ゼンドウ~鬼畜スキル『女子大生を安く買える』が最低過ぎて尊い。30円で購入したチート女子大生軍団でダンジョンを蹂躙する勘違いピカレスク~ 作:閃幽零
8話 ジョカは僕の恋人です。
綾大路から、鋭い視線を向けられているというのに、
ジョカは、にたにたと笑いながら、天井をぼんやり見つめているだけだった。
まったく緊張感のない、サイコな態度。
こんな狂人、僕の隣にはふさわしくない……が、今は我慢。
この僕に我慢を強いるとは……なぜ、この世界は、こんなにも僕に厳しいのか……
僕は何も悪いことをしていないというのに。
際立った善行しか積んでいない僕に、無駄な試練を与えないでもらいたい。
僕は、ため息交じりに、
「まあまあ、そう目くじら立てずに」
二人の間に割って入って仲裁する。
家臣が争い合った際になだめるのも王の仕事。
「綾大路さん。僕とあなたたちはウィンウィンの関係になれると思います。彼女はそれを見越して、僕を、ここに案内してくれたのです」
「ウィンウィン? 君に何ができるという」
綾大路は、手元の調査票に視線を落としながら、冷たく言い放つ。
「ジョカから連絡を受けたあと、すぐに君のことを調べさせてもらった。早稲田に挑戦し、あえなく落ちて、予備校にも通わずふらふらしている……ようするにニート。そんな君に何ができるという」
その言葉を受けて、
僕のはらわたが、静かに、しかし確実に煮えくり返っていく。
コロス……この女は絶対に殺す……
あろうことか、この僕を……侮蔑《ぶべつ》しやがった……絶対に許さない。
僕は落ちたんじゃない。
悪意によって落とされただけだ……
何も知らないくせに、よくも……よくも……
と怒りに震えながらも、その感情の表層は隠して、僕は口角だけを上げる。
腹芸も王のたしなみ。
「僕はジョカの恋人ですよ。この厄介な女を、僕はコントロールできる。それだけじゃない。他にも、有能な女性のあてが何人かいましてね。僕がお願いすれば、みんな快くダンジョン探索者になってくれるでしょう」
ダンジョンだろうと、蟹工船《かにこうせん》だろうと、僕が命令すれば、みな、喜んで行ってくれるだろう。
「……ジョカから聞きましたよ。人材確保に苦労しているそうじゃないですか。当然です。まともな女子大生が、命がけのダンジョンなんかに挑むはずがない」
綾大路は、僕の言葉に、片眉だけをぴくりと動かした。
視線をジョカへ移し、
「……ジョカ。君は、彼の恋人なのか?」
「え? あー、はぁい。そうでぇす。わちは『ごしゅ』の恋人でぇす」
「ごしゅ?」
綾大路の訝《いぶか》しむ声に、僕はすかさず助け舟を出す。
「あだ名のようなものです。恋人同士なら、よくあることでしょう。気にする必要はありません」
「……本当に、付き合っているというの? 信じられない。ジョカが誰かと恋仲になるなど……彼女は、本当に、壊れているのに」
その評価を受けて、ジョカは気を悪くするどころか、むしろ愉快そうに、口の端をさらに持ち上げた。
ずっと、表情も態度もバグっている。
気持ちの悪い女だ。
見た目だけはいいのに、もったいない。
「他にも、僕の言うことを聞く女性が何人かいます。喜んで、斡旋《あっせん》しましょう。……もちろん、多少のマージンはいただきますが。どうです。ウィンウィンの関係になれると思いませんか」
「君は、そんなにモテる人間なのか? ……そうは見えないが。むしろ、多くの女性に忌避《きひ》されそうな空気を纏《まと》っているように見えるのだけれど」
その一言に、また僕の中で何かが沸騰する。
なんだ、この女は……人を不快にさせないと会話ができないのか?
コロスコロスコロス……
僕は有能だ。
この世界で最も尊い人間だ。
だから、モテるのは当然。
当たり前のことだ。
スキルなど関係なく、僕は元来、モテる人間なんだ。
学生時代、女子たちの間に『僕に手を出してはいけない』という暗黒の協定があったから、誰も僕に近づけなかっただけ。
それだけの話だ。
だというのに、このクソ女は……
僕は、暴走しかけた怒りを、
「すぅ……はぁ……」
と一つ息を吐くことで、なんとか押し殺す。
僕はメンタルも優れているから、アンガーを完璧にマネジメントすることも容易。
僕以外だったら、爆発して、このバカ女の首をへし折っていただろう。