ジン「現在も、書いてる途中か、だ!」ドン「書き終わったから帰ってきたぞ」 作:笑嘲嗤
ジンには、どうしても分からないことがあった。
「なあ、ドン」
「ん?( ˙ω˙ )」
「そもそも、あんたはどうやって暗黒大陸を知ったんだ?」
新大陸紀行・東。
そして、ついに完成した新大陸紀行・西。
三百年以上に及ぶ暗黒大陸の旅行記。
今となっては、暗黒大陸という存在そのものは一部の人間には知られている。
だが、ドンが旅立ったのは三百年以上も昔だ。
当時、いったい何を知っていたのか。
「んー……」
ドンはしばらく考えた。
「ああ。あれか( ˙ω˙ )」
「思い出したか?」
「ゴミ拾ってたら本が落ちてた」
「…………」
ジンは眉間を押さえた。
「最初から話せ」
◇
ドン・フリークスの故郷は、小さな村だった。
畑があり、森があり、そこに人間が暮らしていた。
ドンも若い頃には狩猟免許を持っていた。
もっとも。
「狩りが好きだったわけじゃないぞ( ˙ω˙ )」
後にドンはそう語っている。
畑を荒らす動物を追い払う。
それでも被害が続けば、必要な分だけ駆除する。
それだけだった。
獲物を仕留めること自体には、それほど興味がなかった。
そんな青年のところにも、やがて戦争はやってきた。
徴兵だった。
家から兵士を出さなければならない。
「兄貴にはもう嫁さんいたし、子供もいたからねぇ( ˙ω˙ )」
「……それで、あんたが行ったのか」
「俺、独り身だったから。家から一人なら俺がベターだろ?」
「…………」
「どうした?」
「いや」
ジンはそれ以上聞かなかった。
当時のドンにとっては、それだけの話だったのだ。
◇
軍隊は、ドンには合わなかった。
「ホイコーローの軍隊も、なんつーか体育会系でノリが合わなかったんだよねえ( ˙ω˙ )」
「軍隊ってそもそもそういうもんだからな?!」
「俺のところもそうだったぞ」
「だろうな!」
「なんで走る時にみんなで声出すんだろう」
「士気とか歩調とか色々あんだよ!」
「静かに走った方が敵に見つからなくない?( ˙ω˙ )」
「三百年後に軍隊へ改善提案すんな!!」
それでも兵士としては、案外使えた。
狩猟の経験がある。
足跡を追える。
風向きも読める。
野営もできる。
危険なら逃げる判断も早い。
本人曰く。
「ハントはそんな得意じゃないんだけどな( ˙ω˙ )」
「その話は今度じっくりやる」
そんな戦争の最中だった。
敵軍が放棄した塹壕の中で、ドンは一人の負傷兵を見つけた。
いや。
兵士ではなかった。
身につけているものが明らかに違う。
「おい、生きてる?( ˙ω˙ )」
「……誰だ」
「兵隊」
「見れば分かる! 所属を聞いている!」
「ああ」
話してみれば同盟国側の人間だった。
しかも。
「ホイコーロー家の者だ」
「へえ」
「……分かっているのか?」
「王子?」
「そうだ」
「じゃあ帰したら偉い人が喜ぶな( ˙ω˙ )」
「それだけか?」
「怪我してる時も王子なの?」
「…………」
「王子って大変だな」
王子は、しばらくドンを睨んでいた。
やがて諦めた。
「……貴様は、本当に無礼だな」
「よく言われる( ˙ω˙ )」
ドンが王子を担ぎ上げようとした、その時だった。
「…………」
「どうした?」
「動くな」
「敵か!?」
「いや」
ドンは王子の背後を見た。
いた。
奇妙な獣だった。
生物と呼んでいいのかさえ分からない。
少なくとも、ドンが故郷の山で見たことのある動物ではない。
「お前、後ろになんかいるぞ( ˙ω˙ )」
「……何?」
「獣」
王子が振り返った。
「何もいないぞ」
「いるぞ」
「いない」
「いる」
「……頭を打ったのではないか?」
「失礼だな( ˙ω˙ )」
王子には見えていなかった。
だが、ドンには見えている。
そして妙なことに、その獣は王子を襲わない。
ずっと王子についてくる。
「お前が飼ってるんじゃないの?」
「見えないものをどうやって飼うんだ!」
「じゃあ守ってるのかな」
「知らん!」
「幽霊?」
「やめろ!!」
結局、ドンは王子を連れて帰った。
なぜか仲良くなった。
そして、さらに意味不明なことに。
「写真撮ろう( ˙ω˙ )」
「なぜだ」
「王子なんて初めて会った」
「私は見世物ではないぞ」
「俺も王子助けたの初めてだ」
「…………」
「記念に」
「……一枚だけだぞ」
戦場で、二人は並んで写真を撮った。
後日。
現像された写真を見て、ドンは固まった。
「…………」
自分はいる。
王子もいる。
だが。
「獣いない( ˙ω˙ )」
裏返した。
表に戻した。
もう一度見た。
「…………」
やはりいない。
「心霊写真だ( ˙ω˙ )」
ドン・フリークス。
この時点では、念という概念を知らなかった。
◇
戦争は終わった。
平和がやってきた。
だから幸せになった。
――などという単純な話ではなかった。
「戦争終わった後は、本当にしんどかったよ( ˙ω˙ )」
「戦争中じゃなくて?」
「戦争中もしんどいよ。でも兵隊だったからな」
「どういう意味だ?」
「飯が出た。寝るところがあった。着るものもあった。今日やることも命令された」
「……ああ」
「戦争終わったら全部自分で探さなきゃいけなくなった」
仕事はない。
金もない。
兄の家へ戻ることも考えた。
だが、兄は妻と子供たちを食わせるだけで精一杯だった。
「俺一人増えたら、その分の飯がいるだろ( ˙ω˙ )」
「まあな」
「だから、すぐには帰らなかった」
「……」
「兵隊やってた方が楽だったのおかしいと思うよ」
「……それは、本当におかしいな」
だからドンは、流星街の周辺へ流れ着いた。
そこで、同じように戦争から放り出された三人の仲間と一緒に、ゴミを拾い始めた。
金属。
瓶。
まだ使える部品。
売れるものなら何でも拾った。
後に大きな商売へ育っていく仕事も、最初はただ、四人が今日の飯を食うためのものだった。
そして、ある日。
ドンはゴミの山から、一冊の本を引っ張り出した。
「なんだこれ( ˙ω˙ )」
古い本だった。
虫食いだらけ。
表紙も傷んでいる。
開いてみた。
「…………」
読めない。
一文字も読めない。
何語なのかさえ分からない。
「読めるか?」
仲間に聞かれた。
「全然( ˙ω˙ )」
「じゃあ捨てろよ」
「待って」
ページをめくっていたドンの手が止まった。
地図があった。
文字は分からない。
だが、地形なら分かる。
「…………これ」
「なんだ?」
「メビウスの形してる。真ん中には世界地図?じゃないかな?でもその周りを地面が囲んでる?大陸の中の湖の中が俺たちの世界?妄想がひどいな」
自分たちの知っている世界。
いくつもの国々。
海だと思っていたもの。
その輪郭が、巨大な湖の一部として描かれている。
そして。
地図はそこで終わっていなかった。
湖の外側。
遥か外側。
見たこともない陸地が続いていた。
ドンは黙って、その線を指でなぞった。
「……こっちは何なんだろうな( ˙ω˙ )」
「知らん」
「俺も知らない」
「文字が読めれば分かるんじゃないか?」
「読めない」
「じゃあどうする」
ドンは地図を見た。
「行ったら分かるかな( ˙ω˙ )」
「やめとけ」
「まだ行かないよ」
「今、『まだ』って言ったな?」
ドンは返事をしなかった。
ただ、地図を見ていた。
世界には、外側があった。
あると知ってしまった。
◇
それからしばらくして。
仕事は少しずつ軌道に乗った。
今日の飯を心配しなくてもよくなった。
ドンは一度、故郷へ帰った。
兄がいた。
兄の妻がいた。
子供たちもいた。
墓参りもした。
そして最後に、仕事で稼いだ金を兄一家へ残した。
「……本当に行くのか」
「うん( ˙ω˙ )」
「どこへ」
「外」
「何の外だ」
「世界の」
「…………」
兄は頭を抱えた。
「誰からそんな話を聞いた?」
「誰からも」
「じゃあ、どうして外に世界があるなんて分かる」
「本に描いてあった」
「何の本だ」
「ゴミの山に落ちてた( ˙ω˙ )」
「…………」
兄は弟の肩を掴んだ。
「頼むから、もう少し確かな情報を集めてから行け」
「でもさ」
「なんだ」
「もう知っちゃったんだよ( ˙ω˙ )」
「…………」
「外があるって」
ドンは笑った。
「知らなかった頃には戻れないだろ?」
兄は長いこと黙っていた。
やがて、弟の肩から手を離した。
「……死ぬなよ」
「うん」
「帰ってこい」
「うん」
「絶対だぞ」
「分かった( ˙ω˙ )」
そうして。
ドン・フリークスは旅に出た。
◇
「――というわけだ( ˙ω˙ )」
話を聞き終えたジンは、しばらく何も言わなかった。
「……あるって知っちまったから、行ったのか」
「うん」
「それだけ?」
「それだけ」
「…………」
「おかしい?」
「いや」
ジンは小さく笑った。
「それは、行くしかねえな」
「だろ?( ˙ω˙ )」
ほんの一瞬。
二人のフリークスは完全に意見が一致した。
だが。
ジンはすぐに研究者の顔へ戻った。
「待て」
「?」
「その本」
「うん」
「今どこにある?」
「ないぞ( ˙ω˙ )」
「…………は?」
「地図ならある」
「いや、本文だよ! その読めなかった文字の方だ!」
「ああ」
ドンは懐かしそうに頷いた。
「ないぞ」
「なんで!?」
「地図のページだけ切り取ったから」
「だから残りは!?」
「使った」
「何に!?」
「トイレットペーパー( ˙ω˙ )」
「…………」
ジンの思考が止まった。
「……誰が?」
「四人で」
「四人で!?」
「戦後で紙も貴重だったからな」
「待て待て待て待て!!」
「?」
「三百年前に流星街へ流れ着いた! 未知の文字で書かれた! メビウス湖の外側まで記録していた本だぞ!?」
「うん」
「暗黒大陸について書かれた古代文献だった可能性があるんだぞ!?」
「そうかもな( ˙ω˙ )」
「そうかもな、じゃねえ!!」
ジンは頭を抱えた。
「文字が読めれば、誰が書いたか分かったかもしれねえ! 言語体系から文明圏を推定できたかもしれない! インクも! 紙も! 虫食いの跡だって資料になる!」
「紙?」
「そうだよ! 紙そのものだって貴重な研究資料だ!」
「ああ、それなら覚えてるぞ( ˙ω˙ )」
ジンが顔を上げた。
「本当か!?」
「うん」
「どんな紙だった!?」
ドンは少し考えた。
そして。
「紙質は最高だったぞ。一拭きで全部うんこが拭けたんだ( ˙ω˙ )」
「(´;Д;`)」
番外編はこれにて完です!ありがとうございました!!
( ˙ω˙ )ノまたな、すべてのハンターハンターファンたち!
読んでくださりありがとうございました!
(・ω・)ノまたな、すべてのハンターたちよ。