ポケットモンスター ―頂への軌跡―   作:あああああ

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第41話 ケーシィ!ちょうのうりょくたいけつ!

バタフリーとの別れを越え、レンたちは再び旅を続けていた。

 

海沿いを離れてから数日、目指すのは巨大都市 ヤマブキシティ。

 

そこにはポケモンリーグ公認のヤマブキジムがある。

 

現在レンが持っているバッジは三つ。

 

ニビシティのグレーバッジ。

 

ハナダシティのブルーバッジ。

 

クチバシティのオレンジバッジ。

 

セキエイ大会へ出場するには八つ必要だ。

 

つまり。

 

次に狙うのは四つ目。

 

「ヤマブキジムかぁ!」

 

森の中を歩きながらサトシが拳を握る。

 

「今度も絶対勝つ!」

 

「ピカピカ!」

 

肩のピカチュウも気合い十分。

 

レンは隣を歩きながら笑った。

 

「クチバジムで勝ったからって油断しない方がいいよ」

 

「分かってるって!」

 

「本当に?」

 

「もちろん!」

 

「その割にはすごく浮かれてるけど」

 

「浮かれてない!」

 

カスミが後ろから口を挟む。

 

「浮かれてるわよ」

 

「どこがだよ!」

 

「全部」

 

「全部って何だよ!」

 

タケシが地図を確認しながら苦笑する。

 

「元気なのはいいけど、森の中ではちゃんと前を見ろよ」

 

「分かってるって!」

 

そう答えた直後。

 

サトシが木の根に足を引っかけた。

 

「うわっ!」

 

「ピカ!?」

 

派手に転ぶ。

 

「…………」

 

「…………」

 

カスミが呆れた顔で見下ろす。

 

「前を見なさい」

 

「今のはたまたまだ!」

 

「ピカ……」

 

レンは笑いながらリザードとリオルを見る。

 

「俺たちも気をつけよう」

 

「リザ」

 

「リオ」

 

二匹は真面目に頷いた。

 

◇

 

しばらく森を進んだ頃。

 

「ん?」

 

サトシが立ち止まった、少し先の木々の間に一人の少女がいる。

 

幼い女の子、手にはボール。

 

「誰だ?」

 

「こんな森の中に一人?」

 

カスミも不思議そうに見る。

 

少女は何も言わない。

 

ただ、サトシを見ていた。

 

「おーい!」

 

サトシが手を振る。

 

少女がくるりと背を向けた。

 

「あ、待てよ!」

 

「サトシ!」

 

止めるより早く走り出した。

 

「また……!」

 

カスミが額を押さえる。

 

「追おう」

 

レンたちも続く。

 

少女は森の中を進んでいく。

 

速いわけではないなのに追いつけない。

 

「待てって!」

 

サトシがさらに速度を上げた。

 

木々を抜ける。

 

「サトシ、止まって!」

 

レンが叫ぶ。

 

「え?」

 

次の一歩。

 

地面がなかった。

 

「うわぁぁぁぁっ!」

 

崖。

 

「サトシ!」

 

「フシギダネ!」

 

サトシが咄嗟にボールを投げる。

 

「ダネ!」

 

光の中からフシギダネが飛び出した。

 

「『つるのムチ』!」

 

「ダネッ!」

 

蔓が伸び、サトシの身体へ巻きついた。

 

「うおっ!」

 

落下が止まる。

 

「ピカァ!」

 

ピカチュウもしがみついている。

 

「引っ張るぞ!」

 

タケシが蔓を掴む。

 

レンも加わる。

 

「せーの!」

 

サトシが崖の上へ引き上げられた。

 

「た、助かった……」

 

「ピカ……」

 

「ダネ」

 

フシギダネが呆れたように見る。

 

「ありがとう、フシギダネ」

 

「ダネ!」

 

サトシが顔を上げる。

 

「そうだ、あの子!」

 

全員が周囲を見る。

 

いない。

 

「消えた?」

 

カスミが呟く。

 

レンは。

 

少女がいた場所を見つめる。

 

(あの子……)

 

知っている、前世の記憶ではこれから向かうヤマブキジムそのジムリーダー。

 

ナツメに関係する存在。

 

だが。

 

「リオ?」

 

リオルが見上げる。

 

「……今の子、普通じゃなかったね」

 

「やっぱりそう思う?」

 

カスミが聞く。

 

「うん。でも」

 

レンは崖の先を見る。

 

「まだ何なのかは分からない」

 

乙女ヶ崎で嫌というほど見た。

 

知っていると思っていても実際の世界では予想を越えることがあるだから決めつけない。

 

「とりあえずサトシ」

 

「何だ?」

 

「知らない子を見つけても崖まで全力で追いかけない」

 

「……はい」

 

◇

 

森を抜けると巨大な都市が姿を現した。

 

高層ビル、広い道路、多くの人々。

 

「ヤマブキシティ!」

 

サトシが叫ぶ。

 

「着いたー!」

 

「ピカー!」

 

これまで訪れた町とは規模が違う。

 

レンも思わず周囲を見回した。

 

「大きいな……」

 

「リザ」

 

「リオ」

 

リザードとリオルも忙しそうに首を動かしている。

 

「ヤマブキジムはこっちみたいだぞ」

 

タケシが案内板を見る。

 

その瞬間。

 

「よし!」

 

サトシが走り出した。

 

「挑戦だ!」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

カスミが追う。

 

レンやリザードたちも続いた。

 

◇

 

「おめでとうございます!」

 

「え?」

 

突然派手な服装の男女が現れた。

 

「あなた方は!」

 

「記念すべき!」

 

「素晴らしい来訪者です!」

 

紙吹雪。

 

「うわっ!」

 

サトシの顔へ大量に降りかかる。

 

「何だこれ?」

 

「ピカ?」

 

「こちらへどうぞ!」

 

「豪華賞品をご用意しております!」

 

「賞品!?」

 

サトシの目が輝いた。

 

「行こうぜ!」

 

「待って」

 

レンが止める。

 

「何だよ?」

 

「怪しすぎる」

 

「どこが?」

 

「全部」

 

カスミが即答した。

 

「またそれかよ!」

 

レンは二人を見る。

 

帽子。

 

髪。

 

声。

 

変装はしている、だが。

 

「…………」

 

見覚えしかない。

 

「レン?」

 

タケシが気づく。

 

レンは小さく息を吐いた。

 

「多分――」

 

「さあさあ!」

 

サトシが引っ張られる。

 

「こっちですよ!」

 

「あっ!」

 

扉が閉まる。

 

ガチャン。

 

「捕まえた!」

 

変装を脱ぐ。

 

「やっぱり」

 

レンが呟く。

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「ロケット団!」

 

「ニャハハハ!」

 

ニャースも現れる。

 

「またお前たちか!」

 

「何よその反応!」

 

ムサシが怒る。

 

「もっと驚きなさいよ!」

 

「最初から怪しかったから」

 

「だったら入ってくるんじゃないわよ!」

 

「サトシが入ったから」

 

全員の視線がサトシへ。

 

「…………」

 

「ピカ」

 

「何だよ!」

 

「だから止めたでしょ!」

 

カスミの怒声が響いた。

 

その時部屋の空気が変わる。

 

「……?」

 

レンが振り返る森で見たあの少女。

 

「お前!」

 

サトシも気づく。

 

少女が静かに手を上げる、次の瞬間。

 

「な、何!?」

 

ムサシたちの身体が浮いた。

 

「うわぁぁぁ!」

 

「何だこれは!」

 

「超能力ニャー!」

 

そして扉がひとりでに開く。

 

「今のうち!」

 

タケシが叫ぶ。

 

「行こう!」

 

レンたちは外へ飛び出した。

 

振り返る。

 

少女はもういない。

 

「また消えた……」

 

サトシが呟く。

 

レンはヤマブキシティの中心ジムがある方向を見る。

 

(やっぱり……)

 

偶然ではない。

 

◇

 

ヤマブキジムの中へ入った瞬間。

 

独特の空気を感じた、静かだ。

 

広い部屋のあちこちで人々が座っている。

 

「何してるんだ?」

 

サトシが首を傾げる。

 

一人の男がスプーンを見つめている。

 

「むむむむ……」

 

ぐにゃ。

 

曲がった。

 

「おお!」

 

サトシが目を輝かせる。

 

「超能力か!」

 

「そうだ」

 

男が答える。

 

「精神を集中させれば、この程度は」

 

「俺だって!」

 

サトシがスプーンを取る。

 

「ふんっ!」

 

両手。

 

力任せ。

 

ぐにゃ。

 

「できた!」

 

「…………」

 

レンが見る。

 

「それ超能力じゃないから」

 

「曲がっただろ!」

 

「腕力でね」

 

「ピカ……」

 

ピカチュウまで呆れている。

 

「いいから行くわよ!」

 

カスミに引っ張られ。

 

一行は奥へ進む。

 

やがて広いバトルフィールドへ出た。

 

その先一人の少女が座っている。

 

いや、女性。

 

冷たいほど整った表情。

 

感情がほとんど見えない。

 

その膝には人形、レンの目が細くなる。

 

森で見た少女と同じ姿。

 

「あなたがジムリーダーか?」

 

サトシが前へ出る。

 

ナツメは静かに答えた。

 

「そう」

 

「俺はマサラタウンのサトシ!」

 

「ピカ!」

 

「ジム戦を申し込む!」

 

ナツメはサトシを見るそして。

 

「いいわ」

 

「よし!」

 

「ただし」

 

ナツメの膝の人形が笑う。

 

「負けたら、私と遊んで」

 

「遊ぶ?」

 

サトシが首を傾げる。

 

「それだけ?」

 

「ええ」

 

「ならいいぜ!」

 

「待って」

 

レンが止める。

 

「何だよ?」

 

「普通じゃない」

 

「でもジム戦だろ?」

 

「条件の意味が分からない」

 

ナツメを見るが表情は変わらない。

 

その横で人形だけが楽しそうに笑っている。

 

嫌な感覚。

 

「サトシ」

 

「大丈夫だって!」

 

サトシはピカチュウを見る。

 

「勝てばいいんだろ?」

 

「ピカ!」

 

「…………」

 

レンは、それ以上止めなかった。

 

一度決めたサトシを無理に止めても仕方がない。

 

なら見る。

 

何が起きるのか一つも見逃さない。

 

◇

 

「使用ポケモンは一匹」

 

ナツメが告げる。

 

「一対一よ」

 

「望むところだ!」

 

サトシがフィールドへ。

 

「ピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

ピカチュウが前へ出る。

 

ナツメは一つのモンスターボールを開く。

 

「ケーシィ」

 

現れたのは小さな黄色いポケモン。

 

「ケーシィ!」

 

サトシが図鑑を向ける。

 

電子音が特徴を説明する。

 

だが。

 

「寝てるぞ?」

 

ケーシィは目を閉じたまま座っている。

 

「寝てるならチャンスだ!」

 

「サトシ」

 

レンが声をかける。

 

「油断しない方がいい」

 

「分かってる!」

 

サトシが前を向く。

 

「ピカチュウ、『でんこうせっか』!」

 

「ピカ!」

 

一直線に飛び出す。

 

ケーシィへ。

 

「テレポート」

 

ナツメの声。

 

ケーシィが消えた。

 

「ピカ!?」

 

ピカチュウが通り過ぎる。

 

後ろにケーシィが座っている。

 

「何!?」

 

「瞬間移動……」

 

レンは目を細める。

 

「もう一度だ!」

 

ピカチュウが向きを変える。

 

「『10まんボルト』!」

 

「ピカチュウ!」

 

電撃、だが。

 

「テレポート」

 

ケーシィが消え電撃が空を切る。

 

次。

 

右。

 

「ピカ!」

 

攻撃。

 

消える。

 

「くそ!」

 

サトシが歯を食いしばる。

 

レンはケーシィではなくナツメを見る。

 

ほとんど動かない、指示も最小限それなのに。

 

ケーシィは正確に動く。

 

(繋がりが深い……)

 

普通の連携とは少し違う。

 

その時ケーシィの身体が光に包まれた。

 

「え!?」

 

「進化!?」

 

光が膨らみ身体が大きくなる。

 

尾が伸びる。

 

額の模様。

 

手にはスプーン。

 

「ユンゲラー……!」

 

サトシが図鑑を向ける。

 

「戦ってる途中で進化したぞ!」

 

レンは隣のリザードを見る。

 

「リザ……」

 

リザードも真剣な目でユンゲラーを見ている。

 

進化それ自体は珍しいことではない。

 

リザードも戦いの中で進化した。

 

問題はその後。

 

「ユンゲラー」

 

ナツメが告げる。

 

「サイコキネシス」

 

「ユン」

 

一切戸惑わない。

 

身体の大きさ。

 

腕の長さ。

 

足の位置。

 

重心。

 

全てが変わったはずなのにまるで最初からユンゲラーだったようにスプーンを構える。

 

レンの表情が変わる。

 

(速い)

 

自分のリザードは進化した後、走る。

 

止まる。

 

曲がる。

 

そこから身体を覚え直した。

 

なのにこのユンゲラーは違う。

 

「ピカチュウ!」

 

サトシが叫ぶ。

 

「動き続けろ!」

 

「ピカ!」

 

左右へ素早く走る。

 

「『でんこうせっか』!」

 

一気に距離を詰める。

 

「テレポート」

 

消える。

 

「後ろだ!」

 

ピカチュウが振り返る。

 

だが遅い。

 

「サイコキネシス」

 

「ユン!」

 

ピカチュウの身体が宙へ浮いた。

 

「ピカ!?」

 

「ピカチュウ!」

 

「振りほどけ!」

 

「ピ、ピカァ!」

 

身体を動かそうとする。

 

だが見えない力から抜けられない。

 

「ユンゲラー」

 

ナツメの声。

 

ピカチュウの身体が大きく振られる。

 

「ピカァァ!」

 

床へ叩きつけられた。

 

「ピカチュウ!」

 

「ピカ……!」

 

立つ。

 

「まだいけるか!?」

 

「ピカ!」

 

頷く。

 

「よし!」

 

サトシが拳を握る。

 

「速さで負けるな!」

 

再び。

 

走る。

 

一度。

 

二度。

 

方向転換。

 

クチバジムでライチュウを翻弄した動き。

 

「『でんこうせっか』!」

 

「ピカ!」

 

「テレポート」

 

また消える。

 

「くっ!」

 

「サイコキネシス」

 

身体が止まった。

 

「ピカ!?」

 

浮く、レンは無意識に拳を握る。

 

「リオ……」

 

隣でリオルもフィールドを見ていた。

 

目。

 

肩。

 

腰。

 

足。

 

攻撃の始まりを。

 

探そうとする。

 

だが。

 

ユンゲラーは。

 

離れた場所で。

 

ほとんど動かない。

 

スプーン。

 

僅かな動き。

 

そして。

 

ナツメ。

 

(『みきり』だけじゃ……)

 

レンは考える。

 

今のリオルが得意とする読み。

 

相手の身体から、攻撃の始まりを捉える。

 

だがこの相手は攻撃の形そのものが違う。

 

「ピカァッ!」

 

再び床へ。

 

「ピカチュウ!」

 

ピカチュウが起き上がろうとする。

 

足が震えている。

 

「ピカ……!」

 

それでも立つ。

 

「…………」

 

サトシの表情が変わった。

 

「ピカチュウ」

 

「ピカ……」

 

「もういい」

 

「ピカ?」

 

「俺の負けだ」

 

フィールドが静かになる。

 

「サトシ……」

 

カスミが見る。

 

サトシは悔しそうに拳を握っている。

 

それでも。

 

「これ以上やったら、ピカチュウが危ない」

 

「ピカ……」

 

サトシがピカチュウを抱き上げる。

 

「ごめんな」

 

「ピカ……」

 

ピカチュウはサトシの胸へ身体を預けた。

 

レンは何も言わなかった。

 

勝ちたいそれでもピカチュウを優先した。

 

ニビジムでもそうだった、そこは変わらない。

 

「約束」

 

ナツメが言った。

 

「え?」

 

サトシが顔を上げる。

 

膝の人形が笑う。

 

「負けたら、遊ぶ」

 

「…………」

 

レンの背筋に冷たいものが走った。

 

「全員、離れて!」

 

だが遅い。

 

光。

 

視界が歪んだ。

 

◇

 

「……っ」

 

レンが目を開く。

 

「何だ、これ……」

 

目の前に巨大な椅子、巨大な机、巨大な玩具。

 

いや違う、巨大なのではない。

 

「俺たちが小さくなってる……?」

 

「リオ!?」

 

「リザ!?」

 

隣を見る、リザードとリオルも同じように小さい。

 

「レン!」

 

サトシ。

 

カスミ。

 

タケシ。

 

ピカチュウ。

 

全員いる。

 

「何なのよここ!」

 

カスミが叫ぶ。

 

「遊びましょう」

 

声。

 

見上げる。

 

巨大な少女、森で見たあの子。

 

「…………」

 

レンは息を呑む。

 

知識では知っていた。

 

だが実際に体験するとまるで違う。

 

(これが……人間の力?)

 

ポケモンではない。

 

ナツメ本人のその力だけで。

 

自分たちの身体すらこんなふうに変える。

 

巨大な少女がボールを持ち上げる。

 

「遊びましょう」

 

「嫌な予感しかしないんだけど!」

 

カスミが叫ぶ。

 

ボールが落ちる。

 

ドンッ!

 

地面が揺れた。

 

「走れ!」

 

レンが叫ぶ全員が逃げる。

 

巨大なボールが後ろから転がってくる。

 

「うわぁぁぁ!」

 

「速い!」

 

「ピカー!」

 

「リザード、リオル!」

 

二匹も走る。

 

「リオ!」

 

リオルが。

 

後ろを見る。

 

「駄目!」

 

レンが叫ぶ。

 

「戦わなくていい!」

 

今、相手に攻撃してどうなるか分からない。

 

まずここから出るそれが先だ。

 

だが出口はない。

 

壁。

 

玩具。

 

巨大な少女。

 

「捕まえた」

 

手が伸びてくる。

 

「まずい!」

 

その瞬間景色が歪んだ。

 

「え?」

 

光。

 

次に足が地面へついた時そこは外だった。

 

「…………」

 

「戻った?」

 

カスミが自分の身体を見る、元の大きさだった。

 

「助かった……」

 

サトシが座り込む。

 

「ピカ……」

 

レンは周囲を見る、一人の男が立っている。

 

どこかナツメに似た雰囲気。

 

「あなたが助けてくれたんですか?」

 

レンが尋ねる。

 

男は静かに頷いた。

 

「あの子には、もう近づかない方がいい」

 

「ナツメのことか?」

 

サトシが立ち上がる。

 

男は答えないだが、その表情だけで十分だった。

 

「どうしてあんなことを……」

 

タケシが聞く。

 

男はしばらく黙るそして、ナツメが幼い頃から強い超能力を持っていたこと。

 

力へ没頭するほど普通の感情を失っていったことあの人形がナツメの中に残った幼い心のような存在であることを静かに話した。

 

レンはジムで見たナツメを思い出す。

 

無表情そして笑う人形。

 

「もう挑まない方がいい」

 

男が言う。

 

「今の君たちでは、あの子には勝てない」

 

「…………」

 

サトシが拳を握る。

 

「嫌だ」

 

「サトシ?」

 

「俺はバッジが欲しい」

 

ピカチュウを見る。

 

「それに、このまま負けっぱなしなんて嫌だ!」

 

「ピカ!」

 

「もう一度挑戦する!」

 

男はサトシを見る。

 

「なら」

 

少しの沈黙。

 

「シオンタウンへ行くといい」

 

「シオンタウン?」

 

「そこにはゴーストポケモンがいる」

 

サトシの目が輝く。

 

「ゴーストポケモン!」

 

「超能力を使う相手に挑むなら、力を借りられるかもしれない」

 

「よし!」

 

サトシが一気に立ち直った。

 

「シオンタウンだ!」

 

「単純ね……」

 

カスミが呟く。

 

「でも」

 

タケシがレンを見る。

 

「レンはどうする?」

 

「え?」

 

サトシも振り返る。

 

「そうだ!」

 

今さら気づいたように。

 

「レンもヤマブキジムに挑戦するんだろ?」

 

「うん」

 

「だったら今から戦うのか?」

 

リザード。

 

リオル。

 

二匹がレンを見る。

 

「…………」

 

レンはジムを振り返った。

 

ナツメ。

 

ユンゲラー。

 

テレポート。

 

サイコキネシス。

 

そして進化直後とは思えないほどの身体操作。

 

戦うことはできる。

 

リザードも。

 

リオルも。

 

サトシのピカチュウとは違う戦い方ができる。

 

それでも。

 

「今日はやめる」

 

「え!?」

 

サトシが驚いた。

 

「何でだよ!」

 

「勝つため」

 

「勝つため?」

 

レンは頷く。

 

「今挑んでも、勝てる可能性はあると思う」

 

リザードを見る。

 

リオルを見る。

 

「でも、勝てるかもしれないで挑むつもりはない」

 

「リザ……」

 

「リオ……」

 

二匹は静かに聞いている。

 

「ナツメとユンゲラーは、今まで戦った相手とかなり違う」

 

レンは自分の手を見る。

 

「テレポートで位置を変える。離れた場所から相手の身体を動かす。それに……」

 

進化。

 

「ケーシィからユンゲラーになった直後なのに、身体の変化へほとんど戸惑わなかった」

 

「そういえば……」

 

タケシが気づく。

 

「レンのリザードは、進化した後にかなり身体の使い方を確認してたな」

 

「うん」

 

リザードがユンゲラーとの戦いを思い返すように目を細める。

 

「あれは単純に強いだけじゃない。ナツメとの繋がりも含めて、何かあると思う」

 

サトシが腕を組む。

 

「じゃあレンもゴーストポケモンを捕まえるのか?」

 

「捕まえないよ」

 

「え?」

 

「俺はリザードかリオルで勝つ」

 

即答。

 

二匹が顔を上げる。

 

「リザ!」

 

「リオ!」

 

レンは笑う。

 

「そのためにシオンタウンへ行く」

 

「どういうこと?」

 

カスミが尋ねる。

 

「ゴーストポケモンがどう戦うのか見たい。ナツメとユンゲラーを崩すための材料になるかもしれないから」

 

相性だけで答えを出すつもりはない。

 

今いる仲間とどう勝つか、それを考える。

 

「なるほどな」

 

タケシが頷く。

 

「じゃあ決まりだ!」

 

サトシが拳を上げる。

 

「シオンタウンへ行こう!」

 

「ピカ!」

 

◇

 

ヤマブキシティを出る。

 

次の目的地はシオンタウン、歩きながらリオルはずっと考えていた。

 

「リオ……」

 

拳を見る、あの戦い。

 

ピカチュウは速かったそれでも捕まった。

 

自分ならどうする。

 

『みきり』

 

相手の肩。

 

腰。

 

足。

 

視線。

 

攻撃の始まり。

 

それを読んで。

 

避ける。

 

だが。

 

ユンゲラーはほとんど動かなかった。

 

それでも攻撃は来た。

 

「リオ……」

 

悔しそうに拳を握る。

 

レンはそれに気づいた。

 

「難しそう?」

 

「リオ」

 

「俺も」

 

「リオ?」

 

レンは笑う。

 

「今のままだと、どう崩すかまだ分からない」

 

「…………」

 

「でも」

 

前を見る。

 

シオンタウンへ続く道。

 

「分からないなら、分かるまで見ればいい」

 

リオルが顔を上げる。

 

「届かないなら、届く方法を作ればいい」

 

「リオ……!」

 

「一緒に考えよう」

 

「リオ!」

 

強く頷く、その少し前のリザードも話を聞いていた。

 

「リザ」

 

「もちろんリザードもね」

 

「リザ!」

 

レンは二匹を見る、ナツメは強敵今までの相手とは明らかに違うだからこそ勝ちたい。

 

ただ挑むだけではなく観察して考えて鍛えて最後には自分たちの力で上回る。

 

「四つ目」

 

レンが呟く。

 

「絶対取ろう」

 

「リザ!」

 

「リオ!」

 

二匹の声が重なる。

 

その隣では。

 

「待ってろよ、ナツメ!」

 

サトシが拳を突き上げる。

 

「今度は絶対勝つからな!」

 

「ピカピカ!」

 

「まずはシオンタウンまでちゃんと辿り着きなさいよ」

 

「分かってる!」

 

「この前崖から落ちかけた人が言っても説得力ないわよ」

 

「まだ言うのかよ!」

 

「言うわよ!」

 

いつもの声が道へ響く。

 

レンは小さく笑った。

 

そして隣を歩くリオルを見る。

 

もっと強くなりたい、誰かを守れるように届かない相手にも届くようにその思いは確かに以前より強くなっている。

 

レンはまだ知らない。

 

その積み重ねがリオル自身を大きく変える瞬間が少しずつ近づいていることを。

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ポケットモンスター ―君と目指す頂―(作者:あああああ)(原作:ポケットモンスター)

ポケモンを愛し、アニメもゲームも知り尽くした青年が目を覚ますと、そこはポケモンが本当に生きる世界――そして自分は、幼いサトシになっていた。▼未来の知識と波導の才能を武器に、幼いピチューとの絆を育み、セレナとの出会いを経て始まる新たな物語。▼原作と同じ数々の事件や出会いを経験しながらも、その選択は未来を変えていく。▼目指すは世界最強、そしてポケモンマスター。▼…


総合評価:211/評価:8.8/連載:69話/更新日時:2026年10月07日(水) 19:16 小説情報

めざせ、ポケモンマスター!(作者:瓶詰め蜂蜜)(原作:ポケットモンスター)

アニポケのサートシくんに転生した。▼けど、この世界はどうやら前世で見ていたアニポケのものとは違うようで……。▼どうせサートシくんに転生したのなら、全ての種類のポケモンと出会い、ポケモンマスターになる事を目指してもいいよな!▼


総合評価:357/評価:8/連載:20話/更新日時:2026年10月07日(水) 22:41 小説情報

ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド(作者:ガチャガチャクツワムシ)(原作:ポケットモンスター)

サトシと同期の5人目の新人トレーナーとして主人公が旅に出て成長していく物語。▼オリジナルキャラが多めに出る上、原作キャラの強化もしようと考えています。▼生成AI使用して作成してします。


総合評価:163/評価:6.25/連載:156話/更新日時:2026年10月07日(水) 20:55 小説情報

転生した引きこもりのアニポケ冒険譚(作者:ミカりん)(原作:ポケットモンスター)

 ポケットモンスターの世界に、異物が紛れ込んだ。▼ 異物は、決して語られぬ存在と結びつき、やがてそれは大きな時空のうねりとなって流れていく。▼ ポケモンマスターを目指す少年、マサラタウンのサトシの同期として紛れ込んだその『異物』は、オーキド博士に貰ったヒトカゲとその前からのトモダチであるカラカラの2匹と旅に出て、誰と出会い、誰と競い合うのか。▼ しかし、彼は…


総合評価:42/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年07月09日(木) 17:27 小説情報

『ベル・クラネル』の双子の兄として転生するのは間違っているだろうか(作者:麵魔)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

この小説は、ダンまちに転生しベルの双子の兄として生き▼その兄の仲間が、オラリオにいる人物たちそっくりさんと一緒に団長として行動する▼※タグの追加は話を出していくたびに追加していきます▼※作者の自己満足のために書いたものです。▼


総合評価:166/評価:5.12/連載:9話/更新日時:2026年09月24日(木) 23:00 小説情報


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