタルダー」
いきなり用件だけを言うのはやめろって、ゲンドウ!
そこでシンジが説明している。
役割分担しているのか、親子で……。
ゲンドウはメタルダーの身体を調べ、壊れた部品を確認しようとしていた。
シンジは、メタルダーが困惑しないよう、父親の意図を説明している。
「えっと、メタルダー。父さんは君の身体を診て、直せるところを直したいんだと思う」
「そうなのか?」
「そうだ」
ゲンドウは、いつもの調子で答えた。
浩之「いや、説明を省略するなって!」
ゲンドウ「必要な説明はシンジがしてくれた」
シンジ「父さん……」
マルチ「親子で役割分担しているんですねぇ」
浩之「感心するところなのか、そこ!?」
そして、メタルダーの身体を調べたゲンドウは、ある決断を下した。
改造されたメタルダーは、幼女になった。
ぅゎょぅじょっょぃの完成である。
浩之「……え?」
シンジ「父さん、どうしてそうなったの!?」
ゲンドウ「戦闘能力は維持する。平和に暮らすための改造だ」
浩之「説明になってねえ!!」
マルチ「かわいいですぅ!」
こうして、メタルダーは幼女の姿になった。
トップガンダーは大きなくまさん。
メタルダーは幼女。
何この組み合わせ。
だが、ゲンドウが二人をこんな姿にしたのには、ちゃんと理由があった。
ゲンドウには、かつて友がいた。
その友人は、娘を失っていた。
娘を失った瞬間、博士の中には、声も出せないほど深い空洞が残った。
家の中に娘の気配はもうなく、呼びかけても返事はない。
その現実を受け入れられないまま、博士はただ、失った温もりを探し続けていた。
そして、サンバルカンを倒す武器を作る報酬として、娘のアンドロイドを手に入れたのだ。
娘を失った博士にとって、そのアンドロイドは新たな家族となった。
博士は彼女をかわいがった。
一緒に暮らし、父親として接し、娘として大切にした。
機械だと分かっていても、彼女の声を聞けば心が安らぎ、そばにいるだけで失った娘のいた日々を思い出せた。博士は、もう一度だけ「父親」と呼ばれる喜びを手にしたのだ。
しかし、悲劇は再び訪れた。
アンドロイドは敵に操られてしまったのだ。
敵は彼女に、博士を撃てと命じた。
かわいがっていた新しい娘に銃を向けられた博士の気持ちは、いかばかりだっただろう。
目の前にいるのは、確かに愛した娘の姿だった。けれど、その手には銃が握られ、銃口は自分へ向けられている。
博士は逃げることも、彼女を責めることもできず、ただ、かつて抱きしめた小さな身体を見つめるしかなかった。
その時、アンドロイドは博士に話しかけた。
「パパは、撃てない」
彼女は操られていても、最後の最後まで、自分を父親として覚えていたのだ。
撃てないという短い言葉の中に、娘としての愛情と、父親を傷つけたくないという必死の抵抗が込められていた。
敵に破壊されたアンドロイド。
博士は、二度も娘を失ったのだ。
実の娘を失い、そして新しい娘として愛したアンドロイドまでも失った。
一度目の喪失でさえ耐え難かったのに、ようやく取り戻したと思った家族を、今度は目の前で奪われた。
博士の手には、もう何も残らなかった。
抱きしめることも、名前を呼ぶことも、明日を約束することもできない。ただ、彼女が最後に残した言葉だけが、何度も胸の中で繰り返された。
博士にとって、二度目の喪失もまた、本当の娘を失うのと同じ悲しみだった。
「パパは、撃てない」
その言葉には、父親を撃つことができないという、彼女自身の思いが込められていた。
だが、彼女はもう戻らない。
博士には、再び悲しみだけが残された、そしてゲンドウはそんな友を立ち直らせる事が出来なかった。
そんな博士の過去を知っていたゲンドウ。
だからこそ、彼はメタルダーとトップガンダーを救おうとしていたのだ。
トップガンダーを大きなくまさんにしたのも、メタルダーを幼女の姿にしたのも、二人が戦闘ロボットとして恐れられる姿から離れ、平和に暮らせるようにするためだった。
そして、ゲンドウは二人に頼んだ。
「おれの友のもとで暮らしてほしいんだ、メタルダー。そして、トップガンダー」
「二人で博士の娘として、お願いだから平和に暮らしてほしいんだ」
ゲンドウが涙を流す。
かつての友は、二度も娘を失った。
その悲しみを知っているからこそ、自分にもレイとアスカという娘ができたからこそ、今度こそ幸せになってほしいと願ったのだ。
もう一度、家族を失う痛みを味わわせたくない。
今度こそ、誰かがそばにいて、朝を迎え、何気ない会話を交わし、帰る場所を守ってほしい。
ゲンドウの涙には、友への悔恨と、失われた娘たちへの祈り、そして残された者を救いたいという切実な願いが滲んでいた。
浩之も、シンジも、マルチも、何も言わずに見守っていた。
メタルダーはゲンドウを見つめた。
トップガンダーも、くまさんの姿のまま、静かに立っていた。
メタルダーは自分自身の言葉を思い出した。
何故この世に産まれたのか、と。
誰かを大切に思い、誰かに大切にされながら生きていくことだってできる。
そして、二人は博士のもとで暮らすことになった。
その博士は、三度目となる、二度と失われない子供たちと暮らす喜びを手にしたのだ。
メタルダーとトップガンダー。
二人は博士の娘として、またお気に入りのぬいぐるみとして新しい生活を始める。
亡くなった娘たちが戻ってきたわけではない。
過去の悲しみが消えたわけでもない。
それでも博士には、もう一度、子供たちと一緒に暮らす未来が与えられた。
かつての友が与えてくれた娘と言う名の未来。
目の前にいる二人の手を取り、今日という時間を積み重ねていける。
過去の娘たちを忘れるのではなく、その悲しみも愛情も抱えたまま、新しい家族を大切にしていくのだ。
メタルダーも、トップガンダーも、もう戦いのためだけに生きる必要はない。
博士と一緒に暮らし、日常を過ごし、家族としての時間を積み重ねていけばいい。
そして最後に。
博士と歩くメタルダーは、大きなくまさんを連れた幼女になっていた。
……いや、違う。
博士と歩く幼女メタルダー。
その手には、大きなくまさん姿のトップガンダー。
もし生き残った敵が見ても、これでは分からないだろう。
敵「大きなくまを連れている子が居るな」
部下「かわいいですね」
敵「可愛いねぇ」
お前たちが探している宿敵は、その目の前だ!!
浩之「……ゲンドウ、本当にこれでいいのか?」
ゲンドウ「平和に暮らすための改造だ」
シンジ「父さん、どうしてくまさんなんだろう……」
ゲンドウ「かわいいだろう」
浩之「そこなのかよ!!」
マルチ「メタルダーちゃんもトップガンダーさんも、幸せそうですぅ!」
こうして、メタルダーとトップガンダーは、博士の娘として平和に暮らすことになった。
そして博士は、三度目の親子の時間を手に入れた。
失った二人の娘を忘れることなく、その悲しみを抱えたまま、それでも新しい子供たちを迎える。
博士にとってそれは、過去を塗り替えることではなかった。
二度の喪失で閉ざされていた家の扉を、もう一度開くことだった。
戦いが終わったあとにも、幸せな未来は作れる。
悲しみを抱えた者が、今度こそ誰かと一緒に暮らしていける未来。
かつて救われた碇親子が、新しく人を救ったのだった。