ムーンデュエラーズから2か月後。
新たな火種が彼らに襲いかかる……!

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悪夢の特機、降臨

### 第1章:嵐の前兆

『封印戦争』、そして『2OP紛争』――世に言う『ムーン・デュエラーズ』の激闘から、僅か二か月。

月面に刻まれた破滅の痕跡も生々しい中、地球連邦政府および地球連邦軍は、異星人や古代文明の脅威から地球圏を再建すべく、多大なるリソースを復興作業へと注ぎ込んでいた。しかし、巨大な外敵という共通の脅威が去った後に待っているのは、いつの時代も人間同士の醜い権力闘争と理念の対立である。

過度の軍備増強と度重なる地球規模の治安維持行動は、連邦政府に反発する自治都市群や過激派組織の過熱を招いていた。その中でも特に過激な台頭を見せ始めていたのが、旧ノイエ DCの残留勢力や旧インスペクター潜伏派の残党、さらには地球至上主義に反発する植民都市連合の極右組織が手を結んだ巨大反連邦勢力――『反連邦主義同盟(アンチ・フェデレーション・アライアンス=AFA)』であった。

彼らは連邦軍の目が外宇宙や異星遺物の処理に向いている隙を突き、各地の地下プラントや極秘研究所を占拠。地球連邦軍が誇る最強のPT(パーソナル・トルーパー)および特機(スーパーロボット)の基礎設計データを密かに強奪・集積していたのである。

「――聞こえるか、リュウセイ! 遊んでる場合じゃないわよ!」

通信から響いたのは、凛とした、しかしどこか苛立ちを孕んだアヤ・コバヤシ大尉の声だった。

「わかってるって、アヤ! 遊んでなんかねえよ! R-1の関節駆動系のチューン、あと少しで納得いくセッティングになるんだ!」

地球連邦軍極東支部・伊豆基地の整備ドック。

コクピットのハッチを開け、汗拭きタオルを首にかけたリュウセイ・ダテは、工具を片手に叫び返した。彼の視線の先には、数々の死線をともに潜り抜けてきた愛機『R-1』が、重厚なメタルグレーの整備用ドックに鎮座している。

「まったく、君のメカニック魂には頭が下がるがな、リュウセイ」

あきれたように肩をすくめながら現れたのは、ライ……ならぬ『R-2パワード』のパイロット、ライディース・F・ブランシュタインであった。洗練された身のこなしでタラップを上がってくる。

「ですが、アヤ大尉の言う通りですよ、リュウセイ警長」

続いて顔を出したのは、R-GUNパワードのパイロットであり、強力な念動術者であるヴィレッタ……そして、念動者としての訓練を終えSRXチームの精神的支柱となって久しいマイ・コバヤシだった。

「アフリカ戦線および南米プラント群でのAFAの活発化……連邦軍上部もいよいよ無視できなくなってきた。統合参謀本部からの直接指令だ。僕たちSRXチーム、およびカイ・キタムラ少佐率いるATXチームに、極東管区第87独立特殊任務部隊としての即時出撃要請が出ている」

ライが差し出したデータ端末を覗き込み、リュウセイは顔をしかめた。

「AFA……反連邦主義同盟か。懲りねえ連中だな。インスペクターだのヴォルクルスだのゾヴォークだの、外からやばい奴らが散々攻めてきたってのに、まだ人類同士でドンパチやろうってのかよ」

「だからこそ、だ」

いつの間にかドックのタラップ下に立っていたのは、叩き上げの熟練操縦士であり、現在のATXチームの隊長を務めるカイ・キタムラ少佐だった。その鋭い眼光と鍛え上げられた肉体は、長年の死線を物語っている。

「外敵の脅威が去った今だからこそ、溜め込まれた不満が一気に噴出している。連邦の強権的な統治に限界が来ているのも事実だが……奴らのやり方はただの破壊と略奪だ。見過ごすわけにはいかん」

「カイ少佐!」

リュウセイは即座に直立不動の姿勢をとった。

「ATXチームは既に『ハガネ』へ艦載完了している。ゼンガー少佐のグルンガスト零式、キョウスケ達のアルトアイゼン・リーゼ、ライン・ヴァイスリッターもすでに待機状態だ。SRXチーム、直ちに出撃準備に入れ。目標は南太平洋・旧南鳥島沖。AFAの大規模な機動艦隊が、連邦軍の海上補給プラントを強襲した」

「了解! 行くぞ、ライ、マイ、アヤ! Rシリーズ、出撃だ!」

リュウセイの威勢の良い叫びが、ドック内に響き渡った。

しかし、この時のリュウセイをはじめとする誰もが、まだ知る由もなかった。

今回の相手が、単なる旧式兵器の掻き集め集団などではないことを。

自分たちがこれまで積み上げてきた絶対的な破壊力と「最強」の自負が、粉々に打ち砕かれることになるという恐怖の真実を――。

### 第2章:南太平洋の暗雲

南太平洋、水深数千メートルの海洋上に浮かぶ連邦軍巨大海上精錬プラント『ネプチューン8』。

数時間前まで青い海と空に包まれていたその海域は、今や黒煙と炎、そして赤黒い海水に染まっていた。

「ハハハハハ! 見ろ、連邦の豚どもの鉄くずを! これが我らAFAの威光だ!」

巨大なホバー戦艦の艦橋で、AFA高圧派の司令官ガルシアは下劣な笑いを上げていた。海面上には、撃沈された連邦軍の護衛駆逐艦や、機能停止した大量のゲシュペンストMk-II、量産型ヒュッケバインの残骸が漂っている。

「司令、連邦軍の増援が接近! 万能戦闘母艦『ハガネ』です! 急速で本海域へ侵入中!」

「来たか……連邦の『狗(いぬ)』どもめ。SRXチームにATXチーム……狙い通りの大物が釣れたではないか」

ガルシアは残忍な笑みを深めると、艦橋の通信回線を切り替え、特別格納庫へ向けて呼びかけた。

「聞こえるか、『切り札』の搭乗員ども! 出撃の時だ。連邦軍が誇る『特機』の系譜、その傲慢な鼻柱を挫いてやれ!」

格納庫の暗闇の中で、一対の不気味な赤いツインアイが怪しく発光した。

全高50メートルを超える圧倒的な巨躯。重厚な装甲と、異様な圧迫感を放つシルエット。

連邦軍が誇る最強の特機『グルンガスト』の初期設計データを強奪し、独自の狂気と超技術によって歪めて再構築された悪魔の機体。

――特機『ムジューナ・リバリオン』。

その左腕には、あらゆる物理攻撃とエネルギー攻撃を破砕・反発させるために生み出された悪魔の防具『反斬艦刀シールド』が鈍い光を放っている。そして右手には、かつて連邦軍の極秘計画『SRX計画』の核とされた超高エネルギー物質「トロニウム」を強奪・組み込んだ超大型兵装『トロニウムランス』が握られていた。

「フフフ……グルンガストの偽物だと? 笑わせるな。これこそが、連邦の支配を打ち砕く真の神だ……!」

パイロットであるAFAのエース、ヴォルク・ヴァルザーは、狂気に満ちた笑みを浮かべながらスロットルを押し込んだ。

爆音とともに、超大型特機ムジューナ・リバリオンが海面へと飛び出していく。その巨体が引き起こす波浪だけで、周囲の連邦軍小型艇が次々と転覆していった。

### 第3章:鋼の狼たちの激突

「――海面上の敵反応、多数! AFAの機動部隊です! さらに……ッ! 中央に未知の巨大特機反応を検知! パターン解析……該当データなし! ですが、フレーム波形がグルンガスト・シリーズと78%一致しています!」

『ハガネ』の艦橋で、オペレーターの悲鳴に近い報告が響いた。

「グルンガストだと……!? データが流出していたというのか!」

テツヤ・オノデラ大佐は拳を握り締め、正面モニターを睨みつける。

画面に映し出されたのは、黒と深紅の禍々しいカラーリングに身を包んだ巨体――ムジューナ・リバリオンの姿であった。

「グルンガストのコピー機だと……? ふざけたマネを!」

ハガネのカタパルトから、疾風のごとく飛び出したのは、ゼンガー・ザンボルト少佐の駆る『グルンガスト零式』であった。

「全機、出撃! ハガネは後方からの砲撃支援を実施せよ!」

カイ・キタムラ少佐の量産型ゲシュペンストMk-II改を先頭に、キョウスケ・ナンの『アルトアイゼン・リーゼ』、エクセレン・ブロウニングの『ライン・ヴァイスリッター』が次々と大空へ躍り出る。

「へえ……豪勢な出迎えじゃない。でも、あの大きいやつ、なんだか嫌な予感がするわねぇ」

ライン・ヴァイスリッターのコクピットで、エクセレンがいつもの軽い口調の中に警戒を滲ませる。

「……油断するな、エクセレン。あの威圧感……只者ではない」

アルトアイゼン・リーゼのマルチ・トロンニウム・リボルバーの装填を確認しながら、キョウスケが低く呟いた。

そして、上空から滑空するように現れたのは、SRXチームの面々である。

「アヤ! ライ! マイ! 一気に叩くぞ! あのデカブツを片付けりゃ、敵の士気はガタ落ちだ!」

R-1のコクピットで、リュウセイがブースターを全開にする。

「待ちなさい、リュウセイ! 敵機のエネルギー反応が異常よ! 胸部と右手の武器から……嘘でしょ!? トロニウムの波動が感知されるわ!」

アヤが悲鳴を上げた。

「何だと!? トロニウムだと!?」

ライが息を呑む。

「バカな……トロニウムは連邦軍の最重要機密物質だぞ! なぜAFAのような残党組織が所有しているんだ!?」

「驚いている暇はないぞ、来る!」

カイの叫びと同時に、ムジューナ・リバリオンの巨体が凄まじいスピードで海上を滑走し、ジャンプした。50メートルを超える超重量級特機とは思えぬ、異常なまでの機動性。

「ハハハハ! 連邦の狗ども! 我らが『ムジューナ・リバリオン』の威光の前に平伏せよ!」

ヴォルクの狂声が広域通信に乗って響き渡る。

ムジューナ・リバリオンが右手に掲げた巨大な槍――『トロニウムランス』が怪しく輝いた。

「喰らえ! ランス・スラスト!」

爆風とともに突き出された超大型の槍。その先から放たれる圧倒的な質量とプラズマの衝撃波が、前衛にいた連邦軍の量産機部隊を一瞬で蒸発させた。

「なっ……何て威力だ!?」

リュウセイが叫ぶ。

「生意気な小虫どもが! まずはその薄汚いPTどもから片付けてくれる!」

ムジューナ・リバリオンはトロニウムランスを旋回させ、一直線にキョウスケのアルトアイゼン・リーゼへと肉薄する。

「速い……! だが、懐に入れば――ッ!」

キョウスケは一瞬の躊躇もなく、アルトアイゼン・リーゼのスラスターを逆噴射。ムジューナ・リバリオンの懐深くへと滑り込み、右腕の『リボルビング・バンカー』を零距離で突き突き突きつけた。

「落ちろッ!」

どんな装甲も撃ち貫く。通常のPTならば跡形もなく粉砕され、特機であっても装甲が肉薄される圧倒的な至近距離火力。

ズドォォォォォンッ!!

激しい爆煙と光が海面を覆った。

「やったの!?」

エクセレンが叫ぶ。

しかし――爆煙の中から現れたのは、傷一つついていないムジューナ・リバリオンの姿であった。

「……何……!?」

キョウスケの目が驚愕に見開かれる。

ムジューナ・リバリオンの左腕に装着された巨大な盾――『反斬艦刀シールド』。その表面に、淡く揺らめく半球状の不可視の歪み……極大密度のベクトル斥力フィールドが展開されていたのだ。

バンカーの一撃は、シールドの表面に触れた瞬間、すべての運動エネルギーを逆方向へと反発・分散され、空しく弾き返されていた。

「ククク……愚か者め! この『反斬艦刀シールド』は、あらゆる物理的打撃、衝撃波、熱エネルギーを完全に相殺・反発する絶対の盾! 貴様らの泥臭い実体攻撃など、ハエ叩きにもならん!」

「ぐッ……!?」

反発した衝撃波の余波を受け、アルトアイゼン・リーゼが大きく体勢を崩す。

「キョウスケ!」

エクセレンのライン・ヴァイスリッターが、ハルバート・ランチャーから極太のEフィールド粒子ビームを連射する。しかし、それらすべてのビームもまた、ムジューナ・リバリオンがシールドをかざすだけで、光のチリとなって霧散してしまった。

「ビームも物理も効かないなんて……嘘でしょ!? どんなバリアよそれ!」

「退け、キョウスケ! エクセレン!」

重厚な声とともに、海面を叩き割るように現れたのは、グルンガスト零式――ゼンガー・ザンボルトであった。

「我が斬艦刀の前に、断てぬものなし! 悪霊退散……! チェストーーーッ!!」

グルンガスト零式の背から引き抜かれた超巨大な実体剣『斬艦刀』。超振動する極大の刃が、大気を引き裂き、ムジューナ・リバリオンの脳天めがけて振り下ろされる。

ゼンガーの気合と魂が込められた一撃。これまで数々の巨大要塞や宇宙戦艦、異星人の超兵器を一刀両断にしてきた、まさに「最強の矛」。

だが――。

ガィィィィィィィィィィンッ!!!!

南太平洋の海原に、かつて誰も聞いたことがないような、恐ろしい金属の悲鳴が轟き渡った。

「な……なに……っ!?」

ゼンガーの眼光が凍り付く。

グルンガスト零式の両腕に、凄まじい反動と衝撃が伝わる。

零式の絶対的な一撃を受け止めたのは、ムジューナ・リバリオンの左腕――『反斬艦刀シールド』であった。

シールドの表面から放たれる超高密度ベクトル斥力が、斬艦刀の持つ分子振動波と超極大の運動エネルギーを完全に干渉・相殺。そればかりか、受け止めたエネルギーをそのまま『逆方向』へと倍加して反発させたのだ。

「ぐああぁぁぁぁっ!?」

バリバリバリッ! と凄まじいスパークが走り、グルンガスト零式の巨体が、まるで巨大なハンマーで殴り返されたかのように激しく吹き飛んだ。零式の両腕の駆動関節から油圧とオイルが吹き出し、装甲が激しく破砕される。

「ゼンガー少佐ーッ!?」

リュウセイが金切り声を上げた。

「バカな……あのゼンガー少佐の斬艦刀が……弾かれただと……!?」

ライの顔から血の気が引いていく。

「ハーッハッハッハ! 見ろ! これぞ我らが対連邦用決戦兵器『ムジューナ・リバリオン』の絶対防御! 連邦の誇る『斬艦刀』とやらも、我が反斬艦刀シールドの前にはただの折れ釘同然よ!」

ヴォルクの嘲笑が、全波通信を通じてハガネ艦内、そして味方全機に響き渡った。

「斬艦刀を防ぐ……? そんな馬鹿な兵器が存在してたまるか!」

リュウセイの感情が爆発する。

「アヤ! ライ! マイ! パターンフォーメーションだ! 合体するぞ! SRXで一気に踏み潰す!」

「待ちなさい、リュウセイ! 敵のエネルギー反応がまだ上がっているわ! 危険よ!」

アヤの制止も聞かず、リュウセイはR-1のコントロールノブを掴み直した。

「やってみなきゃわかんねえだろ! 変形だ! ヴァリアブル・フォーメーション!!」

### 第4章:崩れ去る絶対領域

リュウセイの叫びとともに、R-1、R-2パワード、R-3パワードが空中へ跳躍。トロニウム・エンジンの駆動音が極限まで高まり、三機のPTが複雑な変形・合体機構を開始する。

「天下無敵の超人機士……SRX!! ここに参上ッ!!」

極東支部が誇る最強の決戦兵器、SRXの巨体が南太平洋の上空に君臨した。その圧倒的な存在感と威容に、AFAの量産機群が一瞬怯む。

「SRXが出たか! だがそれも計算通りよ!」

ヴォルクは不敵に笑うと、ムジューナ・リバリオンのコクピット内のスイッチを押し込んだ。

『TRONIUM ENGINE OVERDRIVE――SET』

機体各部の放熱ハッチが開放され、不気味な紫色の光がムジューナ・リバリオンの装甲の隙間から溢れ出す。

「何だ……あのエネルギーは!? トロニウム・エンジンが……暴走しているのか!?」

ライが叫ぶ。

「いいえ……暴走じゃない! 出力を力ずくで極限まで引き出しているんだわ! なんて危険な出力を……!」

アヤの額に冷や汗が流れる。

「リュウセイ、気を付けて! あのランス……ただの槍じゃない!」

マイの念動波が、強烈な危機感を察知して叫んだ。

「関係ねえ! どんな盾だろうが、SRXの火力で粉砕してやるぜ! ザイン・バスターッ!!」

SRXの両拳から放たれる極大の念動集積光線。幾重にも束ねられた破壊の光波が、ムジューナ・リバリオンめがけて一直線に突き進む。

「無駄だと言ったはずだ!」

ムジューナ・リバリオンは反斬艦刀シールドを前面に押し出した。

ザイン・バスターの極大エネルギーがシールドに激突した瞬間――ドォン! という不気味な音とともに、すべての光線が拡散し、まるで鏡に反射されたかのように天へと弾き返された。

「なっ……ザイン・バスターまで跳ね返されただと!?」

リュウセイが目を見開く。

「こちらの番だ……! トロニウムランス、最大出力!」

ムジューナ・リバリオンが右手の超大型ランスを前方に構える。ランスの尖端が四方に展開し、内部に隠された超高出力砲身――『トロニウムバスターキャノン』が露出した。

「喰らうがいい! 連邦の科学の結晶に滅ぼされる気分はどうだ! トロニウムバスターキャノン……発射ァァァッ!!」

ズガァァァァァァァァァァァンッッ!!!!

極彩色の光柱が、大気を蒸発させながら放たれた。

それは、かつてSRXが誇ったドミニオン・バスターやハイパー・トロニウム・バスターキャノンにも匹敵する、悪夢のような破壊の奔流であった。

「しまっ――回避が間に合わない! ライ、バリアを!」

リュウセイが叫ぶ。

「全出力! 念動フィールド、最大!!」

ライとアヤ、マイの念動力が一気に集中され、SRXの全面に強力な念動フィールドが展開される。

しかし――。

バリバリバリバリッ!!!!!

「グアアアアアアアッ!?」

トロニウムバスターキャノンの絶大な威力の前には、最強を誇る念動フィールドすらも数秒と持たなかった。ガラスが割れるような凄まじい音とともにバリアが粉砕され、極大のエネルギー波がSRXの右半身を直撃する。

「システムダウン! R-2のフレームが限界です! 合体維持不能!」

ライの悲叫が響く。

「きゃあああああっ!」

アヤとマイの悲鳴が重なる。

右腕と右脚の装甲が融解・破砕されたSRXは、空中で合体を維持することができなくなり、強制解除。R-1、R-2パワード、R-3パワードの三機が、煙を噴き上げながら海面へと落下していった。

「リュウセイ! アヤ! ライ!」

キョウスケがアルトアイゼン・リーゼを駆り、海面すれすれでR-1を受け止める。ライン・ヴァイスリッターがR-2とR-3を辛うじて回収した。

「クソッ……! クソがああああっ!」

損傷したR-1のコクピットで、リュウセイは悔しさに叩きつけた拳から血を流していた。

「俺たちの……SRXが……一撃で……!?」

### 第5章:絶望の包囲網

戦況は完全に決したかに見えた。

絶対的な攻撃力と防御力を兼ね備えた『ムジューナ・リバリオン』の圧倒的な存在感の前に、連邦軍の誇る精鋭部隊は壊滅的な打撃を受けていた。

グルンガスト零式は両腕を大破し、駆動系が麻痺。

SRXチームは合体を解除され、各機ともトロニウムバスターキャノンの余波で戦闘不能寸前。

アルトアイゼン・リーゼとライン・ヴァイスリッターも、弾薬を使い果たし、シールドの絶対防御を突破する術を持たない。

「ハハハハハ! どうした連邦の英雄ども! 自慢の特機も、自慢の最強兵器も、このムジューナ・リバリオンの前には無力! 貴様らの時代は終わったのだ!」

ヴォルクの勝利宣言とともに、AFAの量産型PT部隊(強奪されたゲシュペンストやカスタム機)が、傷ついたハガネとATX・SRXチームを包囲していく。

「全機……投降せよ。さもなくば、この海域ごと蒸発させてやる」

ムジューナ・リバリオンがゆっくりとトロニウムランスを掲げ、ハガネの艦首へと砲口を向けた。トロニウムバスターキャノンの再充電が始まっており、紫色の光が不気味に明滅している。

「くっ……ここまでなのか……」

テツヤ艦長が歯を食いしばる。ハガネの主砲・トロニウムバスターも、先ほどの戦闘で冷却系を損傷しており、すぐには撃てない。

誰もが死と敗北を覚悟したその時――。

「全機、慌てるな。私の指示に従え」

静かだが、鋼のように固い声が通信回線を回った。

カイ・キタムラ少佐である。

カイの量産型ゲシュペンストMk-II改は、機首をムジューナ・リバリオンではなく、海面上に広がる『ネプチューン8』の廃プラントの煙幕発生装置と燃料タンク群に向けていた。

「カイ少佐!? 一体何を……!?」

キョウスケが問う。

「奴の機体……ムジューナ・リバリオンの弱点はすでに露呈している」

カイの声は冷静そのものだった。

「何……!? 弱点だと!?」

ヴォルクが通信越しに不快そうに声を荒らげる。

「そうだ。トロニウムバスターキャノンの威力は絶大だが、発射後のエネルギー再充填と冷却に、最低でも45秒のタイムラグが生じている。さらに……あの『反斬艦刀シールド』だ」

カイは鋭く指摘した。

「あらゆる攻撃を反発させる凄まじいバリアだが……ベクトル斥力を全開にしている間、奴の機体は『自機のセンサー領域』まで斥力で歪めている。つまり、シールドを完全に展開している瞬間、奴の全周索敵能力は極度に低下しているはずだ!」

「な……なに……!?」

ヴォルクの顔色が変わる。

「ゼンガー! キョウスケ! エクセレン! 残存エネルギーをすべてスラスターに回せ! 煙幕を展開し、全速力で離脱する!」

カイは叫ぶと同時に、ゲシュペンストのプラズマステークとスプリットミサイルを、ネプチューン8の燃料タンク群へと全弾叩き込んだ!

ドドドォォォォォンッ!!!!

海面上で巨大な誘爆が発生。ネプチューン8の重油と化学物質が一気に気化し、南太平洋の空を覆いつくすほどの超巨大な黒煙とノイズ物質(ECM煙幕)が爆発的に広がる。

「うおっ!? 視界が……レーダーが映らん!?」

AFAのパイロットたちが混乱に陥る。

「おのれ、小細工をぉっ!」

怒り狂ったヴォルクは、勘でトロニウムバスターキャノンを乱射した。しかし、重度のノイズと斥力フィールドによる自機の索敵低下が災いし、極大の光柱は空しく海面を穿ち、巨大な水柱を上げるだけに終わった。

「ハガネ、急速潜航および最大戦速で後退! PT部隊を回収せよ!」

テツヤ艦長の迅速な判断により、ハガネは煙幕に乗じて退避運動を開始。傷ついたRシリーズや零式、アルトアイゼンを格納庫へ滑り込ませることに成功した。

「逃がすかぁぁぁっ!」

ヴォルクが追撃しようとムジューナ・リバリオンを前進させかけたその瞬間――。

「そこまでだ、ヴォルク!」

AFAの旗艦ガルシアから制止が入った。

「深追いは無用だ。連邦軍の主力であるSRXチームとATXチームを叩き潰し、逃亡させた。これで十分な戦果だ。我らの『ムジューナ・リバリオン』の絶対的性能は、地球全土へ証明されたのだからな」

ヴォルクは不満そうにチッ、と舌打ちをした。

「……フン、命拾いしたな、連邦の狗ども。だが次は無いぞ。貴様らのどんな剣も、どんな砲も、このムジューナ・リバリオンを打ち破ることは不可能なのだからな……!」

黒煙の向こうへ消えていくハガネの影を見送りながら、ヴォルクは高らかに笑い声を上げたのであった。

### 第6章:敗北の傷痕と決意(後半への引き)

数時間後――。

命からがらAFAの包囲網を脱出した万能戦闘母艦『ハガネ』は、極東支部のドックへと傷ついた巨体を横たえていた。

艦内の医務室および整備ドックは、重苦しい静破と悲壮感に包まれていた。

「……申し訳……ありません……」

ベッドの上で、痛々しく包帯を巻かれたアヤが、小さな声で呟く。

「私の……私の念動フィールドが……持ちこたえられなかったばかりに……」

「アヤのせいじゃない……」

隣のベッドで、腕を吊ったマイが首を振る。

「あの兵器の力……異常だった……。トロニウムの力が、あんな風に使われるなんて……」

整備ドックでは、大破した機体群の修理が不休で行われていた。

グルンガスト零式のコクピットから降りてきたゼンガー・ザンボルトは、自分の両拳を見つめていた。その頑なな背中からは、かつてないほどの無念さと暗い怒りが滲み出ている。

「我が斬艦刀が……負けた……」

ゼンガーの喉から、絞り出すような声が漏れる。

「断ち切れぬものがあった……。己の腕の未熟さ……いや、あれは断ち切るための『理(ことわり)』を超えた存在……」

「ゼンガー少佐……」

寄り添うキョウスケもまた、アルトアイゼン・リーゼの破砕されたアヴァランチ・クレイモアを見つめ、無言で唇を噛み締めていた。

どんな装甲も撃ち破ってきた突撃の象徴が、手も足も出ずに跳ね返されたのだ。その衝撃は計り知れない。

そして――整備ドックの隅で、一人静かに佇んでいたのはリュウセイ・ダテであった。

大破し、内部フレームが露出したR-1の機体を見上げるリュウセイの瞳には、かつてないほどの激しい葛藤と焦燥が渦巻いていた。

「最強の矛と、最強の盾……かよ」

リュウセイの呟きは、誰もいないドックの金属壁に空しく響いた。

「俺たちが今まで積み上げてきたものは何だったんだ……? SRXのパワーも、ゼンガー少佐の斬艦刀も、キョウスケの突撃も……あいつ一機に全部否定された……」

「弱音を吐くか、リュウセイ」

ふと後ろから声がした。

カイ・キタムラ少佐が、パイロットスーツのジャケットを羽織りながら歩いてくる。その表情には、どんな絶望的な状況でも折れない、熟練の戦士としての覚悟が宿っていた。

「カイ少佐……。だって、あんなの反則じゃないですか! どんな攻撃も跳ね返すシールドに、SRX以上のトロニウム砲だぞ!? 勝てるわけねえよ……!」

「勝てない、で終わらせるつもりか?」

カイの鋭い眼光が、リュウセイを射抜いた。

「敵は我々の技術を盗み、我々の絶対的な強み(斬艦刀とトロニウム)を研究し尽くして『アンチ』として作り上げた。ならば……我々はそれを上回るしかない。敗北の中にしか、次の勝利の鍵はないのだ」

「次の……勝利の鍵……?」

カイは頷き、胸ポケットから一枚のデータディスクを取り出した。

「ハガネの戦闘データから、ムジューナ・リバリオンの『反斬艦刀シールド』と『トロニウムランス』の稼働波動パターンを解析した。敵の斥力フィールドは完全無欠に見えるが……物理法則を超える兵器など存在しない。必ず干渉の『隙』と『波調の崩れ』が存在する」

カイの言葉に、リュウセイの瞳の中に小さな火が点った。

「連邦軍本部、およびマオ・インダストリー、テスラ・ライヒ研究所にはすでに緊急要請を出した。これより、全機体の緊急改修および、対ムジューナ・リバリオン用『極大突破戦術』の立案に入る」

カイはリュウセイの肩を強く叩いた。

「奴らの企みを阻止し、奪われた技術と誇りを取り戻すぞ。リュウセイ、立ち上がれ。最強の矛と盾を破れるのは――お前たちの『諦めない心』だけだ」

「……ッ!」

リュウセイは、大きく息を吸い込み、強く、強く拳を握り締めた。

「ああ……! わかってるよ、カイ少佐! あんな偽物のデカブツに、俺たちの想いが負けてたまるかよ!」

リュウセイの瞳に、再び熱い闘志の炎が蘇る。

「ゼンガー少佐の斬艦刀も、キョウスケの撃貫も、俺たちのSRXも……絶対にあいつをぶち破ってやる! 待ってろよ、ムジューナ・リバリオン!!」

南太平洋の敗北は、終わりの始まりではない。

反連邦主義同盟が誇る「最強の切り札」を粉砕するための、新たなる限界突破(オーバー・ドライブ)への序曲に過ぎなかったのだ――。

### 第7章:反撃の狼煙

伊豆基地の地下深くに位置する特機開発第1ドック。

重苦しい金属臭と、溶接の閃光が眩しく交錯する中、一機の漆黒の巨躯が静かに、しかし圧倒的な圧迫感を伴って佇んでいた。

――武神装攻『ダイゼンガー』。

前戦で大破したグルンガスト零式に代わり、ゼンガー・ザンボルト少佐の新たな「剣」として調整が進められていたこの機体も、前回の激滅で負った傷の修復と、対ムジューナ・リバリオン戦を見据えたフレームの限界補強を完了させていた。

「……どうだ、ゼンガー。ダイゼンガーの出力伝達系および、新型駆動系回路のフィードバックは」

ドックのキャットウォークから問いかけたのは、黒い帽子とサングラス、そして漆黒のパイロットスーツに身を包んだ男――レーツェル・シュメイカーであった。その傍らには、愛機『アウセンザイター』が、ダイゼンガーに寄り添うように格納されている。

「問題ない、レーツェル」

コクピットから降り立ったゼンガー・ザンボルトは、己の巨大な拳を見つめながら、重厚な声で答えた。

「機体は完璧だ。マオ・インダストリーとテスラ・ライヒ研究所の英知、そして……貴殿の協力に感謝する」

「礼には及ばんよ。連邦の混乱に乗じ、奪った技術で力の大道を歪める者たち……彼らに『食通』としての……いや、誇りある武士(もののふ)としての流儀を教えてやらねばならんからな」

レーツェルが不敵に微笑む。そこへ、賑やかな足音とともに駆け込んできたのは、風の魔装機神サイバスターのパイロット、マサキ・アンドーであった。肩には使い魔のクロとシロが乗っている。

「へっ、気取った言い方しやがって! 要するに、あのデカブツの勝手な真似が気に食わねえってことだろ!」

「マサキ! アンティラス隊の合流、助かったぞ!」

R-1の最終調整を終えたリュウセイ・ダテが、ライ、アヤ、マイとともに駆け寄ってくる。

「おう、リュウセイ! ラ・ギアスから戻ってみれば、なにやら反連邦主義の残党どもが『最強の矛と盾』だなんて調子に乗ってるってじゃねえか。ヴォルクルス教団や巨人族に比べりゃ、人間の浅知恵なんて可愛いもんだが……俺たちの仲間をコケにしてくれた落とし前はきっちりつけてもらうぜ!」

マサキが八重歯を覗かせて笑う。アンティラス隊の魔装機神部隊、そしてレーツェルのアウセンザイターという強大な支援を得て、敗北に打ちひしがれていた連邦軍第87独立特殊任務部隊の士気は最高潮に達していた。

「作戦の概要を説明する!」

カイ・キタムラ少佐が戦術ホログラムを展開した。

「AFA(反連邦主義同盟)は、前回の勝利に乗じ、赤道付近の旧連邦軍宇宙港『ソロモン・ベース』を占拠。ムジューナ・リバリオンを中核とした決戦陣形を構築している。敵の目的は、大型HLVを用いてトロニウム弾頭を衛星軌道上へ打ち上げ、地球圏全域を人質に取ることだ」

「させるかよ……!」

キョウスケ・ナンがアルトアイゼン・リーゼのステークを固く握りしめる。

「作戦目標は敵主力の完全撃滅、およびムジューナ・リバリオンの破砕。マサキたちアンティラス隊とエクセレン、キョウスケが外囲の量産機群を足止め・掃除し、その隙にSRXチームとダイゼンガー、アウセンザイターが敵本陣へ突入する!」

「敵の『反斬艦刀シールド』への対策は……出来ているのか、少佐」

ゼンガーが低い声で問う。

カイは静かにゼンガーを見つめ、言った。

「科学的なアプローチでの解析データは渡した。シールドのベクトル斥力が極大に達する一瞬、偏向ノズル間に生じる0.03秒の『波動の干渉点』……。だがゼンガー、そこを突くのは計算やシステムではない。お前の……いや、お前とレーツェルの『信念』だ」

「――承知!」

ゼンガーの眼光が、鋭い閃光となって暗闇を射抜いた。

「我が斬艦刀に、断ち切れぬものなし。物理の理(ことわり)が防ぐというのならば、それを超える『理』をもって打ち砕くのみ!」

「万能戦闘母艦ハガネ、出撃準備完了! 全機、発進せよ!」

テツヤ艦長の号令が響き渡り、反撃の狼煙が南の空へと打ち上げられた。

### 第8章:赤道の決戦

赤道直下に位置する巨大宇宙港ソロモン・ベース。

かつて人類が宇宙へと羽ばたくために築かれた巨大な滑走路と発射台は、今やAFAの黒い軍旗と多数のPT群によって占拠され、要塞化されていた。

「司令! 上空より多数の超高熱源反応! 万能戦闘母艦ハガネ、および……アンティラス隊の魔装機神群です!」

AFAの司令部で悲鳴のような報告が上がる。

「来たか……懲りない連中め! だが無駄だ! 我が『ムジューナ・リバリオン』の前にはどんな増援もゴミ屑同然!」

中央の発射台に鎮座するムジューナ・リバリオンのコクピットで、ヴォルク・ヴァルザーが狂気の笑みを浮かべた。

「出撃だ! 連邦の誇る『悪霊』どもを、このトロニウムランスで今度こそ粉みじんにしてやる!」

ドゴォォォォォンッ!

空を割って降り立ったのは、風の魔装機神サイバスター!

「行くぜぇぇぇッ! アカシックバスターッ!!」

マサキの叫びとともに、火の鳥と化した魔装機神がAFAの防衛ラインを一瞬で突き破る。続いてグランヴェール、ガディフォール、ザムジードが次々と降下し、圧倒的な精霊気(プラナ)の攻撃でAFAの量産型ゲシュペンスト部隊を潰していく。

「な、なんだあの突拍子もない兵器群は!? ビームも実体弾も通用しないだと!?」

狼狽するAFAのパイロットたち。

「余計な雑魚に用はないわ! キョウスケ、行っちゃいなさい!」

エクセレンのライン・ヴァイスリッターが、ハルバート・ランチャーで敵の対空砲火を薙ぎ払う。

「了解だ……! 主力を通す!」

アルトアイゼン・リーゼのスラスターが狂暴な爆音を上げ、敵陣の最短ルートを力任せに破砕開徹していく。

「路は開かれた! 行け、ゼンガー! リュウセイ!」

カイのゲシュペンストMk-II改が後方を抑え、叫んだ。

「おのれぇぇぇ! 調子に乗るなァッ!」

爆炎を吹き飛ばし、巨躯を躍動させて現れたのは、あの悪魔の特機――ムジューナ・リバリオン!

その右手に保持されたトロニウムランスが、前回の恐怖を再現するかのように不気味な紫色に輝く。

「逃げずに戻ってきたことは褒めてやる! だが、この『反斬艦刀シールド』と『トロニウムバスターキャノン』がある限り、貴様らに勝利はない!」

「問答無用ッ!」

空中で重合・変形を果たした天下無敵の超人機士――SRXが舞い降りた!

「いくぞヴォルク! 前回のようにはいかねえぜ! アヤ、ライ、マイ! フルパワーだ!」

リュウセイの叫びとともに、SRXの念動フィールドが最高密度で展開される。

「トラブレードッ!」

SRXの胸部から放たれる実体念動刃。だが、ムジューナ・リバリオンは即座に左腕の反斬艦刀シールドを掲げた。

ガガガガギィィィンッ!

凄まじい衝撃波とともに、トラブレードはベクトル斥力フィールドに弾き返され、空中で砕け散る。

「ハハハ! 無駄だと言ったろう! このシールドはあらゆるエネルギーと運動量を反発させる!」

「だったら、その反発の限界まで叩き込み続けるまでだッ!」

ライが叫び、SRXのメイン火力を開放する。

「ハイパー・トロニウム・バスターキャノン……発射ぁぁぁッ!!」

SRXの胸部から放たれる極大の熱線。地球圏最強の破壊力が、ダイレクトにムジューナ・リバリオンのシールドを直撃する。

ズガガガガガガガガガガガガンッッ!!!!!

ソロモン・ベース全体が揺れ動くほどのエネルギーの激突。だが、ムジューナ・リバリオンの反斬艦刀シールドは、トロニウム・エンジンのオーバードライブによって出力を跳ね上げ、SRXの極大照射をも力ずくで左右に受け流し、散逸させていく!

「くっ……なんという強固な斥力場……! SRXのフルパワーですら貫けないわ!?」

アヤが息を呑む。

「ククク……見たか! これが科学の到達点! 貴様らの『最強』など、この盾の前には虚飾に過ぎん!」

ヴォルクが狂喜し、トロニウムランスの砲身を開放する。

「死ねぇぇ! トロニウムバスターキャノンッ!」

極彩色の光柱がSRXへ向けて放たれたその瞬間――!

「させるかぁぁぁッ!!」

疾風のごとく割り込んだ漆黒の騎士――アウセンザイター!

「シュルター・プラッテ!!」

アウセンザイターの両肩から射出された円形シールドが重なり合い、極大のビームを斜めに歪めて滑らせる! レーツェルの神業的な操縦技術(トロンベ・コントロール)により、SRXへの直撃が間一髪で逸らされた!

「なに……!? あの黒い馬のような機体は!?」

ヴォルクが驚愕する。

「見たか、我が力! これぞ『トロンベ』の風よ!」

レーツェルが高らかに宣言する。

「ゼンガー! 今だ! 奴が砲撃の反動でシールドの偏向角度を変えた……その瞬間の隙を突け!」

「――応ッ!!」

天を破るような雄叫びとともに、戦場の中央へと躍り出たのは、武神装攻ダイゼンガー!

その手には、機体の全高を遥かに超える超極大の実体剣――『斬艦刀』が握られていた。

### 第9章:我が信念に破れぬものなし

「ダイゼンガー……だと!? グルンガストの生き残りか!」

ヴォルクは嘲笑を浮かべ、反斬艦刀シールドを前面に押し出した。

「懲りない奴め! 零式の二の舞にしてやる! 来いッ! そのバカでかい鉄くずごと、また打ち砕いてやるわ!」

ダイゼンガーのコクピットで、ゼンガー・ザンボルトは静かに目を閉じた。

周囲の爆音、熱気、敵の嘲笑――すべてが消え去り、ゼンガーの意識は己の魂、そして手に握る斬艦刀の「鋼」と完全に一体化していく。

(……カイ少佐の言った通りだ。敵のシールドには理論上の波調の乱れが存在する。だが……)

ゼンガーはカッと目を見開いた。その瞳には、如何なる物理法則をも超越する、絶対の意志が宿っていた。

(理屈ではない! 技でもない! 断ち切るという『信念』……それこそが、我が剣の極意ッ!)

「何を防ごうというのだ……! 何を守ろうというのだ……!」

ゼンガーの声が、ダイゼンガーのメインスピーカーを通じて、全海域、全通信回線へと朗々と響き渡る。

「形あるもの、ことごとく滅びに向かう! 防ぐものあらば……己が『信念』をもって断ち砕くのみッ!」

「戯言をぉぉぉっ!」

ヴォルクはシールドの斥力出力を限界の120%までオーバーブーストさせた。シールドの表面に、空間そのものが歪むほどの超高密度ベクトル場が展開される。

ダイゼンガーが踏み込んだ。

大地が砕け、噴射煙が竜巻となって巻き上がる。

「武神装攻ダイゼンガー……参るッ!!」

ゼンガーは斬艦刀を頭上高くに振りかざし、一切の迷いなく、ムジューナ・リバリオンの『反斬艦刀シールド』へ向けて一閃を振り下ろした!

「チェストォォォォォォォォォォォォーッッ!!!!」

ガァァァァァァァァァァィィィィィィンッッ!!!!!

前回の戦いと同じ、恐ろしい金属の悲鳴が空間を刺した。

シールドの表面で極大のベクトル斥力が働き、斬艦刀の運動エネルギーを逆方向へと押し返そうとする。ダイゼンガーの関節フレームからスパークが吹き出し、装甲が悲鳴を上げる。

「ハハハ! 無駄だ無駄だ! 跳ね返せ! 叩き折れ、反斬艦刀シールドォォッ!」

ヴォルクが叫ぶ。

しかし――ゼンガーは退かない!

「ぬおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

ダイゼンガーの内部で、心象投影システムが限界を超えて励起する。ゼンガーの「断ち切る」という魂の波動が、ダイゼンガーのトロニウム・フレームを伝わり、斬艦刀の刃へと流れ込んでいく。

超振動でもない、熱エネルギーでもない。

「絶対に断ち切る」という概念そのものが、刃となってシールドの斥力場を押し広げていく!

「な……なに!? シールドの出力が落とされているわけではないのに……圧されているだと!?」

ヴォルクの顔が恐怖に変色する。

「理(ことわり)など……我が剣の前には無意味ッ!」

ゼンガーの叫びとともに、斬艦刀の先端が、絶対防御を誇っていた斥力フィールドの「中心」を微かに穿った。

バリ……バリバリッ……ッ!!

ガラスに亀裂が入るような音が、戦場全体に響いた。

「防ぐものあらば、信念で断ち砕く!!」

ゼンガーの一滴の濁りもない魂の叫びが、無限の力を呼び醒ます。

「我が信念に破れぬもの、なしッ!!」

ドガンッ!!!!!

「故に――反斬艦刀シールド、破れたりぃぃぃぃぃッッ!!!!」

ズバァァァァァァァァァァンッッ!!!!

極大の爆発とともに、絶対に破れないはずだった『反斬艦刀シールド』が、真っ二つに叩き割られて大空へと吹き飛んだ!

「バ……バカなァァァァァァァッ!? 我が反斬艦刀シールドが……切り裂かれただとぉぉぉっ!?」

ヴォルクの悲鳴が響き渡る。

「今だ、レーツェル!!」

ゼンガーが叫ぶ。

「フ……見事だ、ゼンガー! 我らの絆、今こそ見せる時!」

アウセンザイターが漆黒の旋風となって駆け抜ける。

『フェルゼ・ハイツン!』

アウセンザイターの全身が変形機構を開始。機体構造が組み替えられ、漆黒の巨大な名馬――『フェーレ・アウセン』へと姿を変える!

ダイゼンガーが、その黒馬の背へと躍り乗った。

人馬一体! 武神と名馬が重なり合い、放たれる気迫は天をも突く!

「我らは幾度も闇を払い、道を拓いてきた! 見よ、これぞ我らの究極の太刀!」

レーツェルの手綱さばきとともに、黒馬が虚空を蹴る。

「刃馬一体ッ! 斬艦刀・真の太刀……『雷霆龍破斬(らいていりゅうはざん)』ッッ!!」

ダイゼンガーの手中で、展開された斬艦刀が黄金と極彩色の龍の気流を纏う。

トロニウムバスターキャノンを構え、狂ったように乱射しようとするムジューナ・リバリオンめがけ、人馬一体の光の矢となって突撃する!

「疾風のごとく……駆け抜けるッ!」

ズバッ……ズババババババババババババッッ!!!!

一瞬の静寂。

ダイゼンガーとアウセンザイターが、ムジューナ・リバリオンの後方へと着地し、静かに刀を納める。

ムジューナ・リバリオンの右手に握られていた巨砲『トロニウムランス』が、斜めに滑り落ちて爆発。続いて、全高50メートルを超えるその巨体が、十字の光の亀裂とともに、内側から完璧に一刀両断された。

「我が……我がムジューナ・リバリオンがぁぁぁぁぁぁッ!?」

ドドォォォォォォォォンッ!!!!

幾重にも重なる大爆発。反連邦主義同盟の「切り札」は、ゼンガー・ザンボルトの揺るぎない信念の前に、跡形もなく打ち砕かれたのであった。

### 第10章:風の掃討戦と……恐怖のオチ

「凄ぇ……凄すぎるぜ、ゼンガー少佐!! あの盾もランスも、一撃でまっ二つだ!!」

SRXのコクピットで、リュウセイが歓喜の声を上げる。

「素晴らしい……。物理的な干渉を超えた『念』と『気』の融合……まさに究極の一撃だ」

ライも感嘆の吐息をつく。

だが、敵の総大将が倒れたものの、ソロモン・ベース内にはまだAFAの残党部隊や自動防衛兵器が多数残留し、乱戦を続けていた。

「ちっ、往生際の悪い奴らだな! 大将がやられたんだ、おとなしく投降しやがれ!」

サイバスターのコクピットで、マサキが操縦桿を握り直す。

「マサキ、仕上げだ! 一気に掃除するぞ!」

クロとシロが叫ぶ。

「おうよ! アンティラス隊の風の魔装機神、マサキ・アンドー様のとっておきを喰らいやがれ!」

サイバスターが天空高くへと舞い上がり、四枚の翼を限界まで開放。ディスカッターを天に掲げると、アカシック・レコードの局所干渉光芒が全領域に広がる。

「罪深き魂どもよ、精霊の光の中に眠れ……! コスモ・ノヴァァァァァァッ!!」

天から降り注ぐ、極彩色の超空間崩壊光波。

ソロモン・ベースに残存していたAFAの残党機体群、重戦車、要塞砲台のすべてが、コスモ・ノヴァの圧倒的な光の中に飲み込まれ、傷一つベースのインフラを残さぬまま、完璧に消滅・無力化された。

完璧な、そして圧倒的な「フィニッシュ」であった。

こうして、地球連邦政府を揺るがせた反連邦主義同盟(AFA)の過激派計画は、SRXチーム、ATXチーム、ダイゼンガー、そしてアンティラス隊の鮮やかな連携により、完全に鎮圧されたのである。

数日後――。

激闘を終え、伊豆基地へと帰還した一行。

大ドックでは、修理を終えた機体たちが誇らしげに並び、戦いを生き抜いたパイロットたちが安らぎの時間を過ごしていた。

「いやー! 今回のゼンガー少佐、マジで痺れましたよ! 『故に、反斬艦刀シールド、破れたり!』だもんなぁ! 俺もR-1の必殺技のセリフ、もっとカッコいいの考えねえと!」

リュウセイがテンション高く、パイロットスーツの胸を叩いている。

「ふふ、相変わらず賑やかねぇ、リュウセイくんは。でもホント、無事に終わって良かったわ~」

エクセレンが肩をすくめて微笑む。

「……だが、我々はまたしても連邦の闇が生んだ兵器と戦う羽目になった。今回の件、上層部にはきっちりと報告書を提出せねばな」

キョウスケが手帳を開きながら呟く。

そんな和気あいあいとした空気の中――。

ドックの重い扉が、ゴゴゴゴ……と不気味な音を立てて開いた。

そこに立っていたのは、桃色のエプロンを身につけ、トレーの上に湯気の立つ「何か」を大量の湯呑みに乗せた少女――クスハ・ミズハであった。その横には、なぜか引きつった笑顔のブルックリン・ラックフィールド(ブリット)が控えている。

「みんな~! 激しい戦闘、本当にお疲れ様でした!」

クスハが、女神のような神聖な笑顔で微笑みかける。

「連邦軍の医学部から取り寄せた極上の漢方薬と、私が独自に配合した栄養ドリンク……名付けて『特製・超クスハ汁改』を作ってきたんです! 激戦の疲労も、これ一杯で吹き飛びますよ!」

「……ッ!?」

その場の全員の動きが、完璧に静止した。

湯呑みから立ち上る湯気は、なぜか紫色と緑色が混ざり合った不気味な蛍光色を帯びており、ドック全体に「嗅いだだけで脳細胞が減退する」ような凄まじい異臭が拡散し始めていた。

「く、クスハ……? それ、マジで言ってるのか……?」

リュウセイの顔からスッと血の気が引いていく。

「もちろんです! リュウセイ君、前回SRXで合体解除された時、すごく頭を打って疲れてたでしょう? さあ、温かいうちにどうぞ!」

「ひっ……! い、いや! 俺は全然平気! ピンピンしてるって! なあライ!?」

「僕に振るな! 僕も遠慮させていただく……! それは……兵器の領域に達している!」

あの冷静沈着なライが、青ざめた顔で後退りする。

「まあまあ、みんな恥ずかしがらなくても! ゼンガー少佐も、今回は大技を使ってお体がお疲れのはずです! どうぞ!」

クスハが、にっこりと微笑みながらダイゼンガーの足元に立つゼンガーへ湯呑みを差し出した。

あの「武神」ゼンガー・ザンボルトが。

いかなる強敵にも膝を折らず、反斬艦刀シールドをも一刀両断したあの豪傑が。

冷や汗をダラダラと流し、斬艦刀を持つ手が微かに震えている。

「む……むう……。ク、クスハ殿……。当方、武士なれば……このような好意を断るは非礼……。しかし……しかしだな……」

「さあ! 一気にグッと飲んでください!」

「ゼ、ゼンガー少佐ーっ! 逃げてくださいッ!」

リュウセイが絶叫する。

「マサキ! サイバスターで脱出だ! サイバスターを出せーっ!」

「バ、バカ言え! サイバスターのコクピットまでこの匂いが侵入してきてんだよ! サイバシールドでも防げねえ!」

「ふふふ……逃がしませんよ~? みんなで健康になりましょうね♪」

クスハの笑顔の後ろに、まるでヴォルクルスか古代の邪神のような巨大な暗黒のオーラが見えたのは、決して気のせいではなかった。

「う、うわああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「助けてくれぇぇぇぇっ!!」

「チェスストォォォォォォォ(悲鳴)!?」

伊豆基地の平和な大空に、ムジューナ・リバリオンとの死闘以上の、悲痛で凄惨な叫び声がどこまでも響き渡っていくのだった――。

(おわり)

 

 


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