つい先日9/30日よりついに初代宇宙刑事ギャバンの配信がYoutubeで開始されたよ!やったね!
まぁ要するにその勢いで書いただけって話。
『ホロウ』の中では、銀の流星が降る。
ある時からか、悪夢が如き世界『ホロウ』を巡る者たちの間で、こんな噂が流れるようになった。
ホロウ。それは無尽蔵の雑多な虚空。
未知のエネルギーを、そして怪物を内包したその”空間”は瞬く間に地上を呑み、嘗ては人類の文明をいわば『終末』の一歩寸前まで追い込んだ。
たった一つ、エリー都と呼ばれる最後の砦を残して。
だがその間人はひたすらに無力な訳ではなかった。
初めてのホロウの発現から早100年以上。
その間に人類は微弱ながらもいくつかの策を見出していた。
適した地図を、武器を、装備が作られ、怪物の討伐を、探索を、またはその手助けを担う者が現れ始めた。
ホロウは発生と共に空間を呑み込み、ホロウの中身はその元の空間を滅茶苦茶に歪めたようなものになっている。
そこに『エーテル』と『エーテリアス』という化け物をひとつまみ。
命知らずの冒険者たちの舞台は、そんな魑魅魍魎に溢れた魔境。
法の規制すらいざ知らず、危険を隣り合わせにホロウに潜る者を人々は『ホロウレイダー』と呼んだ。
…そして、そのホロウレイダーがここにも。
「急げ、モタモタしてたら囮にすっからなぁ!」
「勘弁してくださいどんなに重いと思ってるんですか!」
「だから無茶って言ったんだ、ホロウを逃げ道に使うなんて」
「いつまで文句言ってんのもう10回はやってるじゃんか」
奇抜な模様と形状を合わせたフルフェイスヘルメットを被った男四人組。
彼らは今まさに夜のホロウの中を駆け回っていた。
「どんなに苦労してこいつを手に入れたと思ってやがる!落としたらただじゃ済まねぇぞ!」
そう叫んだ男の視線の先。そこには彼の仲間が抱え込んでいる一つの金庫があった。
「いたぞぉ、いたぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
突然、遠くから薄らと男の叫び声が響く。
「終わった見つかった…!」
振り向いた1人がその視界のずっと奥に、黒服にサングラスをつけた小さなシルエットを捉えた。
四人組の足振りは一層回転を増す。
実を言えば、今このホロウレイダー達が抱えているのは俗に言う盗品である。
依頼を受けて他所から盗んだものを依頼主に届けることは、ホロウレイダーを稼業とする者たちからすれば特段珍しいことではない。
今回彼等が盗みを働いた先は、界隈でもよく名を轟かせることもある大きな組織。
数十、下手をすれば数百にすら構成員が膨れ上がるそこから厳重な警備をたった4人で掻い潜り、無事お目当ての獲物をついに
ここで依頼を大成功で収めれば、一気に名を轟かすチャンスともなる。
「キャロットはまだ使えるんですよね!?」
「あの胡散臭ぇプロキシが詐欺師じゃなけりゃな!」
再び背後が騒がしくなる。
今度は銃声と車のエンジンの唸り声付きだった。
「こんなたかが金庫一個に何必死になってんだかな!」
「報酬の額から見て…おっとあぶね、相当なもんなんだろ」
進むごとに次第に道は荒々しく、ずっと不安定なものになってゆく。
「出口まであといくらだ!?」
「200m先!出たら速攻で手榴弾を裂け目にぶち込めよ!」
だがその一方、後を追い荒野を駆ける車のタイヤの悲鳴は刻一刻と近づいてきていた。
額に滴る冷や汗の数が数倍に跳ね上がる。
ホロウ内の景色の方はというと、気がつけばコンテナのゴミでできた壁が辺りを覆う空間へと変わっていた。
そこまで来て、ここで急な曲がり道が現れる。
急ブレーキをかける男たちの隙を逃さず、猛スピードで走る車が彼等の背後すぐへと迫る。
迎撃以外に道はない。
数秒の手抜かりが命取りにもなるホロウレイダーとなれば、判断は早かった。
「もう武器がほとんどねぇ、何か―――」
背後でマシンガンがけたたましく銃声を上げる中、4人のうちの誰かが叫ぼうとした。
―――しかしその瞬間。
轟音が響き、視界の隅がオレンジ色に染まる。
「!?」
4人の足が一斉に止まった。
振り向けばそこには一瞬で爆発炎上し、スクラップと化した車の残骸。
そして…煙の中に佇む一つの影。
「しくったな、こりゃ」
うち1人が力の抜けたように呟いた。
影の形がくっきりと現れ出る。
まるで人のようなシルエットを持ちながら、薄灰色の退職に黄緑の血を通わせたような“怪物“。
『エーテリアス』
ホロウにのみ住まう化け物が彼らの目の前に立っていた。
「モタモタすんな剣を早く取り出s―――」
それに一番近いところに居た男の叫びが、怪物の薙ぎ払い一撃でかき消される。
その余波で吹き荒れる猛風が止むとそこには、遥か向こうの壁へ叩きつけられた1人のホロウレイダーの姿が。
「あ、あぁ…ヒエェェェェェ!」
「おい、何してる!」
それを目にして金庫を持っていた者は、ついにせっかくの獲物をあらぬ方向へ放り投げて逃げ出した。
「ったく臆病者の新人が!」
「逆に考えな、今までこいつら避けまくって一回も見つからずにホロウでやってきたのが異常だってさ!教育が足りてなかったんだよ!」
残る2人は、各々護身用の小さな剣に爆弾を取り出す…
「このエーテリアス『精鋭』って奴か…?」
「多分な…」
エーテリアスは他の生物と同様に、現在ではいくつかに種類分けされている。
この個体は通称『タナトス』。怪物たちの中では中級には位置する存在。
手練れであればそこまで苦戦はしないこともある。しかし―――
「なまくらしか無ぇのにどうやってやり合うんだ、こんなの!」
残った彼ら2人には十分すぎるほどの強敵であった。
瞬間、タナトスが消える。
「「!?」」
そして秒単位も待たずに再出現。
この種類が持つテレポーテーション能力である。
「ハァ、ハァ……へ?」
そして転移先は…逃げたあの1人の目の前。
タナトスが腕を振り落とす。
ドゴン、という鈍い音と共に、逃げた輩を中心として地面に大きなクレーターが空いた。
「…まじか」
「なんか、同じ種類の奴と比べてもずっと強い気がするんだけど…?」
残された2人は無意識のうちに後ずさりする。
取り出した剣を振るうほどの力すら残っているか自身もない。
組織のアジトを襲撃し、度重なる戦闘をくぐり抜けてやっとの思いでたどり着いたのは絶体絶命の危機。
数時間に渡る逃避行は、とうに彼らの体力を根こそぎ奪っていた。
ここで終わりか。
2人の思いが最悪の形をとって一致する。
タナトスが残った者たちの方へ振り向いた。
再び消えるその姿。かと思えば、数メートルあった彼らとの距離は一瞬にしてゼロへと縮まる。
エーテリアスが、再び腕を振り上げる。
畏れと、疲れが、限界をもたらす。
握られた剣は力を失くした持ち主の指をすり抜け、大地にその刀身を打ち付けた。
そして……
その残響と、ほぼ同時であっただろうか。
まるで死期を悟ったかのように、自分たちの前にそびえるエーテリアスの姿をただ眺めていた男たちの目の前に―――
“銀色の光”が姿を現したのは。
「…えっ?」
どちらかの1人が思わず言葉にならない声を漏らした。
気がついた時には”それ”がもう彼らとエーテリアスの間に居た。
それどころか、いつの間にかエーテリアスの姿がない。
テレポーテーションか?いや違う。
男は少し首を横に傾けると、視界の先に壁にめり込んだ怪物の姿を見た。
光が奴を吹き飛ばしたのを、それで理解した。
「なんだよ…これ」
光は答えなかった。
刹那、光が宙を舞う。
「!?」
光は壁を形作っているコンテナ群の頂上へと、1秒とも経たずに移動した。
するとその直後、突然と光がパッと弾けて消える。
「なんだ…あれ?」
男は思わず呟いた。
光が晴れた先。そこに居たのは人だった。
だがただの人ではない。
顔には黒いバイザーが目立つ男達のと同じくフルフェイスのマスク。
体には黒地のスーツとそれを覆うように全身に取り付けられた、銀に輝く数多の鎧。
まさしく
「宇宙刑事、ギャバン!」
間違いなく、鎧の男はそう叫んだ。
なぜいきなり宇宙なのかは分からない。
なんで刑事なのかは分からない。
そもなぜまるでヒーローのように名乗りとポーズをとったのかも全く分からない。
ただ2人のホロウレイダーは、連続するその光景に唖然とするしかなかった。
『Gyrrrrrrrrrr!』
タナトスが再び起き上がり、叫びを上げる。
その顔らしきモノはもう既に銀色の男ことギャバンに向けられていた。
「…!」
その直後、ギャバンは再び地上目掛けて飛び降りた。
10メートル以上にも渡る高さから軽々と着地を決めると、その勢いのままにタナトスへと向かっていく。
そこで怪物が姿を消した。
しかし一方のギャバンは、それに慌てた様子も見せない。
「!」
何かに気づいたように、ギャバンは一方向を見つめ始める。
「シルバービーム!」
次の瞬間、虚空へ突き出した左手が白色に光った。
その光が煌めくのと同じタイミングで、ギャバンの目の前にタナトスが現れる。
エーテリアスのボディが、火花に近いような爆発で抉られた。
いきなりのダメージにたじろぐタナトスに、ギャバンは隙を与えぬ追撃の拳を喰らわす。
「ギャバンパンチ!」
さらに飛び上がって蹴りの連撃。
薄らに青い閃光が煌めいた。
「スパイラルキック!」
更には空いたタナトスの右腕を掴んで、投げ飛ばす。
地面に叩きつけられたタナトスはすぐさま立ち上がるが、そこにさらに空中に跳び上がった威力を加えてギャバンが両手の拳を突き出す。
「ディメンションボンバー!」
怪物の悲鳴が虚空に響いた。
ここにきて遂に、ホロウレイダー達は呆然の状態から今の状況を理解できるほどまでに冷静さを取り戻す。
「なんだあいつ…すごい」
「感心してる場合か、一旦隠れるぞ!」
片方がもう1人を導き、2人は近くにあった物陰に潜んでギャバンと名乗る男の戦い見守る。
再びタナトスがテレポーテーションを使った。
しかしギャバンは、まるで全てお見通しかのようにタナトスの転移先に向かって正確なタイミングで攻撃を放つ。
ついさっきまで全てを蹂躙し尽くしていた怪物の姿とは思えないほど、逆にタナトスは圧倒されていた。
『Gyaaaaaaaaa!』
「!?」
そんな中で、物事は立て続けに起こる。
ギャバンとタナトスの戦いに導かれてか、気がつけば幾匹かのエーテリアスが男たちの周辺に集ってきていた。
うち一匹が、物陰でギャバンの戦いを食い入って見ていたホロウレイダーに襲いかかる。
「ウワッ、こっちくんなバカヤロウ!」
思わずエーテリアスを引き離そうとギャバンとタナトスのすぐ傍に躍り出てきてしまった男。
それが怪物達の注目を集め、たった1人にエーテリアスの大群が押し寄せる。
「ッ!」
だがそれをギャバンは見逃さなかった。
「走れ!」
「えっ、は?」
男に向かってギャバンは叫ぶ。
僅かな戸惑いの後、それに応じて男は駆け出し、ほんの少しの距離ながらエーテリアスの群れを振り切った。
その一瞬。それを逃さず、ギャバンは今度は右手を突き出す。
「レーザーZビーム!」
ギャバンの叫びと共に、指先から放たれる青く楔状に連なるビーム。
それがエーテリアスの群れに直撃した途端、凄まじい爆発が大群を一瞬にして消し飛ばした。
「ヒエッ…!」
襲いかかる爆風の凄まじさに、思わず男は慄く。
一方でタナトスがギャバンの見せたその隙を逃さない。
テレポートでギャバンの背後に回り、剣先のように尖った右腕を振るう一閃を―――
お見舞いする寸前で、ギャバンが空高く跳び上がった。
その瞬間、また何かが光る。
ギャバンが落下すると共に、タナトスにまた攻撃が浴びせられる。
それは一筋の剣の斬撃だった。
―――ブレード?あいついつの間に…!?
男達はそれでやっと、ギャバンがつい先程まで無かったはずの剣を握っていたことに気がつく。
『Gyaaaa!』
生き物の威嚇に似て、再びタナトスが唸る。
その直後に動いたのはギャバンの方だった。
「…レーザーブレード」
右手に握った剣を縦に構える。
それを水平状に眼前へと突きだし、左手を刀身に添える。
柄から剣先へ、撫でるように動かした手の軌道を追いかけるように、剣に青い光が宿った。
同時に、顔のバイザーに2つのオレンジに光る鋭い瞳が浮かぶ。
『Gyrrrrrrrr!』
タナトスはもう効かないと悟ったのか、ついにテレポートも無しにギャバンへと突っ込んでいく。
だがギャバンは動かない。
剣が届く、その距離までタナトスが近づくまで。
身動き一つブレずに、ひたすらに待つ。
長く待たずともエーテリアスはギャバンの眼前まで進撃した。
瞬間、ギャバンが剣を振り下ろす。
「ギャバンダイナミック!」
光る。唸る。
今までとは比べ物にならないほどの光の嵐が巻き起こる。
青い閃光が、怪物を真っ二つに切裂いた。
裂かれたエーテリアスの体は、地面に着く暇もなくエーテルの光となって消えていく。
そして――静寂が訪れた。
そこには怪物の鳴き声も、歓声もない。
怪物は残らず駆逐され、残された2人はその姿に圧倒されていた。
ついさっきまで戦場だった場所にはたった1人の、光の剣を握った戦士が佇んでいた。
物陰から1人が、エーテリアスに追われ腰を抜かしていたもう片方が立ち上がる。
2人の目線は無論、ギャバンと名乗った者に向けられた。
「…あんた、一体何モンだ?」
返答はやって来ない。
だがギャバンは、2人の方へ振り向いた。
「…あれ」
ギャバンはそう言ってどこかへ指をさす。
それは彼等が命をかけ運び、ついさっきまで捨てられていた金庫だった。
「おっとまずい」
片方の男が駆け寄ろうとする。
「ちょっと待て」
だがその行き先を、ギャバンは剣で塞いだ。
「な、なんだよいきなり…」
「これ盗んだんだろ?さっきここに来る途中であんたらを追いかけてた連中から盗み聞きした」
突然と打って変わって、ギャバンを名乗る者は流暢に喋り出す。
「急に口数が増えたな…まさかお前もこれ狙いか?」
「違う。それを元の持ち主に返すだけだ」
男の質問に、ギャバンは悠々と答えた。
「おいおい冗談じゃねぇ。それには俺たちの今後が掛かってんだ、たかが金庫一個ぐらい見逃したって…」
「そんなので盗みは正当化されない」
「ッ!?」
食い入ろうとする男に対して、ギャバンもまた勢いよく距離を詰めた。
その姿に思わず男の足取りは止まる。
「……ハァ」
そして、大きなため息を零した。
「分かった分かった。助けてもらったしな、これで勘弁する」
目配せをすると、もう片方の仲間も頷いた。
そうして2人はそれぞれ倒れていた彼らの仲間へと向かう。
気絶した仲間たちそれぞれの片腕を肩に担ぐと、男は再びギャバンの方を見た。
そのギャバンもまた、2人のことをじっと見つめていた。
「おいおい見せもんじゃねぇぞ?」
「…言い忘れてたけど、そういえば怪我はない?」
「もっと前に言って欲しかったな」
段々と驚きが消え失せ、呆れが来るようになってきた。
疲労の果てに至った足を引きずりながら、男達は撤収を始める。
だがその最後にと、一つだけギャバンに尋ねた。
「そういやギャバンでいいのか?あんたの呼び方って」
「えっと…うん、いいと思う。宇宙刑事、ギャバン」
「は?自分で名乗っていいと思うってなんだよ?それになんだよ宇宙けい…」
その奥歯に物が挟まったような言い草に男は疑念を抱く。
しかしその直後、男の言葉を遮るように遠くの方が騒がしくなってきた。
おそらく追っ手の第二波だろうか。
うっすらと、その会話の断片が聞こえる。
「H.A.N.D.の六課が来てるぞ、急げ!」
「何としても早く回収しろぉぉぉぉぉ!」
「え?六課?は?」
2人の血相が一気に変わった。
治安局どころかよりにもよってH.A.N.D.。しかも人類最強と言われた化け物を抱え込む六課が。
凶日にもほどがあるだろう、と心底叫びたくなった。
「…ヤッベェ」
「ん?お前今なんて…」
「おい何かまってんだ!今はわが身第一だぞ!」
男は何か、ギャバンの独り言を耳にしたような気がした。
しかし問い詰める暇も無く仲間が彼を急かす。
既に足は疲労を忘れたように、再びぐっと軽くなっていた。
そうして敗者のホロウレイダー達は、驚くほどの逃げ足で走り出す。
「あ、そうだ。おいギャバン、ありがとy…」
だがせめてものお礼を伝えようとして、男は振り返った。
しかし気づいた時には、目の前の鎧を纏った男はもう居なく。
空の向こうに慌ただしく去ってゆく銀の光を、一瞬だけ目にした気がした。
「…まさかあんなこと言って
遠くでは騒ぎが一層に増して大きくなってゆく。
まぁいいかと思い、男は仲間の後を追った。
とあるホロウレイダーのグループの一世一代の挑戦は、こうしてその肩を大きく落とす結果で終わった。
だが決して、退屈であった訳では無い。
まるで一夜の夢のような出来事だった。
「……あ」
そうしてホロウの出口…『裂け目』から出てきた瞬間、片割れの1人がこう呟いた。
「銀の流星…」
「は?なんだそれ?」
心当たりの無いもう一方に、男は語る。
「最近話題に出るようになった謎のホロウレイダーだよ、なんか銀色に光ってて、流星みたいに現われては、エーテリアスを倒しては消える奴って…」
「へぇー銀色に光る謎のホロウレイダーねぇ……あいつじゃん」
「そうだな」
「え?今やっと?ここで気づくこととかある?」
「まぁまぁ過ちは万人にあるもんだし…?」
「お前なぁ!」
「おっと怒るなって!いやいや聞けよ、そいつ噂によれば名前すら不明らしいぜ?逆に考えれば超ラッキーってことにならね?」
「ったく強引だなぁ…」
「得られたもんがそれと命拾いぐらいしかねぇんだから文句言うなよ。なんなら俺等お礼すら言えてないし、普通に礼儀知らずにも程があるからな?」
「まぁ確かに。そうか…ハハッ、そうかもな」
確かに男たちは賭けに負けた。
だが嘆きよりも先に、響いたのは笑いだった。
「「ありがとよー、ギャバーン!」」
彼に届くかどうかは分からなかったけど、遠ざかってゆく裂け目に向かって今日を生き延びた者は感謝の言葉を叫んだ。
「………」
裂け目の傍で笑うホロウレイダー達からはずっと離れた場所。
されど、目立つフルフェイスのマスクの姿は確かに見える距離。
ネオンライトを纏ったビルの屋上で、少年がその様子を見て微笑んでいた。
対ホロウ事務特別行動部六課課長、星見雅は落胆と共に激怒した。
その理由は彼女が抱いた確信にある。
六課が捕え、自身の目の前で一列に並ばせた今回の騒動の中心「赤牙組」の構成員たち。
彼らが往生際悪く未だ嘘を貫き通していたからだ。
「ア、アア…」
「ヒエッ、やめて、殺さないで…!」
「あぁ…母さん…お母さん…今まで……ありが、とう…」
「勘弁してくれ!俺たちは賊に奪われたモノを取り返そうとしていただけなんだ!俺たちが一体今回何をしたって……」
既に彼らの生気はもう無いに等しかった。
人類最強の存在『虚狩り』を前にし、無実を訴える者、絶望する者、虚ろな目でうわごとを繰り返す者、挙げ句の果てには失神する者さえいた。
しかし星見雅の意思は変わらない。
「答えろ。貴様たちの誰かが必ず見ていたはずだ」
雅はそう言って、彼らにわざと見せびらかすかのように腰にさげた刀の柄に手を伸ばす。
「ヒエェェェェ!」
再びか、三度か、何度目か分からない絶叫が轟いた。
「課長…そろそろ落ち着きましょう…?」
「見る限りみんなマジそうですよ?ここでグダってたって何にもならないしそろそろ離してあげたって…」
彼女と同じ六課の一員、月城柳と浅羽悠真は立て続けに雅を宥めようと試みる。
だがしかし雅は決してブレない。
「銀色のスーツを身に纏った奇怪な格好の輩をお前たちは見たはずだ。ないしは、球体を形取った銀色の光を。あれは目立つ。夜間なら一層にな。これだけの人数が居て見逃すわけがない。それでも答えぬか?まさか奴に無理矢理にでも口止めされたか?」
僅かに刀の刀身が、鞘からはみ出るのが見えた。
雅の言葉に、赤牙組の構成員たちは驚くほどの勢いで皆揃えて首を横に振る。
「どちらでもない!ほんとにだ、本当になんだぁ…!」
「おじさんだいじょーぶ?涙すごいよ?ほら、特別に蒼角のアメちゃんあげる!」
これまた六課の無邪気な一員、蒼角が恐れのあまり号泣する男に慈悲をやる程だった。
「…ハァ」
「またか」とでも言うのかのように、悠真はため息を漏らす。
「これで決まりですね課長。やっぱり彼らは『ギャバン』に会ってもいなければ、見てもいない。」
「ぎゃ…ぎゃなんだって?」
「いえ、気にしなくても大丈夫ですよ。もう貴方達と関わりが無いことは分かったので。では今回の件に関しては……」
ある1人がその言葉に首を傾げた。
しかし柳が、男の疑問を遮るようにすぐさま構成員たちへ語りかける。
そうして今日もまた、ホロウで起きた一つの事件が終わりを迎えようとしていた。
「結局、此度もまた何も得られなかった…」
星見雅は失望の混じった独り言の後、背後を振り返った。
あったのは、今回の騒動の中心となった一つの金庫。
しかし視線の先にあったのは、その金庫に”貼り付けられた一枚の紙”。
盗品です。お返ししますね。
宇宙刑事より
そう書かれたメモを、彼女は鋭い眼差しで睨んでいた。
ある日ホロウに現れた、銀の流星。
禁じられながらも続発が後を絶たない非公式な“ホロウレイダー“という存在の中に、1人の異端者が舞い降りた。
その全容を謎に秘めながら、鋼鉄の男はどこからともなくホロウに姿を見せる。
彼は何者か
何のために怪物と戦うのか
その力の源とは
彼の名乗る『宇宙刑事』とは何なのか―――
これは、その謎に迫る終末世界を生きる者達の物語。
「はくしゅんッ!……誰か俺の噂話でもしてた…?」
そして、そんなことなど全く知らない
ギャバンのコンバットスーツはTypeGの方じゃないです、初代と同じやつです。
そっちの方が好きなので採用しました(クソ単純)
けど一応作者はちょうどTypeGが活躍してた頃の世代です。