ジン「現在も、書いてる途中か、だ!」ドン「書き終わったから帰ってきたぞ」 作:笑嘲嗤
「次は?」
「図書館( ˙ω˙ )」
「もう豚くらいでいいんだけどな……」
「危なくないぞ」
「本当か?」
「入るだけなら全然」
空園図書城砦・フィロソフィア。
巨大な城塞。
無数の書架。
誰もいない。
門番もいない。
怪物もいない。
毒も罠もない。
念能力すら必要ない。
「一般人でも入れる?」
「入れる」
「リターンは?」
「普通に本棚にある( ˙ω˙ )」
「……嫌な予感してきた」
◇
それは辞書だった。
少なくともドンは、そう判断した。
前。
後ろ。
上。
下。
内。
外。
世界を認識するための概念が記されている。
そして途中から。
人類の知らない「方向」が現れる。
「《〆〆#》」
「そう書くしかない( ˙ω˙ )」
「実際には?」
「違う」
「何が」
「方向が一個足りない」
「……文字に?」
「うん」
読む。
理解する。
それだけで。
今まで存在しなかった道が見える。
正確には。
存在していたのに知覚できなかった道が見える。
◇
「で、何が危険なんだ」
「先がある( ˙ω˙ )」
「…………」
「歩ける」
「戻れる?」
「戻れる」
「道に迷う?」
「迷わない」
「精神操作?」
「感じなかった」
「中毒?」
「違うと思う」
「じゃあ何が」
「行きたくなる」
ドンは当然のように言った。
「だって、今まで誰も知らなかった方向に道があるんだぞ( ˙ω˙ )」
「三次元空間に次元を拡張しても知覚できるようになる……なんだよそれ……」
逆に言えばそれだけだった。
帰路はある。
出口もある。
誰も引き止めない。
誰も誘わない。
それでも。
《〆〆#》を理解した者は、その道へ進む。
そして帰ってこない。
帰れないのか。
死んだのか。
生きているのか。
帰れるけれど帰りたくないのか。
何も分からない。
「……つまり」
ジンが呟いた。
「リスクを突破してリターンを得るんじゃない」
「うん」
「リターンを得る」
「うん」
「その結果、リスクが発生する」
「そう」
リターン→リスク。
順番そのものが逆だった。
◇
「お前はなんで帰った?」
「まだこっちで見てないものがあったから( ˙ω˙ )」
「お前なら絶対行くだろ」
「行きたかったぞ」
「だろうな」
「今でも行きたい」
「もっと悪いわ!!」
ドンは笑った。
「でも、見つけた道を全部歩かなきゃいけないわけじゃない」
「…………」
「それに帰らないと、誰にも教えられないだろ」
ドンが『新大陸紀行・西』を叩く。
「こんな道があったぞって」
「…………」
「見てきたぞって言いたいじゃん( ˙ω˙ )」
◇
ドンの記録。
《〆〆#》以降の閲覧を推奨しない。
帰還不能となる物理的要因は確認されていない。
そして最後に。
帰れないのではない。帰らなくなる。
「持ち帰らなかったんだな」
「うん」
「環境保護?」
「それもある」
「他は?」
「帰りたくなくなる道を、帰る場所に持ってきちゃダメだろ( ˙ω˙ )」
「……お前、今でもその道見える?」
「見えるぞ」
「は?」
「この部屋にもある」
「言うな」
「一本( ˙ω˙ )」
「言うな!!」
「たぶん――」
「言うなっつってんだろ!!」
ドンは何もない壁を見た。
いつでも行ける。
だから。
今日行く必要はない。
「まあ、そのうちな( ˙ω˙ )」
「行く気じゃねえか!!」
リターンを得たからそれがリスクになるという逆パターン。
暗黒大陸こわぁ