ゼンドウ~鬼畜スキル『女子大生を安く買える』が最低過ぎて尊い。30円で購入したチート女子大生軍団でダンジョンを蹂躙する勘違いピカレスク~ 作:閃幽零
12話 腕を切られ、暴言を吐かれ、つばまで吐かれた。
鍔迫《つばぜ》り合いの体勢のまま、
夜城院は、ジョカに、
「どくんだ、ジョカ。その男は目が危ない。危険思想を抱いているようにしか思えない。この場で殺しておいたほうがいい」
「一般目線なら、その意見に賛成すべきなんでしょうけどぉ……わちは一般人じゃないですからねぇ」
そう言いながら、ジョカは、力を込めるどころか、むしろ楽しむように、刃の角度を変え、夜城院の剣を受け続ける。
金属の擦れる音が、何度も、何度も響いた。
その間、僕は、右腕の激痛に涙を流しながら、
どうにか上着を脱ぎ、歯を食いしばって、斬られた断面に、ぐるぐると、力任せに巻きつけていく。
布地に、じわじわと赤い染みが広がっていくのを見つめながら、
「殺せぇえ! ジョカぁ! そのクソをどうにかして殺せぇ!」
と、痛みに掠《かす》れた声で叫んだ。
そこで、綾大路が、
「二人とも、じゃれ合いはそこまで。それ以上暴れるようだと、本格的に査問会にかける」
と、鋭い声を上げた。
その両手には、いつの間にか、黒光りする拳銃が握られている。
二つの銃口は、まっすぐに、夜城院とジョカ、二人の眉間に向けられていた。
手ブレの一つもない、慣れた二丁拳銃の構え方。
この女、口だけの人間ではないらしい。
夢中で鍔迫《つばぜ》り合いを続けていた二人が、ようやく、剣とナイフを引いた。
夜城院は、小さく息を吐き、
「……ジョカに本気で邪魔をされたんじゃあ、そこの男を殺すことはできない。仕方ない。今日のところは引かせてもらう」
と、あっさりと剣を鞘《さや》に収める。
去り際、夜城院は、ゴミでも見るような目を僕に向けて、
「どうやってジョカを口説き落としたか知らないが……どうせ、よからぬ手でも使ったんだろう。催眠術でも使えるのか、いにしえの呪いか、それとも媚薬《びやく》でも使ったのか……わからないが、お前が女にモテるとは到底思えない」
「……ぼ……僕の腕を切り落として、その上で、侮辱《ぶべつ》する暴言の数々……こ、こんなことが許されると思うなよ」
激痛に震えながらも、僕は、正義を叫ぶ。
絶対正義である僕の腕を斬り飛ばした……
夜城院優聖のギルティは、とてつもなく重い。
そこで、夜城院は、心底うんざりしたような目のまま、僕を見下し、
「許されるさ。なぜなら、俺は夜城院優聖だから。お前とは違い、この世界で最高クラスの価値がある男だから」
「……ふ、ふふ……」
「何を笑っている。気でも触《ふ》れたか?」
綾大路なんかどうでもいい……
こいつだ……
こいつは絶対に殺す。
何が何でも、絶対に……。
すべてを奪いとり、惨殺《ざんさつ》する。
夜城院のような腐った悪を放置するのは、僕の正義が絶対に許さない。
そこで、僕は、足元に落ちているネクラロリコンに、
「夜城院の取り巻きをしている女二人……購入だ」
そう言いながら、斬られていない方の手で、ポケットに忍ばせている小銭をとろうとする。
が、そこで、ネクラロリコンが、
「彼女たちは女子大生ではないので購入できません」
「……なっ」
「おいキショ男《お》……何を一人でぶつぶつ言っている」
ネクラロリコンの声は、僕にしか聞こえない。
選ばれた僕だけに届く神託《しんたく》。
そう、僕は選ばれている。
なのに……そんな僕に向かって……
「キショ……男……ふ、ふふ……ふふふふ……くくくく」
本当に気が触《ふ》れるかと思った。
ここまでの怒りを覚えたのは初めてだ。
入試に失敗した時ですら、これほどの怒りは覚えなかった。
「ゆるさない……ゆるさない……ゆるさない……」
心が沸騰する。
生まれて初めての勢いで、激しく、強く、猛々しく。
「本当に、一挙手一投足が気持ち悪い男だな……絶対に殺しておくべきなんだが……」
そこで夜城院は、あろうことか、
僕の顔にペっと、ツバをはきかけてきた。
頬を伝う、生温かい感触。
「なん……だと……」
僕は、理解しきれず、固まってしまった。
あまりの衝撃に、腕の痛みを忘れるほど。