JOJOの奇妙な冒険 黒きサファイアの旅路   作:将吾

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第六話です!

前回。

偽船長。

スタンド使い。

爆弾。

船、爆発。

そして現在――

海のど真ん中です。

ジョセフ「船だ!」

助かった!

……と思いますよね。

普通は。

ただしここはジョジョの世界。

しかも前回、船長が敵でした。

リオ「一応、警戒しとこう」

成長したな。

一話で。

果たして今度の船は安全なのか。

それでは第六話――

『船そのもの』

どうぞ!


船そのもの

それは。

 

 遠くから見ても分かるほど、巨大だった。

 

「…………」

 

 救命艇の上。

 

 リオは近づいてくる船を見上げていた。

 

 先ほどまで乗っていた船など、比較にならない。

 

 巨大な貨物船。

 

 海の上に浮かぶ建造物。

 

 そう表現した方が近い。

 

「でかいね」

 

「見りゃ分かる」

 

 隣から承太郎の声。

 

「感想言っただけだけど」

 

「そうかよ」

 

「機嫌悪い?」

 

「元からじゃ」

 

 ジョセフが代わりに答えた。

 

「ジジイ」

 

「なんじゃ!」

 

「余計なこと言うな」

 

「事実じゃろうが!」

 

「……仲良いね」

 

「「どこがだ!」」

 

 二人の声が重なった。

 

 リオは少しだけ笑う。

 

「そこ」

 

「うるせえ」

 

 だが。

 

 笑っていられたのは。

 

 そこまでだった。

 

     ◆

 

「おーい!」

 

 ポルナレフが巨大船へ向かって声を張り上げる。

 

「誰かいねえのかー!」

 

 返事はない。

 

「…………」

 

「おーい!」

 

 もう一度。

 

 やはり。

 

 返事はない。

 

「聞こえてねえのか?」

 

「この距離なら聞こえるはずです」

 

 花京院が答える。

 

「少なくとも、甲板に人がいれば気付くでしょう」

 

「じゃあ誰もいねえのか?」

 

「こんな大きな船に?」

 

 リオが聞く。

 

「ありえないな」

 

 アヴドゥルが船を見上げる。

 

「これほどの船を動かすには、当然乗員が必要だ」

 

「自動操縦とか」

 

「可能だとしても、誰一人いないというのは不自然だ」

 

「じゃあ」

 

 リオが言う。

 

「やっぱり怪しいね」

 

 ジョセフが顔をしかめる。

 

「わしもそう思う」

 

「でも乗るんでしょ?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「乗るんだ」

 

「仕方ないじゃろ!」

 

「俺は何も言ってないけど」

 

「顔が言っとる!」

 

「便利だね、俺の顔」

 

「お前さんは本当に一言多いのう!」

 

 承太郎は会話を無視して船を見ている。

 

「……少なくとも」

 

 低い声。

 

「このまま救命艇で漂ってるよりはマシだ」

 

「同感だ」

 

 アヴドゥルが頷く。

 

「ただし警戒は解かない方がいい」

 

「当然じゃ」

 

 ジョセフも表情を引き締める。

 

 つい先ほど。

 

 自分たちの乗っていた船の船長がDIOの刺客だった。

 

 その船が爆破された直後。

 

 都合よく。

 

 無人に見える巨大船が現れた。

 

 疑わない方がおかしい。

 

「…………」

 

 リオも船を見る。

 

 前回。

 

 違和感はあった。

 

 だが。

 

 気のせいだと流した。

 

「今回は最初から疑ってるよ」

 

「誰に言っとるんじゃ?」

 

「自分」

 

「そうか……」

 

     ◆

 

 巨大船へ乗り移る。

 

 最初に感じたのは。

 

 静かさだった。

 

「…………」

 

 風。

 

 波。

 

 船体が軋む音。

 

 それ以外。

 

 人間の声がない。

 

 足音もない。

 

「本当に誰もいねえな」

 

 ポルナレフが周囲を見回す。

 

「気味悪ぃ船だぜ」

 

「怖い?」

 

「誰がだ!」

 

「声大きい」

 

「怖くねえって言ってんだよ!」

 

「聞いてないけど」

 

「じゃあなんで聞いたんだ!」

 

「反応見たかった」

 

「お前なぁ……!」

 

「静かにしろ」

 

 承太郎。

 

「…………」

 

「…………」

 

 ポルナレフとリオが同時に黙る。

 

 承太郎が耳を澄ませる。

 

 全員もそれに倣う。

 

「…………」

 

 何も。

 

 ない。

 

「妙ですね」

 

 花京院が呟く。

 

「この船が航行している以上、機関部には誰かいるはずです」

 

「探すか」

 

 ジョセフが言った。

 

「ただしバラバラになるのは危険じゃ」

 

「賛成だ」

 

 アヴドゥル。

 

「DIOの刺客が潜んでいる可能性もある」

 

「またDIO?」

 

 リオが言う。

 

「可能性の話じゃ!」

 

「刺客多いね」

 

「感心するところじゃない!」

 

「給料いいのかな」

 

「知らんわ!」

 

「福利厚生とか」

 

「DIOに福利厚生を求めるな!」

 

 ポルナレフが思わず吹き出した。

 

「フッ……!」

 

「何笑ってるの?」

 

「いや、お前……」

 

「何?」

 

「なんでもねえ」

 

 つい先ほどまで。

 

 そのDIOに操られていた男。

 

 それを思い出したのだろう。

 

 笑いはすぐに消えた。

 

 リオはそれ以上聞かなかった。

 

     ◆

 

 船内へ入る。

 

「…………」

 

 廊下。

 

 誰もいない。

 

 部屋。

 

 誰もいない。

 

 食堂。

 

 誰もいない。

 

「おかしい」

 

 アヴドゥルが言う。

 

「人がいた形跡はある」

 

 机。

 

 椅子。

 

 食器。

 

 生活に必要な設備。

 

 だが。

 

 人間だけが。

 

 いない。

 

「全員一斉に消えたとか?」

 

 リオ。

 

「縁起でもないこと言うな」

 

 ジョセフが返す。

 

「じゃあ隠れてる」

 

「なぜじゃ」

 

「かくれんぼ」

 

「こんな状況でするか!」

 

「じゃあ分からない」

 

「お前さん、考えるのを諦めるのが早すぎんか!?」

 

「候補出したじゃん」

 

「どっちも酷いわ!」

 

 花京院が壁に手を触れる。

 

「しかし」

 

「?」

 

「妙に整っていますね」

 

「何が?」

 

「この船です」

 

 リオも周囲を見る。

 

「…………」

 

 確かに。

 

 無人。

 

 それなのに。

 

 船は正常に動いている。

 

「ブラックサファイア」

 

 黒い人型が。

 

 静かにリオの背後へ現れる。

 

「何をする気じゃ?」

 

「ちょっと調べる」

 

 ブラックサファイアが壁へ手を置く。

 

 目を閉じる。

 

「…………」

 

 振動。

 

 船体を伝わる運動。

 

 機械の熱。

 

 電気。

 

 様々なエネルギー。

 

「どうじゃ?」

 

「動いてる」

 

「それは見れば分かるわい!」

 

「そうじゃなくて」

 

 リオは目を開く。

 

「ちゃんと機械は動いてる」

 

「機関部か?」

 

「多分」

 

「人は?」

 

「分からない」

 

「エネルギーで人間を探知できんのか?」

 

「できないよ」

 

 即答。

 

「便利なレーダーじゃないんだから」

 

「そうか……」

 

「生きてる人間にも熱はあるけど」

 

 リオが周囲を見る。

 

「この船全部の熱の中から、人間一人ずつ正確に拾えって言われても無理」

 

「なるほど」

 

 花京院が頷く。

 

「万能ではないということですね」

 

「最初からそう言ってる」

 

「お前、能力の説明するときだけ妙に真面目になるな」

 

 ポルナレフ。

 

「死にたくないからね」

 

「…………」

 

「間違って期待されても困るし」

 

「それはまあ……そうだな」

 

     ◆

 

 さらに船内を進む。

 

 そして。

 

「…………」

 

 リオが止まった。

 

「どうした?」

 

 承太郎。

 

「音」

 

「音?」

 

 何かが聞こえる。

 

 人間ではない。

 

「…………」

 

 ガサ。

 

「…………」

 

 ガサガサ。

 

「いるな」

 

 承太郎が前へ出る。

 

 角。

 

 その先。

 

 全員が構える。

 

 DIOの刺客か。

 

 船員か。

 

 それとも――。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 いた。

 

「……猿?」

 

 ポルナレフが言った。

 

 正確には。

 

 オランウータン。

 

 大きな身体。

 

 こちらを見ている。

 

「…………」

 

 リオが見る。

 

 オランウータンも見る。

 

「…………」

 

「…………」

 

 数秒。

 

「ウホ」

 

「…………」

 

 リオが軽く手を上げる。

 

「どうも」

 

「挨拶すんな!」

 

 ポルナレフが叫ぶ。

 

「返事したから」

 

「会話成立してねえよ!」

 

「でも」

 

 リオはオランウータンを見る。

 

「こいつがいるなら、完全な無人船ではないね」

 

「人じゃねえだろ!」

 

「細かいな」

 

「細かくねえ!」

 

「……妙だ」

 

 承太郎。

 

 リオが横を見る。

 

「何が?」

 

「あのオランウータン」

 

「賢そう?」

 

「それもある」

 

 承太郎は観察している。

 

 オランウータンの目。

 

 動き。

 

 仕草。

 

 ただの動物とは。

 

 何かが違う。

 

「…………」

 

 リオも見る。

 

「俺には普通のオランウータンとの違い分からないけど」

 

「普通のオランウータンを知っとるのか?」

 

 ジョセフが聞く。

 

「知らない」

 

「なら比較できんじゃろ!」

 

「だから分からないって言った」

 

「屁理屈ばかり達者じゃな!」

 

     ◆

 

 しばらくして。

 

 奇妙なことが増え始めた。

 

 最初は。

 

 本当に小さなものだった。

 

 扉が。

 

 勝手に閉まる。

 

「風?」

 

 リオが言った。

 

「船内だぞ」

 

 ポルナレフが返す。

 

「じゃあ傾いた」

 

「今傾いてねえだろ」

 

「じゃあ誰か閉めた」

 

「誰がだよ」

 

 二人。

 

 同時に。

 

 オランウータンを見る。

 

「…………」

 

「…………」

 

「ウホ」

 

「いや」

 

 ポルナレフが首を振る。

 

「まさかな」

 

「うん」

 

 リオも頷く。

 

「さすがにね」

 

 次。

 

 置いてあった物が。

 

 いつの間にか移動している。

 

「…………」

 

「…………」

 

「誰か動かした?」

 

「俺じゃねえ」

 

「僕でもありません」

 

「わしでもないぞ」

 

「…………」

 

 全員が。

 

 また。

 

 オランウータンを見る。

 

「ウホ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「いや」

 

 リオ。

 

「まだ偶然かもしれない」

 

「お前、前回から何を学んだんだよ!」

 

 ポルナレフが叫んだ。

 

「だから疑ってるだろ」

 

「めちゃくちゃ庇ってるじゃねえか!」

 

「証拠ないし」

 

「お前、妙なところで慎重だな!」

 

「猿を犯人扱いして違ったら可哀想だろ」

 

「そこ!?」

 

 承太郎だけは。

 

 オランウータンを見続けていた。

 

     ◆

 

 決定的だったのは。

 

 その後。

 

「…………」

 

 承太郎の目が細くなる。

 

 オランウータン。

 

 人間の道具を。

 

 明らかに理解して使っている。

 

 偶然ではない。

 

 訓練された程度でもない。

 

 そこには。

 

 人間と同等か、それ以上の理解がある。

 

「おい」

 

 承太郎が言った。

 

 オランウータンが見る。

 

「てめー」

 

 空気が変わる。

 

「ただの猿じゃあねえな」

 

「ウホ」

 

「…………」

 

 リオも表情を消す。

 

「承太郎」

 

「ああ」

 

「こいつ?」

 

「多分な」

 

「何の話じゃ?」

 

 ジョセフが聞く。

 

「スタンド使いだ」

 

「なにィ!?」

 

 ポルナレフが振り向く。

 

「猿が!?」

 

「オランウータン」

 

「今そこどうでもいいだろ!」

 

「昨日スタンドって言葉を知ったばっかりなのに」

 

 リオが呟く。

 

「もう人間以外まで出てきた」

 

「順応早いですね」

 

 花京院。

 

「諦めただけ」

 

「それを順応と言うのでは?」

 

「違うと思う」

 

 そして。

 

 オランウータン――。

 

 フォーエバーが。

 

 笑った。

 

「…………」

 

 その笑い方。

 

 明らかに。

 

 意味を理解している。

 

「……うわ」

 

 リオが小さく言う。

 

「何じゃ?」

 

「今ので急に気持ち悪くなった」

 

「お前さん、本人の前で言うな!」

 

     ◆

 

 そして。

 

 船が。

 

 動いた。

 

「!」

 

 壁。

 

 ただの壁だったものが。

 

 突然。

 

 形を変える。

 

「下がれ!」

 

 承太郎の声。

 

 全員が飛び退く。

 

 鉄板が。

 

 先ほどまで立っていた場所を押し潰した。

 

「…………」

 

「なんだ今の!?」

 

 ポルナレフが叫ぶ。

 

「船が……動いた?」

 

 花京院。

 

「機械ではない」

 

 アヴドゥルの顔が険しくなる。

 

「これは――」

 

 再び。

 

 床。

 

 壁。

 

 天井。

 

 船内のあらゆるものが。

 

 フォーエバーの意思に従うように。

 

 動く。

 

「スタンド……?」

 

 リオが呟いた。

 

「しかし、どこにスタンドがいる?」

 

 ジョセフ。

 

「見えんぞ!」

 

「…………」

 

 承太郎が。

 

 周囲を見る。

 

 そして。

 

 答えへ辿り着く。

 

「違う」

 

「あ?」

 

「スタンドが見えねえんじゃない」

 

 承太郎が船壁へ触れる。

 

「最初から」

 

 その目が。

 

 フォーエバーへ向く。

 

「俺たちはスタンドの上にいる」

 

「…………」

 

 沈黙。

 

 リオが。

 

 ゆっくり周囲を見る。

 

 床。

 

 壁。

 

 天井。

 

 廊下。

 

 甲板。

 

 巨大な船。

 

「…………これ?」

 

「ああ」

 

「船全部?」

 

「ああ」

 

「…………」

 

 数秒。

 

「でかすぎない?」

 

「そういう問題か!?」

 

 ジョセフが叫んだ。

 

     ◆

 

「ブラックサファイア」

 

 黒い人型。

 

 リオはすぐに船壁へ触れる。

 

「何をする気だ?」

 

 アヴドゥル。

 

「試す」

 

「何を?」

 

「こいつが動いてるなら」

 

 目を閉じる。

 

 船体を伝う振動。

 

 運動。

 

 熱。

 

 電気。

 

「…………」

 

 ブラックサファイアが。

 

 それらへ干渉する。

 

 一部。

 

 振動が消える。

 

「どうじゃ?」

 

「触れる」

 

「なら!」

 

「でも」

 

 リオが目を開く。

 

「無理」

 

「何?」

 

「エンジンとか」

 

 壁を叩く。

 

「この壁が動く運動エネルギーとか」

 

 指を這わせる。

 

「そういうものなら触れる」

 

「なら止められるんじゃねえのか?」

 

 ポルナレフ。

 

「一枚ならね」

 

「…………」

 

「これ」

 

 リオが周囲を見る。

 

「船全部だろ?」

 

「…………」

 

「無理」

 

 あっさり。

 

 言い切った。

 

「俺の容量が先に死ぬ」

 

「……そうか」

 

「それに」

 

 リオはフォーエバーを見る。

 

「船がスタンドになってること自体はエネルギーじゃない」

 

「つまり?」

 

「ブラックサファイアで能力そのものは消せない」

 

 ジョセフが眉を寄せる。

 

「ではどうする?」

 

「簡単だろ」

 

 リオがフォーエバーを見る。

 

「本体倒す」

 

「結局それか!」

 

「一番早い」

 

 だが。

 

 フォーエバーも。

 

 それを理解している。

 

 自分自身へ。

 

 簡単に近づかせるはずがない。

 

     ◆

 

 船が。

 

 敵になる。

 

 その言葉が。

 

 比喩ではなくなる。

 

「来る!」

 

 壁。

 

 ブラックサファイア。

 

 触れる。

 

「……っ!」

 

 運動エネルギーを奪う。

 

 停止。

 

「一枚!」

 

 次。

 

 床。

 

「二枚!」

 

 停止。

 

 天井。

 

「三――」

 

「後ろだ!」

 

「!」

 

 スタープラチナ。

 

 拳。

 

 リオの背後から迫っていた金属を叩き潰す。

 

「…………」

 

「ボサッとすんな」

 

 承太郎。

 

「見えてなかった」

 

「だろうな」

 

「……ありがと」

 

「礼は後にしろ」

 

「素直じゃないね」

 

「次は助けねえぞ」

 

「それは困る」

 

「だったら集中しろ」

 

「はいはい」

 

 リオは周囲を見る。

 

 前。

 

 後ろ。

 

 上。

 

 下。

 

 全部。

 

 敵。

 

「…………」

 

 口元から。

 

 笑みが消える。

 

「なるほど」

 

「どうした?」

 

 花京院。

 

「こういう相手」

 

 ブラックサファイアが構える。

 

「嫌いだな」

 

「珍しいですね」

 

「何が?」

 

「あなた、変わったスタンドを見ると大体楽しそうなので」

 

「面白いよ」

 

「では?」

 

「面白いのと」

 

 迫る鉄板。

 

 止める。

 

「相手にしたいかは別」

 

「……なるほど」

 

     ◆

 

 攻撃は続く。

 

 ブラックサファイアなら。

 

 止められる。

 

 だが。

 

 全部ではない。

 

 右を止めれば。

 

 左。

 

 左を止めれば。

 

 上。

 

 上を見れば。

 

 足元。

 

「……っ」

 

 処理が追いつかない。

 

 初めて。

 

 リオの額に汗が浮かぶ。

 

「リオ!」

 

「大丈夫!」

 

「本当にか?」

 

「まだ!」

 

 まだ。

 

 ということは。

 

 限界はある。

 

 花京院はそれを聞き逃さなかった。

 

 承太郎も。

 

「てめー」

 

「何?」

 

「全部止めようとすんな」

 

「してない」

 

「してる」

 

「…………」

 

「必要なやつだけ見ろ」

 

「……分かってる」

 

「ならやれ」

 

「偉そうだな」

 

「死にてえのか?」

 

「嫌だね」

 

 その瞬間。

 

 リオが。

 

 ブラックサファイアの処理を切った。

 

「!」

 

 一枚の鉄板を。

 

 あえて止めない。

 

 避ける。

 

 背後で激突。

 

「…………」

 

「そういうこと?」

 

 承太郎は答えない。

 

 ただ。

 

 敵を見る。

 

「……ムカつく」

 

 リオが呟く。

 

「何が?」

 

 ポルナレフ。

 

「承太郎に教えられた」

 

「そこかよ!」

 

     ◆

 

 やがて。

 

 リオにも分かった。

 

 この戦いで。

 

 自分が主役になる必要はない。

 

 ブラックサファイアは。

 

 仲間へ届く攻撃を止める。

 

 逃げ道を確保する。

 

 それで十分。

 

 敵を倒すのは。

 

「…………」

 

 承太郎。

 

 スタープラチナ。

 

 フォーエバー。

 

 その両者を見比べる。

 

「リオ!」

 

「分かってる!」

 

 壁。

 

 停止。

 

「ポルナレフ!」

 

「おう!」

 

 シルバーチャリオッツ。

 

 進路を塞ぐ障害を切る。

 

「花京院!」

 

「はい!」

 

 ハイエロファントグリーン。

 

 少女を安全な位置へ。

 

 アヴドゥル。

 

 ジョセフ。

 

 全員が。

 

 それぞれ動く。

 

「…………」

 

 フォーエバーの表情が。

 

 少しずつ変わる。

 

 余裕。

 

 苛立ち。

 

 そして。

 

 焦り。

 

「あ」

 

 リオが気付く。

 

「何じゃ?」

 

「あいつ」

 

 フォーエバーを見る。

 

「自分の船の中なら絶対負けないと思ってたんだ」

 

「そうじゃろうな」

 

「だから」

 

 リオが。

 

 ほんの少し笑った。

 

「今、すごく焦ってる」

 

 そして。

 

 承太郎が。

 

 フォーエバーへ辿り着いた。

 

     ◆

 

 近距離。

 

 そこまで来れば。

 

 話は違う。

 

 船そのものを操れる。

 

 巨大なスタンド。

 

 圧倒的な支配領域。

 

 だが。

 

 本体が。

 

 スタープラチナの射程へ入った。

 

「…………」

 

 リオは手を出さない。

 

 必要がない。

 

「終わったね」

 

 ポルナレフが横を見る。

 

「まだだろ」

 

「終わるよ」

 

「なんで分かる?」

 

「だって」

 

 承太郎を見る。

 

「近すぎる」

 

 次の瞬間。

 

 スタープラチナの拳が。

 

 フォーエバーを襲った。

 

     ◆

 

 戦いが終わる。

 

「…………」

 

 静寂。

 

 そして。

 

 異変。

 

「おい」

 

 ポルナレフが周囲を見る。

 

「船が……」

 

 巨大な貨物船。

 

 その姿が。

 

 変わっていく。

 

 縮む。

 

 本来の姿へ。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 リオは。

 

 黙ってそれを見ていた。

 

 しばらくして。

 

「小さくない?」

 

「見りゃ分かる!」

 

 ポルナレフが叫ぶ。

 

「いや」

 

 リオが指を差す。

 

「だってさっきまで、あんなに」

 

「スタンド能力だったんだろ!」

 

「船、大きくできるんだ」

 

「できたんだからできるんだろ!」

 

「スタンドって何でもあり?」

 

「俺に聞くな!」

 

「承太郎」

 

「俺にも聞くな」

 

「昨日知ったばっかりなんだけど」

 

「慣れろ」

 

「こんなのに?」

 

「ああ」

 

「嫌だな」

 

「やれやれだぜ」

 

 リオは。

 

 小さくなった船を見る。

 

 昨日。

 

 スタンドという言葉を知った。

 

 今日。

 

 猿がスタンドを使った。

 

 しかも。

 

 船だった。

 

「…………」

 

「どうした?」

 

 花京院が尋ねる。

 

「いや」

 

 リオは少し考えて。

 

「DIOに会うまでに、あと何が出てくるのかなって」

 

「…………」

 

「犬とか?」

 

 沈黙。

 

「まさかね」

 

 リオは笑った。

 

 承太郎たちは。

 

 何も言わなかった。

 

 まだ。

 

 彼らは知らない。

 

 その「まさか」が。

 

 それほど遠くない未来に。

 

 本当に現れることを。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

第六話でした。

前回。

「船長が敵でした」

今回。

船が敵でした。

どういうことだよ。

リオ「スタンドって何でもありなの?」

作者もそう思います。

今回はフォーエバー&ストレングス戦。

巨大な船そのものがスタンドということで、ブラックサファイアとはちょっと面白い相性になりました。

エネルギーを操れる。

なら船全部止めればいいじゃん!

無理です。

リオにも容量があります。

処理速度があります。

そもそも、

「船がスタンドである」

という事実そのものはエネルギーではありません。

というわけで。

リオ「本体殴ればいいだろ」

最終的に物理。

そして承太郎。

前回は偽船長を見抜き。

今回は巨大船スタンドを突破。

リオ。

二話連続でちょっと悔しい。

「次は俺が先に見抜く」

とか言ってましたが。

今回は船そのものがスタンドだと気付くまで普通に驚いてました。

頑張れ。

あと今回。

少しだけリオの過去に触れました。

船。

海。

誰かの手。

ただし。

記憶喪失というわけではありません。

本人にもまだ分からない。

ただ、ずっと昔の景色が断片的に残っているだけです。

誰といたのか。

どこにいたのか。

そして。

なぜ彼が、

『リオ・ブランドー』

という名前を持っているのか。

まだ答えは出ません。

というか本人。

DIOのことを知ってからまだ大して経ってません。

なのにもう船が二回酷い目に遭っています。

リオ「エジプト着くまでにあと何隻沈むの?」

作者にも分かりません。

それでは次回もよろしくお願いします!
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