ジン「現在も、書いてる途中か、だ!」ドン「書き終わったから帰ってきたぞ」 作:笑嘲嗤
では語りましょう。
西側の五大厄災のことを。
第1話 北西『空への不自由落下栗鼠・ラタトスク』
「西側で最初に見つけたリスクは?」
ジンが『新大陸紀行・西』を開いた。
「これ( ˙ω˙ )」
メビウス湖の北西。
「……栗鼠?」
「ラタトスク」
ページには巨大な樹木と、その幹を駆ける黄金色の小動物が描かれている。
どう見ても栗鼠だった。
「空への不自由落下栗鼠・ラタトスク?」
「うん」
「なんだ不自由落下って」
「落ちる方向を守らない( ˙ω˙ )」
「は?」
「上に落ちたりする」
「…………」
「横にも落ちる」
「それは落下って言わねえよ」
「だから不自由なんだろ( ˙ω˙ )」
ジンは嫌な予感がした。
◇
ラタトスクを発見したのは、ドンが世界樹を登っていた時だった。
それも、まだ暗黒大陸へ渡ってから百年も経っていない頃。
服はもう形を保っておらず。
ドンはずきゅーんを外気に曝していた。
「……待て」
「何?」
「お前…ずきゅーんって……」
「うん。裸だったぞ( ˙ω˙ )」
「やっぱりかよ!!」
「100年もたてば服なんて洗い過ぎでボロボロになるからな」
「世界樹を裸で登るな!!」
「別に誰もいないぞ」
「そういう問題じゃねえ!!」
ともかく。
裸のドンは世界樹を登っていた。
数ヶ月かけて。
来る日も来る日も。
登った。
ある日、頭上から何かが落ちてきた。
「おっ( ˙ω˙ )」
黄金色の栗鼠だった。
ドンは避けた。
ところが栗鼠は地面へ落ちなかった。
途中で方向を変えた。
真横へ落ちた。
「…………」
さらに方向を変えた。
上へ落ちた。
「なんだあいつ( ˙ω˙ )」
黄金色の栗鼠は、そのまま幹へ着地した。
「今の着地なのか?( ˙ω˙ )」
栗鼠は答えない。
手には黄金色の果実を持っていた。
◇
「食ったのか」
「食った( ˙ω˙ )」
「なんでだよ!!」
「美味そうだったから」
「未知の生物が持ってる未知の果実を!?」
「ちょっとだけだぞ」
「量の問題じゃねえ!!」
一口。
酸っぱかった。でも甘い香りが何とも言えない美味さだったのだ。だが。
「…………」
次の瞬間。
ドンは世界樹の根元にいた。
「…………」
見上げる。
世界樹。
見慣れた景色。
足元には、自分が登り始める前に置いた目印。
「…………」
手帳を確認した。
日付が戻っていた。
怪我も消えていた。
途中で拾ったものもなくなっている。
「…………」
ドンは世界樹を見上げた。
「ふざけんなよ( ˙ω˙ )」
◇
「そこなのかよ!!」
ジンが机を叩いた。
「何ヶ月登ってたと思ってるんだ( ˙ω˙ )」
「時間が巻き戻ってんだぞ!?」
「だから困ったんだろ」
「とんでもないリターンだろそれ!?」
「木の根に戻るだけに?( ˙ω˙ )」
「誰が上手いこと言っていいって言った!?」
その後、ドンは調べた。
「もう一回食った」
「懲りろ!!」
「今度は少しだけ」
「最初も少しだろ!」
「二口食べたら二日前に戻った」
「…………」
「三口目はやめた」
「珍しく理性が働いたな」
「また登るの嫌だったから( ˙ω˙ )」
「人類史級の発見を登山の手間で評価するな!!」
黄金の時果。
ラタトスクが食料として利用しているらしい果実。
人類側から見れば、時空間そのものへ干渉する可能性を持つ、途方もないリターンだった。
「持ち帰ってないのか?」
「旅行先のもの勝手に持って帰っちゃダメだろ( ˙ω˙ )」
「お前、本当にそこだけはブレねえな……」
◇
「でも」
ジンはページをめくった。
「果実がリターンなら、リスクは?」
「ラタトスク」
「栗鼠が?」
「俺には何もしなかったぞ」
「じゃあなんでリスクなんだよ」
「これ」
ドンが一箇所を指した。
巨大な鳥のスケッチ。
その横には文章がある。
――大型飛行生物。翼長推定■■
そこで文章が途切れていた。
「なんだこれ」
「俺も分からない( ˙ω˙ )」
「お前が書いたんだろ」
「たぶん」
ページ番号を見る。
一枚飛んでいる。
だが破り取った痕跡がない。
「後から思い出したんだ。ラタトスクを捕まえようとしたでかい鳥がいた気がする」
「……気がする?」
「うん」
「どうなった?」
「いなくなった」
「逃げた?」
「違うと思う」
「死んだ?」
「死体はなかった」
「じゃあ」
「最初からいなかったみたいになった( ˙ω˙ )」
ジンが黙った。
「その鳥の記録も?」
「なくなってた」
「記憶も?」
「ほとんど」
「…………」
「だから仮説だけど」
ドンはラタトスクの絵を指した。
「こいつ、敵を倒してるんじゃなくて、敵がいたこと自体をなくしてるのかもしれない」
「……被害数を測れねえじゃねえか」
「そうだな」
「成功したら被害記録そのものが消える」
「かもしれない」
「被害者ゼロだから安全、が成立しない」
「うん」
ジンは栗鼠の絵を見る。
可愛らしい。
「お前はなんで平気だった?」
「戦ってないからじゃない?」
「攻略法は?」
「知らない」
「どう接触した」
「挨拶した」
「…………」
「隣に座った」
「…………」
「尻尾触らせてもらった。ふわふわだったぞ( ˙ω˙ )」
「お前は暗黒大陸で何してんだよ」
「旅行( ˙ω˙ )」
「……果実の味は?」
「酸っぱい。皮も硬い。でも香りはとてもいい」
「評価は」
「星二つ」
「低っ!?」
「また登らされたからな」
「まだ根に持ってんのかよ」
「木の根だけにな( ˙ω˙ )」
「二回目は許してねえぞ!?」
ジン「俺をツッコミ役としてこき使うんじゃない!!原作みたいな強者ムーブさせろよ!!」
ドン「お茶でも飲んで落ち着けよ♤」
ズキューン。
ジン「試験官ごっこやめろぉおお!!」