ジン「現在も、書いてる途中か、だ!」ドン「書き終わったから帰ってきたぞ」   作:笑嘲嗤

15 / 15
最終話 ドン「またな。向こうで待ってる」ジン「ああ。またな。ドン=フリークス」

ジン=フリークスは忙しかった。

「七十年前の記録と照合しろ! 同種だと決めつけんな、形態が似てるだけかもしれねえ!」

「ジンさん! 西部第三地域の降水量データですが!」

「年代別に分けろ!」

「遺跡班から追加です!」

「そこ置いとけ!」

「置く場所ありません!」

「作れ!」

「どうやって!?」

 暗黒大陸ビッグデータ解析プロジェクト。

 正式名称、暗黒大陸長期観測記録統合解析計画。

 ドン=フリークスという一人の旅行者が、三百年以上にわたって書き続けた記録。

 その全貌は、解析を始めてなお底が見えなかった。

「ジンさん!」

「今度はなんだ!」

「ドンさんの記録にある、この植物なんですが!」

「ああ」

「百十二年前と四年前で、分布が三百キロ以上移動してます!」

「気候データ重ねろ! 近くの動物もだ!」

「はい!」

「あと原文の訂正履歴消すなよ!」

「分かってます!」

 別の研究者が顔を出した。

「ジンさん!」

「なんだ!」

「三十七年前の野帳に――」

「ちょっといい?( ˙ω˙ )」

「後にしろ!!」

「分かった」

「…………」

 ジンの手が止まった。

 振り返る。

 ドンがいた。

「お前はいい」

「いいの?」

「今のは研究員に言ったんだよ!」

「俺も研究員みたいなもんじゃないの?」

「お前は研究対象兼データ生産者だ!」

「旅行者だぞ( ˙ω˙ )」

「なんでもいい! 何の用だ!」

「これ」

 一冊の本が差し出された。

 ジンが受け取る。

 表紙を見る。

 しばらく。

 何も言わなかった。

『新大陸紀行・西』

 著者。

 ドン=フリークス。

「…………出たのか」

「出たぞ( ˙ω˙ )」

 ドンは笑った。

「今度はちゃんと献本もらった」

「そこ重要か?」

「重要だぞ」

「三百年前の出版社への恨みまだ持ってんのかよ」

「恨んでない。覚えてるだけ」

「それを根に持ってるって言うんだよ」

「三冊もらった( ˙ω˙ )」

「よかったな」

「うん」

 本当に嬉しそうだった。

 ジンは表紙を撫でた。

 三百年。

 その時間が一冊に収まっている。

 もちろん、本当は収まってなどいない。

 この本に書かれなかったことが、地下のシェルターを埋め尽くしている。

 間違えたこと。

 分からなかったこと。

 何十年も経って訂正したこと。

 美味かったもの。

 不味かったもの。

 怖かったもの。

 綺麗だったもの。

 人間。

 人間ではないもの。

 そして。

 まだ名前すらないもの。

「全部書いたのか?」

「無理だぞ」

「だろうな」

「分からないこともいっぱいあるし」

「それでいい」

「うん」

 ドンが頷いた。

「俺もそう思う」

     ◇

 その日の仕事が終わっても。

 ジンは研究施設に残っていた。

 新大陸紀行・西を机の横に置き。

 また野帳を開く。

「…………」

 ふと。

 表紙を開いた。

 献辞があった。

『三百年間、野帳と鉛筆を送ってくれた人たちへ。』

『ありがとう。』

『それと。』

『約束は守ったぞ。』

「…………」

 ジンは笑った。

「遅えよ」

「俺もそう思う( ˙ω˙ )」

「うおっ!?」

 振り向く。

 またドンがいた。

「お前、いつからいた!?」

「今」

「足音しなかったぞ!」

「昔、ゴミ拾いで覚えた」

「そっちの家系じゃねえだろ!!」

「ちょっと練習した( ˙ω˙ )」

「三百年あったもんな……」

 ジンは本を閉じた。

「で?」

「ん?」

「今度は何だ」

「挨拶」

「…………」

 ジンがドンを見る。

 荷物は少なかった。

 背負えるだけの鞄。

 野帳。

 鉛筆。

 そして。

 小さな鉛筆削り。

「…………行くのか」

「うん」

「どこへ」

「向こう」

「広すぎるだろ」

「とりあえず西」

「その先は?」

「分からない」

「隣の湖は?」

「行ってみたい」

「海かもしれないやつは?」

「見たい」

「本当に海じゃなかったら?」

「湖だったって分かる( ˙ω˙ )」

「……そういう奴だったな、お前」

 ドンは笑った。

 ジンも笑った。

「次は何年だ?」

「分からない」

「三百年はやめろ」

「努力する」

「帰ってくるとは言わねえんだな」

「分からないからな」

「ああ」

 ジンはそれ以上聞かなかった。

 ドンも説明しなかった。

 少しだけ。

 静かな時間が流れた。

 最初に会った時。

 ジンは、この男が何者なのか知りたかった。

 なぜ生きている。

 何を見た。

 何を知っている。

 どうやって暗黒大陸を生き延びた。

 五大厄災とは何なのか。

 新大陸紀行とは何なのか。

 三百年間、何をしていた。

 答えは山ほど手に入った。

 その結果。

 分からないことは、もっと増えた。

「ジン」

「あ?」

「本を出せた」

「ああ」

 ドンが笑った。

 三百年前の約束を果たした男の顔だった。

「だから」

 それだけだった。

「向こうで待ってる( ˙ω˙ )」

「…………」

 ジンも笑った。

「ああ」

 手を上げる。

 ドンも上げた。

 パンッ。

 二人の掌が鳴った。

「先に全部見るなよ」

「無理だろ。広いぞ」

「じゃあ面白そうなところ残しとけ」

「早い者勝ちだな( ˙ω˙ )」

「上等だ」

 それで終わりだった。

 別れの言葉はなかった。

 必要なかった。

 ドンは歩き出した。

 ジンは追わなかった。

 まだやることがある。

 地下には三百年分の野帳がある。

 繋がっていない点がある。

 読めていない文字がある。

 誰も気づいていない規則がある。

 ハントすべきものが。

 山ほどある。

 ドンも振り返らなかった。

 まだ歩いていない場所がある。

 見たことのない生き物がいる。

 知らない人間がいるかもしれない。

 隣の湖がある。

 その向こうには。

 本物の海だって、あるかもしれない。

 二人は別々の方向へ歩いていった。

 一人は。

 三百年分の過去から、まだ誰も知らない意味を探すために。

 一人は。

 まだ誰も記録していない未来を、野帳へ書くために。

 同じ道を歩く必要はなかった。

 同じ場所にいる必要もなかった。

 ハンターとは。

 誰かの後を歩く者ではない。

 自分が欲しいものを。

 自分のやり方で追い続ける者なのだから。

     ◇

 ドンは新しい野帳を開いた。

 最初のページ。

 日付を書く。

 少し考えてから。

 一行だけ記した。

『まだ分からないことが、たくさんある。』

 その下に。

『よかった。( ˙ω˙ )』

 野帳を閉じる。

 そして。

 ドン=フリークスは。

 もう一度。

 世界の外へ歩いていった。

 

 

 ドンとジンの物語はこれにて完結。

 

 だが、ドンの旅と、ジンのハントはまだ続く。




ここまで読んでいただきありがとうございました。


出オチだったはずが、なんかドンのことがすっかり好きになってしまった。

ハンターハンターは本当に面白いですよね。

ではまた( ˙ω˙ )ノ




あ、番外編もありまーす。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

速すぎたSTONE!!~千空に従兄を投入した結果!!(作者:石の上にも3泊)(原作:Dr.STONE)

千空の従兄である戦闘力EX言語力EXお調子者EX問題児度SS調理スキルA~SS、他称冒険家、職業民俗学者、趣味探検な20代前半の人類をぶちこんだ結果=千空の目覚めが3700年速くなり、秒で司が仲間のままであり、白夜が未婚となる。▼しかし、原作どっこいどっこいのハードモードである。▼千空「地震か!?」▼従兄「違う…海外の原子力発電所がメルトダウンして核爆発した…


総合評価:1429/評価:7.97/連載:13話/更新日時:2026年07月27日(月) 20:56 小説情報

ポケモントリオン兵導入によるボーダー隊員の反応(作者:ジャサス)(原作:ワールドトリガー)

▼『ポケットモンスター』の概念が存在しない世界で、たまたま前世の記憶がある開発室所属のエンジニアは、ふと思い立った。▼「トリオン兵でポケモンって作れるんだろうか?」▼そうして前世で得た技術まで注ぎ込んで、『ポケモントリオン兵』を作成。そうして生み出されたポケモントリオン兵はボーダーに正式に採用され、各隊に1体ずつ支給されることになる。▼※このエンジニアの出番…


総合評価:1447/評価:8.48/連載:15話/更新日時:2026年10月06日(火) 16:03 小説情報

転生したのに念能力が使えない男(作者:ゴリラ廻戦)(原作:HUNTER×HUNTER)

ざけんなや オーラが無いんじゃ ドブカスが▼


総合評価:5042/評価:6.25/連載:10話/更新日時:2026年09月04日(金) 12:00 小説情報

うちは一族生存戦略(作者:far)(原作:NARUTO)

NARUTO世界で、オリ主に前世の記憶が覚醒。▼そのタイミングはうちは一族のクーデター決起集会。▼さあこのオリ主は、生き延びることが出来るか。


総合評価:7784/評価:8.4/連載:13話/更新日時:2026年10月09日(金) 14:20 小説情報

TS成り代わり殴りヒーラー家入硝子さん~幽遊白書好きが呪術廻戦の世界に転生して仙水忍の『霊光裂蹴拳』を極めたら~(作者:a-ru)(原作:呪術廻戦)

 総合格闘技のリングで死んだ格闘バカが目を覚ますと、呪術廻戦の『家入硝子』に成り代わりTS転生していた。▼ しかし、本人は呪術廻戦の原作知識ゼロ&幽白オタクだったため、呪力を霊力、術式をテリトリーだと盛大に勘違いしてしまう。▼ その勘違いのまま独学で修行を続け1級呪霊すら楽に祓えるようになったTS成り代わり主人公。だが1級呪霊との戦闘を『窓』に見られ、呪術高…


総合評価:8158/評価:7.94/連載:33話/更新日時:2026年10月04日(日) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>