人気のない見滝原の公園。暗闇の帳が街を包み静かな空気が漂う。そこに一つのバイオリンの音色が響く。自信に満ち溢れ力強い、しかしどこか繊細で儚い音色。
紅音也、その男が夜の公園で自由気ままに弾いていた。夜のためか少し音量は控えめであった。
「やはりいつ聞いても良い音色だ。さすが俺」
自信を持ちゆるぎない声で自画自賛をする。どこから湧いてくるかわからない自信を巡らせ尊大で自意識過剰な声にはたから見ればただの極まったナルシストである。実際そうではあるのが音也のすごいところ。
しばらく時間が経ち満足したのか演奏をやめバイオリンをおろす。すると近くから拍手が聞こえてきた。数はたった一つ。人気は依然としてないはずの公園から確かに手をたたく音が聞こえる。拍手が止んだ後、声が聞こえた。
「素晴らしい演奏ですね。あまり音楽に詳しくない私でも感動しちゃうくらい聞き入っちゃいました」
声がした方向には黄色のロール髪でおっとりとした笑顔を浮かべ大人びた雰囲気を纏う少女がいた。
「そうだろう、俺の音色は全てを魅了する。聞き入ってしまうのは当然のことだ。この演奏を生で聞けたのはラッキーだったな」
いつものように調子よく答える。ここで音也はどこか目の前の少女に違和感を覚える。まるで生気を感じずこの世に存在してるとは言えないような雰囲気。
「ただ演奏を聞きに来たって感じじゃなさそうだな。デートの誘いか?喜んでっと言いたいところだがこんなド深夜じゃ回れるところなんてこの街にはないからな。悪いが明日にしてくれると嬉しいな」
「中学生相手にナンパですか?ふふ、やっぱりとても変わった人ですね」
「中学生だったのかおまえ。にしては随分と大人な雰囲気を纏ってやがる。これはモテるな」
しかしそんな雰囲気は関係なく音也はナンパをした。だが少女はうまくかわす。そして中学生と言われ驚愕する。少女の大人びた雰囲気にてっきり少女の見た目なだけの大人かと勘違いをしていた。
少女は一呼吸置いた後、音也へと話しかける
「あなたが紅音也さんですよね?私は巴マミって言います。美樹さんたちをサポートしてくれたことにお礼を言いに来たんです」
「さやか達の知り合いか。それにお礼か......ん?」
どこかで聞いた声とお礼という言葉を聞き何かを思い出す。それはまた別のところで弾いていた時に聞いた声。一言だけ聞いた声であった。
「お前もう言っただろう」
「......!あれ聞こえていたんですか?!よかった、美樹さんには伝わっていたっぽいけど紅さんに聞こえているか不安だったもので」
歓喜を顔に前面に出しながら話す。その顔は先ほどの大人びた顔ではなく年相応のかわいらしい笑顔であった。
その様子に音也は疑問を抱く。
「聞こえて良かったとはどういうことだ。もしかしてあの白いのと同じ選ばれた奴にしか聞こえないってやつなのか?」
目の前の少女は確かに存在している。声も多少透けてはいるがしっかり聞こえる。なのにまるで聞こえていないことが正常であるとでも言いうように少女の言い方には含みを感じた。
「実は私、死んでるんです。今は幽霊の状態なので私の声は普通は聞こえないと思うんです。だからちゃんと伝わってたか不安で」
衝撃の事実を告白するマミ。今目の前の少女は幽霊であることに普通の人はかなり驚くだろう。それも夜の公園ならばなおさら。そう言われるとたしかに姿も透けている。しかし音也は驚くことなくいたって平然としていた。
「あの、驚かないんですか?」
「幽霊が今更なんだ。これまでもファンガイアだの魔女だのこの世のもんとは思えない存在と会ってきたんだ、驚くことでもない。それにお前みたいな女神のような幽霊なんて喜んで歓迎するぜ」
音也の言葉に若干顔が紅潮したような気がした。死んでいるのに顔が紅潮してしまうものなのかそんな思いを巡らせ顔を伏せる。
「で、もう要件は済んじまったな。このまま夜が更けるまで音也様の高貴なバイオリンメドレーでも聞いていくか?」
お礼はすでに言ったいたことに用は済んだだろうと判断しバイオリンを聞かせようとする。するとマミは顔を上げ決意のこもったような目で音也に訴える。
「いいえ、まだ済んでいないわ。あれでは私の気がすまないわ。改めてちゃんとお礼を言いたいの。だから言わせて」
「おまえ、あいつらに似てるな」
その顔に思わず恭介たちを思い出す。色々あったがそれを乗り越えた後の強い目。それに通ずる目をしていた。相違点を上げればどこか弱さがあることくらいか。
「美樹さんたちに?ふふ、初めて言われたわ」
かわいらしく口に手を当て軽く笑う。その笑顔は普通の人であれば一発で惚れてしまうようなかわいらしさであった。
「どうするか、どこかで話そうにもコンビニくらいしかないぞ」
「紅さんが良ければここで話してもいいかしら?」
「いいぞ、丁度ここにベンチもあるしな。あと紅呼びはやめろ堅苦しい。音也でいい」
「わかったわ。じゃあ音也さんって呼ぶわ」
堅苦しい呼び方をやめさせベンチに腰掛ける。ちゃんとバイオリンはケースへとしまってある。二人の間には和やかな雰囲気が流れ公園に生息している虫の声が静かに響く。心地よい風が肌をなで髪を揺らす。心なしかマミの髪も揺れたように見えた。
「ちゃんと礼を言いに来るとは死んでいるのに律儀なやつだ」
「あの一言じゃ伝わった気がどうしてもしなくて」
律儀にお礼を言いに来たマミに感心する音也。次狼達にも見習ってほしいと考えながらマミと談笑する。
「改めて音也さん、美樹さん達をサポートしてくれてありございます。特に美樹さんに至っては私のせいであそこまで気を病んでしまって、申し訳なく感じていたの。もう死んじゃったから手助けもできないし、なんとか呼び掛けようとしたけど幽霊だからか聞こえてなかったしでどうすればいいか焦っていたの」
「さやかが立ち直った要因のほとんどは恭介だ。礼ならあいつに言え」
「上条君にも言いたいんだけど聞こえなかったみたいで、なので上条君の分もまとめて音也さんに言っちゃいます」
恭介には伝えられなかったからとマミはまとめてお礼を言う。音也には幾度目か分からない感謝の言葉に気分が良くなる。
「それに佐倉さんのことも色々してくれたし本当に感謝してもしきれないわ。本来はきっと私がやるべき事だったのに」
少し悲しそうに話す。自分がすべきことを他人に押し付けてしまったという罪悪感からか顔が曇る。
「俺はなにかしたつもりはない。杏子の様子にちょっと違和感を覚えたから茶々をいれただけだ。あとマミもアイツの面倒を見る必要はないと思うが」
「私と佐倉さんは昔タッグを組んでたの。まぁちょっと拗れちゃってね別々になっちゃったけど。だから私が話を聞いてあげるべきだったんじゃないかって」
後悔を滲ませながら思いを吐露する。死んでしまったがゆえに何もできない悔しさがそこに宿っていた。
「そうやって思いつめる癖もそっくりだ。死んでもなおそんなんじゃあ一生成仏できんぞ」
「でも不安なんです。美樹さんは立ち直ったとはいえ気を病んじゃったし、佐倉さんとは喧嘩したままだし、私のせいでみんなに迷惑をかけてしまったから」
「だったらあいつらに会ってこい。せっかく幽霊としてこの世界にいるんだから腹割って話したほうがいいぞ。あいつらも今更幽霊なんぞで驚くこともないだろう」
思いつめているマミに恭介たちを重ねる。不可抗力で起きてしまったこともすべて自分の責任と背負い込む癖に恭介たちがフラッシュバックし少し笑う。今では頼りがいのある恭介やさやかだがちょっと前までは色々背負い込んで潰れそうになっていたような気がする。今となっては懐かしい記憶である。
「でも私のこと見ることできるかな?見えてる音也さんが結構特殊なだけの気がします」
「大丈夫だろう。こういうのは意外と何とかなるもんだ」
「そういうものなんですか?」
音也の発言に曇った顔が若干晴れる。実際悩むよりも実際に行動してみたほうが解決するだろう。だが迷いもあることは事実。会ったときになんて言われるかわからない。身勝手な不安が渦巻く。
その時マミは一人の影を見た
「あの子、もしかして......」
「どうした、俺の顔に惚れたか?」
彼女にはとても見覚えがあった。影は一人の少年の姿をしていた。小学校低から中学年くらいの背格好をしている。思わずベンチから立ち上がり駆け寄ってしまった。
「どうしたんだ急に走って。ってなんだこのガキ」
「ねぇ...君ももしかして幽霊?」
少年は透けていた、今のマミと同じように。
マミにとって罪の象徴。死んでもなお心に刻まれている救えなかったトラウマが蘇る。まだ未熟だった自分が魔女に挑み手痛い敗北をきっした時に死なせてしまったあの時の子。
「おねえさん、だれ?」
「私は...」
「おいガキ、こんな時間に何してんだ。不良になるには早すぎるぞ」
無遠慮に言葉をぶつける音也にマミは慌てふためいている。一方少年は不思議そうにこちらを見ていた。
「おにいさんもおねえさんも僕のことが見えるの?」
「その口ぶり、お前も幽霊の類か。なんだこの公園心霊スポットなのか?気味が悪いぞ」
本日二人目の幽霊ということで今いる場所が心霊スポットだと誤解する。音也たちがいる公園は断じて心霊スポットではないが幽霊に二回もエンカウントしてしまえば勘違いするのも無理はない。
音也が気味悪がっているとマミが顔を両手で覆い突然泣き始めた。
「ごめんね...私のせいで...私が弱かったばっかりに...」
「おねえさん、どうしたの?ころんじゃったの?」
「今度はなんだ、急に泣き始めて。もしかして幽霊が怖いとか言うなよ」
懺悔するように泣き言を言い始めるマミに困惑が止まらない音也と少年。思い当たる節が無いため完全に状況が理解できないでいる。
「ずっと怖かったよね...ごめんね...私が助けられなかったせいで...」
「おいガキ、こいつとなんかあったのか?」
「わからない、おねえさんとはあったことないもん」
少年に事情を聞こうにも分からないのではどうすることも出来ない。このままでは埒があかないため、気は進まないがマミに直接聞くことにした。
「泣いてばかりじゃ分からないだろう。何があったんだこいつと」
音也の声を聞いたマミは一頻り泣いた後重たい口を開く。
「この子は私が助けられずに魔女に取り込まれてしまった子なんです」
マミの告白にどう反応すればいいか分からずまた困る音也。すると少年が思い出したように喋る。
「あ、思い出した。おねえさんぼくをたすけようとしてくれた人。でも、たすけてくれなかった」
「...ごめんなさい」
少年の失望を含んだ言い方にマミは狼狽える。少年の言葉が鋭いナイフのように心に刺さる。許されるわけがない、どの面下げて少年の顔を見ればいいだろうか。後ろめたい気持ちが嗚咽交じりにまた顔に出てくる。どれだけ謝罪したってもう意味はないだろう、早く消えた方がよいのではとそんな気持ちで満たされる。
「なんで、たすけてくれなかったの?なんでぼくを置いて行っちゃったの?」
「...本当にごめんなさいぃ。ごめんなさいぃぃ......」
涙が溢れてくる。先ほど枯れるほど泣いたというのにまだ出てくる。泣きたいのは少年の方だろうというのに自分が泣いてどうするというのだろう。
マミはまた泣き出したかと思うとその場でへたり込んだ。音也は何とも言えない表情で二人を見守る。今はただ状況を静観することを選択した。
「おねえちゃん、あの時かならずたすけるって言ってたのにたすけてくれなかった」
「...うぅ...ぐす...あの、その......」
「うそつき!おねえちゃんうそつきッ!」
まだ変声する前の高い声が公園に響き渡る。死後の心の叫びが空しくマミの心を苛む。マミは今度は頭を覆い必死に言葉を紡ぎだそうと声にならない声を出す。しかしなにを言っても言い訳にしか聞こえないと思いうまく言葉が出ず苦戦する。もとより自分の弱さが招いた結果であるためにどうすることもできない。
ここで静観していた音也が口を挟む。
「おいガキ、そこまでにしとけ。こいつも反省してるんだそこまで言うことじゃない」
「でも─」
「でもじゃない、男ならひろーい心で許してやるもんだ。じゃないと来世が酷いことになるぞ」
「やだ!ひどいことやだ!」
「ならちゃんとお姉さんを許してやるんだ。それにお前は本当にお姉さんのことひどい奴だと思っているのか?命をかけてまでお前を助けようとしてくれたのに」
白熱していた少年に諭すように話す。これ以上は言わせてはいけないと音也の直感が判断したために咄嗟に言葉が出ていた。少年は納得がいってなさそうな顔をしているが音也の若干の圧に何も言えなかった。
「でもおねえちゃんがたすけてくれなかった」
「結果としてはそうなってしまったが助けてくれようとした事実は変わらないだろう。いいかガキ、重要なのはそれまでのやり方なんだ。お前には命を張ることができるのか?」
「......できないです」
「ならお姉ちゃんを責めることはできないな。あとな、こいつは死んでもなおお前のことで反省していたんだ。これ以上言ったら今度はお前が悪者になっちまうぞ。つまりだな、ちょっとくらいは許してやれってことだ」
めんどくさそうに言い放つ。ガキはやっぱりめんどくさいから関わるもんじゃないと後悔している音也であったが顔には出さず神妙な面持ちを保つ。少年はマミの様子やマミ本人にそんなに恨みはなかったこと、確かにあの時必死に頑張っていたことを思い出す。少し難しそうな顔をしながら少年は唸っている。
「おねえちゃん、ひどいこといってごめんなさい」
「君は、謝らなくていいの...もとは私のせいなんだから」
「はぁ、お前も素直にこいつの謝罪を受け取れ」
ひどく落ち込んでいるマミにいい加減飽き飽きしてきた音也はため息をつく。
「ぼくもうおこってないよ。だからなかないでおねえちゃん」
「私を許してくれるの...?」
「うん、おねえちゃんがんばってたから。それにぼくもひどいこといっちゃったから」
「うぅ...ありがとうぅ...」
少年はマミを許すことにした。音也の語りかけが功を奏したのかそれともマミの反省が少年の心を動かしたのかは定かではないがその寛容な心意気にマミは感謝してもしきれなかった。
音也は腰を落とし少年に目線を合わせる。
「お前ほんとにこのお姉ちゃんを許しているか?」
「うん。おねえちゃんもさっきごめんなさいってた。あとぼくこころひろいもん!」
「そうかよく言ったぞガキ。これで来世は俺程ではないがいい男になるぞ」
「ほんと!?やったー!」
音也の誉め言葉に少年は純粋な喜びを体全体で表現する。マミはまだ泣いているがほのかに光がさす。背負っていたものが軽くなって罪というものから少し解放されたような感覚が霊体に巡っていた。見えない涙を腕で拭い晴らした顔で少年と音也に向き直る。
「ありがとう。こんな私でも許してくれるだなんて、強いのね君。羨ましい」
「ぼくってつよいの!?」
「つよいわ。とっても」
「わーい!ぼくつよーい!」
「やっぱガキだな」
マミに褒められ公園内を駆け回って嬉しさを爆発させる。その姿にマミは軽く微笑えんでいた。
「まさか許してもらえるなんて」
「お前が真摯に向き合っていたからな、少しくらいは許してもらっても大丈夫だろう」
肩の荷が下りたような感覚で気分もどこか明るくなっていた。許されざる罪だと思っていたものがこうして許しをもらえた。この事実が気分を晴れやかにしてくれる。
「でもあの子を死なせてしまった罪はまだ背負っていくわ。これは私自身が許せないものだから」
「そうか、真面目な奴だ」
本人が許してくれたとしても自分自身が許せない。マミはまだ十字架を背負うつもりであった。
少年は未だ公園を駆け回り穏やかな雰囲気が漂い始めたころマミは音也に語り掛ける。
「そういえば音也さんって息子さんがいたんですよね」
「誰から聞いたんだそれ」
「美樹さんたちとの会話、私も聞いてたんですよ」
「そうなのか。あの時姿は見えなかったんだがな」
マミは真剣な顔をして音也に一つ問いかける。
「もし不慮の事故にあって息子さんだけが助かったらどう思いますか?」
音也の親としての立場を利用して答えを求めるように問いかけてくるマミ。
「そうだな、息子が助かったことに喜ぶな」
「自分は死んじゃってるんですよ?」
「それがなんだ。いいか?子供の命はな親の自分よりも優先されるもんなんだよ」
先ほどの晴れやかな顔からまた曇り顔へと変化する。なにか納得していないような顔で音也を見つめる。
「それは実体験か?まるで経験してますって感じの顔だな」
「...そう...です」
図星を突かれ動揺してしまう。魔法少女になったきっかけのあの日がフラッシュバックする。楽しいはずの家族との買い物の帰り道、マミの日常が音を立てて崩れ去った運命の日が蘇る。同時に寂しさが湧き上がる。それを誤魔化すため、そしてどうしても音也に語りたくなってしまったために口を開く。
「私事故で両親を亡くしてるんです。学校から帰ってきて久しぶりに家族みんなでお買い物に出かけたんです。その帰り道で事故にあっちゃって私だけ助かったんです」
「それはよかったじゃないか。ま、今は死んでるけどな」
「今は置いといてください」
「それでどうしたんだ一体」
寂しそうに語る。そこには大人びた雰囲気は無く親を求める子供のような幼い雰囲気であった。
「その時にキュゥべえが願いを叶える代わりに魔法少女になってくれって言ってきたんです。私は迷うこと無く生きたいって願いました。でも今は後悔してるんです。」
「なぜだ?生き残れたんだから万々歳だろう」
マミの後悔に音也は首をかしげる。せっかく生き残ったというのに何を後悔することがあったのかと疑問に感じていた。
「なぜあの時に両親を生き返らせる願いにしなかったのか、私も一緒に死んでおけば良かった、私だけ生きても意味がないって」
捻り出る後悔を語る。生前から抱いていたものを目の前にただ吐露する。
「私は親不孝者です。お母さんもお父さんも生き返らせてって願えば家族団らんの時間がもっと続いていた。私も一緒に死んでいれば寂しい思いもしなかった」
語りだせばもう止まらなくなっていた。もうなにがなんだかマミ自身も分からなくなっていた。
「それは違うな。お前の両親はお前が生き残ったことに文句を言うような奴じゃないだろ。娘が生き残ったのなら親としてはそれが一番だ。それこそお前が死んだらそれが一番の親不孝だ。親にとっちゃまだまだ人生を楽しんでもらいたいだろうしなむしろ死なれたら困るってもんだろ。あと、願いを変えたとてあの白いののことだ碌なことにならんぞ」
慰めはせず音也のありのままの気持ちをきっぱりと示す。息子を持つ親としての意見をぶつける。思い出すのは最後に一緒に戦った記憶、未来を生きる息子の姿に嬉しくなった感覚がある。自分の命なんてどうなってもよかった気がした。息子の成長がただ喜ばしかった。
「じゃあもう死んじゃった私は親不孝者ですね...」
「それも違うだろ。お前は魔法少女として立派にやったんだろ?だったらいいじゃないか。俺だったら人を守って死んだのなら渡を褒めちぎる自信しかないぞ。褒めなかったらそいつは親じゃない。お前の性格を見るに親御さんも良い性格してそうだしな。心配することはないだろ」
「そう...なんですか?」
ネガティブなマミに言葉をかける。そこで音也は思いついたかのように声を上げる。
「そうだ、お前死んでるんなら親御さんにも会えるだろ。あの世で感動の再会ってやつだ」
「それが、会えないんです。姿も気配も感じないんです」
衝撃の言葉に思わず言葉を詰まらせる。なんて声をかければいいかさすがの音也もわからなかった。なぜ会えないのか必死に頭をまわす。
「これも、私が身勝手な人だから...」
「あぁー!もうめんどくさい!いいか、お前は今幽霊として現世にいる。でも親御さんは成仏してあの世にいるかもしれないだろ!そんなにネガティブになっていたら親御さん悲しむぞ!」
「ならどうすれば...」
「んなもん自分で考えるんだ」
何を言ってもマイナスに持っていくマミにいい加減呆れてきた音也は乱暴に言い放つ。数々の女性をナンパしてきた音也でもこれには疲れが多少目に見える形に表れていた。
「そうですよね。聞いてばかりじゃダメですよね」
「そうだ、自分で考えるのも大事だぞ。...まだなんか言いたそうな顔しているな。この際全部ぶちまけろ」
「...じゃあ遠慮なく言わせてもらいますね」
まだ本心を抱え込んでいそうな顔に呆れながらぶちまけることを推奨する。そう言われマミは深呼吸したかと思うと音也の胸に顔をうずめた。
「おいやめろ、俺にそういう趣味はないんだいくら幽霊といえども許容できんぞ」
「お母さんッ!お父さんッ!会いたいよ!私魔法少女としていっぱい頑張ったんだよ!うぅ...会いたいよぉ...ねぇ、お母さん...お父さん...」
「はぁ、泣きたいなら泣け。今は胸を貸してやるから。生前もずっと寂しかったんだろ。抱え込んでたら体に毒だからな」
いきなり胸に突撃され困惑していたが思いのたけを聞き諦めて胸を貸すことにした。親を亡くし寂しい思いを長い間我慢してきた。まどかたちの前でも先輩としての姿を無理して維持していた。今までの本心が音也の言葉で決壊し止まらなくなっていた。しばらくぶちまけた後音也から離れる。
「すいません、お恥ずかしいところを」
「満足したか?」
「はい、ありがとうございます。おかげですっきりしました」
幼い笑顔で晴れやかな声を響かせながら言う。無理してきたままで生前を過ごした彼女にとってこの瞬間だけは取り繕うことなくありのままでいれた。
「そいつはよかったな。そして今推測したがきっと現世にいるってことはまだ未練があるってことだろう。試しにさやか達に会ってこい。意外とスッキリするかもしれんぞ」
「そうですね、私も彼女たちと話したいですし」
話が和やかに進んできたところで駆け回ってきた少年が音也たちのもとに戻る。
「そうだガキ、お前もなにかやりたいことはあったりするのか?」
「んー、ままにあいたいかな」
「そうか、ならこのお姉さんが手伝ってくれるぞよかったなぁ」
「えっちょっとそんなこと言ってませんけど!」
「良いじゃないか、死なせたことを反省してるならちょっとくらいつき合ってやれ」
「そうですね、これですこしでも罪滅ぼしになればいいですけど」
「おねえさんもてつだってくれるの!?やったー!」
音也の無茶ぶりに戸惑うマミであったが死なせたという事実があるため手伝うことにした。それに少年はまた体全体で喜びを表していた。
「そういえばふと気になったんですけど音也さんて後悔とかありますか?私だけ話すのはなんだか不公平な気がします」
「お前が勝手にしゃべったんだろ。たく、良いだろう教えてやる」
突然の問いにまた困惑するが不公平といわれ仕方なく教えることにした。
「後悔か、強いて言うなら息子の成長をこの目で見れなかったことだな。子供から大人への成長を」
「息子さんの成長ですか...それは残念ですね」
「いや、あいつの姿を見れただけでも満足ってもんだ」
儚げに語る音也の姿はどこか寂しそうであった。調子のよい享楽的な態度はなりを潜め噛みしめるように息子の姿を思い出していた。シリアスな空気が流れ始めたころそれを断ち切るように音也が声を発する。
「よし今夜は特別にお前らのためにコンサートを開催してやる。この音也様の天才的でエキサイティングで感動的な演奏を無料で聞けるんだ感謝しろよ」
「いきなりですね、でもありがとうございます」
「なにかわからないけどたのしみー!」
こうして今宵たった二人のためだけのコンサートが幕を開けるのだった。
ここまで読んでくださって大変感謝御礼申し上げます。相変わらずキャラがおかしなことになっててやばい。やりたいこと詰め込みすぎてとっちらかってしまった。少年とかほぼオリジナルで出したから解釈違い起きてるだろうけど許してくだせぇ