コードギアス 戦場のライル SIDE OF WARFARE 作:meitoken
皇歴2010年………………『極東事変』と呼ばれる日本と神聖ブリタニア帝国の戦争が終わって間もない頃…………
「あつい、よう………………いたい、よう…………」
川村雛は爆撃で滅茶苦茶になった街をとぼとぼと、泣きながら歩いていた。顔と背中の火傷の熱さと痛みに苦しみながら…………
一度は避難場所で応急処置を受けられたが、そこもすぐにブリタニア軍の人型兵器が襲ってきて……中途半端な状態だ。このまま行けば、夏の湿気と熱さで化膿してしまうかもしれない。
幼い雛にそれは分からなかった。飲食は、残骸となったコンビニやスーパーでお菓子やインスタントをあさって何とか繋いだ。だが、それも僅かな時間だ。
私、このまま死んじゃうの?
そう思っているとき………………刀を持った大人を見つけた。軍人なのが分かる。避難先で見たこともある。よく見ると、白衣を着た男女と言い争っていた。医者だろう。
「お願いします、それは避難所へ持って行く分なんです!」
「うるさい!我が日本はまだ敗北していない!」
「そうだ、これからも戦い続けるために市民諸君には貴い犠牲になって貰う!!」
そう言って、軍人達は医師と看護師を突き飛ばした。
貴い犠牲………十歳ながら、雛は意味を理解した。そうか、仕方ない犠牲なんだ。じゃあ……?
幼いながら、雛は悪魔の論理を思いついた。
「ねえ、おじさん達って軍隊?」
雛は軍人達に声をかけた。
「え?あ、ああそうだよ。」
「君は……酷い火傷だな。だが、すまないね。この薬はブリタニアを追い払う軍の人達が使うんだ。」
さっきと同じ理屈だ………………
「じゃあ、その刀ちょっと見せて。」
「え?あ、ああ良いが…………重いぞ?」
軽く持ってみた。確かに重い…………これが、本物の刀。ドラマに出てきたものよりは大分短い。ナイフの仲間?
「じゃあ、返すけど……聞いて良い?」
「なんだい?」
「これで私がおじさん達を殺しても、仕方ないんだよね?」
一人に刀を刺した。相手は何が起こったか分からず、そのまま倒れた。左胸が心臓なのはもう、雛は知っている。
「な、き、きさ……!」
もう一人の喉を斬った。呆然と、首から空気が出ながら相手が銃を抜こうとする。雛はそれを許さずに胸に刀を刺して、とどめを刺した。
二人共、もう動いてない。それを確認した雛は、軍人達のバッグをあさった。中には水と、軍隊用の缶詰。銃とナイフもあった。念のため、持って行こう。
そして、雛は先ほどの医師達に歩み寄る。
「ねえ、この薬の中に火傷に使えるのって…………ある?」
「あ、あるわ……よ。」
先ほど、人を殺した子供を相手に医師達は怯えている。だが、雛はもうそんなの眼中にない。大事なのは、自分が死なないこと。
「じゃあ、それで私の背中と顔に塗って。後……塗り方とか教えて、今ある薬とか包帯の巻き方とかを教えてちょうだい。そうしたら、他のは返してあげる。」
「……わ、分かった。」
「嘘つかない?嘘ついたら、殺すから。」
雛は刀を突きつけた。医師が怯んだ。自分達だって、刃物を扱うくせに…………何で怖がるんだろう?ああ、包丁を向けられたような感覚なのかな?
それから、雛は自分が生きるために文字通り何でもした。
戦後も無事だった病院の医師を脅して、顔と背中の火傷に使える薬を奪った。戦後に政府が配給した水と食料を奪い取った。
「お願い!ウチの子の分なの!」
「駄目。私も死にたくないの。」
そう言って、幼い子供を抱える母親を殺した。残された子供がどうなったかなんて、雛は知らない。そんな余裕もないし、興味もなかった。
エリア11が成立した後……雛はトウキョウのゲットーの一角に隠れ住み、租界に出て日本人をつけ回した。そして、ブリタニアの政策に協力している企業や政治家が回してくれる教材を盗んで学力を身につけた。冬場で…………寒さを凌ぐために大勢で囲っている火を独り占めするために皆殺しにした。中には幼い子供もいた。ビルの瓦礫などで殴り殺した。
そうして、雛は自分が生き残るために必死だった。ゲットーの戸籍管理は意外と緩かった…………それが幸いして、ゲットーでまともに住める場所の確保と生活費を得るために、名誉ブリタニア人の試験を受けた。戸籍管理が緩いのが幸いし、戦後あちこちを転々としたという言い訳で最後に選んだゲットーの責任者も執り成してくれた。うまく、騙されてくれた。
そして軍に入隊した。無学な自分でも収入が望めそうなのが軍しかなかった。身体を売ろうにも、こんなの誰だってごめんだ。自分が男でもいらない。
若い女、という理由でブリタニア人の士官にも言い寄られたが、顔の火傷を見せてお引き取り願った。
「こんな汚い火傷女なんて、おいしくないでしょう?私がそちらの立場なら、嫌ですわ。」
「っ、イレヴンのくせに言うではないか。」
「その分、他のイレヴンを殺して頑張りますから。」
「……………………口先だけでないのを示すんだな。」
その宣言通り、雛は大勢のイレヴンを殺した。罵られたときには、内通じゃないと照明するためにその場に居合わせた士官の前で、ビルの建材でイレヴンを殴り殺した。自分が生き残るために、他の名誉ブリタニア人兵士を見殺しにしたこともあった。
「給料を払うイレヴンが減ったくらいで、何故ブリタニア人様が目くじらを立てるのですか?共食いなんだから、それを肴にワインを優雅に飲んでも良いのでは?」
見咎められた際には、常日頃見ている貴族の言い草をそっくりやり返してやった。そうして、雛は名誉ブリタニア人でありながら、一応生活は出来ていた。が、名誉ブリタニア人の年長やブリタニア人の士官の双方からは問題児と見なされていた。
馬鹿馬鹿しい……日本人の誇りがなんだというのだ。それで、これが元に戻れば苦労はない。だいたい、イレヴンを捨て駒にするブリタニア人の士官が、何故共食いを咎めるのか?
そもそも、『日本解放戦線』とやらがいるだの、あの『奇跡の藤堂』がいるからなんだ。いつか、独立できるとでも言うのか?
誰かが手を差し伸べてくれるのを待つなんて、消極的だ。泣いてたって、誰か助けてくれる保証はない。自分が生き残るためには、自分でやらなければいけない。
あの戦争でひとりぼっちになった雛が得た教訓は、それだった。
それから、総督のクロヴィスが仮面のテロリスト、ゼロに暗殺された。後任の第二皇女コーネリアは「統治者は命をかけて戦うべし」、という考えからイレヴンを前線任務から外した。除隊扱いではない。後方任務に回したのだ。
「イレヴンのテロリストとやり合って、殺される心配がなくなるのは良いんだけどな…………」
それで出世や給料に響けば、雛にとっては本末転倒…………ありがた迷惑だ。そんな彼女に転機が来たのは……
「ナンバーズを採用する第八皇子?どういう頭してるのよ、その坊ちゃん。」
まさか自分にお呼びがかかるとは思うまい。と思っていたら、KMFのシミュレーターの成績がよかったためかお呼びがかかった。
サブタイトル通り、今度は雛です。
ちょっと杜撰で強引なのは自覚してます。が、雛は基本的に自分が生き残ることを第一にするタイプ。リアリストと言えばリアリスト、エゴイストと言えばエゴイスト。
本編ではいなかったでしょうが、多分原作サイドで言えばレド・オフェンでしょう。レドとは気が合ったかも?
そんな雛がウェルナーに当たりがきつかったのは、泣いていた自分が重なったから。自分で気付いていなかったかもしれませんが、泣いていなくても手を差し伸べてくれる人がいる嫉妬もあったかもしれません。