ポルナレフ「俺は一人部屋な!」
リオ「寂しくない?」
ポルナレフ「子供じゃねえ!」
リオ「ベッドがスタンドだったりして」
ポルナレフ「縁起でもねえこと言うな!」
リオ「じゃあ人形とか」
ポルナレフ「なんで人形!?」
――そして現在。
場所、ホテル。
ポルナレフ、一人部屋。
ベッド、無罪。
ホテル、無罪。
人形。
有罪。
ポルナレフ「…………」
リオ、別室。
熟睡中。
頑張れポルナレフ。
主人公は来ないぞ。
というか。
たぶん起きないぞ。
人形が。
笑っていた。
「…………」
ポルナレフは。
笑っていなかった。
「…………おい」
返事はない。
ホテルの一室。
深夜。
つい先ほどまで、何の変哲もなかった部屋。
ベッド。
テーブル。
椅子。
荷物。
そして。
人形。
「今」
ポルナレフが眉を寄せる。
「動いたよな?」
人形は動かない。
「…………」
シルバーチャリオッツが。
ポルナレフの傍らに立つ。
剣先を。
人形へ向ける。
「気のせい――」
言いかけて。
やめた。
「いや」
今日まで。
何度。
その言葉に裏切られた?
船長がおかしい。
気のせいではなかった。
船がおかしい。
気のせいではなかった。
人形がおかしい。
「…………」
ポルナレフは。
一歩。
下がった。
「これで気のせいだったら」
シルバーチャリオッツが構える。
「明日リオに謝ってやるよ」
その瞬間。
人形の口が。
吊り上がった。
「――ッ!」
飛ぶ。
小さな影。
「チャリオッツ!」
銀の剣閃。
人形が。
空中で身を捻る。
剣先が。
僅かに掠める。
しかし。
「なにッ!?」
人形は止まらない。
テーブルの下へ。
消えた。
「…………」
静寂。
「……スタンドか」
返事の代わりに。
笑い声。
低い。
粘つくような。
不快な声。
「どこだ!」
ポルナレフが振り返る。
いない。
右。
いない。
左。
いない。
「出てきやがれッ!」
――ガタン!
「!」
背後。
振り向く。
遅い。
何かが。
足元を走り抜けた。
「ぐっ!」
痛み。
脚。
浅く。
切られている。
「野郎……!」
ポルナレフの顔から。
完全に眠気が消えた。
◆
同じ頃。
隣ではない。
少し離れた別室。
「…………」
花京院典明は。
目を開けた。
「…………」
暗い部屋。
静かだ。
何か。
音がした気がした。
「…………リオ?」
「…………」
返事はない。
花京院が隣を見る。
「…………」
リオ・ブランドー。
熟睡。
「…………」
「すぅ……」
「…………」
花京院は耳を澄ます。
何も聞こえない。
「気のせい……ですかね」
「…………ん」
リオが動いた。
「起きました?」
「…………金ない」
「…………」
「ジョセフ……払って……」
「…………」
花京院は。
そっと目を閉じた。
「寝言でもそれですか」
◆
「そこかァッ!」
銀の剣が。
ベッドを裂く。
人形が跳ぶ。
「チィッ!」
小さい。
そして。
速い。
単純な速度だけではない。
ホテルの部屋。
家具。
死角。
人間用に作られた空間すべてが。
小さな人形にとっては。
隠れ場所になる。
「コソコソしやがって……!」
ポルナレフが歯を食いしばる。
人形が。
笑う。
その声には。
妙なものが混じっていた。
憎悪。
怨念。
恨み。
ただ殺すのではない。
苦しめたい。
恐怖させたい。
いたぶりたい。
そういう。
粘つく悪意。
「…………」
ポルナレフは。
逆に。
少し冷静になった。
「なるほどな」
シルバーチャリオッツの剣を構え直す。
「てめー」
笑う。
「俺を怒らせてえのか」
人形の笑い声が。
止まる。
「だったら」
ポルナレフの目が。
鋭くなる。
「やり方が甘いぜ」
直後。
人形が飛び出す。
「そこだ!」
突き。
避ける。
斬撃。
潜る。
「ちょこまかと!」
人形が。
ベッドの下へ。
ポルナレフが追う。
――いない。
「なっ」
上。
「!」
天井付近。
家具を利用して。
人形が跳んでいる。
「このッ――」
何かが飛ぶ。
「ぐあっ!」
頬を掠める。
血。
ポルナレフが下がる。
「……やってくれるじゃねえか」
人形が。
笑う。
そして。
声が。
聞こえた。
自分を。
憎め。
もっと。
もっと。
恨め。
その感情こそが。
力になる。
「…………」
ポルナレフが。
眉を寄せる。
「恨み?」
敵の言葉。
そこから。
ひとつ。
理解する。
「そういうスタンドか」
相手への恨み。
憎しみ。
それを。
力へ変える。
「…………」
ポルナレフは。
傷を見る。
血が流れている。
「趣味悪ィな」
奇妙なことに。
その言葉が。
少しだけ。
昼間の少年と重なった。
――趣味悪いな。
「…………ハッ」
笑う。
「アイツにまで影響されてどうすんだ、俺は」
人形が襲う。
「チャリオッツ!」
剣。
金属音。
今度は。
捉えた。
「!」
「見えたぜ」
人形が吹き飛ぶ。
壁。
衝突。
落下。
それでも。
起き上がる。
「しぶてえな」
ポルナレフが。
一歩。
踏み出す。
◆
夜が明ける。
「…………」
承太郎が。
廊下を歩いていた。
ジョセフ。
アヴドゥル。
花京院。
そして。
「眠い」
リオ。
「寝てたじゃろ」
「寝たから眠い」
「どういう理屈じゃ」
「もっと寝たい」
「知らん!」
「朝早いって言ったじゃん」
リオが。
アヴドゥルを見る。
「私のせいではない」
「でも早起きそう」
「それも昨日聞いた」
「やっぱり早起きだった」
「……否定はしない」
ポルナレフの部屋へ。
向かう。
「しかし」
花京院が言う。
「ポルナレフが遅いですね」
「寝坊じゃろ」
「昨日一人部屋にこだわっていましたからね」
「放っとけ」
承太郎。
「でも」
リオが言う。
「死んでたら?」
「朝から縁起でもないこと言うな!」
ジョセフが怒鳴る。
「昨日も言ったけど」
「繰り返すな!」
部屋の前。
ジョセフが。
ドアを叩く。
「ポルナレフ!」
返事。
なし。
「…………」
もう一度。
「おい、ポルナレフ!」
「…………」
リオの。
眠そうだった目が。
少しだけ開く。
「返事ないね」
「……承太郎」
「ああ」
承太郎が。
前へ。
その時。
中から。
音。
「待て!」
ポルナレフの声。
全員が止まる。
「生きてる」
リオ。
「当たり前じゃ!」
「よかった」
「お前が言うと本当に死ぬ可能性考えてたみたいで怖いんじゃ!」
中から。
物音。
ガタガタ。
「…………」
ジョセフが眉を寄せる。
「何をしとるんじゃ?」
「待てっつってんだろ!」
「何かあったのか?」
アヴドゥル。
「何もねえ!」
ガタン!
「…………」
「…………」
「…………」
全員。
顔を見合わせる。
リオが。
ドアを見る。
「絶対何かあったじゃん」
「うるせえ!」
◆
数分後。
ドアが。
開く。
「…………」
ポルナレフ。
傷だらけ。
「…………」
「…………」
「…………」
そして。
その後ろ。
部屋。
「…………」
めちゃくちゃ。
だった。
ベッド。
ボロボロ。
家具。
破損。
壁。
傷。
床。
散乱。
「…………」
ジョセフが。
ゆっくり。
ポルナレフを見る。
「お前」
「違う」
「まだ何も言っとらん」
「俺じゃねえ」
「何があった?」
アヴドゥルの声が。
真剣になる。
「敵だ」
ポルナレフ。
「DIOの刺客」
全員の表情が変わる。
承太郎が。
部屋を見る。
「どこだ」
「もう倒した」
「一人で?」
花京院。
「ああ」
「怪我は?」
「見りゃ分かるだろ」
「そうですね」
「もうちょっと心配しろよ!」
リオは。
部屋の中を見る。
「…………」
「何だよ」
「…………」
「言いたいことあんなら言え」
「部屋」
「おう」
「汚くない?」
「敵に襲われたんだよ!!」
「ホテルの人怒りそう」
「まず俺の心配しろ!」
「生きてるじゃん」
「結果論だろうが!」
「勝った?」
「勝ったよ!」
「じゃあよかった」
「軽いな!」
リオが。
部屋の奥を見る。
壊れた。
人形。
「…………」
「…………」
見る。
ポルナレフを見る。
もう一度。
人形を見る。
「…………人形?」
「…………」
「…………」
ポルナレフの顔が。
固まる。
「昨日」
「…………」
「人形とかって――」
「お前ェェェェェェェッ!!」
「何!?」
ポルナレフが。
リオの胸倉を掴む。
「知ってたのか!?」
「知らないよ!」
「じゃあなんで人形って言った!」
「適当!」
「適当で当てんなァァァァ!!」
「俺に怒られても!」
「お前のせいで途中からずっと頭にチラついてたんだよ!」
「役に立った?」
「ちょっとだけな!」
「じゃあいいじゃん」
「よくねえ!」
花京院が。
口元を押さえる。
「花京院!」
「すみません」
「笑ってんじゃねえ!」
「笑っていません」
「昨日のアヴドゥルと同じこと言ってる!」
アヴドゥルが。
静かに目を逸らした。
「お前も笑ってんだろ!」
「笑っていない」
「肩動いてんぞ!」
ジョセフが。
頭を抱える。
「朝から元気じゃのう……」
「俺は夜からずっと元気だよ!」
「意味が違うじゃろ!」
◆
「呪いのデーボ」
少しして。
ポルナレフから。
詳しい説明を聞く。
敵。
そのスタンド。
エボニーデビル。
相手への恨みを。
力へ変える。
「恨み」
リオが。
繰り返す。
「ああ」
「感情が力になるの?」
「らしいぜ」
「変なの」
「スタンドなんて大体変じゃろ」
ジョセフ。
「ブラックサファイアも十分変だと思いますよ」
花京院。
「そう?」
「エネルギーを操る人に言われたくないでしょうね」
「でもエネルギーは普通にあるよ」
「人形も普通にあるぜ」
ポルナレフ。
「動かないけど」
「普通はな!」
「昨日は動いたんでしょ?」
「うるせえ!」
承太郎が。
壊れた人形を見る。
「本体は?」
「別にいた」
ポルナレフが答える。
「スタンドを人形に取り憑かせてやがった」
「遠隔操作型……」
花京院が考える。
「本体が近くにいなくても攻撃できるタイプですね」
「面倒だね」
リオ。
「お前のブラックサファイアならどうした?」
ポルナレフが聞く。
「分からない」
「即答かよ」
「だって」
リオは。
壊れた人形を見る。
「人形が動いてるなら、その運動エネルギーは触れればどうにかできると思う」
「おう」
「でも」
少し考える。
「スタンドが人形に取り憑いてること自体は、エネルギーじゃない」
「…………」
「だから」
肩をすくめる。
「実際に戦ってみないと分からない」
「珍しいな」
「何が?」
「お前なら『勝てる』って言うかと思ったぜ」
「俺そんな馬鹿に見える?」
「…………」
「なんで黙るの」
「いや」
「ポルナレフ」
「何でもねえ」
「言って」
「嫌だ」
「言って」
「朝っぱらから絡むな!」
◆
部屋を出る。
ホテル側への説明は。
ジョセフに任された。
「なんでわしなんじゃ……」
「一番大人だから」
リオ。
「都合のいい時だけ大人扱いするな!」
「払うのもジョセフ?」
「何をじゃ」
「修理代」
「…………」
「…………」
「…………」
「逃げるぞ」
「ジョースターさん!?」
「冗談じゃ!」
「目が本気だったよ」
「うるさい!」
ホテルを出る。
朝の。
シンガポール。
人々。
車。
店。
雑踏。
普通の街。
「…………」
リオは。
一度。
振り返った。
「どうした?」
花京院。
「いや」
ホテルを見る。
「ホテルは敵じゃなかったなって」
「まだ言ってるんですか」
「人形だった」
「ええ」
「じゃあ次は何だろ」
「やめてください」
「車?」
「やめてください」
「電柱」
「やめてください」
「冷蔵庫」
「やめろリオ!」
ポルナレフが割り込む。
「お前が言うと本当に出そうで嫌なんだよ!」
「じゃあ」
少し考える。
「赤ちゃん」
「絶対やめろ!!」
「犬」
「やめろっつってんだろ!」
「鳥」
「もう喋るな!」
リオが。
少し笑った。
そのまま。
前へ。
歩いていく。
「…………」
承太郎だけが。
一瞬。
後ろを見る。
ホテルではない。
通りの向こう。
人混み。
そこに。
誰かがいた。
「…………」
視線。
一瞬だけ。
こちらへ。
向いていた。
だが。
すぐに。
雑踏へ消える。
「承太郎?」
ジョセフ。
「……いや」
帽子のつばを。
下げる。
「何でもねえ」
六人は。
歩き出す。
ポルナレフは。
昨夜。
一人で刺客を退けた。
敵は。
これで一人。
減った。
だが。
DIOが放った刺客が。
一人だけとは。
誰も言っていない。
そして。
その視線が。
ジョースターたちの誰を見ていたのか。
この時。
まだ。
誰も知らなかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第八話でした!
今回はポルナレフVS呪いのデーボ。
エボニーデビル。
人形。
リオ「人形とか」
なんで当てたんだよ。
なお。
言った本人は。
寝ていました。
ぐっすりです。
ポルナレフが一人で命懸けの戦闘をしている頃――
リオ「…………金ない」
寝言です。
主人公ォ!!
さて。
前回のあとがきでも触れましたが。
ここまで八話。
主人公、リオ・ブランドー。
スタンド、ブラックサファイア。
能力、エネルギー操作。
そして現在の主な実績。
第一話――能力お披露目。
第二話――飯。
第三話――ポルナレフを見る。
第四話――船に乗る。
第五話――承太郎が戦う。
第六話――承太郎が戦う。
第七話――ベッドで遊ぶ。
第八話――寝る。
…………。
おい。
どんどん悪化してるぞ。
ブラックサファイアも泣いてる。
たぶん。
いや、スタンドが泣くのかは知りません。
というかお前、主人公なのに最近ブラックサファイアより自動ドア触ってる時間の方が長くない?
作者「原作キャラの見せ場は奪わないようにしよう!」
結果。
主人公の見せ場まで消えました。
違う。
こんなはずでは。
というわけで。
そろそろ本当に。
リオ・ブランドーに、
ちゃんと戦ってもらいます。
第一話のような能力のお披露目ではなく。
誰かの戦闘への援護でもなく。
ブラックサファイアの能力を使って。
相手の能力を考えて。
殴られて。
考えて。
間違えて。
それでも勝ち筋を探す。
そんな。
「リオ・ブランドーの戦闘」
を。
そろそろ。
なお本人。
「別に戦いたくてついて来てるわけじゃないけど」
…………。
知るか。
主人公なんだから戦え。
そして今回の最後。
何者かがこちらを見ていました。
DIOの刺客なのか。
誰を見ていたのか。
何のために見ていたのか。
それはまだ分かりません。
ただ一つ。
作者から言えることがあります。
リオ。
次回もベッドで寝てたら許さないからな。
それでは次回もよろしくお願いします!