ジン「現在も、書いてる途中か、だ!」ドン「書き終わったから帰ってきたぞ」 作:笑嘲嗤
「次」
「ファグファクトリー( ˙ω˙ )」
「工場?」
「たぶん」
「たぶん?」
「俺がそう呼んでるだけ」
ジンがページを見る。
メビウス湖の水面。
その上に巨大な構造物が浮かんでいる。
いや。
「……逆さまじゃねえか」
「うん」
船底らしきものが空を向き。
建造物らしきものが水面へ垂れ下がっている。
煙突のような構造。
配管。
クレーン。
巨大な歯車。
それらが水面ぎりぎりを移動している。
「逆さま工場船団・ファグファクトリー」
「何作ってる?」
「分からない( ˙ω˙ )」
「……三百年いたんだよな?」
「うん」
「観察した?」
「した」
「何作ってる?」
「分からない」
「原料は?」
「怪獣とか、木とか、湖の底から掘った石とか」
「それで何を?」
「だから知らないって( ˙ω˙ )」
◇
普段、ファグファクトリーは湖上にいる。
だが時折。
上陸する。
ドンはそれを偶然目撃した。
「何か来るな( ˙ω˙ )」
メビウス湖の水面が割れた。
巨大な構造物が岸へ近づいてくる。
そして。
何かが陸へ伸びた。
脚なのか。
クレーンなのか。
ドンにも分からなかった。
ただ、それは歩いた。
森へ。
その先には巨大生物がいた。
人間ならば、怪獣としか呼べないもの。
ネテロが暗黒大陸で見上げたような。
人間の尺度では、戦うという発想さえ馬鹿馬鹿しくなる巨体。
それへファグファクトリーが近づいた。
「おっ( ˙ω˙ )」
怪獣が吠えた。
森が揺れる。
ファグファクトリーの一部が吹き飛んだ。
「壊れた( ˙ω˙ )」
次の瞬間。
別の機構が動いた。
怪獣の脚を拘束した。
倒す。
運ぶ。
切断する。
分類する。
肉。
骨。
角。
外皮。
臓器。
体液。
それぞれが別の経路へ流れていく。
「…………」
ドンは手帳へ書いた。
原材料らしい。
◇
「待て」
ジンが遮った。
「今なんて言った」
「原材料( ˙ω˙ )」
「あのサイズの生物が?」
「うん」
「捕食じゃない?」
「食べてるようには見えなかった」
「縄張り争い」
「湖からわざわざ来たぞ」
「……採取?」
「それが一番近いと思う」
ジンが黙った。
人類が暗黒大陸を恐れる理由の一つ。
巨大生物。
それを。
ファグファクトリーは。
資源として扱っている。
「こいつが強い、って話じゃねえな」
「うん」
「工場にとって怪獣が鉄鉱石とか木材みたいな扱いなのか」
「たぶん」
「……誰が動かしてる?」
「知らない」
「乗員は?」
「見てない」
「自動?」
「分からない」
「文明の遺物?」
「分からない」
「生物?」
「それも分からない」
「何なら分かる!?」
「動いてる( ˙ω˙ )」
「それは俺にも分かる!!」
◇
「で、リターンは?」
「これ」
ドンが小さな塊の絵を見せた。
「ゴム?」
「金属」
「どっちだよ」
「両方みたいな感じ」
念導弾性金属・ゴムリウム。
曲がる。
伸びる。
戻る。
だが金属としての性質も持つ。
問題はそこではない。
「念を込められる( ˙ω˙ )」
「普通の物にも込められるだろ」
「そうじゃなくて」
ドンは少し考えた。
「念そのものを入れられる」
「…………」
「能力ごと」
「待て」
「しかも誓約とか制約なしで使えるみたい」
「待て待て待て」
ジンの顔色が変わった。
「能力者本人がいなくても?」
「条件を揃えればな」
「元の能力者が背負ってる制約は?」
「ゴムリウム側にはないみたい」
「……兵器にしたら?」
「できるんじゃない?」
「産業利用は?」
「できるんじゃない?」
「医療」
「できるんじゃない?」
「これ、人類の念能力の使い方そのものが変わるぞ」
「便利そうだよな( ˙ω˙ )」
「便利で済ませるな!!」
ジンはもう一度、工場船団の絵を見る。
「これを作ってるのか?」
「分からない」
「製品じゃないのか?」
「分からない」
「部品?」
「分からない」
「廃材?」
「それもあり得る」
「…………」
「拾った場所が変だったからな」
「どこだ」
「排水口みたいなところの近く」
「……人類文明を変える素材が、あいつらにとってゴミの可能性あるのかよ」
「分からない( ˙ω˙ )」
「その言葉、今回怖えよ」
工場は今日も何かを作っている。
何を作っているのか。
誰のためなのか。
完成したものがどこへ行くのか。
誰も知らない。
ただ一つ分かること。
人類が怪獣と呼ぶものを。
それは今日も、
原材料として搬入している。