隣の席は南ことり   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第七話 みんなの場所

 放課後。

 

 帰りのホームルームが終わり、鞄へ教科書を入れていると、南さんが俺の席までやって来た。

 

「水瀬君、今日お店行ってもいい?」

 

「いいよ。この前の続き?」

 

「ううん。今日はちょっと生地を見たいなって」

 

「また何か作るの?」

 

「まだ考えてるところ」

 

 そう言いながら、南さんは鞄から例のノートを少しだけ覗かせた。

 

 この前、自分で考えたポーチを完成させてから、どうやら火がついたらしい。休み時間にも、時々ノートへ何か描き込んでいる姿を見かける。

 

「今度は難しすぎないやつにしてよ」

 

「まだ何も言ってないよ~」

 

「先に言っとこうと思って」

 

「もう」

 

 南さんが頬を膨らませた、そのときだった。

 

「ことりちゃーん!」

 

 教室の入り口から大きな声が響いた。

 

「あ、穂乃果ちゃん」

 

 見なくても誰か分かる。

 

 高坂さんがこちらへやって来て、その少し後ろから園田さんも入ってきた。

 

「穂乃果。他のクラスなのですから、もう少し静かに入ってください」

 

「もう放課後なんだからいいじゃん」

 

「そういう問題ではありません」

 

「海未ちゃんは細かいなぁ」

 

「穂乃果が大雑把すぎるのです」

 

 相変わらずだ。

 

「高坂さんと園田さん、今日は部活ないの?」

 

「私は少し時間があります。穂乃果は――」

 

「今日は何もないよ!」

 

「だそうです」

 

「なんで海未ちゃんが呆れてるの?」

 

「いつものことでしょう」

 

「ひどい!」

 

 高坂さんが抗議している横で、南さんが楽しそうに笑っている。

 

「それでね、ことりちゃん。今日どこか寄ってかない?」

 

「今日は水瀬君のお店に行こうかなって思ってたの」

 

「水瀬君のお店?」

 

 高坂さんが俺を見る。

 

「服屋さんだっけ?」

 

「洋装店。服も置いてるけど、仕立てとか直しもやってるよ」

 

「そうなんだ」

 

「前にも話したと思うけど」

 

「聞いたけど、見たことないからよく分かんない!」

 

「まあ、そうなるか」

 

「ことりちゃんはよく行ってるよね?」

 

「最近は時々ね。この前もポーチ作ったの」

 

「ポーチ?」

 

 高坂さんが食いついた。

 

「見たい!」

 

「持ってきてるよ」

 

 南さんが鞄から小さなポーチを取り出す。

 

「これ」

 

「えっ、これことりちゃんが作ったの!?」

 

「うん。水瀬君にいっぱい教えてもらったけど」

 

 高坂さんだけでなく、園田さんも興味深そうに覗き込んだ。

 

「綺麗にできていますね」

 

「ほんと? ありがとう、海未ちゃん」

 

「すごいよ、ことりちゃん! 普通にお店で売ってそう!」

 

「それはさすがに言いすぎじゃない?」

 

「水瀬君、厳しい!」

 

「いや、初めてにしては上手だよ。でも売り物と比べるのは違うでしょ」

 

「水瀬君にはいっぱい直してもらったもんね」

 

「直したっていうか、教えただけだけど」

 

「それでも」

 

 南さんはポーチを大事そうに鞄へ戻した。

 

 自分で作ったものを友達に褒めてもらえたのが嬉しいらしい。

 

「ねえ、水瀬君」

 

「何?」

 

「私もお店行っていい?」

 

「別にいいよ」

 

「やった!」

 

「私もよろしいですか?」

 

 園田さんが尋ねる。

 

「もちろん。時間が大丈夫なら」

 

「では、お言葉に甘えます。一度見てみたいと思っていました」

 

「じゃあ今日は四人だね」

 

 南さんが嬉しそうに言う。

 

「でも店だからね。高坂さん、走り回ったり商品勝手に触ったりしないでよ」

 

「私を何歳だと思ってるの!?」

 

「穂乃果なら先に言っておいた方がいいでしょう」

 

「海未ちゃんまで!?」

 

 思わず笑ってしまった。

 

 ◇

 

「水瀬、今日帰んの?」

 

 帰り支度を終えたところで、同じクラスの男子二人に声をかけられた。

 

「今日は店」

 

「また手伝い?」

 

「それもある」

 

 一人が俺の近くにいる三人を見て、少しだけ眉を上げた。

 

「今日は人数多いな」

 

「店を見てみたいんだって」

 

「ああ、水瀬ん家って服屋だっけ?」

 

「洋装店」

 

「その違いがよく分かんねえ」

 

「さっき高坂さんにも似たような説明したよ」

 

「じゃあ俺だけじゃないな」

 

 何が安心なのか分からない。

 

「今度、駅前行こうぜ」

 

「うん。そのときは付き合うよ」

 

「じゃあまた明日」

 

「また明日」

 

 二人が教室を出ていく。

 

 それを見送っていると、高坂さんが俺の方をじっと見ていた。

 

「何?」

 

「水瀬君、ちゃんと男の子の友達いるんだね」

 

「どういう意味?」

 

「だって、ことりちゃんから水瀬君の話を聞くと、服とかお店の話が多いから」

 

「穂乃果ちゃん!」

 

 南さんが慌てて高坂さんの袖を引っ張る。

 

「え? 何?」

 

「何でもない!」

 

「俺の話してるの?」

 

「た、たまにだよ?」

 

「へえ」

 

「普通だからね?」

 

「まだ何も言ってないけど」

 

「もう……」

 

 南さんが少し恥ずかしそうにする。

 

 園田さんはそんな二人を見て、小さくため息をついていた。

 

 ◇

 

 学校を出て、四人で店へ向かう。

 

「こっちで合ってる?」

 

「うん。ここを曲がったらそんなに遠くないよ」

 

 俺より先に南さんが答えた。

 

「ことりちゃん、もう道覚えてるんだ」

 

「何回か行ってるからね」

 

「いいなぁ。なんか秘密基地みたい」

 

「普通の店だって」

 

「でも奥に作業するところあるよ?」

 

「南さん」

 

「本当のことだもん」

 

「作業場! 見たい!」

 

「高坂さん、遊ぶ場所じゃないからね」

 

「分かってるって!」

 

「どうでしょうね」

 

「海未ちゃん!」

 

 高坂さんが抗議する。

 

 俺と南さんは顔を見合わせて笑った。

 

 こうして四人で歩くのにも、いつの間にか慣れてきた。

 

 最初、高坂さんと園田さんは「南さんの幼馴染」だった。

 

 でも今は、学校で会えば普通に話すし、一緒に帰ることもある。

 

 まだ南さんほど一緒にいるわけではない。

 

 それでも二人とも、もう俺自身の友達と言っていいと思う。

 

 ◇

 

 店の前へ着くと、高坂さんが看板を見上げた。

 

「ここが水瀬君のお店?」

 

「そう」

 

「思ってたより普通だね」

 

「何を想像してたの?」

 

「もっとこう……奥で水瀬君が一人で服を作ってる秘密工房みたいなの」

 

「なんで俺が職人になってるの?」

 

「違うの?」

 

「違うよ」

 

「でも水瀬君、結構できるよ?」

 

「南さんまで話をややこしくしないで」

 

 扉を開ける。

 

 カラン、とベルが鳴った。

 

「ただいま」

 

「お邪魔します」

 

「お邪魔しまーす!」

 

「お邪魔いたします」

 

 奥から母さんが顔を出した。

 

「あら、おかえり。今日は賑やかね」

 

「友達連れてきた」

 

「こんにちは」

 

 南さんはもう慣れたもので、自然に頭を下げる。

 

「ことりちゃん、いらっしゃい」

 

「はい」

 

 母さんは続いて、高坂さんと園田さんを見る。

 

「初めまして、よね?」

 

「はい! 高坂穂乃果です!」

 

「園田海未です。突然お邪魔して申し訳ありません」

 

「そんなに畏まらなくて大丈夫よ。拓海のお友達なら歓迎するわ」

 

「ありがとうございます!」

 

「拓海が女の子を三人も連れて帰ってくるなんてねぇ」

 

「母さん」

 

「何?」

 

「変な言い方しないで」

 

「事実でしょう?」

 

「言い方の問題だって」

 

 母さんが笑う。

 

 横を見ると、南さんまで口元を押さえていた。

 

「南さんも笑わないでよ」

 

「ごめんね」

 

「絶対面白がってるでしょ」

 

「ちょっとだけ♪」

 

「ほら」

 

「ことりちゃん、やっぱりよく来てるんだ」

 

 高坂さんが言う。

 

「うん。時々ね」

 

「へえ~」

 

 なぜか俺を見る。

 

「何?」

 

「別に?」

 

 なんなんだ。

 

 ◇

 

 せっかくなので、三人に店の中を簡単に案内することにした。

 

 既製品の服だけではなく、糸やボタン、生地、補修に使うものも置いてある。

 

「これ全部ボタン?」

 

「そう。大きさとか素材で色々あるよ」

 

「こんなに種類があるんですね」

 

 園田さんが棚を興味深そうに眺める。

 

「水瀬君は、どこに何があるか全部分かるのですか?」

 

「大体は。小さいころから店にいるから」

 

「すごいね」

 

「慣れてるだけだよ」

 

「でも水瀬君、こういうの詳しいよ」

 

 南さんが横から言う。

 

「ことりがポーチ作ったときも、色々教えてくれたもん」

 

「そうなのですか」

 

「生地とか型紙とか、ファスナーの付け方とか」

 

「全部じゃないよ。作ったのは南さんだし」

 

「それでも教えてもらわなかったら作れなかったよ?」

 

「まあ、最初だからね」

 

 そんな話をしていると、高坂さんが少し離れた棚の前で声を上げた。

 

「ねえ、これ可愛い!」

 

 手にしていたのは、小さな飾りボタンだった。

 

「本当だ。穂乃果ちゃん好きそう」

 

 南さんも横から覗き込む。

 

「でしょ?」

 

「それ、何に使うの?」

 

 俺が聞くと、高坂さんの動きが止まった。

 

「……考えてなかった」

 

「だと思った」

 

「でも可愛いからいいの!」

 

「うん、分かるよ」

 

 南さんがすぐに頷く。

 

「使い道が決まってなくても、可愛いボタンとか生地を見ると欲しくなるよね」

 

「だよね、ことりちゃん!」

 

「うん。見てると、これで何か作れないかなって考えたくなるの」

 

「ほら、水瀬君!」

 

「なんで俺が責められてるの?」

 

「分かってないから!」

 

「俺だって気持ちは分かるよ。ただ、高坂さんの場合、買って満足しそうだなって」

 

「そんなことないよ!」

 

「では穂乃果、そのボタンで何を作るのですか?」

 

 園田さんに尋ねられ、高坂さんが再び固まった。

 

「……これから考える」

 

「やはり何も決まっていないではありませんか」

 

「海未ちゃんまで!」

 

 南さんがくすくす笑う。

 

「じゃあ穂乃果ちゃん、一緒に何に使うか考えよっか」

 

「ことりちゃーん!」

 

 高坂さんが嬉しそうに南さんへ抱きつく。

 

「もう、穂乃果ちゃん」

 

「高坂さん、商品あるんだから気をつけてよ」

 

「水瀬君は細かいなぁ」

 

「店の中では普通だよ」

 

「それは水瀬君が正しいです」

 

「海未ちゃんまで水瀬君側!?」

 

「側も何もないでしょう」

 

 賑やかだ。

 

 でも、嫌じゃない。

 

 ◇

 

「拓海」

 

「ん?」

 

 しばらくして、母さんが作業場から袋を持って出てきた。

 

「この端切れ、もう使わないから片付けておいてくれる?」

 

「分かった」

 

 受け取った袋の中には、仕立てや直しで余った小さな生地がいくつも入っている。

 

「あ」

 

 真っ先に反応したのは南さんだった。

 

「これ、練習に使ってもいいですか?」

 

「ええ。捨てる予定だったものだから、好きに使っていいわよ」

 

「ありがとうございます」

 

 目が輝いている。

 

 この顔は最近よく見るようになった。

 

「南さん、今日何か作るつもり?」

 

「ちょっとだけ……だめ?」

 

「園田さん、部活あるんじゃなかった?」

 

「あ」

 

 南さんも思い出したらしい。

 

 園田さんが時計を見る。

 

「まだ少し余裕はありますが、あまり長居はできませんね」

 

「じゃあ簡単なの!」

 

 今度は高坂さんが手を挙げた。

 

「私も何か作ってみたい!」

 

「急だなぁ」

 

「だめ?」

 

「駄目じゃないけど……」

 

 袋の中を見る。

 

 短時間で、初めてでも作れるもの。

 

「コースターくらいならできるかな」

 

「コースター?」

 

「四角い布を合わせて縫うだけ。基本の練習にもなるよ」

 

「やる!」

 

「私も挑戦してみたいです」

 

 園田さんまで乗ってきた。

 

「海未ちゃんも?」

 

「せっかくですから」

 

「じゃあ四人でやろう!」

 

「俺も数に入ってるの?」

 

「水瀬君が一番上手なんだから当たり前だよ!」

 

「どういう理屈?」

 

「ことりも手伝うよ」

 

「じゃあ水瀬君とことりちゃんが先生ね!」

 

「だから先生じゃないって」

 

 どうやら決定らしい。

 

 ◇

 

 四人で作業台を囲む。

 

 まずは端切れの中から好きなものを選ぶ。

 

「高坂さん、一人で広げすぎないでよ」

 

「選んでるだけだよ!」

 

「穂乃果、使わないものは戻してください」

 

「海未ちゃんまで……」

 

「ほら、これなんて?」

 

「可愛い!」

 

 南さんが高坂さんと一緒に生地を選び始める。

 

 一方、園田さんは落ち着いた色のものを二枚手にしていた。

 

「水瀬君、この組み合わせはどうでしょう?」

 

「いいと思う。厚さも同じくらいだから縫いやすいよ」

 

「では、これにします」

 

「決めるの早いね」

 

「いつまでも悩んでいても仕方ありませんから」

 

 南さんを見る。

 

 まだ悩んでいる。

 

「……聞かれたら怒られそうだから何も言わないでおこう」

 

「聞こえてるよ、水瀬君」

 

「小声だったのに」

 

「近いもん」

 

 結局、南さんは二種類の生地を組み合わせることにした。

 

「コースターでも凝るんだね」

 

「せっかくだから可愛くしたいの」

 

「難しくなるよ?」

 

「分からなくなったら教えてね」

 

「最初から俺を当てにしてない?」

 

「だめ?」

 

「駄目じゃないけど」

 

「じゃあ大丈夫♪」

 

 こういうところは強い。

 

 ◇

 

 作業を始めると、三人の性格の違いがよく分かった。

 

「水瀬君、次どうするの?」

 

「高坂さん、さっき説明したよね?」

 

「聞いたよ?」

 

「じゃあ何で聞くの?」

 

「忘れた!」

 

「早いって」

 

 高坂さんは勢いがある。

 

 決して不器用ではないけれど、先へ進みたがるせいで少し雑になりやすい。

 

「ここを合わせてから留めるの。先に縫ったらずれるよ」

 

「あ、そっか」

 

「ゆっくりでいいから」

 

「はーい」

 

 一方で。

 

「園田さん、そこ大丈夫?」

 

「はい。ここを折り返してから縫えばよいのですよね?」

 

「そう。合ってる」

 

「分かりました」

 

 園田さんは慎重だった。

 

 一度説明すると、確認しながら丁寧に進めていく。

 

「海未ちゃん、上手!」

 

「まだ途中ですよ」

 

「でも綺麗!」

 

「穂乃果も手を動かしてください」

 

「はーい……」

 

 そして南さんは。

 

「……」

 

「南さん?」

 

「ここの角、もう少し綺麗にしたい」

 

「気になる?」

 

「うん」

 

「なら一回ほどく?」

 

「そうする」

 

「やっぱりそこ直すんだ」

 

「だって気になるもん」

 

 この前のポーチと同じだ。

 

 細かいところまで自分が納得する形にしたがる。

 

 三人とも全然違う。

 

 見ているだけでも面白かった。

 

 ◇

 

「できたー!」

 

 最初に声を上げたのは高坂さんだった。

 

 完成したコースターを両手で掲げる。

 

「穂乃果、店の中ですよ」

 

「だってできたんだよ!」

 

「見せて」

 

「はい!」

 

 受け取って確認する。

 

 少し歪んでいる。

 

 でも初めてなら十分だ。

 

「ちゃんとできてるよ」

 

「ほんと!?」

 

「うん。次はもう少しゆっくり縫けばもっと綺麗になると思う」

 

「次も作っていいの?」

 

「そこに食いつくんだ」

 

「だって楽しかった!」

 

 園田さんのものは、予想通り丁寧に仕上がっていた。

 

「園田さん、初めてにしては上手だね」

 

「ありがとうございます。思っていたより楽しいものですね」

 

「でしょ?」

 

 南さんが自分のことのように嬉しそうに言う。

 

「ことりが最近こちらへ来ている理由が、少し分かった気がします」

 

「ほんと?」

 

「はい」

 

「また来ようよ、海未ちゃん!」

 

「毎回お邪魔するわけにはいかないでしょう」

 

「別にいいよ」

 

 俺が答えると、園田さんがこちらを見る。

 

「よろしいのですか?」

 

「店の邪魔にならない日ならね。駄目な日は母さんが普通に駄目って言うし」

 

「そういうこと」

 

 いつの間にか、作業場の入り口に母さんが立っていた。

 

「また遊びにいらっしゃい」

 

「いいんですか!?」

 

「もちろん。ただし、今度はお店のお手伝いをお願いするかもしれないわよ?」

 

「やります!」

 

「穂乃果、勝手に返事をしないでください」

 

「海未ちゃんもやろうよ」

 

「なぜ私まで決定しているのですか……」

 

 母さんが楽しそうに笑う。

 

 俺もつられて笑った。

 

 ◇

 

 夕方。

 

「今日はありがとう、水瀬君!」

 

「お邪魔しました」

 

「うん。また学校で」

 

 高坂さんと園田さんが先に店を出る。

 

 南さんもその後を追いかけるかと思ったが、店先で一度足を止めた。

 

「南さん?」

 

「今日は楽しかったね」

 

「うん。思ったより賑やかだったけど」

 

「穂乃果ちゃんがいたからね」

 

「それ本人の前で言ったら怒られるよ」

 

「ふふっ」

 

 南さんが店の中を振り返る。

 

「ことりね、ここに来るの好き」

 

「知ってる」

 

「もう」

 

「だって結構来てるじゃん」

 

「そうだけど……」

 

 少しだけ間を置いてから、南さんは笑った。

 

「穂乃果ちゃんと海未ちゃんも来られてよかった」

 

「俺も楽しかったよ」

 

「うん。でもね」

 

「?」

 

「また今度、二人でも何か作ろうね」

 

 特別なことを言っているような様子ではなかった。

 

 たぶん南さんにとっては、この前のポーチ作りの続き。

 

 俺にとっても、それでいい。

 

「もちろん。次に作るもの決まった?」

 

「まだ内緒」

 

「もう考えてるんだ」

 

「うん♪」

 

「難しすぎるのは禁止ね」

 

「分かってるよ~」

 

「本当に?」

 

「ほんと」

 

 たぶん怪しい。

 

「じゃあ、また明日」

 

「うん。また明日」

 

 南さんが手を振り、先に行った二人を追いかけていった。

 

 ◇

 

 水瀬洋装店は、俺にとっては昔からある家の店だ。

 

 珍しい場所でもない。

 

 毎日見てきた、当たり前の場所。

 

 そこへ南さんが来るようになった。

 

 そして今日、高坂さんと園田さんも初めてやって来た。

 

 だからといって、ここが四人だけの特別な場所になるわけじゃない。

 

 高坂さんには高坂さんの家がある。

 

 園田さんにも。

 

 南さんにも。

 

 学校で過ごす時間もあれば、外へ遊びに行くことだってあるだろう。

 

 それでも。

 

 俺にとって当たり前だった場所を、友達が知ってくれた。

 

 時々ここへ集まって、話したり、何か作ったりする。

 

 そんな場所が一つ増えるのは、悪くない。

 

「みんなの場所……ってほどじゃないか」

 

 思わず呟いてから、自分で少し恥ずかしくなる。

 

「拓海ー。片付け手伝って」

 

「今行く!」

 

 母さんに呼ばれ、俺は店の奥へ戻った。

 

 明日になれば、また学校。

 

 今日とは違う場所で。

 

 またいつもの四人や、クラスの連中と過ごす一日が始まる。




また出来たは投稿します。

では、また∠( ゚д゚)
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