「また来週、エオルゼアで。」   作:*いろは*

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第14話|ひとりだけ知らなかった話

 

【挿絵表示】

 

次の日曜日。

 

固定が始まる30分ほど前。

 

ミナがログインすると、いつもの固定チャットにメッセージが届いていた。

 

『今日は残業で帰れないので休みます!』

 

アンディからだった。

 

そのすぐあとに、

 

『急に歓迎会に行こう!って、呑み会になってしまったので今日は休みます』

 

リリからも連絡が入る。

 

「今日は二人お休みかぁ」

 

ミナが呟く。

 

「アンディさん、残業か」

 

クラゲが言った。

 

「リリさんも急だねw」

 

ポムが笑う。

 

「歓迎会なら仕方ないね」

 

オルカが返す。

 

「じゃあ今日は六人か」

 

カイが数える。

 

オルカ、カイ、レオン、ポム、ミナ、クラゲ。

 

いつもの八人から、二人少ない。

 

「どうする?」

 

アンディがいない以上、攻略を続けるのも難しい。

 

少し話したあと、

 

「今日は固定攻略、お休みにしようか」

 

ということになった。

 

「じゃあ、せっかく六人いるし何かする?」

 

ポムが言った。

 

「いいね」

 

レオンが返す。

 

そのとき、

 

「そういえば昨日のルレさ」

 

カイが言った。

 

「アイテム、まだ欲しいんだよね」

 

「あ、私も!」

 

オルカがすぐに反応する。

 

「私もまだ出てないw」

 

ポムも続いた。

 

レオンも、

 

「じゃあ、今日もう一回行く?」

 

と言う。

 

「行こう行こう!」

 

昨日の4人は、そのままルレへ向かうことになった。

 

「じゃあ行ってくるねー」

 

「いってらっしゃーい」

 

ミナは笑顔で手を振った。

 

「また今度、一緒に行こうね!」

 

オルカの声に、

 

「うん、楽しみにしてる!」

 

と返す。

 

4人がVCを抜けていく。

 

さっきまで聞こえていた笑い声が、

 

少しずつ遠くなっていった。

 

気づけば、

 

VCに残っているのはミナとクラゲの二人だけだった。

 

ミナはそのまま、自分のキャラクターをぼんやり眺めていた。

 

別に、嫌なことをされたわけじゃない。

 

誘われなかったことを責めたいわけでもない。

 

昨日だって、今日だって、

 

たまたま四人の予定が合っただけ。

 

それなのに。

 

「……なんだろう」

 

小さく呟く。

 

胸の奥に、

 

さっきまで笑っていたときには気づかなかった寂しさが残っていた。

 

自分も一緒に行きたかった。

 

その気持ちは、思っていたより大きかった。

 

でも、

 

「私も行きたい」

 

と言うだけでよかったのかもしれないのに、

 

その一言を自分から言えなかった。

 

昨日の4人が楽しそうに話していたこと。

 

今日もまた、楽しそうにルレへ向かっていったこと。

 

その二つが重なって、

 

自分だけが、その輪の外にいるような気持ちになってしまう。

 

もちろん、そんなつもりで誰かが外したわけじゃない。

 

分かっている。

 

分かっているのに、

 

少しだけ寂しかった。

 

「……私も、もっと一緒に遊びたいな」

 

誰に聞かせるでもなく呟く。

 

その声を、

 

隣にいたクラゲだけが聞いていた。

 

「……ミナ」

 

「ん?」

 

「ちょっと、どっか行く?」

 

ミナはクラゲを見る。

 

「どこ?」

 

「サベネア」

 

「サベネア?」

 

「海でも見ようかなって」

 

ミナは少しだけ考えて、

 

「……うん」

 

と答えた。

 

二人でサベネア島へ向かった。

 


 

海辺にあるブランコ。

 

クラゲはミナをブランコに座らせ、自分はすぐそばの砂浜にドカっと座った。

 

波の音を聞きながら、

 

しばらく何も話さなかった。

 

「……クラゲ」

 

「うん」

 

「誰も悪くないんだよ」

 

ミナがぽつりと言った。

 

「昨日のことも、今日のことも」

 

「うん」

 

「昨日はたまたま四人の時間が合っただけだし、今日だってアイテム欲しいから、もう一回行こうってなっただけ」

 

「うん」

 

「だから、別に嫌だったわけじゃないの」

 

クラゲは黙って聞いている。

 

「ただ……」

 

ミナは海を見る。

 

「ちょっとだけ、寂しかった」

 

「うん」

 

「昨日も今日も、私の知らないところで四人が遊んでて」

 

「うん」

 

「……私も一緒に行きたいって思った」

 

そこで一度、言葉が止まった。

 

「でもさ」

 

ミナが苦笑する。

 

「ミナ?」

 

クラゲが呼ぶ。

 

「うん?」

 

「たぶんミナが寂しかったのって、ルレに誘われなかったことだけじゃないよ」

 

ミナは黙った。

 

「みんなと、固定の外でも遊びたいんでしょ」

 

「……」

 

「でも、自分からは誘わない」

 

図星だった。

 

「予定あるかもしれない」

 

「……うん」

 

「迷惑かもしれない」

 

「うん」

 

「誰かと遊ぶ予定があるかもしれない」

 

「……うん」

 

「だから声をかけない」

 

クラゲが笑う。

 

「ミナ、昔からそうじゃん」

 

「……やっぱり、クラゲには分かるね」

 

「付き合い長いからね」

 

ミナも少し笑った。

 

クラゲは海を眺めながら言う。

 

「でもさ。ミナが声をかけないと、相手からしたら『ミナは遊びたいと思ってないのかな』ってなるかもしれないよ」

 

「……そっか」

 

「自分から誘わないのに、誘ってほしいって思ってるだけじゃ、なかなか動かないよ」

 

言い方は優しい。

 

でも、ちゃんとミナのところに届いた。

 

「……うん」

 

「一回くらい、ミナから誘ってみたら?」

 

ミナはしばらく考えてから、

 

「……やってみようかな」

 

と答えた。

 


 

それから数日後。

 

ミナはログインしているメンバーを見ながら、

 

ふと思いついた。

 

「そうだ」

 

クラゲに言われたことを思い出す。

 

自分から誘ってみる。

 

それくらいなら、できるかもしれない。

 

固定のチャットを開いて、

 

『今日、地図行かない?』

 

と書き込んだ。

 

少しして、

 

『ごめん、今日は予定ある!』

 

『私も今日は無理だー』

 

『ごめん、先に約束入ってる!』

 

次々と返事が返ってくる。

 

そして、

 

『俺は行けるよ』

 

クラゲからの返事。

 

ミナは画面を見つめた。

 

「そっか……」

 

結局、その日は地図に行くことはなかった。

 

クラゲと二人で行くこともできた。

 

でも、

 

せっかくならみんなで行きたい。

 

そう思っていた。

 

『じゃあ、また今度にしよー!』

 

そう返して、チャットを閉じる。

 

そのあと、

 

ほんの少しだけ胸が沈んだ。

 

自分から誘ったのに、

 

誰も来てくれなかった。

 

一瞬、

 

自分とは固定の外で遊びたいと思ってもらえていないのかも。

 

そんな考えが浮かぶ。

 

けれど、

 

「……いやいや」

 

ミナは小さく首を振った。

 

みんなには、みんなの予定がある。

 

誘ったからといって、

 

全員がすぐに「行く!」と言ってくれるわけじゃない。

 

今回はたまたま予定が合わなかっただけ。

 

そう考え直す。

 

それに。

 

自分だって、誘われた日に必ず行けるとは限らない。

 

だったら、

 

一回誘って誰も来なかったからといって、

 

「私は一緒に遊びたいと思われてない」

 

と決めつけるのは違う。

 

「……もっと前もって言ったら、違うのかな」

 

急に思いついた日に誘うのではなく、

 

少し前から予定を合わせてみる。

 

そうすれば、みんなの予定も合わせやすいかもしれない。

 

少し先の予定を思い浮かべながら、

 

次はいつ誘ってみようかな。

 

ミナはそんなことを考えていた。

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