ゼンドウ~鬼畜スキル『女子大生を安く買える』が最低過ぎて尊い。30円で購入したチート女子大生軍団でダンジョンを蹂躙する勘違いピカレスク~ 作:閃幽零
11話 腕ぇえええ!! 僕の腕がぁああああ!!
「一匹狼はやめましたよぉ。今後は、この『ごしゅ』と一緒に戦っていくつもりですぅ」
「ごしゅ? ……ごしゅ……とは……」
「ご主人様の『可愛い言い方』ですよぉ。わちはごしゅの配下になったんですぅ」
そう言いながら、ジョカは、僕の腕に絡んでくる。
本来であれば、『鬱陶しい』と振り払うところだが、
まあ、今日のところは勘弁してやろう。
この世で最も尊い僕に触れることができて幸運だったな、ジョカ。
と、僕が寛大《かんだい》な気持ちでいると、
夜城院が、
「はい……か……」
いまだ、何を言われているかわからない、という顔をしていたが、
そこで、キっと、
ゆがんだ顔で、僕を見て、
「地上に出てからずっと、イヤな気配は感じていた……おぞましいオーラ……」
「それは、まさか、僕に言っているのかな?」
「よく、それだけ邪悪な波動を放てるものだ……もしかして悪魔が人に化けているのか?」
「この世界一高潔な僕をつかまえて……邪悪? 見る目のなさも、そこまでいくと高尚な芸術たりうるね。もちろん、皮肉なんだが、低脳そうな君では理解できない可能性があるから、一応、アイロニーであることだけは伝えさせてもらうよ」
そこで、夜城院の左右を陣取っている女二人が、僕に、妙な目を向けてきた。
赤髪ハーフアップの女が、
「高潔? バッカじゃないの。キッモい目ぇしてさぁ!」
続けて、茶髪ロングの方が、
「……あんたなんか、ユウ君の足元にも及ばないから」
「ジョカ、マジでバカじゃないの! なんで、ユウ様じゃなくて、こんなヤバそうなのをパーティメンバーに選んでんの?!」
「……やっぱ、ジョカって頭おかしいんだね」
そこで、僕はようやく理解した。
なるほど、この二人は、ジョカに嫉妬しているのか。
この二人は僕に選ばれておらず、ジョカは僕に選ばれている。
この差は、確かに大きい。
と、そこで、ジョカが、ハイな目のまま、
「ごしゅはすごいんですよぉ。ここまでイカれた人は、そうそういないと思いますぅ。わちは、今まで、あの世もこの世も含めて、自分が一番頭おかしいと思って生きてきましたがぁ……勘違いでしたぁ。ごしゅは最強ですぅ」
「僕が最強の超人であることは事実だが、君以上に頭がおかしいなどということはありえないよ、ジョカ。僕は高潔で尊い英雄だ。けっして狂人ではない」
そこで夜城院が、
「最強の超人……ねぇ。なるほど……ジョカに、そこまで気に入られたお前の実力……ぜひ、見せてほしいな」
そう言うと、夜城院は、腰の剣を抜いた。
――視認できたのは、そこまでだった。
次の瞬間には、もう、目の前に夜城院がいた。
空気が動いた気配すら感じ取れない。
よける暇など、一切なかった。
気づいた時には、右肩から先に、生温かい感触がなかった。
視界の端で、ネクラロリコンを握っていたはずの、僕の右腕が、ゆっくりと宙を舞っている。
断面から、血が、間欠泉《かんけつせん》のように吹き上がっている。
反射的に手放されたネクラロリコンは、主を失った軌道のまま、コンクリートの地面に、鈍い音を立てて落ちた。
「ヴゃああああああああああああああ! 腕ぇえええ!! 僕の腕がぁああああ!!」
脳が焼き切れるような激痛が、遅れて全身を貫いた。
立っていられず、僕は、片膝をつく。
右腕があった場所からあふれる血が、足元のコンクリートに、みるみる赤い水たまりを作っていく。
痛みで、視界がチカチカと明滅する。
「ずぁああああ! うぁああああ! 痛いぃいい! がぁああ!」
自分のものとは思えない、獣じみた悲鳴が、喉から止めどなく漏れ続けた。
夜城院は、そんな僕を見下しながら、
「最強の超人なら、腕を斬られたぐらいで、泣きわめくなよ……情けない」
そう言いつつ、涼しい顔で、剣を持ち直す。
続けざまに、二撃目を放とうと、刃を振り上げた。
僕は、反射的に、
「じょ、ジョカぁあああ! 僕を守れぇえ!」
「了解でぇす、ごしゅぅ」
次の瞬間、金属同士がぶつかる、耳障りな高音が鳴り響いた。
ジョカは、腰のホルスターからナイフを抜き放ち、逆手に構えると、振り下ろされた夜城院の剣の側面に、刃を滑り込ませるようにして受け止めていた。
力と力の真っ向勝負ではなく、刃の角度をわずかにずらして威力を逃がす、洗練された捌《さば》き方。