続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
火曜日の朝。
「水瀬、土曜の件どうなった?」
教室に入って自分の席へ向かうと、前の席に座っていた佐藤が振り返った。
「ああ、ゲーセンの話?」
「そうそう。行けそうか?」
「昨日、母さんに聞いてみたけど、午後なら大丈夫だって」
「よっしゃ! じゃあ決まりな!」
「今度こそ一勝くらいはしたいな」
「ははっ! 水瀬にはまだ早いって!」
「言ってくれるなあ」
前に一緒に遊んだとき、格闘ゲームでは佐藤にほとんど勝てなかった。操作には多少慣れてきたものの、対戦経験の差はなかなか埋まらない。
「一応、家でも少し練習したんだけどな」
「おっ、やる気じゃん」
「負けっぱなしも悔しいし」
「じゃあ、今度はちょっと本気出すか」
「前も手加減してたのかよ!」
思わず声を上げると、佐藤が楽しそうに笑った。
「冗談だって。で、何時にする?」
「午後一時くらいでどう?」
「いいね。駅前で待ち合わせな」
「了解」
そんな話をしていると、教室の扉が開いた。
「おはよう、水瀬君。佐藤君」
南さんだった。
「おはよう、南さん」
「おう、おはよ」
南さんは俺たちに挨拶すると、近くにいた女子の友達に声をかけられた。
「ことりちゃん、昨日の宿題やった?」
「うん。最後の問題、ちょっと難しかったよね」
「そうそう! あそこ教えてほしいんだけど……」
「いいよ。一緒に見よっか」
南さんは友達とノートを広げ、問題を確認し始めた。
俺も鞄から教科書を取り出し、朝の授業の準備をする。
ほどなくして、ホームルームを知らせるチャイムが鳴った。
◇
三時間目は国語だった。
「では、この場面で主人公はどういう気持ちだったと思いますか?」
先生の問いかけに、教室のあちこちで教科書をめくる音がした。
今日読んでいるのは、登場人物同士のすれ違いを描いた物語だ。
俺も該当する部分を読み返す。
主人公は友達に言いたいことがあったのに、結局最後まで言い出せなかった。
理由は何となく分かる。
相手を傷つけたくなかったのかもしれないし、自分が嫌われるのが怖かったのかもしれない。
「じゃあ、水瀬君」
「はい」
「どう思いますか?」
俺は少し考えてから答えた。
「相手に嫌われたくなかったんだと思います。でも、それだけじゃなくて、言ったあとに今までと同じ関係でいられるか不安だったのかなって」
「なるほど。そう考えた理由は?」
「この前の場面では普通に話してたのに、ここでは相手の顔を見られなくなってるので」
「いいですね。では、他の意見も聞いてみましょう」
先生が教室を見渡す。
何人かの生徒が手を挙げ、別の考えを話し始めた。
同じ文章を読んでいても、感じ方は人によって違う。
そんなことを考えながら、俺はノートに他の生徒の意見を書き込んだ。
◇
昼休み。
「水瀬、土曜って何時に帰る予定?」
弁当を食べていると、佐藤が聞いてきた。
「夕方くらいかな。晩飯までには帰るつもり」
「じゃあ、結構遊べるな」
「そうだね」
今日は佐藤と、いつもの男子二人と机を寄せて昼食を取っている。
「何だよ、二人でゲーセン行くの?」
「おう。水瀬が格ゲーのリベンジしたいんだって」
「へえ、水瀬って格ゲーやるんだ」
「最近ちょっとだけね」
「佐藤に勝てる?」
「今のところ、ほとんど勝ててない」
「だろうな。こいつ、あのゲームだけは妙に強いし」
「あのゲームだけって何だよ!」
佐藤が抗議すると、また笑い声が上がった。
そんな話をしているうちに、午後の授業を知らせる予鈴が鳴った。
◇
午後の授業が終わり、掃除の時間になった。
今日は俺たちの班が教室掃除を担当している。
「水瀬君、そっちの机、動かしてもいい?」
「うん。ちょっと待って」
南さんが雑巾を持ってやってきた。
俺は机の上に残っていた教科書を持ち上げ、隣の机へ移す。
「これで大丈夫」
「ありがとう」
南さんが机を拭いている間、俺は床に落ちていた消しゴムのかすを箒で集めた。
「そういえば、水瀬君」
「ん?」
「今日の国語の授業、ちょっと面白かったね」
「ああ、主人公の気持ちを考えるやつ?」
「うん。みんな少しずつ意見が違ってたから」
「そうだね。ああいうのって正解が一つじゃないし」
「ことりはね、主人公は相手に心配をかけたくなかったんじゃないかなって思ったの」
「へえ」
「でも、水瀬君の意見を聞いたら、そういう考え方もあるんだなって」
「俺も南さんの考え方、分かる気がするよ」
「ほんと?」
「うん。どっちもありそうだし」
南さんは嬉しそうに笑った。
「ふふっ、そうだね」
「水瀬ー! 机戻すぞー!」
教室の反対側から声が飛んできた。
「了解!」
俺は箒を片づけ、南さんと一緒に机を元の位置へ戻し始めた。
◇
放課後。
「水瀬、じゃあ土曜よろしくな!」
「おう。また明日」
佐藤が他の男子たちと一緒に教室を出ていく。
俺も鞄を肩にかけたところで、南さんに声をかけられた。
「水瀬君、もう帰る?」
「うん。南さんも?」
「うん」
「じゃあ、一緒に帰る?」
「いいよ」
二人で教室を出る。
廊下には部活へ向かう生徒や、友達同士で話しながら帰る生徒たちがいた。
階段を下りながら、南さんが思い出したように口を開いた。
「そういえば、この前お母さんと買い物に行ったんだけどね」
「うん」
「そのとき、水瀬君のお店の話になったの」
「うちの?」
「うん。ことりがよく遊びに行ってるって話したら、どんなお店なのか気になったみたい」
「へえ。そうなんだ」
「お母さんもお洋服好きだから」
「それなら、今度一緒に来ればいいのに」
「うん。ことりもそう言ったんだけど……」
南さんは少し考えるように首を傾げた。
「そういえば、水瀬君って、ことりのお家には来たことないよね?」
「そりゃそうでしょ」
「だよね」
南さんが小さく笑う。
「穂乃果ちゃんのお家にはこの前行ったでしょ?」
「うん。ほむまんも美味しかったし」
「ふふっ。穂乃果ちゃん、すごく喜んでたよね」
「家でも宣伝しておいたよ」
「きっとまた喜ぶね」
そんな話をしてから、南さんが俺を見る。
「ねえ、水瀬君」
「何?」
「今度、ことりのお家にも遊びに来ない?」
「南さんの家?」
「うん。穂乃果ちゃんと海未ちゃんも一緒に」
「いいの?」
「もちろん。二人は何度も来てるし、水瀬君にも来てもらえたら嬉しいなって」
「じゃあ、お邪魔しようかな」
「ほんと?」
「うん」
南さんが嬉しそうに笑う。
「じゃあ、二人にも聞いてみるね」
「了解」
その後、高坂さんと園田さんにも都合を聞き、南さんの家には日曜日に遊びに行くことになった。
◇
そして迎えた土曜日。
「よっしゃ、勝った!」
「うわ、また負けた……」
ゲームセンターの対戦台で、俺は思わず肩を落とした。
画面には佐藤の使っているキャラクターが勝利ポーズを決めている。こちらも少しは粘れるようになったものの、最後の一撃を決めきれずに負けてしまった。
「惜しかったな、水瀬。さっきよりはよかったぞ」
「その台詞、今日何回目だよ」
「いや、今のは本当に惜しかったって!」
「だったら一回くらい勝たせてくれよ」
「それは嫌だ」
「即答かよ!」
佐藤は笑いながら席を立った。
何戦も続けたせいで、さすがに指が疲れてきた。俺も立ち上がり、佐藤と一緒に飲み物を買いに向かう。
「次は何やる?」
「ちょっと格ゲー以外にしようぜ。さすがに負け続けるのも疲れる」
「じゃあ、レースゲームでもやるか」
「いいね。そっちなら勝てるかもしれない」
「おっ、言ったな?」
「今度こそ勝つからな」
「ははっ、楽しみにしてる!」
それからはレースゲームやクレーンゲームを回り、途中で軽く何かを食べた。
学校では授業の合間に話すことが多いけど、こうして休日に一緒に遊ぶのもなかなか楽しい。
結局、レースゲームでも佐藤には負け越したものの、格ゲーほど一方的な結果にはならなかった。
「いやー、今日は楽しかったな!」
夕方、駅前で佐藤が大きく伸びをした。
「俺も。格ゲーは散々だったけど」
「また練習しとけよ。次も相手してやるから」
「その余裕、いつかなくしてやる」
「期待してるぜ!」
軽く拳を合わせ、佐藤と別れた。
帰り道、俺は今日の対戦を思い返す。
次こそ一勝くらいはしたい。
……まあ、すぐには無理かもしれないけど。
◇
そして翌日、日曜日。
今日は南さんの家へ遊びに行く日だ。
昼食を済ませ、約束の時間に合わせて家を出る。待ち合わせ場所には、すでに南さんと高坂さん、園田さんが集まっていた。
「あっ、水瀬君!」
最初に気づいた高坂さんが手を振る。
「こんにちは、高坂さん。園田さん、南さん」
「こんにちは!」
「こんにちは、水瀬君」
「こんにちは。じゃあ、行こっか」
南さんが笑い、俺たちは四人で歩き始めた。
「ことりちゃんのお家、久しぶりだね!」
「先月も来たでしょう」
「そうだっけ?」
「来ましたよ。忘れたのですか?」
「えへへ……」
高坂さんが笑ってごまかす。
「二人はよく来るんだね」
「うん。小さいころから何回も遊んでるよ」
「お泊まりしたこともありますね」
「へえ」
「水瀬君は初めてだもんね」
「そうだね」
「ちょっと緊張してる?」
「少しだけ」
「大丈夫だよ。お母さんも楽しみにしてたから」
「……そうなの?」
「うん!」
それはそれで、少し緊張するんだけど。
そんなことを考えているうちに、南さんが一軒の家の前で足を止めた。
「着いたよ」
俺は目の前の家を見上げた。
ここが、南ことりの家。
前世の俺が知っていたのは、スクールアイドルとして活動する彼女の姿が中心だった。
だから、こうして実際に家へ遊びに来るのは、何とも不思議な気分だ。
「じゃあ、入ろっか」
南さんが玄関の扉を開ける。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
「お邪魔します」
俺も二人に続いて頭を下げた。
◇
「あら、おかえりなさい」
奥から女性の声が聞こえた。
ほどなくして姿を現したのは、穏やかな雰囲気の女性だった。
「お母さん、ただいま」
「おかえり、ことり」
南さんのお母さんは、まず高坂さんと園田さんに笑いかける。
「穂乃果ちゃん、海未ちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは!」
「お邪魔します」
そして俺へ視線を向けた。
「あら、あなたが水瀬君?」
「はい。初めまして。水瀬拓海です。今日はお邪魔します」
頭を下げると、お母さんは柔らかく微笑んだ。
「初めまして。ことりの母です。ことりからよく話を聞いているわ」
「……え?」
思わず南さんを見る。
「お、お母さん!」
南さんが慌てたように声を上げた。
「あら、本当のことでしょう?」
「そうだけど……!」
「洋服作りが上手で、いつも色々教えてくれる男の子なんですってね」
「ああ、そういう話ですか」
少しだけ安心する。
「うちが洋装店なので、多少は詳しいだけですよ」
「ふふっ。ことり、とても楽しそうに話してくれるのよ」
「もう、お母さん!」
南さんが頬を赤くして抗議する。
その横で高坂さんが首を傾げた。
「ことりちゃん、そんなに水瀬君の話してるの?」
「穂乃果ちゃんまで!」
「え、何で!?」
園田さんが小さくため息をついた。
「穂乃果、あまりからかわないの」
「からかってないよ!」
「ならいいのですが」
お母さんはそんな俺たちを楽しそうに眺めていた。
「さあ、上がって。お茶を用意するわね」
「ありがとうございます」
俺たちは靴を脱ぎ、南さんに案内されて家へ上がった。
◇
「ここがことりのお部屋だよ」
南さんが扉を開ける。
「お邪魔します」
中へ入ると、まず目についたのは棚に並べられた小物だった。
ぬいぐるみや可愛らしい雑貨のほかに、布で作られた小さな飾りやポーチも置かれている。
机の上にはノートが何冊か積まれていた。
「へえ……」
「どうしたの?」
「南さんらしい部屋だなって」
「そうかな?」
「うん。可愛いものが多いし」
「ふふっ、ありがとう」
南さんは嬉しそうに笑った。
「ことりちゃんのお部屋、可愛いよね!」
「穂乃果ちゃん、来るたびに言ってるよ」
「だって本当だもん!」
「穂乃果はいつも同じところに座りますね」
「ここが落ち着くんだよ!」
高坂さんは慣れた様子で座り、園田さんもその隣に腰を下ろす。
俺も空いている場所に座った。
やっぱり、この三人にとっては馴染みのある場所なんだろう。
「水瀬君、ちょっと待っててね」
南さんは机の引き出しから布を取り出した。
「これなんだけど……」
「ああ、ワンピースに使いたいって言ってた?」
「うん」
差し出されたのは、淡い水色の生地だった。
小さな模様が入っていて、見た目も柔らかい。
「ちょっと触っていい?」
「もちろん」
生地を受け取り、指先で厚みを確かめる。
「うん。これなら使えそう」
「ほんと?」
「ただ、少し薄いから裏地はあった方がいいと思う。あと、袖の形を出したいなら、そこだけ別の布にするのもありかな」
「そっか……」
南さんが考え込む。
「でも、この布は使いたいんだよね」
「うん。色が気に入ってるの」
「だったら、そこは変えなくていいと思うよ」
「え?」
「好きな布を使って作るのが一番楽しいだろうし。難しいところは、作り方を工夫すればいいから」
南さんが少し驚いたように俺を見る。
それから、嬉しそうに頷いた。
「うん!」
「ねえねえ、ことりちゃん!」
横から高坂さんが顔を覗かせる。
「その服、完成したら見せてね!」
「もちろん」
「私も着てみたい!」
「穂乃果、ことりが自分用に考えている服でしょう」
「あ、そっか!」
「でも、穂乃果ちゃんに似合う服も作ってみたいな」
「ほんと!?」
「うん。いつかね」
「やったー!」
高坂さんが嬉しそうに両手を上げる。
「海未ちゃんのも!」
「わ、私のですか?」
「うん! 海未ちゃんにも似合う服、考えてみたいな」
「そ、それは……」
園田さんは少し困ったような顔をした。
「派手すぎないものでしたら……」
「海未ちゃん、可愛い服も似合うと思うよ?」
「穂乃果!」
「まだ何も言ってないよ!」
「言おうとしていたでしょう!」
また二人が言い合いを始める。
南さんは楽しそうに笑いながら、ノートへ何かを書き込んでいた。
きっと今の会話から、何か思いついたのだろう。
俺はその様子を眺めながら、少しだけ笑った。
◇
「そういえば、これも見てほしいんだ」
南さんが棚から小さな箱を取り出した。
中には、布で作られた小物がいくつも入っていた。
「昔作ったものなんだけど……」
「へえ」
手に取ってみると、小さな巾着袋だった。
縫い目は少し不揃いで、紐を通す部分も若干曲がっている。
でも、丁寧に作ろうとしたことは伝わってくる。
「これ、南さんが作ったの?」
「うん。小さいころに」
「すごいじゃん」
「でも、あんまり上手じゃないでしょ?」
「最初から上手くできる人なんていないよ」
俺は巾着を裏返し、縫い目を確かめる。
「ほら、ここ。ちゃんと返し縫いしてあるし、紐を通すところも考えて作ってる」
「そこはお母さんに教えてもらったの」
「そうなんだ」
「うん。最初は全然上手くできなくて、何回もやり直したんだよ」
「分かる。俺も昔はよく縫い直してた」
「水瀬君も?」
「そりゃそうだよ。最初から何でもできたわけじゃないし」
南さんが嬉しそうに笑う。
「なんだか、ちょっと安心した」
「何で?」
「水瀬君って、何でも上手に作れるイメージがあるから」
「買いかぶりすぎだって」
「ふふっ、そうかな?」
南さんは巾着を受け取ると、大事そうに箱へ戻した。
その様子を見て、俺は少しだけ考える。
水瀬洋装店では、南さんは俺に教わることが多い。
でも、こうして昔作ったものを見ると、南さんが俺と出会う前から服や小物作りを好きだったことがよく分かる。
俺が何かを教えたから、好きになったわけじゃない。
元々好きだったことを、今も楽しんでいるだけなんだ。
◇
「みんな、お茶にしましょうか」
しばらくすると、南さんのお母さんが声をかけてきた。
「はーい!」
高坂さんが真っ先に返事をする。
「穂乃果、元気ですね」
「お茶だよ、海未ちゃん!」
「分かっています」
俺たちは一階へ下りた。
テーブルにはお茶とお菓子が用意されている。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。みんな、楽しんでる?」
「うん!」
「とっても楽しいよ、お母さん」
南さんが答える。
「それはよかった」
お母さんは俺を見ると、少しだけ笑った。
「水瀬君、ことりの部屋はどうだった?」
「可愛いものが多くて、南さんらしい部屋だと思いました」
「あら、そう?」
「お母さん!」
「ふふっ。ことり、小さいころから可愛いものが好きだったから」
「それは分かります」
「水瀬君まで!」
南さんが少し恥ずかしそうに頬を膨らませる。
その様子に、高坂さんが笑った。
「ことりちゃん、照れてる!」
「穂乃果ちゃん!」
「ふふっ」
お母さんまで笑っている。
どうやら南さんがからかわれるのは、この家では珍しくないらしい。
俺はお茶を一口飲みながら、そんなやり取りを眺めていた。
◇
夕方。
「今日はありがとうございました」
玄関で靴を履き、南さんのお母さんに頭を下げる。
「こちらこそ。また遊びに来てね」
「はい」
「水瀬君、今度はお店にも伺わせてもらうわね」
「ぜひ。母も喜ぶと思います」
「ふふっ、楽しみにしてるわ」
その横で南さんが嬉しそうに笑っていた。
「水瀬君、今日はありがとう」
「こっちこそ。色々見せてもらえて楽しかったよ」
「ほんと?」
「うん。昔作ったものとか、面白かったし」
「また見せるね」
「楽しみにしてる」
高坂さんが横から顔を出す。
「ことりちゃん、また遊びに来るね!」
「うん!」
「次は何して遊ぼっか?」
「それはまた考えましょう」
「海未ちゃん、真面目!」
「何がですか!」
いつものやり取りに笑いながら、俺たちは南さんの家を後にした。
◇
帰り道。
高坂さんと園田さんが少し前を歩き、俺はその後ろを歩いていた。
今日は南さんの家へ初めて行った。
可愛いものが並んだ部屋。
昔作った巾着袋。
服のデザインを描いたノート。
そして、南さんのお母さん。
学校や水瀬洋装店では知らなかった南さんの一面を、少しだけ知ることができた。
前世の俺が好きだった南ことりは、可愛らしくて、優しくて、衣装作りが得意な女の子だった。
それは今も変わらない。
でも、今日見たものは、それだけじゃない。
小さいころに何度も縫い直した巾着を、今でも大切に取ってある。
気に入った布を使って、自分の好きな服を作ろうとしている。
そんな南さんのことを、俺はまだほとんど知らなかったのかもしれない。
帰り道では、高坂さんが今日のお菓子の話を始め、園田さんがそれに付き合っていた。
南さんも楽しそうに笑っている。
俺はその会話に加わりながら、三人と並んで歩いた。
また明日になれば、学校で会うことになる。
そのときは、今日見た巾着の話でもしてみようか。
そんなことを考えながら、俺たちは帰り道を歩いていった。
また投稿しますー。
では、また∠( ゚д゚)