モングレル「サリーと夫婦ならまぁ、退屈はしなさそうだな」 作:たくわん坊
「母さん何言ってるの!?」
「僕、何かおかしな事いったかい?」
「おかしい事しかいってないよ!?」
サリーのトンデモ発言にモモが盛大に噛み付いているが、まぁ気持ちはわかるぜ……。
「モモだってモングレルが父親ならうれしいだろう?」
「嬉しくなっ……く、は、ない、ですけどぉ!?」
「だろう?なら問題ないじゃないか」
「うむ、む、むぅぅぅぅ……」
いや、いやいやなに言いくるめられてるんだよモモ、そりゃあ確かにモモとの付き合いも長いし、よく発明品について相談に乗ったり話し合ったりもしてたから懐かれているのは分かるが。
「あー、その、なんだ、サリー。さっきのはあくまで世辞だからな?あんまり本気にすんなよ?」
「あ、そうなの。残念だな……」
「いや、残念て……」
前の勧誘の時にも同じようなやり取りはしたがサリーはあまり冗談を言うタイプじゃない。と言うかそもそも冗談が通じない事の方が多い。俺は別に鈍感系主人公を気取ってる訳じゃないしサリーとの付き合いも長いから分かる。サリーのさっきの発言は、おそらく……。
「ああ、うん、そうだな。ねぇモングレル」
「なんだよ?」
「僕と結婚してさ、夫婦に、家族になってよ」
──────
「ちょっと!母さん!いい加減にしてよ!モングレルも!黙ってないでちゃんと、言って、くだ、、さいっ?」
モモが目を丸くしてこっちを見ている。俺は、今どんな顔をしている?
最初はケンさんから散々食わされた菓子の糖分で脳をフル回転させてどう空気を悪くしないよう言葉を選んでいだが、サリーの、放った″家族″と、言う、言葉。その言葉に俺の思考は真っ白になっちまった。
家族。それは俺が20年前に故郷と共に失い唯一残った血筋を頼った末に打ち捨てられたもの。
宿場町ブレイリーを通った際に見たあの夢の事もあって若干ナイーブになっていたというのもある。サリーの放ったその言葉は深く、重く、俺の胸に、突き刺さった。
思考が、纏まらない、だがいつまでも呆けてるわけにもいかない。真っ白な思考とは別に俺の口から言葉が出た。
「酔ってるのか?」
自分で言っておいて最低な返しだ、と思う。
「僕、お酒は強い方だと思うよ。それにまだ半分も飲んでない」
「……本気、なの、か?」
「本気だよ。モングレルも言ったように僕もモングレルと一緒に居ると楽しいし退屈しないんだよね」
「そう、か……」
「前々からアピールはしてたつもりなんだけど、伝わってなかったかな」
「アピールって、あぁ、あれか……」
前の、ルス村でのサウナの時のことか。下着を着けて入るとは言え混浴を提案された時はどうかと思ったがアピールだったのかアレ。確かにあの時は扇情的なサリーの光景に反応しかけたがそんな感じの流れ無かっただろ。スルーした申し訳なさ半分、アレがアピールとは思わんと言い訳半分ってとこだな。
「僕としてはあそこで手を出してくれたら早かったんだけどね」
「いや、普通に犯罪だわ」
側から見たら完全に事案だわ、もしもしポリスメン?されるわ。電話もポリスメンもねぇけど。……サリーのトンデモ発言のお陰で少し頭が冷えたな。
「あー、なんだ、サリーの想いは伝わったぜ。ホントならちゃんと答えを返すべきなんだが……悪いんだが一旦持ち帰って考えさせてもらっていいか?何分と背負い込んでる荷物が多くてな……」
正直、サリーの想いにはちゃんと答えを返したいと思う、しかし。
「それに、詳しく話をしようにも、ちと、場所が悪いしな……」
ここは隅っこの方とはいえ、ギルドの酒場で人目も多く、サリーの知名度もあって注目を集めている。さっき話しかけて来たギルドマンのおっさんも今は少し距離をとって成り行きを見守っている。
「モングレル……」
「……そうか」
この場での答えを濁したが、今の俺は正直迷っている。俺が人とのしがらみを作ろうとしないのは自分の抱えてる秘密に巻き込んでしまわないようにする為だ。
しかしサリーは既に俺の秘密であるケイオス卿の事に巻き込んでいる。おかげで俺やサリーの知る限りケイオス卿の正体に気づいた奴は居ない。モモの奴はノーカンだ。前にサリーの発言から俺がケイオス卿かと聞いて来たことがあったが誤魔化したし。
それに時折サリーと話をしているとコイツ俺のこと未来人だと思ってないか?という発言も飛び出してきて当たらずとも遠からずと言った具合に改めてサリーの頭のキレに慄いたのも懐かしい。
「わかった。別に答えを急いてる訳でもないしね。」
「悪いな……」
だから、もしかしたらサリーには、もう、全部バレてるんじゃないかと、思ってしまう。サリーには故郷の話を少ししてしまっている。詳しくは言ってない、精々開拓村出身で昔は何でもかんでも自分で作らないといけなかったとか、故郷はもう滅んでいるという事くらいだ。
前に若木の杖がシュトルーベの亡霊の噂について話していたしサリーの耳にも入ってるだろう。そして、俺は毎年ではないが夏に長期の野営に出てその時期辺りにシュトルーベの亡霊も出現する。普通ならレゴールからシュトルーベまで1週間弱で往復するなんて考えない。
だか、僅かな証拠や印象からケイオス卿の正体に行き着いたサリーなら俺が親しい人に対しても壁を作ろうとする事からも亡霊の事も察しがついてるんじゃないか?
もし、そうなら、希望を、抱いてしまう。サリーになら秘密を明かしても、サリーとならこの秘密を抱えていても一緒に居られるんじゃないかと思ってしまっている。
ダメだな、昔のブレイリーでの夢を見ちまったせいで踏ん切りがつかない。
「それにね、」
仮にサリーと結婚して、万が一シュトルーベの亡霊の正体がバレたとしたら、俺は若木の杖を、2人を巻き込まないために1人で去るだろう。その時サリーはどう思うだろう……いや、ふつーに引っ付いて来そうだな。団長の座をヴァンダール辺りに押し付けて。
モモはどうだろう、ぷりぷりと怒って来るのが目に見えるな。子供扱いすると怒るが、なんだかんだモモもサリーに甘えることもある。サリーもモモを置いて行ったりはしないだろう。
あぁ、なんだ、もう答えは出てるじゃないか……。
俺とモモが発明品についてギャースカ騒ぎながら議論しているのを楽しそうに見守るサリー。
サリーが起こした面倒ごとに巻き込まれてドン引きする俺とツッコミを入れるモモ、しれっとしながら事態を悪化させたり解決させたりするサリー。
この三人でいる時間が愛おしく感じる。けど、俺の問題に2人を巻き込んで危険に晒されるのは嫌だ。最後の一歩が踏み出せない。そんな俺の手を──
「仮に夫婦になれなくても、僕はこれからもモングレルと一緒にいる。友人としてでもね。それだけでも僕は満足さ」
──無遠慮に引っ張ってくれる奴がいた。
「悪い、前言、撤回する」
「おや?」
ほんとうに、俺って奴は……前世から真っ直ぐな好意をぶつけられるのに弱い。バカは死んでも治らないって言うがありゃあマジだな。ソースは俺な。
「サリー、俺と、結婚して夫婦に……家族になってくれ」
そう言って俺は頭を下げて手を差し出した。
「うん、よろしく。モングレル」
サリーはそんな俺の手を、当たり前のように取ってくれた。
「うわっ、手汗ベトベト」
と、思ったらすぐに離された。
「いや、しゃあねぇだろ……つか手引くなよ・・・」
「だって汚れるし……」
いや、お前、これから夫婦になるんだぞ?そんなんでやっていけると思ってんのかよ……。やっぱコイツの告白受け入れたの間違いだったかもしれん……。
「やるじゃねぇか!兄ちゃん!」
そうしていると、さっきまで離れて様子見していたギルドマンのおっさんが俺に近づいて来て背中をバシバシと叩いて来た。
「おーうい!給仕のねえちゃん!この2人にエールをやってくれ!俺の奢りだ!」
「あ、僕の分は炭酸抜いてね」
サリーは奢りでもいつも通り炭酸を抜いてもらうみたいだ。あんまり王都で騒がれるのは目立ってよろしくないが、今日はもう良いだろう。ありがたくエールは貰っとくぜ……。
「サリーさん、おめでとー!」
「サリーさんと結婚するとか、なんて羨まっ……しいか?しいかな?」
「ヒュー!ヒュー!」
目立たない隅っこの席だったんだが今や酒場の盛り上がりの中心地になっちまった。
「仕方ないですね……仕方ないので、特別に、特別に!モングレルのこと認めてあげましょう!」
「前から認めて無かったかい?」
「母さんうるさい」
そう言ってモモは顔を背けてしまった。相変わらず素直にならない思春期娘だ。
「本当に、よく出来た娘だなサリー」
「当然だろう。僕の自慢の娘さ」
脳内の解釈違いにブチ切れる炭治郎と格闘しながらなんとか言いくるめて書き上げました。二次創作書くの難しい...改めて小説を書いてる人たちを尊敬しました。
あともう1話で終わりです。もうしばらく駄文にお付き合いいただけると幸いです