コードギアス 戦場のライル SIDE OF WARFARE 作:meitoken
畑方秀作は幼稚園の頃からは、ひとりぼっちだった。友達を作ろうとしても、親が許さない。
『貴方はお爺様を超える軍人になるのよ!』
『あんな連中と関われば、お前が不幸になる!!』
幼稚園の発表会やお遊戯会さえ、殆どやったことがない。暇さえあれば、兵隊になる勉強を教えられた。出来なければ、殴られるなど当たり前だった。
『なんで98点なんだ!この役立たずが!』
『あんたは百点取れるのよ!取りなさい!取れ!』
そして、更に落ちたら物置に閉じ込められた。
『あつい、よ…………だして…………百点取るから…………』
そして、秀作は百点を取った。殴られたくないから。運動会でも死に物狂いで練習した。だが、怪我をして…………
『お爺ちゃんが偉いくせにかっこわるい。』
『もう、孫の出来は悪いのね。』
周りの子供達にも、親達にも言われた。そして、親に殴られた。どこで手に入れたのか、鞭で打たれた。
いつしか、秀作の身体は刀や鞭の傷が増えていった。親はそれを悟らせないようにして……水泳の授業では知り合いの軍人達に頼んで、水泳を学ばせた。
小学校三年生になった頃…………秀作は彼らに対する憎悪を芽生えさせていた。
殺してやる……大人になったら、絶対に殺してやる……!あのジジイもだ!あいつも、日本軍人もみんな奴らの仲間だ!!!
そして、あの夏…………父と母は秀作を部下に預けて出陣した。が、海軍だった両親はブリタニア海軍との戦争で命を落とし、祖父も本土決戦の折…………ブリタニア軍の歩兵や戦車を捕虜としながらも、それ以上に市民の避難に尽力…………日本が降伏した際には捕虜の返還と自分の命を差し出すことで自分が預かる市民達の助命をブリタニア軍に嘆願。それを認められ、一部のブリタニア軍人からも敬意を持たれることとなった。
だが、秀作にとっては呪いが更に強くなったにすぎなかった。戦死した両親の美辞麗句を鵜呑みにしたのか、秀作が祖父以上の軍人になると勝手に期待する。挙げ句、NACが保護を申し出た。日本独立のために力をつけて欲しい、等と耳当たりの良いことを言っても実態は奴らと同じことを言った。
そんなのごめんだ。秀作は幼いながら、口八丁で逃げて…………逃げて逃げて逃げまくった。一部、ブリタニア軍や日本政府関係者が両親や祖父の後継者になりたくないという言葉を理解したか、普通の子供として生きた。
それから、日本軍関係者だったこともあってかブリタニアからは監視対象となっていた。それからは最悪だった。ブリタニアからはやつの孫ということで独立の急先鋒になると疑われ、馬鹿なイレヴンからは独立の旗頭を期待……押しつけられた。
特に、12歳の頃に独立を求める組織に誘拐されて勝手にリーダーに祭り上げられる、挙げ句の果てに独立のための計略を練っている等と勝手なことばかり言われた。出来ない、嫌と言っても聞こうとしない。そして、遂にはブリタニア軍と戦い、死んだと言うことにして自分を殺す暴挙に出た。
秀作は理解した。日本人は人ではない。祖父の血を理由に勝手なワガママを押しつけ、作った責任を秀作に押しつける……そして、両親だった化物共と同じく自分ではやろうとしない魔物だと。
秀作は隙を突いて、そいつらのリーダーと一部のメンバーを殺して逃げ出してブリタニア軍に助けを求めた。またも疑われたが、ならばと名誉ブリタニア人になって志願すると申し出た。それが、政策協力している官僚や業界人の耳に入って、支援はして貰った。
だが、秀作はそいつらも信用するに値しなかった。そいつらがくれた教材と環境だけ使った。
15歳になった秀作は入隊し、ロッポンギでテロリストの偵察任務を言い渡された。装備は最小限のマスクのみ。偵察といっても、死んでこいといっているようなものだ。
冗談じゃない。死んでたまるか。
テロリストは地下鉄構内にいると上官から通達があり、秀作は足音を立てないように入る。その先で、灯りを見つけた。秀作はヘルメットを外し、両手を挙げて入り込む。
「誰だ!」
「待ってくれ、俺は畑方秀作。日本軍、畑方源流の孫だ。」
「畑方源流将軍?」
テロリストは困惑するが…………
「そうだ、戦争で多くの日本人市民を避難させた将軍だ。」
「思いだした!孫がいるって、噂は聞いたことがある。お前がそうなんだな?」
「そうだ、ブリタニアを内部から切り崩すために名誉ブリタニア人になった。」
「凄いじゃない!畑方将軍の孫が協力してくれるのなら、勝ったも同然だわ!」
はしゃぐテロリストを見て、秀作は内心鼻で笑った。
滑稽だ。たかが軍人の孫一人が加わっただけで、勝った気になるとは。
「実は、俺はロッポンギのお前達を鎮圧する任務で来たんだ。俺が脱出経路を案内する。」
「おお、それは助かる!」
だが、その前にと武器を受け取った。次の瞬間、その場は地獄へと変わった。
秀作は駅の出口から袋を持って、上官の前に現れた。
「お前が畑方秀作二等兵、か?」
「そうです。」
「テロリスト共を見つけたというが、どうした?そして、その袋は?」
「季節外れのクリスマスプレゼント、でしょうか?サンタなんて柄じゃないですが。」
袋から十数人分の首が出てきて、KMFから降りたパイロットも、ブリタニア人の歩兵も……秀作を見下すような目で見ていた士官も怯んだ。
「全員、武装していた。なんなら、駅の中にあるからだとこいつらの首を検証して調べてみてもいい。本人達の首だって分かると思いますが。」
「い、いや…………こ、こちらも別のルートからテロリスト共を発見した。だが……ど、どうやって?」
「妖怪ジジイの孫で、ブリタニアを内部から切り崩すため……といったら、あっさり騙されてくれた。」
「よ、妖怪……祖父の畑方源流将軍のことか?」
「他に誰がいる。奴の息子夫婦も妖怪と言えば、妖怪だが。」
「自分の親ではないのか?」
「血縁だけだ!」
士官は目の前のイレヴンの言葉に怯んだ。既に三十半ばでいくつもの戦場を渡り歩いた自負がある。イレヴンごときに後れを取るわけないという自信もあった。だが、目の前のイレヴン……自分の半分足らずの年齢の少年から言い知れぬ狂気を感じた。
「俺が奴の孫だから、という理由で疑うのならば……これでは駄目か?」
首を妙な形に並べた。
「幼稚園の頃、やった遊びがあるんだ。こうやって…………けん、けん、ぱっ!」
一つ、一つ、二つと首をふみ砕いた。
「もっと先まで踏むんだが、これだけじゃ足りない…………こいつらに協力した魔物共の首をはねさせて欲しいんですが?」
「……魔物とは…………イレヴンのことか?」
すると、畑方秀作は幼い子供のように首をかしげた。
「他に何がいると?そちらは猿と呼んでいるようだが。そんなことをしたら、本物の猿……ニホンザルに失礼ではないか?」
ブリタニア人の下士官やパイロット達も息をのんだ。
何者なんだ?このイレヴン……いや、この少年は?
「で、それでも駄目なら何をすれば良い?」
「あ、いや……」
何も言えずにいた。だが、相手はこちらの反応に首をかしげた。
「そちらにとっては野蛮なイレヴン同士の共食いなんだから、問題ないのでは?なんなら、赤ん坊を生きたまま焼いて食えば、俺が魔物の仲間じゃないと納得してくれるか?」
な!なんといった!?赤ん坊を焼いて食う!?しかも、生きたままだと!?
周りにいた兵士達もそれを想像したのか、今にも吐きそう。いや、既に吐いている者もいる。
「待て!やめろ!」
「何を?」
「後は……我々があずかる。お前は任務を達成した。それで良い。」
このまま放置しておけば、本当にやりかねない。こいつはイレヴンなんて枠に収まる存在ではない。
『極東の魔獣』とでも言うべきだ、この男は。
その後、投降した他のテロリストやゲットーの住民はブリタニア軍に見張られていることに安堵した。既に彼らにとって恐怖の対象は侵略者よりも、自分達を救ってくれるはずだった英雄の孫の狂気となっていた。
それからも、秀作はブリタニア人の士官の前でこれ見よがしにイレヴンを殺戮し、『純血派』も持て余していた。それを生き延びたゲットーの住民経由で伝わったという噂まで立ち、後にクロヴィス殺害の候補から外されることとなった。
第二皇女コーネリアは秀作のことを気にしていなかった。只、イレヴンの一介の兵士としか見ていなかった。しかし、一度だけ側近のアンドレアス・ダールトンに事情聴取を受けた。
「テロリストの内通?」
「そう噂する者もいるが、貴官は日本に異常な敵意があると聞く。他の名誉ブリタニア人将兵にも祖父の名を持ち出せば、殺すというほど。」
秀作は何も答えなかった。
「……では、質問を変える。貴官は、ブリタニアと日本のどちらを憎んでいる?」
「日本。ブリタニアには獲物を横取りされた恨みはあるが、刃向かう気はないです。」
即座に日本と答えたその姿に監視の親衛隊も困惑しているのが分かった。
「ブリタニアへの恨みとは?両親や祖父の仇、か?」
「……何故、奴らの仇討ちをしてやらないといけない?肉親とは敵……ブリタニア皇族だって、跡目争いでの殺し合いがあったと聞くし、他の国だって昔はあったはず。何故、肉親の情が先に出るか。失礼ながら、総督もそちらもその手の常識が欠如しているのでは?」
「貴様、イレヴンの分際で……」
ダールトンは親衛隊の騎士を制する。
「つまり、貴様の常識とは『肉親とは憎むべき敵』、そして『ブリタニアには自分が殺すつもりだった祖父と両親を横取りされた恨みはあるが、反抗の理由にはならない』ということだな?」
「その通り……俺はイレヴンを……魔物共を根絶やしにする。俺になるために……!」
「『俺になる』……か。」
ダールトンは目の前の少年が枢木スザクとはまた異なるタイプだとみた。彼は彼なりの信念を持って名誉ブリタニア人になったのだと分かる。だが、秀作の場合は祖父と両親、そして祖国への憎悪だ。そこにブリタニアへの忠誠心は皆無。ただ、復讐におあつらえ向きの道具としての認識しか持っていない。
他人の家庭ではあるが、相当に碌でもない親だったようだな。祖父も軍人としては私や姫様に並ぶか上でも、家庭人としてはどうだったのやら。
「……貴様がブリタニアに対して叛意がないことは理解した。が、度の過ぎた行動は慎め。我々ブリタニア人ではなく、貴様が憎む同国人に背中から撃たれる羽目になる。」
「イエス・マイ・ロード……」
だが、この時ダールトンは知るよしもなかった。後にエリア11を訪問する第八皇子に秀作が認められるだけではなく、彼を通じて秀作が愛する女性を、自分を自分としてみてくれる人を、そして父をブリタニアで得ることになるとは……
掲示板時代で書いたのもあったのですが、保存していなかったので再度手探りです。
尚、クロヴィス殺害の犯人になっていたら、秀作は発狂していたでしょう。イレヴン共の英雄こそ、秀作が最もなりたくないものですから。
それなのに、ナンバーズに理解を示そうとしてエリア制度改正を考えるライルに心を開く……自分で書いてなんだけどとんでもない矛盾です。水と油なのに、何でうまく行ったのか。ゲイリーやセラが潤滑油だったのかも。
『将軍の孫』だからあれをやれ、これをやれと言わなかったしスパイだと決めつけもしなかった。多分、ライルの時にはイレヴン相手には『殺したいのを我慢している』くらいは言って銃や剣を突きつけるくらいはしていたでしょう。