ゼンドウ~鬼畜スキル『女子大生を安く買える』が最低過ぎて尊い。30円で購入したチート女子大生軍団でダンジョンを蹂躙する勘違いピカレスク~ 作:閃幽零
17話 あんな弱そうな鬼、僕が片付けよう
分厚い金属の扉の前まで歩く。
左右に居並ぶ警備員たちの視線が、一斉に、こちらに向いた。
扉の表面に刻まれた、見たことのない紋様が、鈍く光を反射している。
綾大路が、僕たちを見て、
「……先ほども言ったが、この中で何かあっても、委員会は責任を取らない。すべて自己責任だ」
「わかってますよ。この期《ご》に及んで、あなた方に甘える気はない」
そう言いながら、僕は、扉を見上げる。
この先に、モンスターがいるらしい。
モンスターねぇ。
まさか、自分の人生に、そんなファンタジーな出来事が起こるとは思わなかった。
人生は小説より奇なり。
「よし……行こうか」
僕たちは、重々しく開いていく扉の向こうへ、足を踏み入れた。
★
案内された先は、これまでの通路とは違う、剥き出しの石壁が続く空間だった。
等間隔に埋め込まれた燐光石《りんこうせき》が、青白い光を放っている。
火の気配はないのに、妙に暖かい。
「空気が薄いな。湿度も変に高いか……嫌な空気だ。気持ちが悪い」
と、ブツブツ文句を言いながら、僕は歩く。
先頭はジョカ。
僕はその後ろ。
さらに後ろに、キヨとスルメ。
何かあった時に、彼女たちを盾にできる位置取り。
王だけは死んではいけない。
僕が死ぬぐらいだったら、彼女たちが死ぬべき。
それは、彼女たちも当然理解できているだろう。
他の誰が死のうと、僕だけは死んではいけないのだ。
偉大なる指導者を失うことは、人類の死滅と大差ないから。
と、そこで、スルメが、
「……な、なんか、変な……音がします……」
震える声で、ぽつりと言う。
「音?」
「壁の向こう……なにか、うごめいてる、みたいな……解析スキルが、反応してます……」
「もっと具体的に」
「す、すいません……これ以上は……私のレベルだと……」
ちっ。
またレベル不足か。
なんでもかんでも、『レベルが不足している』と、うるさいな。
レベルじゃなく、努力が足りないんじゃないのか。
ほんの少しでいいから、『どんな時でも常に限界の向こう側を目指し続ける僕』を見習ってほしいものだ。
僕はため息交じりに、
「ジョカ……何かあったら、すぐに行動してくれ」
「はいはぁい」
「はいは一回」
「はいはいはぁい」
「……ちっ」
蹴り殺してやろうか、このクソ女……
まったく……
しばらく歩くと、通路が少し開けた場所に出た。
その先に、一体の鬼《おに》が立っている。
サイズは、中学1年生ぐらい。
ようするに小柄。
赤い肌が、燐光石《りんこうせき》の光を、ぬめった質感で反射している。
武器は持っていない。
スルメが、
「あの鬼……レベルは……3……ですね」
解析スキルで、すぐに敵の数値を読み上げる。
「3? ふっ……なるほど……つまり話にならない雑魚ということか」
僕は、小柄の鬼を見て、鼻で笑った。
ちなみに、僕のレベルも、事前に解析してもらい、『5』だとわかっている。
一般人の初期レベルはだいたい5ということらしい。
僕は一般人ではなく驚異的な超人だが、その点は考慮されないそうだ。
やはり、この世界は頭が悪い。
「みんな、下がっていてくれ。あんな弱そうな鬼、僕が片付けよう」
「大丈夫ですかぁ、ごしゅぅ」
「不要な心配は、もはや不敬だと心得よ」
そう言って、前に出る。
腰にさげているのは、ダンジョンに入る前、綾大路から借りた『探索用の剣』。
……レンタル代金で、5万円も取られた。
ふざけやがって。
僕が上司になったら、どうなるか覚えていろ。
血反吐《ちへど》をはかせてやる。
「この剣、重いな……」
漫画やアニメだと、みんな、ブンブン振り回しているが……
こんなものを振り回せるはずがないだろう。
まったく、世の創作物というのは、どれもリアリティにかける。
「……死ね、ゴミ」
そう言いながら、僕は鬼に斬りかかる。
振り回すことはできなくとも、思いっきり振り下ろすぐらいはできる。