本作は、作者が運営する個人ブログ『FMA考察設定-G』のコンテンツをベースにした「閲覧室」としての掲載です。

作者自身、小説の執筆を趣味とすることはなく普段は技術レポート等の文章を作成しております。
そのため、一般的なエンターテインメント小説のようなドラマチックな展開、華やかなセリフ回しはありません。

あくまで「宇宙世紀0079の記録」
および「ミリタリー・ハードSFの視点による
技術・工学・戦術・作戦・戦略のレポート」という体裁の読み物です。

ハーメルン版ではテキストのみを掲載しますが
ブログでは、イメージイラスト、技術図解、各種設定チャート等を交えた完全版を公開しています。

1 / 1
連邦軍の開発した長距離支援タイプモビルスーツ「ガンタンク」
ガンタンクが配備された砲兵大隊のジャブロー防衛戦におけるストーリーです。
砲として優秀なガンタンクの火力とジャブローの地勢を利用したドローン・センシング・クラウドが降下したジオンモビルスーツ隊をキルゾーンへ導く。


[ミリタリーSF]密林のガンタンク砲撃戦(設定・解説主体)

「ジャブロー防衛線におけるガンタンク砲兵大隊の戦闘」

 

ジャブロー防衛隊

 第5独立野戦砲大隊は、北アメリカに降下してきたジオン軍に敗北した。

敗北と言ってもジオン軍と戦闘をしたわけではない。

最初の命令は「後退して主防衛ラインを構築する」

次は「背後に空挺降下された、第三装備まで放棄し連絡されたルートで迅速に移動し待機」、それから何回か矛盾した命令がきて、その後は、ただひたすら北米大陸を南下。

大隊は地峡を超える命令を受け、南米ジャンブロー防衛隊に編入された。

 

ジオン軍を見たのは成層圏を飛ぶガウの編隊だけだ。

あの「ザク」を見ることはなかった。

 

ジャブローで第3師団直轄の砲兵大隊になったが火力投射部隊は書類上の存在であった。

装備のほとんどを失ったため、日々の訓練はシミュレーションと地形、地勢の習熟を目的としたフィールドワークだった。

ジャブロー、ここが失われたら連邦軍、連邦政府は崩壊する。

その危機感を、ジャングルの熱気、湿気、匂いは奇妙な現実感にして肌にまとわりつかせた。

 

倉庫の整理

 なんとか大砲が配備された。45式自走砲である。大隊はジャングルで実働訓練を開始した。

しかし、それと一緒に支給されたターゲッティング用センシング機器、データリンクは無線によるネットワークに依存しているため、ミノフスキー粒子散布下の戦場では無いよりはましな存在だった。

 

空挺降下したザクや河川から進入してくる新型モビルスーツへ阻止砲撃をするのにジャングルの地勢から射程に不満なところはあったが砲の威力は十分だ。

ただ、射撃諸元がこない。

 

新式装備「RX-75ガンタンク」

 その後、前線観測員と有線通信網まで真剣に考え始めていた頃、45式自走砲システムは元のところへ帰り、新式装備が配備される通達が来た。

しかし、機密の秘匿からなのか混乱なのか詳細な情報はなく新型ではなく新式装備に誰もが首をかしげる。

 

「モビルスーツさ」「あれは戦車隊へ配備されるんだろ」「じゃあ、何が新式なんだ?」

トレーラーから自走して降りてきたそれを見て、「新式装備」であることは納得した。

連邦軍の事務方は、あいまいに言葉を使わなかった。

 

新式装備「RX-75ガンタンク」だった。

 

大学でデザインを専攻し自走砲に乗ってきた俺は、本能的にバランスの悪さから嫌悪した。

機動プラットフォームは、なんともちぐはぐで、装軌のままにしたかったのか関節駆動にしようとしたのか、双方の要素が交じり合っている感は否めない。

しかし、砲兵としてウェポンシステムの仕様を見ていくと「悪くはない」になった。

砲としては一流であった。

 

ガンタンクの砲撃性能

 肩(と言ってよいのか?)に装備された2門のカノン砲は優秀だった。

液体炸薬と磁気ライフリングの調整で初速、弾道を調定し、低初速から高初速まで撃ち分けることができる。

低初速で大迎角なら迫撃砲的な運用ができ、中初速なら榴弾砲、高初速なら直接照準で対MS射撃、対空射撃もできる。

そして完全に閉じた制御砲弾を使用すれば、固定目標、面目標への有効射程は260kmになった。

射程260km、「パリ砲か?」戦史の座学で習った皇帝(カイザー)の巨砲の名を呟いた。

 

そう、この砲は

野戦での近接支援から突破破砕射撃、MSキルゾーン、対空弾幕を形成し、戦線後方の集積地、補給路や司令部などへの長距離深部砲撃(Long-range deep-strike)まで可能としている。

さらに、給弾と補給さえあればそれらを1週間、撃ち続けることができる砲なんだ。

 

そして、腕(と言えばよいのか?)のミサイルランチャーも使い勝手は良い。

面制圧もできるし、移動目標への阻止砲撃もできる。

要はばら撒けるのだ。

ばら撒けると言っても安っぽい花火ではない。

発射時の信管設定には多くのモードがあり、射撃中に切り換えもできる。

ミサイルで殴り合いをする感じだ。

 

新式装備に習熟するにつれ、俺たちはガンタンクに愛着を持った。

いける。ジオンに勝てる。

 

ドローン・センシング・クラウド

 新しい砲と共に新しいセンシングデータリンクの配備も始まった。

それはミノフスキー粒子散布下で目標を「探知」し「位置情報」の「伝達」を可能とするものであった。

無数のドローンをジャングルに配置させるのである。

 

ジャブローの各防御拠点のハンガー(慣性誘導GPS起点)から割り与えられたエリアへドローン群は飛行し地上、河川岸、または樹木の頂上部へ着陸し、ジャングルの中に潜んだ。

着陸地点の「緯度」「経度」「海面高度」は慣性誘導ユニットが教えてくれる。

シールドされた慣性誘導ユニットはミノフスキー粒子に影響なく自らの起点からの位置を知ることができた。

 

ドローンに装備されたセンサー機器は、単純な赤外線、可視光線画像、音響、振動、気圧などのパッシブセンサーのみである。

それで得た情報「方位105度光った」「方位南西から音が聞こえる」「地面が振動している」「方位北北西より衝撃波」「太陽光が遮られた」を、周りにいる仲間へ伝える。

 

戦闘濃度のミノフスキー粒子散布下では、この声はかき消される。

しかし、極端に情報量の少ない伝言を何度か繰り返すと何人かの仲間には聞こえた。

仲間はまた周りの仲間へ伝え防御拠点に情報は届く。

 

1機のドローンからのデータは断片的であるが近距離で得たものなので精度は悪くない。

ドローン群の情報を分析、合成、推定し、ジャブロー防衛ゾーン中にいる自然ではない物体、人為的な現象を浮かび上がらせた。

 

砲兵大隊

 オデッサ作戦で地球上のバランスシートは傾き、宇宙への反攻のステップボードである

ジャブローへジオン軍は降下した。

 

大隊はジャブローの地下交通網を使って指定されたエリアへ向かいリフトで地上まで上がる。

フィールドワークで慣れ親しんだジャングルだ。

巧妙に偽装された地上の交通路で射撃陣地へ進入。

射撃陣地は射界を確保しており、これも偽装され上空からは何も見えないであろう。

射撃陣地に着くと大隊本部との通信が再開され戦術情報ディスプレーをのぞき込む。

ドローン達はよくやっている。

降下したジオンのモビルスーツをディスプレー上にマークしている。

 

大隊は可及的速やかに射撃準備を整える。

ガンナーの俺はガンタンクの頭部で中隊本部からの射撃諸元のデータを照合する。

胴部のドライバーは陣地交換の要領と退避、進入経路を確認。

ローダーは弾薬補給車とガンタンクの給弾システムを接続し給弾のタイミングと砲の冷却スケジュールを調整。

メカニックはガンタンクと親密に会話をしている。

中隊本部は大隊からのターゲッティング情報をガンタンクの仕事に落とし込み、中隊長は砲撃を開始しようとする火力投射部隊を掌握する。

大隊は防御拠点からのドローン情報、作戦方針を受け、ターゲットの優先順位、砲撃割り当て、射撃計画を決定していく。

 

うん、砲兵はチームで戦う。

そして、砲兵は戦場の女神だ。

 

突破誘導射撃

 「畜生、まただ」

ジャブローへ降下し分散したモビルスーツ中隊にフォーメイションを組ませようとするが

連邦軍の砲撃が邪魔をする。

 

いくらミノフスキー粒子が散布されていても放物線で飛来する砲弾にセンサーは気付く。

そして回避機動。当たることは無い。

中隊の各機は纏わりつかれる砲撃を受けダンスを続ける。

先導機が突進する。すると集中射を受ける。

 

中隊長は、違和感を感じる。

連邦軍は見えている。どんな方法かは分からないが、どこからか俺たちを覗き見している。ひそひそと喋っている。

ミノフスキー粒子が支配する戦場で。

 

中隊長は、もう一つの事を感じ始めた。

中隊は分散させられているだけではない、

中隊全体がある方向へ導かれている。連邦軍の手の平の上で。

 

戦術情報ディスプレーでジオンのモビルスーツを見る。

巨人たちのマークは動き、止まり、そして動く。

中隊規模のモビルスーツの群れを空から羊飼が杖で、あるゾーンへ向かわせる。

MS駆逐大隊ガンタンクの射撃ゾーンへ。

 

ジオンのザク

 中隊のガンタンクは砲撃スケジュールに従って順番に陣地を後退し給弾を受ける。

ローダーは大隊本部のレシピで砲弾をブレンドして給弾、メカニックは砲身を水平にして照準器の調整をする。

 

給弾と整備を終え、再び射撃陣地へ向かっている時、ワーニングが表示された。

降下途中に対空砲火を受け擱座し大破判定されていたザクがドローンセンシング網からロストしていたのだ。

 

「遠くはない」北米でのジオン軍の作戦テンポ、長駆機動を思い出していると、

「上、ザク」ドライバーの声、外部モニターを見る。

密林の上にザクのシルエット

ドライバーがガンタンクを信地旋回させる。

今までガンタンクがいた場所に着地したザクを防弾プレート越しに感じる。

モニターにはヒートホークが見えた。

 

「後退してミサイルバースト」頭の中の叫び

しかし、体はシートに押し付けられた。

モニターのザクが拡大する。衝撃、ガンタンクは砲身でザクに突撃をした。

 

ジャブロー

 警戒レベルが規定まで下がったので俺はガンタンクから降りた。

ザクのパイロットの表情を見る。不満なのか安堵なのか、それは分からない。

誘爆には至らなかったザクを見る。

そう俺は「ザク」を見る。

そのザクはヒートホークを握っていた。反対側の腕は無い。

もう一度、ザクパイロットを見る。

 

大破判定のザクを操り、片腕でヒートホーク襲撃をした彼女をジオンはプロパガンダ英雄にするであろう。

連邦軍は終戦まで捕虜交換リストに載せることはない。

彼女の戦争は終わった。

 

ジオンのカルフォルニアベースが継続して大規模なジャブロー進攻作戦をすることはないだろう。

ジャブローは守られた。

その先について何かを考える前に気が付く。

ジャングルの熱気と湿気と匂いが変わっていることに。




本テキストに関する注記
何故、試作機RX-75ガンタンクがジャブローに大隊規模で配備されているのか?
何故、ドローン・センシング・クラウドは大破したザクをロストしたのか?
等は、ホーム(個人ブログ)
「密林のガンタンク砲撃」
【https://flight-maneuver-arms.com/blog/gunfire-in-jungle/】
に記載しています。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。