私の前世は明日を救えなかったスーパーロボット   作:狼二世

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49.バイバイ、アース キャンセル

 濾過しきれなかった記憶情報の集合体がアンゲルスである。

 では、もし仮に、濾過する方法が残っているのならば――取り返しはつくのではないか。

 地球からもたらされた情報。その内容をトキハは整理し、ムァンとは別のアプローチを行うことを考えていた。

 

「……そうか」

 

 戦闘に精いっぱいで考えもしなかった希望。ムァンは素直に頷く。

 

「手遅れかもしれないのは、試してみてからにしましょう」

 

 力強い声と微笑み。ムァンは、何も言うことはない。

 

「というわけでお爺ちゃん! アタシが出張してる間は島のお留守番お願いね」

『待て待て待て!』

「はい反論は聞こえませ~ん、決定事項で~す、指令室のみんなから許可もらってま~す」

 

 通信機からはグソウ博士のため息が漏れてくる。

 

『まったく……やるならちゃんと成果は見せるのだぞ。ワシがハイロウ・ウイングを作ったようにな』

「もちろんよ」

 

 トキハはそう言い切る。

 まだ、成果が出た訳ではない。次にとる行動も、他人に聞くという答えが出るかもわからないものだ。

 だが、不思議と彼女の言葉には、信じさせる力があった。

 

 だからだろう、地母神もすぐに答えた。

 コクピット内に虹入りの光が広がる。それは、地球へ行く際に受け取った虹色の遺志から発せられたものだった。

 

『そこまで行く必要はありませんよ』

 

 優しい声が聞こえてくる。

 

「あ、案外近くにいたのね」

『ええ、我は常に皆を見守っています』

 

 そして、すぐに本題に入った。

 

『まず最初に……皆様がアンゲルスという記憶粒子の状態は、本来の形を失い、つぶれた状態です。それを粉々に砕くことによって、世界に戻しています。そこに元の形は残っていません』

「う~ん、つまり、濾過をしようが無駄だといいたいの?」

 

 既に完全に壊れており、元素だけを回収している。そう受け取った。

 

『いえ、それですが……』

 

 だが、地母神の声はわずかに言いよどむ。

 

『稀に高濃度の集合体――特異体と呼ばれる存在の核であれば、形は残っています。その形が顕現する際に影響されるのです』

「海蛇や巨人……それは、元の形に影響を受けたものなのですね」

 

 ムァンの捕捉に地母神も、ええ、と小さく答えた。

 

「わかった。ならなおさら聞きたいわ。濾過は可能なの?」

『結論から言えば、可能でしょう……ただ』

「もったいぶらないで言いなさいよ」

 

 すると、地母神は声の色を変える。

 神らしい、落ち着いた声であった。

 

『最後にもう一仕事、してもらいます』

 

 トキハも、ムァンも黙って頷いた。

 

『我が姉妹の残滓には、まだ皆様がアンゲルスと呼ぶ存在がこびりついています』

 

 特異体の残った情報は形を保っている。だが、その形に対して悪性情報が寄生したままになっている。

 

『それを祓うには、記憶そのものに触れる必要があります……その記憶は、死の瞬間です。つまり、生命の危機が脅かされた情報を受け止めることになるのです』

 

 死に最も近い情報。それを受け取った時に、人が耐えられるか――

 

『濾過を行うにはその記憶に触れる必要があります……その覚悟は――』

 

 ――問う必要はなかった。

 ムァンも、トキハも、その瞳に迷いはないのだから。

 

『愚問でしたね』

 

 虹色の光があふれだす。

 その是非を待つ必要はない。

 ただ戦士たちは、為すべきことのために、次の戦場へと向かう。

 神は、それを送り届けるだけだ。

 

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