隣の席は南ことり   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第十一話 いつもの毎日

 月曜日。

 

「水瀬、昨日のやつ見た?」

 

 朝、席に着いて教科書を机へ入れていると、前の席から佐藤が振り返った。

 

「昨日のやつって?」

 

「ドラマだよ。先週話しただろ」

 

「ああ。見た見た」

 

「最後ヤバくなかった?」

 

「俺は途中から怪しいと思ってたけど」

 

「嘘つけ。絶対分かってなかっただろ」

 

「いや、あの先生が出てきたあたりで少し」

 

「後半じゃねえか」

 

「分かったことには変わらない」

 

「それで推理した気になるなよ」

 

 佐藤が笑う。

 

 月曜日の朝は、大体こんな感じだ。

 

 休みの間に見たテレビの話だったり、漫画の話だったり。この前一緒に行ったゲームセンターの話になることもある。

 

「そういや、今度あのゲームやろうぜ」

 

「格ゲー?」

 

「それ。水瀬、弱かったし」

 

「初めてだったんだから仕方ないだろ」

 

「次も負けたら?」

 

「ジュース一本」

 

「言ったな?」

 

「そっちが負けてもだからな」

 

「余裕」

 

「その台詞覚えとく」

 

 話していると、教室の前の扉から南さんが入ってきた。

 

「おはよう、水瀬君。佐藤君」

 

「おはよう」

 

「おはよ、南」

 

 南さんは自分の席へ向かおうとして、途中で足を止めた。

 

「あ、水瀬君」

 

「ん?」

 

「昨日ね、あれの続きを少し考えてみたの」

 

「あれ?」

 

「この前話してた服」

 

「ああ」

 

「あとで見てもらってもいい?」

 

「いいよ」

 

「ありがとう」

 

 南さんは嬉しそうに笑って、自分の席へ向かっていった。

 

 その後ろ姿を見送っていると、佐藤がこちらを向く。

 

「服?」

 

「南さん、服作るの好きだから」

 

「へえ。水瀬んちも服屋だっけ」

 

「洋装店ね」

 

「何が違うんだ?」

 

「説明すると長い」

 

「じゃあいいや」

 

「聞いといてそれ?」

 

 そんなことを話しているうちに先生が教室へ入ってきた。

 

 ◇

 

 昼休み。

 

「水瀬、食おうぜ」

 

「うん」

 

 今日は佐藤と、何人かの男子で机を囲んだ。

 

 話題は途中から、次の体育で何をするかに移っていた。

 

「サッカーがいい」

 

「俺バスケ」

 

「水瀬は?」

 

「どっちでも」

 

「一番つまんねえ答え!」

 

「じゃあ卓球」

 

「選択肢にねえよ」

 

「だったら聞くなよ」

 

 くだらない話をしながら弁当を食べる。

 

 ふと教室の反対側を見ると、南さんも女子数人と一緒に昼を食べていた。

 

 目が合う。

 

 南さんが小さく手を振った。

 

 俺も軽く手を上げて返す。

 

「水瀬、聞いてる?」

 

「聞いてるよ」

 

「じゃあ今何の話?」

 

「体育」

 

「その前」

 

「知らん」

 

「聞いてねえじゃん!」

 

「ごめんごめん」

 

 笑いながら、また男子の話に戻る。

 

 南さんと同じクラスだからといって、ずっと一緒にいるわけじゃない。

 

 俺には俺の友達がいるし、南さんには南さんの友達がいる。

 

 でも、廊下ですれ違えば話すし、帰る時間が同じなら一緒に帰る。

 

 それくらいが、今はちょうどよかった。

 

 ◇

 

「水瀬君」

 

 放課後。

 

 帰り支度をしていると、南さんがノートを抱えてやってきた。

 

「朝言ってたやつ?」

 

「うん。ちょっとだけいい?」

 

「いいよ」

 

 開かれたノートには、服の絵が描かれていた。

 

 以前よりも細かい。

 

 全体の形だけではなく、袖や襟、使いたい布についても横に小さく書き込まれている。

 

「ワンピース?」

 

「うん。まだ作るって決めたわけじゃないんだけど……こういうの、可愛いかなって」

 

「いいんじゃない?」

 

「ほんと?」

 

「ただ、これだと袖がちょっと難しいかも」

 

「ここ?」

 

 南さんが指差す。

 

「うん。この形にしたいなら、身頃とどう繋ぐか考えないと。あと、この布だと絵みたいにふわっとしないと思う」

 

「じゃあ、もう少し薄い方がいい?」

 

「形を出したいならね。ただ薄すぎても縫いにくいから――」

 

 そこまで話したところで、横から声が飛んできた。

 

「二人とも、まだ帰らないの?」

 

 高坂さんだった。

 

 その隣には園田さんもいる。

 

「穂乃果ちゃん」

 

「何見てるの?」

 

「南さんが考えた服」

 

「見たい!」

 

 高坂さんがすぐ横へ来る。

 

「わあ、可愛い!」

 

「まだ考えてるだけだよ?」

 

「でも可愛いよ!」

 

「ありがとう」

 

 南さんが少し照れたように笑う。

 

 園田さんもノートを覗き込んだ。

 

「以前作ったものより、かなり複雑そうですね」

 

「そうなんだ。だから水瀬君に聞いてたの」

 

「これを作るのですか?」

 

「まだ分からないけど、いつか作れたらいいなって」

 

 南さんが自分の描いた服を見る。

 

 俺ももう一度ノートを見た。

 

「いきなり全部作るんじゃなくて、一回小さいところから試してみてもいいかもね」

 

「小さいところ?」

 

「袖だけ練習するとか。余ってる布ならうちにもあるし」

 

「あ、それいいかも」

 

「じゃあ今度――」

 

「あっ!」

 

 突然、高坂さんが声を上げた。

 

「何?」

 

「水瀬君、この前のほむまん!」

 

「ああ」

 

「お家の人、食べた?」

 

「食べたよ」

 

「どうだった!?」

 

「美味しいって」

 

「ほんと!?」

 

 ぱっと顔が明るくなる。

 

「母さんが、今度近くに行ったら店にも寄ってみたいって言ってた」

 

「やった!」

 

「穂乃果が作ったわけではないでしょう」

 

「でも嬉しいんだもん!」

 

「それはこの前聞いた」

 

「何回でも嬉しいよ!」

 

「そういうもんか」

 

「そういうもの!」

 

 高坂さんは満足そうに頷いた。

 

 ◇

 

 四人で校門を出たものの、途中で園田さんが足を止めた。

 

「私は今日は部活がありますので」

 

「あ、そっか」

 

「海未ちゃん頑張ってね!」

 

「はい。では、また明日」

 

「またね」

 

「じゃあね、園田さん」

 

 園田さんが弓道場の方へ向かっていく。

 

 残った三人でしばらく歩いていると、今度は高坂さんが「あっ」と声を上げた。

 

「私、頼まれてたんだった!」

 

「何を?」

 

「帰りに買い物してきてって、お母さんに」

 

「忘れてたの?」

 

「今思い出したからセーフ!」

 

「セーフなのかな」

 

「家に帰ってから思い出すよりはいいんじゃない?」

 

 南さんが笑う。

 

「でしょ? じゃあ私こっちだから!」

 

「うん。また明日」

 

「またね!」

 

 高坂さんが手を振って走っていく。

 

「走ると危ないよー!」

 

「分かってるー!」

 

 遠くから返事が聞こえた。

 

「……絶対分かってないよね」

 

「穂乃果ちゃんだから」

 

 それで説明がついてしまうあたり、付き合いの長さを感じる。

 

 ◇

 

 気づけば、帰り道は南さんと二人になっていた。

 

「水瀬君、今日はお店?」

 

「うん。帰ったら少し手伝うよ」

 

「そっか」

 

「南さんは?」

 

「今日は特に何もないかな」

 

「じゃあゆっくりできるね」

 

「うん」

 

 しばらく並んで歩く。

 

 以前なら、南さんと二人きりになると少しだけ意識していた。

 

 前世で好きだった女の子が隣を歩いている。

 

 そんなことを考えていた時期もある。

 

 今は、それより先に普通の会話が出てくる。

 

「さっきの服、本当に作るの?」

 

「作ってみたいけど……難しい?」

 

「今すぐ一人で全部は難しいと思う」

 

「やっぱり?」

 

「でも、練習すればできるよ」

 

「水瀬君、手伝ってくれる?」

 

「もちろん」

 

「ほんと?」

 

「その代わり、俺が全部作るのはなしね」

 

「分かってるよ」

 

 南さんが笑う。

 

「自分で作りたいから」

 

「なら大丈夫」

 

「でも、分からないところは教えてね?」

 

「そこは任せて」

 

「水瀬先生」

 

「先生じゃないって」

 

「ふふっ」

 

 前にも似たようなことを言われた気がする。

 

 そんな話をしながら歩いていると、南さんがふと思い出したように口を開いた。

 

「そういえば、お母さんがね」

 

「うん」

 

「水瀬君のこと聞いてきたの」

 

「俺?」

 

「うん。この前、お店に行った話をしたから」

 

「何て?」

 

「服屋さんの男の子と仲良くなったって」

 

「それだけ?」

 

「それだけだよ?」

 

「ならいいけど」

 

「何を心配してるの?」

 

「いや、別に」

 

 南さんは少し考えてから、楽しそうに笑った。

 

「お母さん、水瀬君のお店にも興味あるみたい」

 

「へえ」

 

「お洋服好きだから」

 

「じゃあ、今度来てもらえばいいよ」

 

「うん。そう言っておくね」

 

 そこで話は一度終わった。

 

 けれど数歩進んだところで、南さんがもう一度口を開く。

 

「……あのね、水瀬君」

 

「何?」

 

「今度、うちにも来る?」

 

「南さんの家?」

 

「うん」

 

 少しだけ意外だった。

 

「この前、穂乃果ちゃんの家に行ったでしょ?」

 

「行ったね」

 

「それで……水瀬君、ことりのお家には来たことないなって思って」

 

「そりゃないでしょ」

 

「そうなんだけど」

 

 南さんが少しだけ困ったように笑う。

 

「穂乃果ちゃんと海未ちゃんは何回も来てるし。今度みんなで遊ばない?」

 

「いいよ」

 

「ほんと?」

 

「南さんはうちに何回も来てるんだし。俺だけ駄目って言われたら困るけど」

 

「そんなこと言わないよ」

 

「じゃあお邪魔しようかな」

 

「うん!」

 

 南さんの表情が明るくなる。

 

「穂乃果ちゃんと海未ちゃんにも聞いてみるね」

 

「了解」

 

 それ以上、その話を特別なものにはしなかった。

 

 友達の家へ遊びに行く。

 

 この前は高坂さんの家で、今度は南さんの家。

 

 ただそれだけのことだ。

 

 ◇

 

「ただいま」

 

「おかえり」

 

 家へ帰ると、店の奥から母さんの声が返ってきた。

 

「拓海、ちょうどよかった。これ二階に運んでくれる?」

 

「分かった」

 

 鞄を置き、渡された箱を持ち上げる。

 

 学校へ行って。

 

 友達とくだらない話をして。

 

 南さんと服の話をして。

 

 高坂さんたちと帰って。

 

 家に戻れば、店を手伝う。

 

 特別なことなんて何もない。

 

 でも最近、こういう日が少し楽しい。

 

「拓海?」

 

「何?」

 

「ぼーっとしてないで、それお願いね」

 

「今やるって」

 

 箱を抱えて階段へ向かう。

 

 明日もたぶん、今日とそんなに変わらない。

 

 それでいい。

 

 中学生なんだから。

 

 毎日何か大きな出来事が起こる方がおかしい。

 

 今はまだ、こんな日々を重ねていけばいいと思った。




また投稿しますー。

では、また∠( ゚д゚)
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