記念すべき第十話。
主人公はパンを食べました。
街を歩きました。
また食べました。
そして最後。
花京院が二人いました。
リオ「分身できる?」
花京院「できません」
本人から正式に否定されました。
というわけで。
花京院が二人いる。
でも花京院は一人しかいない。
つまり。
どっちかがおかしい。
リオ。
間違えて本物殴るなよ。
リオ「殴る前提?」
念のためだよ。
承太郎なら殴って確認しそうだから。
承太郎「聞こえてんぞ」
……。
それでは第十一話。
花京院は二人いない。
翌朝。
シンガポール。
ホテルの朝食。
リオはパンを食べながら、向かいに座る花京院を眺めていた。
「…………」
花京院は新聞を読んでいる。
「…………」
一面を読み終える。
紙をめくる。
「…………」
二面。
さすがに花京院が新聞から目を上げた。
「リオ。さっきから何です? 僕の顔に何かついていますか?」
「いや」
「では、なぜ見ているんです?」
「昨日のこと考えてた」
「昨日?」
「花京院を見た」
花京院が少し眉を上げる。
「ああ、その話ですか。昨日も言いましたが、その時間なら僕はあなたと一緒にいたでしょう。見間違いでは?」
「多分。でも、結構似てた」
「僕に?」
「うん。だから確認したいんだけど」
「何でしょう」
「分身できる?」
「できません」
即答だった。
「本当に?」
「できませんし、昨日から急にできるようにもなっていません。そもそも僕のスタンド能力と何の関係もないでしょう」
「そうだよね」
「納得したなら、なぜ少し残念そうなんです?」
「便利そうだったから」
「僕が二人いたら、何をさせるつもりだったんですか」
リオはパンを一口食べる。
少し考えた。
「片方に買い物」
「自分で行ってください」
「怪我人なのに」
「昨日一人で敵と戦った人が、それを言いますか?」
「昨日は昨日」
「傷は一日で治りませんよ」
「少しは治った」
「そういう問題ではありません」
リオはパンをもう一口。
「花京院」
「何です?」
「最近ジョセフっぽい」
「それはあなたの世話をする人間が、全員同じことを言い始めているだけでは?」
「…………」
「反論は?」
「ない」
「でしょうね」
隣の席でコーヒーを飲んでいた承太郎が、鼻で笑った。
リオがそちらを見る。
「何?」
「別に」
「今笑ったよね」
「気のせいだ」
「…………」
リオは承太郎を数秒見た。
何も言わずパンへ戻る。
承太郎もコーヒーを飲む。
花京院も新聞へ戻った。
少し離れた席で。
「なんかあいつらだけ朝から静かすぎねえか?」
ポルナレフが言った。
「お前が騒がしすぎるんじゃ」
ジョセフが答えた。
◆
朝食後。
ジョセフが地図をテーブルに広げた。
「さて。いつまでもシンガポールでのんびりしとるわけにもいかん。目的地はエジプトじゃ。飛行機は……まあ、色々あって避けたい。ここから先の移動経路を考え直す必要がある」
「色々?」
リオが聞く。
ジョセフは無視した。
「海路を使うにしても、同じ手段だけでは目立つ。DIOの手下にこちらの行動を読まれる危険もあるからの」
「なるほど」
「というわけで、わしとアヴドゥルは情報を集める。お前さんたちは――」
ジョセフの目がリオで止まった。
「何?」
「今日は大人しくしとれ」
「昨日も言われた」
「昨日言われて大人しくしとらんかったから今日も言っとるんじゃ!」
「敵が来たから」
「路地に入ったのはお前さんじゃろ!」
「尾行されてたから」
「それを一人で確かめに行くなと言っとる!」
リオは少し考えた。
「でも勝った」
「勝敗の話じゃない!」
向こうで承太郎が小さく息を吐いた。
「諦めろジジイ。こいつに言っても無駄だ」
「お前がそれを言うか!」
「俺は勝手にしろとは言ってねえ」
「ほぼ同じじゃ!」
リオは二人を見比べた。
「仲良いね」
「「よくねえ」」
声が重なった。
「…………」
リオが花京院を見る。
花京院は新聞を畳んだ。
「僕を巻き込まないでください」
◆
昼前。
シンガポールの街。
リオと花京院は並んで歩いていた。
別に目的があるわけではない。
ジョセフから頼まれた買い物を済ませ、その帰り。
リオが紙袋を持っている。
「ジョセフ、俺に買い物頼むんだね」
「一人では行かせていないでしょう」
「信用されてない?」
「昨日の今日ですから」
「花京院は監視?」
「付き添いです」
「言い方変えただけじゃない?」
「気のせいです」
「…………」
最近。
この一行。
気のせいの使い方が雑になっている。
リオはそう思った。
口には出さなかった。
大通りには車が行き交い、歩道には観光客と地元の人間が混じっている。
露店から漂う香辛料の匂い。
知らない言葉。
暑い空気。
リオは嫌いではなかった。
「花京院」
「はい」
「こういうところ好き?」
「旅行として来ていたなら、もう少し楽しめたと思いますよ。今はいつ敵に襲われるか分かりませんからね」
「昨日は楽しかった」
「敵に襲われる前までは?」
「うん」
「それなら何よりです」
花京院は少し笑った。
「あなたは意外と、知らない場所を見るのが好きなんですね」
「そうかも」
「自覚がなかったんですか?」
「考えたことなかった」
リオは前を見る。
知らない街。
知らない景色。
知らない人間。
「知らないものは、見てみたい」
「DIOも?」
リオの足が、ほんの少しだけ遅くなった。
「……うん」
それ以上は言わなかった。
花京院も聞かなかった。
◆
帰り道。
リオは露店の前で止まった。
「…………」
花京院も止まる。
「食べたいんですか?」
「見てただけ」
「そうですか」
二人とも動かない。
「…………」
「…………」
「食べる?」
「僕に聞くんですか?」
「一人で食べるよりいいかなって」
「では、いただきましょうか」
買った。
名前は分からなかった。
リオが一口。
花京院も一口。
「…………」
「…………」
リオが見る。
「どう?」
「美味しいですね」
「うん」
終わり。
二人はまた歩き出した。
しばらくして。
「昨日も似たようなものを食べましたね」
花京院が言った。
「昨日の方が甘かった」
「そうでしたね」
「こっちの方が好きかも」
「僕は昨日の方ですね」
「じゃあ次から別々に買おう」
「なぜ次がある前提なんです?」
「ないの?」
「……まあ、機会があれば」
そんな話をして。
角を曲がった。
その瞬間。
「…………」
リオの足が止まる。
「どうしました?」
花京院が振り返る。
リオは答えなかった。
十数メートル先。
人混み。
黒髪。
学生服。
横顔。
ほんの一瞬。
建物の陰へ消えた。
「……また」
「何がです?」
リオは隣を見る。
花京院。
間違いなくいる。
「花京院」
「はい」
「今、向こうにもいた」
花京院の表情が変わった。
今度は笑わない。
「昨日と同じですか?」
「うん」
「見間違いだと思いますか?」
「二回目だから、ちょっと思わなくなってきた」
花京院も人混みを見る。
「スタンド能力の可能性を考えた方がいいでしょうね。僕の姿を作るだけなら、変装か幻覚という可能性もある。昨日から僕の姿を使っているなら、目的があるはずです」
「俺を騙す?」
「あなたとは限りません。僕の姿なら、承太郎たち全員に近づける」
「なるほど」
リオはもう一度、男が消えた方向を見る。
「追いますか?」
花京院が聞く。
リオは少し考えた。
「やめとく」
「意外ですね」
「昨日怒られたから」
「学習したんですね」
「俺を何だと思ってるの?」
「一人で怪しい路地に入って敵と戦って帰ってくる人です」
「…………」
「事実でしょう」
「うん」
◆
二人はホテルへ戻った。
事情を聞いた承太郎は、しばらく黙っていた。
「花京院そっくりの奴か」
「うん」
「二日続けて?」
「昨日一回。今日一回」
「顔は間違いねえのか」
「多分」
「多分じゃ分からねえだろ」
「遠かったから。でも」
リオは隣の花京院を見る。
「似てた」
「僕自身が見られなかったのが残念ですね」
花京院は少し考える。
「もし僕の姿を使うスタンド使いなら、狙いは接近でしょう。こちらから探し回るより、しばらく警戒して相手が動くのを待った方がいいかもしれません」
アヴドゥルが頷いた。
「同感だ。敵の能力が分からない以上、下手に分散する方が危険だろう」
「じゃあ全員一緒?」
リオ。
「少なくとも一人になるのは避けるべきじゃな」
ジョセフが答える。
「リオ。特にお前さんじゃ」
「何で俺だけ名前呼んだの」
「心当たりがありすぎるわ!」
◆
翌日。
リオは一人だった。
「…………」
正確には。
一人にされた。
「昼には戻ってください」
花京院から言われている。
ジョセフたちはそれぞれ用事。
承太郎も外出。
ポルナレフもどこかへ行った。
結局。
「一人になるな」は一日で崩壊した。
「…………」
リオは街を歩く。
昨日と同じ露店。
「…………」
買った。
一口。
「昨日の方が美味しい」
歩く。
その時。
視界の端。
黒。
リオの足が止まった。
今度は近い。
人混みの向こう。
花京院。
「…………」
昨日までなら。
追った。
今日は。
少し考える。
そして。
「花京院」
声をかけた。
黒髪の少年が振り返る。
「ああ、リオ」
普通の顔。
普通の声。
普通の笑い方。
「一人ですか?」
「うん」
「ジョースターさんたちは?」
「別行動」
「そうですか。僕も少し用事があって出ていたところです」
自然。
少なくとも。
一目では分からない。
リオは食べながら近づく。
「花京院」
「何です?」
「昨日のやつ、覚えてる?」
「昨日?」
「二人で食べたやつ」
「ああ。もちろん覚えていますよ」
「美味しかった?」
「ええ。なかなかでした」
「どっちが好き?」
「どっち?」
「一昨日のと昨日の」
「…………」
ほんの僅か。
間。
「昨日の方ですね」
「そっか」
リオはもう一口食べる。
歩き出す。
偽の花京院も隣へ並んだ。
「何か変ですか?」
「別に」
「そうですか」
歩く。
会話が途切れる。
それでもリオは隣を見る。
顔。
声。
歩き方。
よく似ている。
というより。
同じに見える。
「花京院」
「今度は何です?」
「俺が最初に会った時、何て言ったか覚えてる?」
「ずいぶん昔の話をしますね」
「まだそんな経ってないよ」
「そうでしたか?」
「一週間も経ってない」
「旅をしていると長く感じますからね」
答えない。
「覚えてない?」
「細かい会話まで全て覚えているわけではありませんよ」
「そう」
おかしくはない。
普通なら。
ただ。
花京院なら。
質問されたら、分からないなら分からないと答える。
誤魔化す時も。
もう少し上手い。
「リオ」
「何?」
「さっきから質問ばかりですね。まるで僕を疑っているみたいだ」
「疑ってるよ」
「…………」
足が止まる。
リオも止まった。
「昨日から、僕の偽物を見たと言っていましたね」
「うん」
「それで、今度は僕が偽物だと?」
「まだ分からない」
「なら」
花京院が笑う。
「そんなくだらない質問を続けるより、仲間を信じたらどうです?」
「…………」
リオの目が。
少し細くなった。
「何です?」
「今ので結構怪しくなった」
「なぜ?」
「仲間」
「…………」
「花京院、俺にそれあんまり言わないよ」
「言葉一つで疑うんですか?」
「それだけじゃない」
リオが持っていた食べ物を見る。
「昨日」
顔を上げる。
「花京院は一昨日の方が好きって言った」
「…………」
笑顔が止まった。
「さっきお前、昨日の方って言ったよね」
沈黙。
街の喧騒だけが聞こえる。
リオは静かに続けた。
「それくらいなら忘れるかもしれない」
一歩。
「最初に会った時の会話も、忘れてるかもしれない」
もう一歩。
「『仲間』って言ったのも、別におかしくないかもしれない」
ブラックサファイア。
リオの背後へ。
ゆっくり現れる。
「でも」
青い光。
「全部重なると」
拳を握る。
「結構怪しいよ」
「…………」
花京院の顔が。
歪んだ。
「クク……」
声も変わる。
「なるほどな」
頬。
黄色い何かが。
ぬるり。
と這う。
「思ったより面倒なガキだ」
「よく言われる」
「なら、こいつも見覚えがあるか?」
花京院の皮膚が。
崩れる。
いや。
剥がれているのではない。
黄色い物質が。
形を変えている。
頬。
顎。
首。
制服。
全てが。
どろり。
と。
別の姿へ。
「…………」
リオは数秒見た。
「気持ち悪い」
「第一声がそれか!」
「他に何て言えばいい?」
「恐れろ!」
「嫌だ」
「そういう意味じゃねえ!」
黄色い肉が膨らむ。
「俺のスタンド――『黄の節制』!」
イエローテンパランス。
それは。
肉のようで。
粘液のようで。
生き物のように蠢いていた。
リオの視線が黄色い表面を追う。
「触ったらまずそう」
「ほう?」
「見た目」
「勘だけはいいらしいな」
男――ラバーソールが笑う。
「こいつは喰うぜ。生物だろうが、スタンドだろうがな」
「…………」
ブラックサファイアが一歩前へ。
リオは。
殴らせなかった。
「昨日学んだからな」
「あ?」
「分からない能力を、最初から殴るのやめた」
「慎重になったじゃねえか!」
「一日で成長した」
「自分で言うな!」
◆
黄色い塊が。
突然伸びた。
「!」
ブラックサファイアがリオの身体を引く。
直前までいた場所。
壁へ黄色い物質が張りついた。
じゅ。
嫌な音。
「…………」
リオが見る。
表面を。
喰っている。
「本当に食べるんだ」
「だから言っただろうが!」
「敵の説明、どこまで信じていいか分からないから」
「疑い深すぎんだろ!」
「さっきそれでお前見破ったけど」
「…………」
「役に立ったね」
「ムカつくガキだなてめえ!」
黄色。
再び伸びる。
リオが横へ跳ぶ。
傷。
「っ」
脇腹が痛む。
僅かに遅れた。
黄色い物質が服の端へ触れる。
「――!」
「ハハッ!」
ブラックサファイア。
即座に布を引き裂く。
黄色い欠片ごと地面へ。
「判断が早いな!」
「褒めても何も出ないよ」
リオが後退する。
距離。
狭い路地。
左右に壁。
後ろは大通り。
昨日と似ている。
ただ。
相手は全く違う。
「…………」
殴る。
危険。
触れる。
危険。
なら。
「熱」
「あ?」
ブラックサファイアの手。
周囲。
熱エネルギー。
集める。
空気が少し冷える。
黒い掌。
熱が集中する。
「へえ」
ラバーソールが目を細めた。
「そういう能力か」
「試すよ」
放つ。
熱。
黄の節制。
表面。
焼ける。
焦げた臭い。
だが。
「無駄無駄ァ!」
黄色い肉が。
さらに膨らむ。
焼けた表面を覆う。
新しい層。
「…………厚い」
「俺のイエローテンパランスに弱点はねえ! どんな攻撃だろうが、この肉の鎧が受け止める!」
リオは黙って見る。
焼けた。
だが。
浅い。
「最近」
「あ?」
「相性悪い相手多くない?」
「知らねえよ!」
「俺も知らない」
「じゃあ言うな!」
黄色い触手。
リオへ。
ブラックサファイアが石畳を蹴る。
後退。
もう一度。
「逃げるのか!」
「考えてる」
「逃げながらか!」
「止まったら食われるだろ」
「それはそうだが!」
リオが一瞬だけ振り返る。
前方。
人。
多い。
「…………」
ここでは。
戦いにくい。
昨日と同じ。
だが昨日と違い。
敵そのものが。
追ってくる。
「なら」
方向を変える。
「場所変えよう」
「待ちやがれ!」
◆
走る。
傷が痛む。
リオの足は。
普段より明らかに遅い。
「昨日の怪我かァ!?」
後ろからラバーソール。
「そう」
「運がねえな!」
「お前に会ったこと?」
「それもだ!」
「自分で言うんだ」
「うるせえ!」
角。
曲がる。
その先。
「…………」
見覚えのある帽子。
学生服。
「リオ?」
花京院。
本物。
その隣。
承太郎。
「…………」
リオは止まる。
後ろを見る。
ラバーソール。
前を見る。
花京院。
「やっぱり」
息を整えながら。
「二人いた」
「何がです?」
花京院が眉を寄せる。
「花京院」
「僕は一人ですよ」
「知ってる」
ラバーソールが舌打ちする。
「チッ……」
承太郎の目が。
そちらへ向く。
「そいつか」
「うん」
「昨日から花京院の面ァ使ってやがったのは」
「そうみたい」
承太郎が一歩前へ出る。
「てめー」
ラバーソール。
「空条承太郎か」
「だったらどうした」
黄色い肉が。
蠢く。
「探す手間が省けたぜ」
「そいつ強いよ」
リオが言う。
承太郎は振り返らない。
「見りゃ分かる」
「殴ると危ない」
「そうか」
「触っても危ない」
「そうか」
「熱もあんまり効かなかった」
「そうか」
「スタンド食べる」
「…………」
そこで。
承太郎が少しだけ横を見る。
「先に言え」
「今言った」
「最初にだ」
「殴ると危ないから言った」
「順番の話だ」
「細かい」
「てめーな……」
花京院が二人の間に入る。
「喧嘩は後にしましょう。それよりリオ、その傷で戦い続けるのは危険です。ここからは僕たちもいます」
「戦えるよ」
「昨日も聞きました」
「今日は昨日より治ってる」
「さっき走って痛そうにしていたでしょう」
「見てたの?」
「見れば分かります」
承太郎が帽子を押さえる。
「下がってろ」
「…………」
「昨日はてめーがやったんだろ」
「うん」
「なら今日は俺がやる」
リオは承太郎を見る。
「順番制?」
「違う」
「じゃあ俺も――」
「邪魔だ」
短い。
リオが黙る。
「…………」
「何だ」
「言い方」
「事実だ」
「…………」
リオは少し不満そうだった。
だが。
一歩下がった。
「分かった」
花京院が少し驚く。
「素直ですね」
「承太郎」
「あ?」
「負けたら笑うから」
「好きにしろ」
「あと」
「まだあんのか」
「多分、普通に殴っても倒せないよ」
承太郎の口元が。
ほんの僅かに。
上がる。
「だったら」
背後。
スタープラチナ。
紫の巨体。
圧倒的な存在感。
「普通じゃねえ殴り方を考えりゃいい」
「…………」
リオが目を細める。
「脳筋」
「聞こえてんぞ」
「聞こえるように言った」
「後で覚えてろ」
◆
ラバーソール。
黄の節制。
空条承太郎。
スタープラチナ。
向かい合う。
リオは少し離れた壁際へ。
花京院も隣に立つ。
「リオ」
「何?」
「ありがとうございます」
「何が?」
「僕の偽物を見つけてくれたことです」
「別に」
「それでもです」
「…………」
リオは少し黙った。
「花京院」
「はい」
「昨日食べたやつ」
「?」
「一昨日の方が好きだったよね」
花京院が瞬きをする。
そして。
少し笑った。
「ええ。覚えていたんですか?」
「覚えてるよ」
「そうですか」
「偽物は間違えた」
「それで見破った?」
「それだけじゃないけど」
「なるほど」
花京院はラバーソールを見る。
「随分細かいところまで見ているんですね」
「…………」
「何です?」
「別に」
今度は。
リオが前を見る。
「始まるよ」
◆
「来い」
承太郎。
スタープラチナ。
拳。
ラバーソールの全身を。
黄色い肉が覆っていく。
「ククク……!」
黄の節制。
イエローテンパランス。
「この俺の『黄の節制』に弱点はねえ!」
承太郎は動かない。
「喰えるものなら」
ラバーソールが笑う。
「喰ってみろって顔だなァ!」
「違うぜ」
「あ?」
「てめーを」
承太郎の目が。
鋭くなる。
「どうブチのめすか考えてただけだ」
リオは。
その横顔を見る。
「…………」
昨日。
自分も。
似たことをした。
能力が通じない。
なら。
別の方法を探す。
ただ。
承太郎が。
自分と同じ答えを出すとは限らない。
それが。
少し。
面白かった。
「花京院」
「はい?」
「承太郎って」
「はい」
「こういう時、楽しそうだね」
「…………」
花京院は少し考えた。
「あなたも人のことは言えないと思いますよ」
「俺?」
「ええ」
「そうかな」
「そうですよ」
「…………」
リオは否定しなかった。
目の前。
スタープラチナが。
拳を握る。
黄の節制が。
蠢く。
空条承太郎。
対。
ラバーソール。
戦いは。
ここからだった。
第十一話でした!
花京院。
一人。
偽花京院。
一人。
合計。
二人。
リオ「やっぱり二人いた」
そういう話じゃない。
というわけで、ついに登場。
黄の節制(イエローテンパランス)。
ラバーソールです。
今回はリオが偽花京院を見破る側になりました。
ただ、
「お前偽物だろ!」
でいきなり正解するのではなく。
昨日食べたもの。
昔の会話。
普段の言葉遣い。
一個なら気のせいで済む程度の違和感が、少しずつ積み重なっていく形です。
そして決定打。
偽花京院「仲間を信じたらどうです?」
リオ「…………」
そこなんだ。
リオ「花京院、俺のことあんまり仲間って言わないから」
理由が若干悲しい。
でもまあ。
本人が毎回、
「仲間になった覚えはない」
って言ってますからね。
そりゃ花京院もわざわざ言わない。
あと地味に、前日のどうでもよさそうな会話が役に立ちました。
花京院「僕は一昨日の方ですね」
リオ「じゃあ次から別々に買おう」
こんな会話。
誰が覚えてるんだ。
リオが覚えてました。
そして正体を見破った後は、黄の節制と少しだけ交戦。
殴らない。
触らない。
熱を試す。
効きが悪い。
リオ「最近、相性悪い相手多くない?」
作者もそう思う。
でも毎回ブラックサファイアで真正面から全部解決できたら、それはそれで困るんだ。
そして最後は。
承太郎、参戦。
リオ「強いよ、それ」
承太郎「そうか」
リオ「殴ると危ない」
承太郎「そうか」
リオ「触っても危ない」
承太郎「そうか」
リオ「スタンド食べる」
承太郎「先に言え」
ごもっとも。
今回は偽花京院発見から正体看破、黄の節制との接触まで。
承太郎VSラバーソールの本格戦は次回です。
リオは前回、自分が「能力が通じない相手」を攻略したばかり。
今度は承太郎が、単純に殴るだけでは危険な相手と戦います。
果たして承太郎はどうするのか。
まあ。
承太郎なので。
承太郎します。
何だそれ。
そして、ここまで読んでくださってありがとうございます!
十一話まで来て、リオも少しずつ星屑一行との距離が変わってきました。
「このシーン好きだった」
「このキャラとの掛け合い好き」
「リオってこう見える」
「ブラックサファイアの戦闘、ここが好き」
などなど。
何か思ったことがありましたら、感想を書いていただけると嬉しいです!
短い感想でも大歓迎です。
作者が喜んで読ませていただきます。
評価の方も、
もしよろしければポチッとしていただけると嬉しいです!
どちらも今後書いていく励みになります。
それでは次回!
空条承太郎VS黄の節制!
リオは横で見ています!
ポルナレフ「またかよ!」
リオ「昨日戦った」
……まあ。
今回は許してやってくれ。
昨日はちゃんと主人公してたから。