無事(?)に星屑一行へついて行くことになったリオ。
なお本人は、
「仲間になった覚えはない」
とのことです。
……うん。
まあ、そういうことにしておきましょう。
今回は戦闘よりも、リオと承太郎たちの交流が中心になります。
果たして彼は仲間になるのか。
それとも最後まで「仲間じゃない」で押し通すのか。
では第二話――
仲間ではない。本人曰く。
どうぞ!
リオ・ブランドー。
その名を聞いてからというもの、ジョセフ・ジョースターの視線が妙に鬱陶しい。
「…………」
「…………」
「…………」
「……何?」
耐えかねて、リオは振り返った。
「いや」
「さっきからずっと見てるけど」
「気のせいじゃ」
「三分くらい見てた」
「細かいのう、お前さん!」
「見られてた側だからね」
ジョセフは咳払いする。
香港の街を歩く五人。
本来なら四人だったはずの一行に、金髪の少年が一人増えている。
もっとも――。
「一応言っておくけど」
リオが言った。
「俺、お前たちの仲間になったわけじゃないから」
「分かっとるわい」
「ならいい」
数歩歩く。
「ところで、これからどこ行くの?」
「ついて来る気満々じゃねーか!」
ジョセフの声が香港の街に響いた。
◆
「飯じゃ」
「飯?」
「そうじゃ。こっちは飛行機が墜落してからまともに休んどらんのじゃぞ」
「へえ」
「お前さんも来るんじゃろ?」
「まあ」
「仲間じゃないのに?」
「飯を食うことと仲間になることに何の関係があるの?」
「こいつ……!」
ジョセフのこめかみに青筋が浮かぶ。
花京院が口元を押さえた。
「面白い人ですね」
「どこがじゃ!」
「ジョースターさんとの相性が」
「最悪じゃろ!」
「まだ会って一時間も経ってないけど」
「お前さんは黙っとれ!」
承太郎は帽子のつばを下げる。
「やれやれだぜ」
◆
店に入って席につく。
リオは渡されたメニューを眺めた。
「…………」
「どうした?」
花京院が尋ねる。
「いや」
リオはポケットを探った。
硬貨が数枚。
以上。
「…………」
「まさか」
「足りない」
「お前さん、金もないのにエジプトまで来るつもりだったのか!?」
「今決めたから」
「計画性という言葉を知っとるか!?」
「知ってる」
「意味は!?」
「先のことを考えて行動すること」
「できとらんじゃろうが!」
「今回はちょっと急だった」
「ちょっと!?」
アヴドゥルが額を押さえた。
「……ジョースターさん。ここは我々が出しましょう」
「なぜわしが!」
「俺は別に食べなくても」
「そう言われると食わせないわけにいかんじゃろ!」
「ありがとう」
「素直じゃな!」
リオはメニューを開いた。
「じゃあこれとこれ」
「遠慮せんのか!?」
「しろって言った?」
「普通するじゃろ!」
「面倒くさいな、この爺さん」
「誰が爺さんじゃ!」
承太郎が小さく息を吐いた。
「……ジジイ」
「承太郎まで!?」
◆
食事が運ばれてくる。
しばらくは静かだった。
正確には、リオが食べるのに集中していた。
「…………」
花京院がそれを見ている。
「何?」
「いえ。思ったより普通に食べるんだな、と」
「人間だからね」
「もっと警戒するかと思いました」
「毒でも入れた?」
「入れてませんよ」
「じゃあいい」
リオはまた食べ始める。
その向かいで、承太郎が口を開いた。
「おい」
「ん?」
「さっきのスタンド」
リオの手が止まる。
「ブラックサファイア?」
「ああ」
承太郎の背後に一瞬、スタープラチナが現れる。
「てめーの能力は『エネルギーを奪う』だけか?」
リオは少し考えた。
「正確には、操作する」
「操作?」
花京院が興味を示す。
「さっきは飛んできた物の運動エネルギーを取った。だから止まった」
「そして、奪ったエネルギーを相手へ返した」
「そう」
「他には?」
「熱とか」
「熱?」
「電気。光もある程度」
アヴドゥルの目が鋭くなる。
「かなり応用範囲が広いな」
「便利だよ」
「弱点は?」
「いきなり聞く?」
花京院が微笑む。
「これから同行するなら知っておいた方がいいでしょう」
「同行するだけ。仲間じゃない」
「はいはい」
「雑になってない?」
「気のせいです」
リオは少し考えてから答えた。
「限界はある」
承太郎が視線を向ける。
「さっき釘を食らったやつか」
「そう」
リオは水を一口飲んだ。
「ブラックサファイアが扱える量には上限がある。器みたいなものだと思えばいい」
「つまり、溜めすぎればそれ以上は吸収できない」
「そういうこと」
花京院が続ける。
「そして、もう一つ」
「?」
「処理速度にも限界がある」
リオが花京院を見る。
「さっきの攻撃。全体の威力そのものより、数が増えた時に一本だけ抜けた」
「よく見てるね」
「敵になる可能性がありますから」
「…………」
リオが少し笑った。
「いいね、お前」
「褒め言葉として受け取っておきます」
承太郎が口を挟む。
「なら簡単だな」
「何が?」
「てめーを殴る方法だ」
リオが承太郎を見る。
「一発を馬鹿みてーに強くする必要はねえ」
承太郎の目が細くなる。
「処理しきれねえ速度で叩き込み続けりゃ、そのうち抜ける」
「…………」
「違うか?」
数秒。
リオは肩をすくめた。
「試してみる?」
「今ここでか?」
「俺は別に」
「店を壊すなッ!」
ジョセフが二人の間に割って入った。
「なぜお前らは飯を食いながら喧嘩を始めようとするんじゃ!」
「向こうが」
「てめーが言ったんだろうが」
「どっちでもいいわ!」
◆
食事が落ち着いた頃。
今度はアヴドゥルが尋ねた。
「リオ」
「何?」
「エネルギー以外には干渉できるのか?」
「例えば?」
「精神に直接作用する能力」
「無理」
即答。
「毒は?」
「無理」
「空間そのものへの干渉は?」
リオは少し考えた。
「……多分無理」
「多分?」
「見たことないから」
「なるほど」
アヴドゥルは頷いた。
そして、何気ない調子で続けた。
「時間は?」
「時間?」
リオが眉を寄せる。
「時間をどうするんだよ」
「例えば……止める、とかな」
「…………」
リオが数秒黙った。
「そんなスタンドいるの?」
「いや」
アヴドゥルが首を振る。
「少なくとも、私は聞いたことがない」
「わしもじゃ」
ジョセフも腕を組む。
「そもそも時間そのものに干渉するスタンドなど、存在するのかどうか……」
「なら知らない」
リオはあっさり答えた。
「実際に見ないと何とも言えない」
一拍。
「……いたら面白そうだけど」
花京院がリオを見る。
「面白そう、ですか」
「うん」
「危険だとは?」
「思うよ」
「それでも?」
「それでも」
花京院は少しだけ苦笑した。
「なるほど」
「何?」
「あなたがさっき、あの男を追いかけた理由がよく分かりました」
「…………」
「好奇心ですね」
「悪い?」
「いえ」
花京院は笑う。
「そのうち、それで痛い目を見るんじゃないかと思っただけです」
「気をつけるよ」
「今の返事、まったく信用できませんね」
◆
店を出る頃には、外は少し暗くなり始めていた。
次の移動手段の手配もある。
今日は香港で休むことになった。
宿へ向かう途中。
アヴドゥルがリオの隣を歩く。
「一つ聞いてもいいか?」
「もう結構聞かれてる気がするけど」
「家族のことだ」
リオの歩調は変わらない。
「知らない」
「本当に何も?」
「何も」
「自分の両親がどんな人間だったか、気にならないのか?」
「多少は」
リオは前を見たまま答える。
「でも、善人だったとしても、悪人だったとしても」
「…………」
「俺が今までやったことが変わるわけじゃないだろ」
アヴドゥルは黙った。
「親が善人なら俺も善人になるの?」
「そういうものではない」
「じゃあ逆も同じ」
「……そうだな」
それだけ言って、アヴドゥルは話を終えた。
リオもそれ以上は何も言わなかった。
◆
夜。
宿の一室。
リオはベッドに横になっていた。
「DIO……」
今日初めて聞いた名前。
ディオ・ブランドー。
自分と同じ姓。
偶然かもしれない。
何か関係があるのかもしれない。
分からない。
だから――。
「…………」
気になる。
コンコン。
扉が叩かれた。
「開いてる」
入ってきたのは承太郎だった。
「ジジイが呼んでる」
「分かった」
リオは起き上がる。
承太郎はそのまま出ていこうとした。
「承太郎」
「あ?」
「DIOって、強い?」
承太郎が止まる。
「強えだろうな」
「お前より?」
「知らねえ」
即答だった。
「戦ってねえ奴の強さなんざ分かるか」
「それもそうか」
「…………」
承太郎はリオを見る。
「一つ言っとくぞ」
「何?」
「興味本位で首突っ込んで死ぬなら勝手だ」
「冷たいね」
「だが」
承太郎の目が鋭くなる。
「こっちの邪魔はするな」
「しないよ」
「ならいい」
承太郎が扉を開ける。
「あと」
「?」
「好奇心で死ぬんじゃねえぞ」
扉が閉まった。
「…………」
リオはしばらく扉を見ていた。
そして。
「どっちだよ」
小さく笑った。
◆
翌朝。
「では行くぞ!」
ジョセフの声が響く。
承太郎。
花京院。
アヴドゥル。
そして。
「…………」
当然のようにリオもいる。
ジョセフが横目で見る。
「お前さん」
「何?」
「来るんじゃな」
「行くって言ったけど」
「仲間ではないんじゃろ?」
「うん」
「飯も一緒に食った」
「食ったね」
「同じ宿に泊まった」
「泊まった」
「これから同じ目的地へ向かう」
「俺はDIOに会うためだけど」
「それを普通は同行者と言うんじゃ!」
「同行者ではあるよ」
「仲間とは何が違うんじゃ!?」
「気分」
「面倒くさッ!」
花京院が笑う。
リオは彼を見る。
「そうだ。花京院」
「何です?」
「昨日の話」
「昨日?」
「ブラックサファイア」
リオは歩きながら言った。
「お前ならどうやって倒す?」
花京院は一瞬考えた。
「そうですね」
そして微笑む。
「まず、あなたがまだ隠していることを全部話してもらいます」
「嫌だけど」
「では教えません」
「ケチ」
「敵になるかもしれない相手に攻略法を教えるほど親切ではありませんよ」
「それもそうか」
二人の少し前を歩いていた承太郎が言う。
「朝っぱらから何の話してやがる」
「殺し合いの話」
「物騒すぎるわッ!」
ジョセフの叫び声が響く。
こうして。
リオ・ブランドーは彼らと共に歩き始めた。
本人曰く――仲間ではない。
食事を共にし。
同じ宿に泊まり。
同じ目的地へ向かい。
互いのスタンドについて話し。
既に次の戦い方まで考えているが。
――仲間ではない。
少なくとも。
本人の中では、まだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
というわけで第二話でした。
一緒に飯を食う。
一緒に行動する。
スタンドについて語り合う。
相手の倒し方まで考える。
リオ「仲間ではない」
はいはい。
本人がそう言うなら、そういうことにしておきましょう。
……出会って数時間にしては馴染むの早くない?
そして次回。
香港で彼らを待つ、新たな出会い。
当然ながら――
平和に済むわけがありません。
リオが加わったことで、あの出会いがどう変わるのか。
それでは次回もよろしくお願いします!