そうして私は銃を杖代わりにしながら出口まで歩いた。
街道へ出ると、知っている景色が広がっていた。
あぁ、この建物はここにあったのか。
それはそうと、ナグサが来る前に、ここを離れなければ。
少し歩けば、道行く生徒が妙な目でこちらを見てくる。
確かに銃を杖代わりにしているのが奇妙なのかもしれないが、セーフティーは掛けてあるので、そんな目で見られなくたって良いではないか。
少し先の店先で、誰かがこちらを見ていた。
私も見返した。
「……アヤメちゃん?」
銃のせいではなかったらしい。
「あ、やっぱり。最近見かけなかったけど大丈夫だった?」
アヤメちゃん。
大丈夫。
ええと……
何について聞かれているのだろうか。
体のことなら、歩けている。
頭も打っていない。
「多分、大丈夫」
「そっか。なら良かった」
そうして店先へその人は戻っていった。
私はしばらく、その背中を見ていた。
それから、再び町中を歩いていると、少し先で、二人ほどの生徒が誰かを囲んでいた。
声を荒げている。
足が私の言うことを聞かず、その方に向かいかける。
今度は本当に私はちゃんと言っていたと思う。
どうにかして立ち止まり、その様子を眺める。
すると、周りから人が集まりだして、騒ぎはさらに大きくなった。
どうやら二人を捲し立てているらしい。
ばつの悪くなった二人はしばらくすると逃げ出すように何処かへ走って行った。
私はまた、歩き出した。
ストックを地面につけて歩いていると、握っている手がだんだん痛くなってきた。だが、かと言って、銃口を地面にガツガツ押し当てる気にもなれない。
どちらを地面につけるべきなのだろうか。
多分、メーカーも答えてはくれなさそうだった。
脇にある店の方へ目を向ければ、そこには茶屋があった。
備え付けの椅子では、生徒が何かの鳥の羽を毟っていた。
白い羽に、黒い羽が混じっている。
食べるのだろうか?
私も少し疲れたので、そこで休もうかと考えてみた。
けれども、鳥の羽を毟る生徒、迷惑そうにしている店員、前処理をされている鳥の間で休憩が出来るほど、私は図太くなかった。
だが、休まなかったからといって疲れがなくなるわけでもない。
何処かで飲み物を買いたい。
それか、少し腰を下ろしたい。
ひたすら前に進んでいると、ちょうど良く、妙に浮いている店を見つけた。
カイザー27だった。
景観保護のために百鬼夜行風に建てられた店舗である。
そして、景観保護に本気になりすぎて、周りの建物よりも百鬼夜行風になっていた。
この場合、周りの建物の方をカイザー27程度まで百鬼夜行風に改築するべきなのだろうか?
自動じゃないドアを横へ滑らせ、中へ入る。
人類は景観のために自動ドアさえも捨てた。
実に正しい進歩だ。
設置された冷凍コーナーを眺める。
中には人が横たわっていた。
見つめていると、「何見てんだよ」と言わんばかりにこちらを見つめ返してくる。
この時期になると増えてくるのだが、鳴かないのにセミよりも分かりやすい。
きっと数年後には季語になっているだろう。
こういうものに名前があるのかは知らなかった。
冷凍コーナーに並ぶ凍ったペットボトルを横目に、私は飲料コーナーから水のボトルを一つ取って、レジへ向かおうとした。
だが、よくよく考えてみれば私は財布を持っていない。
私は冷凍されんとするそれに水を渡して、そのまま店を出た。
会計はしていなかったが、それが店を出るときにきっとするだろう。
店から数歩進んだところで、喉が渇いたことに気付いた。
財布がないのだから仕方がない。
それでも、あれに頼んで買ってもらうくらいは出来たのかもしれない。
私は立ち並ぶ店の壁に背を預け、そのまま座り込んだ。
銃口を上にして、壁に立てかける。
店員が不安そうな目でこちらを見ている。
今度こそ、銃のせいなのだろう。
セーフティは掛かっている。
……ここはちょうど日陰になっているのでいくらかは涼しいが、熱風が通り抜けていくたびに眉間にしわが寄る。
しかも、晴れているというのに妙に湿気を感じるので、さらに暑い。
どうもここ数年、夏が異常に暑い気がする。
いつかこれが通常になるのだろうか。
そうしていくらか休んだ私は立ち上がり、また歩き始めた。
考えてみれば、私はどこに向かっているのだろうか。
ナグサに会うことが困るので、避けるためにぶらぶらと前に進んでいたのだが……
神木はかなり近くなっている。
確かに百花繚乱からは離れているらしい。
だが、このまま進み続けるのも、何か違う気がした。
……では、どこへ行こうか。
まぁ、歩いていればそのうち思いつくだろう。
だが、歩いている間にも、「アヤメ元委員長?」だの、「なんかあったの?」だの、「偽物が現れて大変なことになってたんだよ」だの、声を掛けられた。
私はその度に「そうだね」とだけ答えてやり過ごす。
そうして、何回そうだね、と言ったか分からなくなってきた頃、どうも私は疲れ果ててしまった。
これ以上そうだねと言う気も起きないので、私は何処か、人目につかないような場所を捜すことにした。
何処か、路地裏が良い。
不良がたむろしても、流石に今の私をボコボコにはしないだろう。
あぁ。
私は建物を出てから何個目かも分からない十字路に差しかかったとき、初めて左へ曲がった。
ずっと真っすぐ行っていたのが良くなかったのだろう、ならば、曲がったほうがきっと良いはずだ。
と言っても、曲がったとしても町並みが変わるわけではない。
私はただひたすらに歩き続けた。
多分、何回か呼ばれた気がする。
呼ばれてなかったのかも知れない。
分からない。
私は走った。
誰かがアヤメと言ったからなのかも知れない。
これもわからない。
きっと、私は遅かった。
足が。
それから、何に感謝すれば良いのかは分からないが路地を見つけた。
室外機がある。
木箱が積まれている。
壁際に配管が伸びている。
日が当たらない。
あぁ、やはりここも蒸し暑い。
息を吸う。
足りない。
もう一度吸おうとしてむせる。
室外機から発せられる熱風を吸い込んでさらにむせる。
少し収まり、壁にもたれる。
ファンの回る音。
街道からの声が遠い。
鳥の巣がある。
日は若干西へ傾いている。
暑い。
銃を握り直す。
しっかりと握る。
それから私はしゃがみ込んだ。
暑い。
そう、暑かった。
汗で顔が濡れる。
前がぼやける。
蒸発しそうにはない。
何のための汗なんだ。
巣の中の卵が二つに見える。
目を拭う。
空を見上げれば、太陽は同じ位置にある。
銃も手の中にある。
ファンは回っている。
声は聞こえない。
前は見えづらい。
顔に。
顔に汗が。
目を拭う。
まだ濡れている。
手足がしびれる。
多分、水分不足ではない。
ええと。
ええと。
指先が勝手に丸められる。
銃を放せない。
離したい。
しびれる指を一本ずつ銃から剥がす。
……私は銃を放した。
顔を拭う。
やはり、まだ濡れている。
私は銃を手に取り、立ち上がった。
それから、道の方へ歩こうとする。
「……アヤメ?」
私は半歩、後ずさった。
「ここに居たんだね……起きたって聞いて、それで向かったら、着いたときにはもう居なくて」
今度は一歩。
「……ごめんね。多分、会いたくは無かったと思うけど、それでも……今日は暑いから、お金も持ってないだろうし」
ナグサは右手に何かを持っていた。
水のボトルだった。
何か、何かを言わなければならない。
咳が出る。
「……私は」
そこで言葉が止まった。
私は何を言おうとしたのだろうか。
多分、失敗しなさそうなものを。
私は背筋を伸ばす。
足は若干折れ曲がるが、仕方が無い。
「囚人番号七番、七稜アヤメでございます! 委員長殿!」
「え?」
「私めを連行するため、はるばる御足労頂き感謝申し上げます!」
「アヤメ?」
「さぁ!行きましょう!」
ナグサの方に二歩歩く。
こけそうになり、壁に手を付く。
「落ち着いて、アヤメ」
そう言われ、私は黙った。
ああ、落ち着いた。恐らく。
「これでよろしいでしょうか!」
「そうじゃなくて、その……冗談だったら、あんまり……」
ナグサは口を閉じた。
「……誰かに、そうしろって言われたの?」
「いいえ!私めの独断でございます!」
「……そっか」
どうやら納得したらしい。
「では、御命令を!」
「……じゃあ、その喋り方をやめてほしい」
「申し訳ございません。それは出来かねます!」
「……どうして?」
何故だろうか。
考えてみたが、特に理由らしいものは見当たらなかった。
しかし、出来ないものは出来ないのだから、仕方がない。
「申し訳ございません!」
「……そう」
ナグサは手元のボトルに目を向けた。
「じゃあ、水を飲んで」
それなら出来そうだった。
私はナグサの差し出したボトルを受け取り、キャップを開け……
歯を使ってキャップを開け、二口飲んだ。
ナグサが何か言いかけたが、結局何も言わなかった。
「では、出発しましょう!独房の空きが無ければ、柱に縛り付けておいてください!」
「……」
「どうされましたか、委員長殿!」
「……アヤメ、私は御稜ナグサだよ」
「は……?と、言いますと?」
「委員長殿、じゃなくて、ナグサって呼んでほしい」
「何故?」
「え?」
ナグサの目がほんの少し大きく開いた。
驚いたらしい。
「えっとね、確かに私は百花繚乱の委員長になった。でも、その前に御稜ナグサだから」
「そうなのでしょうか!委員長殿!」
「……うん。それに、私は委員長としてアヤメを捕まえに来たわけじゃないから」
「では、何の御用でしょうか!」
「アヤメに会いたかったから」
……。
「誰かに命じられたので?」
「ううん。私が来たかったの」
なるほど。
それならば、業務外ということになるのだろうか。
しかし、委員長が業務外に大罪人を訪問する理由が分からない。
「それでは、御用件をお伺いしましょう!」
「……今のアヤメと、話がしたい」
「分かりました!どのような話題でも構いません!」
「その……出来れば、いつもみたいに」
「ですが私には分からないのです!委員長殿!」
ナグサが目を伏せた。
「……そっか」
「それでは、出発しましょう!」
私は両手を突き出してナグサの方へ近づいた。
「待って、アヤメ」
私は立ち止まった。
「私はアヤメを捕まえに来たわけでも、牢屋に閉じ込めたいわけでもないの」
「……多分、ニヤ部長から話は聞いたでしょ?」
いいや、彼女は百花繚乱の委員長なのだ。
「ですが、委員長たるもの、このような大罪人を野放しにしておく訳にもいかないでしょう!さぁ!お急ぎください!」
「理由がないから。それに、私はそんなことしたくない」
「ですが!」
「……アヤメ」
「あなたは継承戦に勝利なさったのです!クズノハ様にも認められない、資格も持たない、不相応な委員長を打ち倒し、百花繚乱の新たな顔となられた!であるのならば、それには職務が伴います!」
ナグサは、少しだけ顔をしかめた。
「……うん。私が委員長になったのは、その通りだよ」
「であれば!」
「でも、それでアヤメを捕まえなくちゃいけないとは思わない」
「御自身のお考えで?」
「……うん」
私は困った。
委員長が何をしたいか、という話をしているのではない。
委員長が何をするべきか、という話をしているのだ。
それとも、私はそちらについても説明しなければならないのだろうか。
「では、委員長としての職務はどうなさるのでしょうか!」
「ちゃんとやるよ」
「本当に?」
しまった。
敬語を使うべきだった。
「……うん。ちゃんとやる。それは、私が引き受けたことだから」
ナグサはそう言って、私の方を見た。
「でも、今ここに来たのは、私がそうしたかったから」
「……」
「委員長だからじゃないよ」
また、それだ。
委員長だからではない。
委員長になる前に御稜ナグサだから。
では、何なのだろうか。
委員長というのは、そんなに簡単に切り離せるものだっただろうか。
「……ごめんね」
謝った。
ナグサが?
「ずっと、私は……えっと、その……」
ナグサは言葉を止めた。
ナグサは謝るか、自分が悪くなくても。
だが、今はタイミングが意味不明だ。
「……お時間に御余裕があるので?」
「今はアヤメのための時間だから」
暇か。
「いえ、委員長殿のお時間を私めのために使っていただくなど!」
「私がそうしたいの」
「……」
「だから、もう少しだけ話してほしい」
どうも、これは断る理由を見つける方が難しそうだった。
もっとも、私に話すべきことがあるかどうかは別問題だ。
「それでは、どういたしましょうか?何か御命令はございませんか?」
ナグサは私を見つめていた。
「……アヤメ、聞いていい?」
「勿論です!」
「出来ないことはある?」
……。
「御聞きいただければ、その都度お答えします」
「じゃあ、ちゃんと話そう」
「はい、では引き続きお話をしましょう。どのような話題でも構いません」
「そうじゃなくて」
「分かりました。また、何かご用があればお声掛けください」
「アヤメ!」
おっと。
ナグサが驚いた顔をしている。
何故自分で?
「あ、あの……ごめん、驚いたよね」
「いいえ!」
「でも、聞いて欲しかったから。これは……これは話さないといけないと思ったから」
ナグサは口を閉じた。
少ししてから、また開いた。
「……アヤメが、私と話したくないなら、それは仕方がないと思ってる」
「はい!」
「でも、私は話したい。だから来たの」
「分かりました。それではお話ししましょう。話題を提示して頂ければ何でもお答えしますよ!」
「なら、話す前にまずその話し方をやめてほしい」
「何故でしょうか」
「えっと……アヤメって、前はそんな喋り方じゃなかったでしょう?」
前。
前とは、いつだろうか。
「……それに、私は前みたいに話したいわけじゃなくて」
「では、まずいつの七稜アヤメかについて話そうか」
「え?」
「そうだな、まずあんたにとって一番馴染み深いであろう、委員長になる前の私?」
ナグサはしばらく黙っていた。
「……私は」
「いや、それとも、委員長になった後の私?完璧で優しくて、誰にでも手を差し伸べる、あの七稜アヤメ?」
「い、いや。アヤメはずっとアヤメで……」
「じゃあ、そのアヤメって誰なんだろうね」
ナグサは答えなかった。
「完璧で優しい委員長の七稜アヤメ?でも、百蓮も使えなかったし、少なくとも完璧な委員長のアヤメなんて居なかったよね」
「……私も、そう思う」
私はナグサを見た。
「何を?」
「アヤメが、私の思ってた通りの人じゃなかったってこと」
「……へえ」
「でも、それはアヤメが悪かったんじゃなくて、私が……」
ナグサはそこで言葉を止めた。
それから、もう一度口を開いた。
「私は、アヤメなら出来るって、ずっと思ってたから」
「何が?」
「……色々なこと」
随分と便利な答えだ。
「さて、もう一回聞こうか。あんたはいつのアヤメのことを言ってる?」
「……ごめん」
「謝れば終わる、泣けば誰かが助けてくれる、実に便利な処世術だこと。感動しすぎて私が泣けてくる、そう。ずっとそうだったよね」
ナグサは何も言わなかった。
私も、何も言わなかった。
しばらくすると、通りの音がよく聞こえるようになった。
怒鳴り声が聞こえる。
破裂音が聞こえる。
「……行けば?ここでこんなことしてる場合じゃないでしょ」
ナグサは答えなかった。
また、破裂音がした。
ナグサはそちらへ顔を向けた。
誰かが何かを叫んでいる。
今度は、何か硬いものが倒れる音も聞こえた。
ナグサは再び私の方を見た。
それから、また通りの方を見た。
目元が少し赤くなっていた。
「……行かない」
私は一瞬、何の話をしているのか分からなかった。
そういえば、行けばと言ったのは私だった。
「委員長なのに?」
「……うん」
「随分と立派な委員長だことで」
ナグサは少し顔を伏せた。
しかし、今度はすぐに私を見た。
「……でも、今はアヤメとも話したい」
「それが委員長の判断?」
「……私の判断だよ」
私は少し考えた。
何かが違う気がした。
だが、何が違うのかは分からなかった。
「……委員長でもあるけど、やっぱり私は私としてしか居られないから」
だったら何なんだ。
いや、もう何でもいい。
「いいよ、もう。あんたがあんたで居れるならもうそれでいいんじゃない」
そう言って、私はナグサの横を通り抜けようとした。
だが、妙にこの路地は狭かった。
人が通ることを考えるべきだ。
「どいて」
ナグサはその場に立っていた。
ガラスの割れる音。
聞こえているのだろうか。
「ねえ」
私がそう言うと、ナグサはゆっくりと体の向きを変えた。
壁に手を付きながら通りへ出ると、銃撃戦が起きていた。
これからどうしようか。
……分からなかった。
とりあえず、休みたい。
家へ帰ろう。
いくら歩いても景色は変わらない。
同じような屋根、少し違う看板か暖簾。
そして、騒動に乗じて魑魅一座の……これは何流だろうか。
とにかく、彼女たちが作った関所があった。
見張りが私の顔を見る。
すると途端に何かを仲間に叫んで、あっという間に関所を解体して逃げ出してしまった。
百鬼夜行の解体業の未来は明るそうだ。
さらに歩けば、住宅街へ出た。
ここも、あまり景色は変わらなかった。
むしろ、屋根に関しては更に似てきたようにも見える。
だが、それでも私はその中から一つを見つけることができた。
だからと言って、それが特別なわけでもない。
写真を撮っているはぐれ観光客を横目に、私は玄関の前に埋められたスペアキーを掘り起こし、中へ入った。
中は私が考えていたよりもきれいなまま保たれていた。
であるのならば、誰かが掃除でもしていたのだろうか。
……特に隠したいようなものがあったわけでもなかったので、別に気にすることも無いだろう。
手を洗い、銃をラックに。
銃。
銃?
よくよく考えてみれば、私は壁に手を付いてここまで歩いてきた。
銃があるのなら、それを使えばよかったし、それをしないというのであれば、きっと銃を持っていないのだろう。
うん?
なら、銃はどこへ行ったのだろうか。
……まあ、仕方がない。
それから、階段を上がると息も上がった。
寝室の扉を開け、布団を引っ張り出す。
枕は見当たらなかった。
そうして、私は横になり、目を瞑った。
―――
頭の隣に、明るい月の光が差し込んでいる。
その白さを見て、地面に降りた霜ではないかと疑った。
顔を上げて山の上の明るい月を眺めれば、忽ち雲がそれを隠した。
そして、再びゆっくりとうなだれて、今は何時だろうかと考えた。
夏の眠りはどうも暑苦しく、夜が明ける前に起きてしまった。
ふと目が覚めると、窓のほうから、誰かの話し声が聞こえる。
そういえば、昨日銃撃戦が起きていたが、
あれは結局どうなったのだろうか。
これが春であればまた違ったのだろうか。
きっと、そんなことは無いのだろう。
明日、ナグサは私の銃を持ってくるだろうか。
その時、私はなんといえばいいのだろうか。
今は考えたくない。
明日から、どうしようか。
きっと、ここから西へ進んだとしても私をもてなしてくれる人はいるのだろう。
それが友人かは私にはわからない。
ここで寝ていたとしても、誰も責めはしないだろう。
もしかすれば、ここを出て、キヴォトス中を歩き回ってもいいかもしれない。
けれど、それをすると途端に私の体自身が抗議してくる。
ともかく、何を考えていたとしても、月は沈むらしかった。