ゼンドウ~鬼畜スキル『女子大生を安く買える』が最低過ぎて尊い。30円で購入したチート女子大生軍団でダンジョンを蹂躙する勘違いピカレスク~ 作:閃幽零
1話 電車で見かけた美人女子大生を30円でお買い上げ。
銀蝿《ぎんばえ》みたいな世界に、僕の心が湧《わ》いている。
この世で最も尊い僕を拒絶した、この世界に僕は復讐すると誓った。
「すべて間違っている。この世界に価値はない」
『醜悪《しゅうあく》を煮詰めた春』から半年が経った。
僕は高校を卒業し、流浪《るろう》の身。
灼熱のコンクリートジャングルの畦道《あぜみち》で、
陽炎《かげろう》と共に、僕は『この宇宙を崩壊させる術』を探し歩いている。
「あるはずだ……僕が求めているのだから」
電車に乗ると、近くの大学に通っているであろう女学生が派手に着飾って、僕を誘っている。
僕に告白する勇気がないから、面積の多い肌色で僕の心をかどわかそうとしている。
あさましいことだ。
とはいえ、気持ちはわかる。
僕ほど高潔で気高い男はそういないから。
この電車の中で一際目立つ美人女子大生が僕の方にちらりと視線を向けてきた。
僕を求めている目。
もはや猟奇《りょうき》的とも言えた。
彼女は隣にいる友達に、小さな声で、
「ちょっとヤバい目している人に見られているから、向こうの車両いこう」
そう言って、友達と一緒に違う車両に行ってしまった。
そのまま僕の目を見つめていては自分が狂ってしまうと思ったのだろう。
女はいつだって現金で獰猛《どうもう》だ。
優れた男を見ると心を止められない。
僕は電車を降りて、古書店を巡る。
『世界を終わらせる方法』を求めてさまよう僕は、
さながら『激昂《げっこう》の堕天使』と言ったところか。
この世界は僕のために存在している。
だから、求めれば手に入るはずなんだ。
『復讐を達成するための手段』が……
「ネクラロリコン? ふざけた名前だ」
古書店の一角で、僕はまがまがしい一冊の分厚い文庫本を見つけた。
値段は30円。
古本ではよくある値段。
妙に惹かれた僕は、ネクラロリコンを購入し、近くのカフェテラスで読み込んでいく。
僕の読書する姿が尊過ぎたせいか、近くにいた女子大生が、
「うわ、電車の人なんだけど」
「こわ、え、なに? つけられたのかな?」
「すっごいキモい本読んでる」
「やばいよ、マジのアレな人じゃん」
聞こえないぐらいの声で何かを言い合いながら、僕の近くから離れていった。
気持ちはわかる。
僕を前にした女は大体ああなる。
女全般に言えることだが、もう少し自制心というものを持って欲しい。
君たちごときじゃ、僕は手に入らない。
そのまま5時間ほど、ネクラロリコンを読み込んでいると、男の店員が、
「お客様……申し訳ありませんが、そろそろ……」
「ああ、申し訳ない。では、おかわりで」
「……は、はい……かしこ……まりました」
と、何やら不機嫌そうな顔をしていたので、
僕は、ネクラロリコンを閉じて、
「なにか文句でも?」
「いえ、あの……申し上げにくいのですが、他のお客様が怖がっておられまして」
「怖がる?」
そこで僕はおおよそを理解した。
人は太陽がなければ生きていけないが、太陽を直視はできない。
あまりにも高潔すぎる超人を前にすると、多くの人は、自身が、
『太陽を前にしたイカロスになってしまうのではないか』と不安になるのだろう。
人の弱さにはほとほと呆れ返る。
僕のように、強く気高く生きてほしいが……
それはわがままなのだろう。
「仕方ない、いいでしょう」
僕はそのまま本を閉じて会計にむかった。
コーヒー1杯で750円。
ぼったくりだった。
この世界はどこもかしこも、非合理と不条理であふれている。
どうにかしないといけない。
★
夕日が街と混ざろうとしている。
僕をさらおうとしているのかもしれない。
「やはり、どう考えても、この世界は僕のために存在している。咎《とが》を噛むような美しさを、僕はまだ愛らしいと思える」
あまりにも絵になりすぎていた。
僕だけの世界で、僕だけが幽遠《ゆうえん》なるスポットライトの中心にいる。
これだけの人がいるのに孤高。
誰もが僕に道をあける。
「なんとしても、この世界を終わらせないといけない……そして、再構築するんだ。僕という王を正しく理解できる世界に……」
魂の底からにじみ出る言葉が空に溶けた……
その時だった。
僕の手の中にあるネクラロリコンが、淡く光り始めた。
最初は幻覚かと思ったが、どうやら違ったらしい。
世界の声が聞こえる。
――ネクラロリコンスキル『女子大生を安く買える』が開眼!!
僕の嘆《なげ》きに、世界が呼応した。
こうして幕を開ける。
僕の人生をかけた復讐劇が。
★
帰り道の電車で、僕は、またあの女子大生を発見した。
一人で、吊革につかまっている。
僕の姿を見つけると、彼女は顔をそらした。
僕は、そこで、財布から30円を出す。
すると、『ネクラロリコンの表紙に描かれている口』がグニャリとあいた。
「彼女を購入する」
そう宣言しながら、30円をネクラロリコンに食べさせる。
その瞬間、
僕から視線をそらしていた女子大生が一瞬だけ、電気でも浴びたみたいに、ブルっと体を震わせた。
僕は彼女に近づき、
耳元で、
「次の駅でおりなさい」
と命令した。
彼女は黙ってコクリとうなずいた。