固定が終わったあと。
いつもなら、そのまま解散することが多い。
「おつかれさまでしたー」
「また来週!」
そんな声がVCに飛び交って、それぞれゲーム内で自分の予定へ戻っていく。
でも、その日は少し違った。
「ねえ」
ポムが言った。
「今日さ、SS撮らない?」
「SS?」
ミナが聞き返す。
「うん!」
「いいじゃん」
リリがすぐに乗ってくる。
「せっかくだし、8人で撮ろうよ」
「どこで撮る?」
カイが聞いた。
「うーん……」
ポムが考える。
「景色がいいところ!」
「それなら、イル・メグとかどう?」
ミナが言う。
「花畑、綺麗だよね」
「いいね」
オルカが返した。
「行こう行こう!」
そのまま8人でイル・メグへ向かった。
花畑に着くと、
画面いっぱいに色とりどりの花が広がっていた。
「わあ……」
ポムが声を上げる。
「やっぱりここ綺麗!」
「SS撮るならいい場所だね」
リリも辺りを見回す。
色鮮やかな花の中に、8人のキャラクターが並ぶ。
それだけで、いつもの攻略中とは違う景色に見えた。
「じゃあ並ぼう!」
ポムが言う。
でも。
8人もいると、なかなか綺麗に並ばない。
「ポム、もうちょっと右!」
「これくらい?」
「うん、もう少し!」
「カイさん、ちょっと後ろ!」
「ここ?」
「そうそう!」
「レオンさん、もうちょっと左かな」
「この辺?」
「あと少し!」
「私、花に埋もれてない?w」
オルカが言う。
「ちょっと埋もれてるw」
ミナが笑う。
「じゃあ、もう少し前に出ようかな」
「待って、今度はポムが隠れたw」
「ええー!」
また位置を調整する。
前に出たり、後ろに下がったり。
誰かを動かすと、今度は別の誰かの位置が気になる。
「これ、8人って難しいねw」
リリが笑う。
「でも、こういうの楽しい!」
ポムが返す。
「じゃあ、一回撮ってみよう!」
「おー!」
みんながポーズを決める。
「せーの!」
撮影のボタンを押す。
「どう?」
「ちょっとカイさんだけ遠いw」
「ほんとだw」
「俺、そんな離れてる?」
「結構離れてるよw」
「じゃあもう一回!」
もう一度、位置を調整する。
今度は少し近づけて。
ポーズも合わせて。
「今度こそ!」
もう一度撮影のボタンを押す。
「おお、いいんじゃない?」
リリが言った。
みんながそれぞれの画面を確認する。
花畑の中に、8人が並んでいる。
ポーズも完璧に揃っているわけじゃない。
少し離れている人もいる。
立っている位置も微妙に違う。
でも。
ちゃんと8人いる。
「これ、いいね」
ミナが言った。
「うん」
オルカも答える。
「なんか、固定って感じする」
その言葉に、
「じゃあこれ、固定の記念SSにしようよ!」
ポムが言った。
「いいね」
「俺も保存しとく」
「私も!」
次々に声が上がる。
ミナも保存する。
画面の中には、8人がいた。
SSを撮り終わっても、
みんなすぐにはゲームを落とさなかった。
「そういえばさ」
レオンが言う。
「固定始まってから、こういうSS撮ったの初めてじゃない?」
「確かに」
アンディが答える。
「攻略ばっかりだったもんね」
「毎週集まってるのに、攻略以外で8人揃うことって、あんまりないよね」
リリが言った。
「固定って、もっとずっと一緒に遊ぶものだと思ってた」
ポムが笑う。
「私も!」
「俺は攻略するものだと思ってたけど」
カイが言う。
「こういうのも、悪くないな」
「ね」
ミナが返す。
固定が始まった頃は、
決まった時間に8人で集まって、
みんなで攻略する。
それだけだと思っていた。
でも。
こうしてゲームの中で景色を見たり、
SSを撮ったり、
攻略とは関係ないことで笑ったり。
少しずつ、
「攻略以外の時間」
も増えている。
「なんか、こういうのいいね」
ミナが言った。
「うん」
オルカが返す。
「次はもっと変なSS撮ろうよ!」
「変なの?」
「全員で同じポーズとか!」
「それ難しくない?w」
「やってみようよ!」
また笑い声が起こる。
その日の夜。
ミナはログアウトする前に、もう一度SSを開いた。
色とりどりの花の中に並ぶ8人。
誰も完璧にポーズを揃えていない。
でも、それがなんだか8人らしい気がした。
ミナは、そのSSをお気に入りに入れる。
これからも。
こういう写真が増えていくんだろうな。
そんなことを思った。
そして。
この一枚がいつか、
「8人だった頃」
を思い出すための写真になるなんて。
このときのミナは、
もちろん知らなかった。