プらぽレいしょン   作:リュウ@立月己田

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 いつもの人はおはこんばんちわ。初めての人ははじめまして。リュウ@立月己田です。

 今回はかなり前に書いたオリジナルミステリー小説を少し修正してみました。
 いわゆる一つの息抜きですし、冒頭部分の5話までしか書いてないのですが……まぁ、お付き合い頂けると幸いです。


0.あなたはだあれ?

1-1.序章 その1


1-1

■0.

 

 

 

「えっと、君の名前はなんと言うんだい?」

 

 僕は、佐井村竜(さいむらたつ)と、そう答えた。

 

「そうか、良い名前なのかな……まぁそれはどうでもいいんだけど」

 

 貶されているような感じがしたけれど、僕は気にせず黙っていた。目の前の人は、そんな僕の反応を楽しむようにジロジロと顔を眺めた後、ゆっくりと目を閉じて口を開く。

 

「それじゃあ、君に質問だ」

 

 その言葉に、僕は頷いた。

 

「目的のために一から努力して達成するべきか、近道として引かれたレールを進んで達成するべきか、いったいどちらが正しいのだろう?」

 

 どちらでもない、僕はそう答える。

 

「つまり、人によってそれぞれということかな。まぁそれも正しいと言えばそうなのかもしれない……が」

 

 悩んでいるのか、考えているのか。そのどちらでもないかもしれない。だけど、僕の答えはすでに決まっている。

 

「ほぅ……それじゃあ、その答えというのを聞かせてほしいのだが」

 

 ニヤリ、と笑いながら僕を見つめる。

 

 その表情が、とても綺麗で。

 

 だけど、その表情が、とても寂しげで。

 

 しかし、その表情が、とても可哀想で。

 

 そして、その表情が、とても恐ろしくて。

 

 僕は、言葉に詰まってしまう。

 

「ふふ、どうしたのかな?」

 

 口元をほんの少しだけ上げながら、じっと僕の目を見つめ続ける。身体がその瞳に吸い込まれてしまいそうな感覚で頭がくらくらしながらも、僕はゆっくりと口を開く。

 

 誰もが傷つかない道を探して、進む。

 

「そんな事ができると思うのかな?」

 

 僕は、何も言わない。

 

「それは結局、自分だけを傷つけるということかな?」

 

 僕は、何も言わない。

 

「それはつまり、自分自身が傷つきたくないだけじゃないのかな?」

 

 僕は……何も言えなかった。

 

「そっか、それが君の答えなんだね」

 

 視線が僕から外れていく。

 

 それでも、僕は何も言えずただじっと耐えるように口を塞いでいる。

 

「それじゃあ、舞台の始まりだ」

 

 カーテンは開かれている。後は自分の信じる道を進むだけ。それが、どんなに厳しく困難であっても、僕はもう二度と傷つきたくない。

 

「精一杯頑張ればいいさ。どんな結末が待っていようとも、それは君が選んだ道なのだから」

 

 言われなくても分かっている。

 

「だけど、もしどうしようもないと思ったら、周りを見ればいいだけなんだよ?」

 言われたけれど、

 

 僕は――答えられなかった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

■1-1.

 

 

 

七月中旬。

 

 蝉の鳴き声が耳鳴りのように響き渡り、燦々と輝く太陽から浴びせられる直射日光がアスファルトの熱をどんどんと高めていく。1学期の期末テストを終え、夏休みまでのカウントダウンとなった数少ない登校日の授業を終え、放課後の時間になっていた。

 

 校舎を繋ぐ渡り廊下を歩いて目的の場所へ向かう途中、グラウンドをぐるぐると走る陸上部員の姿が目に入った。遠目に見える彼らの姿は、グラウンドの熱さで蜃気楼の様にゆらゆらと揺れている。こんな暑い中よくもまぁ走り続けられるのだと感心するが、彼らには目的があるからこそそれが出来るのであろう。僕にはとうてい出来ないだろうなぁと思いながら、ため息を吐いてから大きく息を吸い込んだ。湿気じみた熱い空気の固まりが肺の中に流れ込んでくるのを感じ、不快感から早足で渡り廊下を通り過ぎていく。

 

 校舎に入ると日陰になったおかげなのか、幾分過マシに感じた。湿気は変わらないが、近くに木が植えられているので校舎に当たる日差しの影響が少ないからだろう。温度差にすれば2度くらいしか変わらないのだろうけれど、それだけで僕の熱さに対するストレスは大きく緩和されていた。

 

 階段を上り、何人かの生徒とすれ違った。見知った顔じゃないので1年生か、3年生か、それとも同じ学年でも遠いクラスかもしれない。ただまぁ、それが自分にとって大きな影響があるわけではないし、別に気にする必要性は皆無に等しい。

 

 そうこう考えているうちに、最上階である4階に上がりきった僕の額には大量の汗が吹き出していた。緩和されたはずのストレスが再び沸き上がりそうになり、頭をぶんぶんと左右に振る。滴る汗が床へと飛び散るのを視界に入れながら再び足を前へと進め、廊下を歩いていく。

 

 背中に触れるねっとりとした汗ばんだシャツの感触に嫌気がさしながら、目的の物理準備室の前にやってきた僕は四の五の言わずに引き戸を開けた。

 

「うっはあぁぁぁ……」

 

 強烈な冷気が僕の全身にまとわりつき、体温を一気に奪い去っていった。あまりの気持ち良さに、目を閉じて歓喜の声を漏らしてしまう。

 

「そこでじっとしているのはいいんだが、さっさと閉めてくれないかな、竜」

 

 部屋の奥から、低い声で注意されてしまった。

 

「ああ、ごめんごめん。あまりの気持ち良さに我をも忘れるとはこの事かな」

 

「その気持ちは分からなくもないが、エアコンの電気代が無駄になるのは避けたいところだ。もちろん電気代は学校が負担しているのだし、それは僕達の学費から捻出されているのだから、自分の首を絞めていることに変わりはないのだよ」

 

 怒っている様な表情を見せることなくスラスラと説教の言葉を紡いでいるのは、僕が所属しているミステリー研究部の部長にして小さい頃から幼なじみである驫木斗馬(とどろきとうま)だった。僕はこれ以上の説教を聞くつもりもないので、引き戸を閉めて部屋を密閉状態にする。

 

「うむ、大いに結構」

 

 斗馬は納得したのか、視線を僕から机の上に置かれているパソコンのモニターへと移して、キーボードをカタカタと小気味の良いリズムで鳴らしていた。

 

 そんな斗馬の姿を横目で見ながら、部室の奥へと進んでいく。部屋の隅に置かれた縦長の据え置き型エアコンの横に鞄を置いて、送風口に触れるギリギリの場所に顔を近づけた。

 

「うひー、気持ちいいー」

 

 冷たい風を受けて、額にあふれ出そうとしていた汗がびっくりして体内へと戻ろうとするくらいの気持ちよさに目を閉じながら、願わくはこの幸せな時間がずっと続きますようにと心の中で祈ってみる。

 

「涼むのは構わないが、あまり長時間そこにいると風邪をひいてしまうのではないだろうかと危惧してしまうのだが、竜」

 

 視線をパソコンに向けたまま注意する斗馬に「うぃ、分かっておりますー」と返事をして、エアコンから離れる。体温が一気に低下して心地よくなり、熱によるストレスはどこかに吹き飛んでいった。背中のべたつきが無くなれば完璧なのだが、それは高望みというものだ。

 

「ところで、斗馬は何をしているのかな?」

 

「何をと言われても、パソコンを使って調べものをしているだけだが、竜」

 

「調べものって?」

 

「調べものは調べものさ。少しばかり気になることがあったのでね、竜」

 

 ふうん……と、返事をしながら斗馬の顔を覗いてみる。聞いた内容をはっきりと答えなかったのは珍しいので、何かやましいことがあるのではと思ったが、すました顔でモニターを見つめている斗馬の顔はいつも通りだった。

 

 まぁ、斗馬のポーカーフェイスがここぞとばかりに発揮しているのかもしれないが、そこは付き合いの長い間柄である僕にとって、全く分からない訳ではない。ーー今の斗馬の表情を見る限り、何かを隠しているという感じは見て取れないので、そんなに気にしなくても良いのだろう。

 

 気分を変えるため、壁に立てかけてあったパイプ椅子を組み立てて座り、背筋を伸ばすように反り返った。背中からポキパキと小さな音が鳴り、程良い気持ちよさが広がっていくが、ついでに汗で背中部分が湿ったシャツの感触を味わってプラスマイナスゼロ――ではなく、少しだけ不快な気分になってしまった。

 

「ふぁ……」

 

 室内の快適な温度に思わずあくびが出てしまった。ついでに、ぐうぅ……と腹部から情けない音が鳴り響く。後ろの壁に取り付けてある時計に目をやると、針が13時になるかならないかの時刻を指していた。

 

「その感じだと、昼食を取っていないようだね、竜」

 

「ん、そうなんだけどさー」

 

「てっきり食堂で済ませてきたと思ったけれど」

 

「そのつもりだったんだけどね。ちょっと野暮用が出来ちゃって、食堂は満員でさ。売店もすでに売り切れだったんだよね」

 

「まぁこの時間なら仕方ないかもしれないが、野暮用とはいったい何だったのかな、竜」

 

「顧問の簑河(みのかわ)先生から力仕事を頼まれちゃってさ」

 

「む、先生からの頼みごとで、力仕事……か」

 

 モニターから視線を少し下に落とした斗馬は、「ふむ……」と呟きながら、右手を顎につけて何かを考えているようだった。

 

「んっ、何か気になることでもあった?」

 

「……そうだな、少し聞いてもいいかな、竜」

 

「うん、別に良いけど」

 

 斗馬の声のトーンが少しだけ低くなったのに気づいた僕は、緊張しながら頷いた。何かを閃きかけている時、斗馬はいつもこうやってポーズを取りながら集中して話しかけてくる。

 

「力仕事とは、いったいどんな内容だったのかな、竜」

 

「別に……普通に段ボール箱を2つ運んだだけだよ」

 

「どこからどこに?」

 

「職員室から、視聴覚室にだよ。夏休み中の補修に使うって言ってたけど」

 

「荷物の重さは?」

 

「そこそこかな。2つ併せて20kgってとこかな」

 

 僕の話を聞いた斗馬は「なるほど……」と呟いた後、それっきり黙り込んでしまった。何かを推理している時の斗馬の姿は何度も見ているので、僕は気にすることなくもう一度時計に目をやった。13時になった短針の針が目に入り、早く何か食わせろと唸り声のように腹部が鳴った。

 

「あー、ちょっとコンビニに行って、何か買ってこようかな」

 

 独り言のように呟いた僕はパイプ椅子から立ち上がり、鞄から財布を取り出そうとすると、斗馬が急に僕の顔を見て口を開いた。

 

「いや、少しだけ待ってみないか、竜」

 

「……何で?」

 

「気になることがあってね。まぁ、思い過ごしかもしれないが」

 

「ふうん……まぁ、我慢できなくはないけどさー」

 

 胃の辺りをさすりながら口を開けてみると、空腹のせいか酸が逆流してきた。口内に酸っぱい臭いが充満し、キリキリと胃が痛み、気分が悪くなってきた。

 

「うー、やっぱしんどいかも」

 

「どうしてもと言うのならば、無理はしなくてもいいのだが、竜」

 

「んー、そうだね。胃潰瘍になっても嫌だしねー」

 

「そうか。それじゃあ、後のことは任せてくれて構わない」

 

「ういー。それじゃあ、コンビニに行ってくるわー」

 

 そう言って今度こそ鞄から財布を取り出した僕は、快適な部屋から出るのを惜しみつつ部室の扉に手を伸ばした。

 

 




 いたって普通のライトノベル?

 次話からは女性キャラも出てきます。

 どっかで見たことがある冒頭だなと思った貴方、突っ込みはまぁ、ほどほどで。



 滅茶苦茶ファンですから仕方ないね。
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