ある日の正午、僕は14区にあるボロボロの果たしてレストランと言えるかどうか怪しいところで仕事のための調査を行なっていた。
「探偵様…本当にこの料理を食べきらないといけないんですか…?」
僕は先ほど飲み込んだ肉のような何かを吐き出さないようにと口を自分の着ている白いスーツの袖で覆いながらテーブルの向かい側に座る5級フィクサーで事務所の上司であるモーゼス探偵様に喉の奥から絞り出したかのような声で尋ねた。
「我慢しろ、ラパエ」
「でもこの店で提供されている料理…いや、料理かも怪しい物を僕はこれ以上食べたくはありませんよ…」
「まだこのねじれがこの店内や客に及ぼす影響が掴めていない。まだ出るのは無理だ」
平日の昼だというのに僕たち以外誰も客がいないレストランの中で僕は先ほどから店の奥から感じる視線を感じながら探偵様からまだ出れないと告げられ冷や汗を流していた。
こんなの食べ切れる訳ないないよ…でも食べきらないとここにいられる時間を稼げないし…
僕は食べたことをごまかすいい案はないかと辺りを見回すと、僕の隣の席に座る事務所の先輩であるエズラ先輩が僕の食べていた“料理“を横からどこか食べたそうに覗いてきているのに気づいた。
「…エズラ先輩、これ食べますか?」
「いいの後輩!?」
「んぷっ…!は、はい…」
「やったー!ならこれはもらってくね!」
「ふぅ…」
サッとエズラ先輩の前に皿を流すと気持ち悪さを紛らわすために深呼吸をした。先輩がテーブルの端からフォークとナイフを取り出している間、僕は自分に向けられる睨むような視線が一つ増えたように感じたが目を閉じ知らないふりをした。
「…ん?」
「先輩?どうしましたか…?」
「わぁ〜!ここ汚いだけあって料理もめちゃくちゃですね!こんな料理誰に教わったんだか!」
「え!?」
「この馬鹿…」
先輩は料理を口の中に運んだ瞬間、ゆっくりと使っていたナイフとフォークをそれぞれ丁寧に皿の上に置くとまるで静寂が流れるレストラン中にいる全員に聞こえるようにといつもより大きな声で言った。あまりの声の大きさと内容に僕は驚きに閉じていた目を大きく開け、向かい席を見ると探偵様はうんざりしたように顔に手を当てていた。
エズラ先輩!?何言ってるんですか!?さっきの探偵様の話を聞いてなかったんですか!?
「おいお前!おれの料理がなんだって!」
「あ…いやこれは…」
「あ゛?」
「…すみません」
「あぁ…探偵さん…探偵さん!どうしましょう!?」
案の定先輩の声は店の奥にまで聞こえていたようで、先ほど注文を受け取った時とは違った汚れたエプロンをつけたシェフが何かの血で汚れたナイフを持ち、顔を真っ赤にしながらテーブルに近づいてきた。
僕はシェフが包丁まで持ってくることまでは予想外だったため揉め事にならないように必死に言い訳をしようとしたが結局謝ることしかできなかった。
一方、問題発言をした先輩はここまでシェフが怒ることが予想外だったようで焦りながら探偵様にどうすべきか意見を求めていた。
先輩なんであなたが一番焦ってるんですか…先輩のせいでこうなってるんですからね!!
「ハハハ…申し訳ありません。うちの姪っ子はまだ世間知らずでして。愛しの姪っ子よ〜?探偵とはなんだい?また幻覚を見たのか哀れな姪っ子よ…」
探偵様は仕方なしと言うように小さなため息を一息つくと急にこれまで見たことがないような笑顔になりシェフと先輩に話し始めた。
なお僕はその中でただ席に座る空気のようだった。
あ、さすが探偵様。慣れてるからこういう会話の切り抜け方が上手い。
「…イカレアマどもめ…次騒ぎを起こしたツヴァイを呼ぶからな!さっさと出ていけ!」
「はい〜姪っ子と甥っ子が迷惑をかけました〜!」
「え!?僕が何をしたっt…」
「出るぞ」
「はい…」
何か嫌悪するような目でこちらを見てくるシェフを一発殴ろうと思ったが、探偵様は僕にそう低めの声で言うと先輩の上着を掴みながら席を立ち足早に外に出たため僕も相棒の大剣を持って急いでその後を追った。
…これあとで絶対僕も怒られるやつだ…
「正気か?」
「だってまずかったのは事実ですし…後輩もそう思うよね?」
「確かに吐きそうなぐらいまずかったのは同感ですけど…」
「減給」
「えー!?」
「25%減給だ」
「嘘でしょ!?探偵さんそれだけはどうかぁ!!」
探偵様は先輩に減給を言いわたすとコートのポケットからキセルを取り出して口に咥え、大きめに息を吸い、ねじれについて考えているのか目を閉じゆっくりと煙を吐き出した。
ほぼ最近毎日見てきた光景なのにその姿を見るたび僕は毎回心の中で感謝の言葉を言っている。
『僕を救ってくださりありがとうございました』と。
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「で、探偵さん。今回のはどんな感じに見えていたんですか?」
「下半身が蛇だ。尾には人間の手がついていたな。尾は7本あった」
「7本もですか!?」
「うげぇ…上半身は人間だったんですか?」
「あぁ、汚い調理服をきた人間に見えた」
探偵様はこの都市で唯一であろう人のねじれが見える才能を持っている。それは本来なら見えるはずのない進行前のその人がねじれた姿が部分的に見える才能、いわば呪いでもあるらしい。それだけ言いこれ以上探偵様は僕に教えてはくれなかった。
「…それなら本格的にねじれるのも近いかもしれませんね」
「状況によっては今夜起こってもおかしくはないだろう。その尾についている口が腹を空かせたように唾液を垂らして激しく動いていたからな」
探偵様がレストランの中で見たねじれについての分析について話し終わり再びキセルを咥えた。
「とにかく爬虫類系ってことですよね!えっと、どれどれ…スティグマ工房製のが良さそう!後輩はどうする?」
「僕ですか?僕はいつも大剣があるので」
「ちぇ、後輩は今回もそれ使うの?他にも工房武器はいっぱい選択肢あるよ?」
先輩が僕の背中に鎖で巻き付かれている大剣をジトっとした目で見ながら僕の前に工房のカタログを見せながら歩く事務所へと戻る道の最中、こちらを見ながら探偵様はもう一度煙を吐いた。
まだ特に進展が無いまま1話分終わってしまった…なお書き溜めは無いので更新は遅めです…
ここまで読んでくださりありがとうございました!できるだけこれからも頑張っていきますのでよろしくお願いします〜!