ゼンドウ~鬼畜スキル『女子大生を安く買える』が最低過ぎて尊い。30円で購入したチート女子大生軍団でダンジョンを蹂躙する勘違いピカレスク~ 作:閃幽零
21話 なぜ、あなたはゼンドウなんかの命令を聞いているの?
「僕が、君に好意を抱いているだって? はっ……今のは、この世で最も愚かな発言と断言できる。僕は倫理的に完成した人間だ。ゆえに、誰かを好きになったりなどしない。僕が愛しているのは正義だけだ」
と、そこで、僕は、綾大路の『何か言いたげな目』に気づいた。
眉間にしわをよせて、変な目で僕をみている。
「なにか?」
と問うと、綾大路は、頬をぽりぽりとかきながら、
「いや、別に……ただ、その口で、正義という言葉を使ってほしくないな、と思ってしまっただけだ」
「僕が正義を口にしなくなれば、もはや、この世に本物の正義を語るものはいなくなる。僕は正義の化身。僕だけが本物。他の連中は、みな、等しくズレた偽物」
と、僕が高尚な話をしてあげているというのに、
綾大路は、それを無視して、キヨに、
「本気で疑問なのだが、なぜ、あなたはあの男の命令を聞いているの? 何か脅されているというのであれば、300人委員会の力でどうにかするけれど? あの勘違いバカと違って、あなたは本当に有能な人材だから」
「あ、えっと……ごしゅじ……ゼンドウさんにも、いいところはあるんですよ」
「どこに? あれのどこに?」
キヨは、少し目を伏せて、言葉を選ぶように、
「えっと……まっすぐなところ……ですかね」
「間違った方向にまっすぐ行っている場合、プラスのポイントたりえない。はやく目を覚ました方がいい。あれが悪人かどうかは知らないが、いい男じゃないことは間違いない。ダメ男ですらない。……あれは、ただの危険人物だ」
などと妄言を垂れ流している彼女をしり目に、
僕は、やれやれとため息をつく。
本当に頭の悪い女だ。
まあ、僕に、危険な香りがするのは間違いないが。
本物の英雄は、人外の狂気を背負っているもの。
この世の安寧《あんねい》のために、決死の覚悟で毎日戦っている僕のオーラは、ハリネズミのようにとげとげしいだろう。
「僕を正しく理解できる人間は……まあ、いないだろうな。……それでいい。それでこそ孤高。僕は一人、誰よりも高い丘に立つ」
――ちなみに、今回の探索で、ギルティレベルが0から10に上がった。
僕は、ネクラロリコンに、
「どのぐらいまで上げれば、御子《みこ》を創れるようになる?」
「不明。ただし、10ぐらいでは不可能」
「……ちっ。不明ってどういうことだ」
「私にもわからないことはあります」
使えない。
どいつもこいつも無能ばかり。
有能なのは、いつだって、僕だけじゃないか。
と思っていると、
その直後、綾大路のスマホが鳴った。
「失礼」
といって電話に出る綾大路。
「はい……え……えぇ?!」
慌てた声。
みるみる、綾大路の顔が青ざめていく。
「わ、わかった! すぐに対処する!!」
そう言って電話を切って、慌てて別の番号にかけようとする彼女に、
「どうしたんですか?」
綾大路は、僕を無視して、
「……地下5階のガーディアンに挑戦した夜城院から緊急連絡。ガーディアンは倒したのだが、第二形態に覚醒し、暴れまわっているとのこと! 至急、支部内にいる探索者の招集を――」
と、そこまで言った時点で、
目の前の分厚い金属の扉が、いつもとは違う、重い音を軋ませながら、急速に開いていく。
そして、その奥から、血相を変えた夜城院チームが、転がるように飛び出してきた。
「全員、逃げろ!! 殺されるぞ!」
夜城院が、そう叫んだ直後、
開いたままの扉の向こうから、
人の身長の何倍もある、巨大なクモ型の怪物が、
八本の脚を折り曲げながら這い出てくる。
全身を覆う黒い体毛の間から、赤黒い甲殻がのぞき、
複数並んだ眼球が、それぞれ別々の方向に光っている。
開いた顎からは、ネバついた粘液が、ぼたぼたと地面に垂れていた。
「くそぉお!」
夜城院は叫びながら、振り返って、クモ型モンスターに斬りかかった。
夜城院の斬撃をいなすように、複数の脚を器用に動かすモンスター。
衝撃で、地面が、ずしんと揺れた。
夜城院は、肩で大きく息をしていて、明らかに疲弊している。
僕は、するりと、半歩、後ろに下がりながら、
「おいおい……あのボケ、とんでもないモンスターを連れてきているじゃないか」