「また来週、エオルゼアで。」   作:*いろは*

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第17話|みんなで

 

【挿絵表示】

 

日曜日の朝。

 

いつもなら固定の攻略は、夜の十時頃から始まる。

 

だから、こんな時間に八人全員が集まっているのは、少し珍しかった。

 

「おはようございまーす!」

 

「おはよー!」

 

「朝から八人いるの、なんか変な感じするなw」

 

「たしかにw」

 

VCに、いつもの声が次々と集まってくる。

 

先週は、みんなで地図に行った。

 

アンディは途中からの参加だったけれど、それでも最後には八人揃って遊ぶことができた。

 

今日は、いつもの固定攻略。

 

同じ八人なのに、先週とは少し違う時間が始まろうとしていた。

 


 

攻略が始まると、空気はいつもの固定に戻っていった。

 

ギミックを確認して、

 

誰かがミスをして、

 

「ごめーん!」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

と笑って、もう一度やり直す。

 

少しずつ先へ進めるようになっていくと、それだけで嬉しい。

 

昨日より上手くできた。

 

前は間に合わなかったところで間に合った。

 

誰かが苦手だったギミックを、今日は綺麗に越えられた。

 

そういう小さな「できた」が積み重なっていくのが、固定攻略の楽しさだった。

 

先週の地図とは、全然違う。

 

あのときは、宝箱を探して、魔紋に飛び込んで、どっちの扉に行くかで盛り上がって。

 

攻略というより、みんなで遊びに行ったような時間だった。

 

今は、ギミックを覚えて、失敗したところを直して、少しずつ先へ進んでいく。

 

同じ八人でも、遊ぶものが変わるだけで、こんなに時間の雰囲気が変わるんだな。

 

そんなことを、ふと思った。

 


 

途中の休憩時間。

 

誰かが飲み物を取りに行っている間に、自然と先週の地図の話になった。

 

「そういえば、地図楽しかったねー!」

 

「魔紋、めっちゃテンション上がったw」

 

「最後の部屋、すごかったよなw」

 

「また行きたい!」

 

「私も!」

 

そんな話をしていると、ポムが突然声を上げた。

 

「ねえねえ! 次は違う遊びもしてみない?」

 

「違う遊び?」

 

「うん!」

 

ポムは少し考えてから、楽しそうに続けた。

 

「もうすぐ紅葉の季節だし、みんなで紅葉並木とか行ってみたい!」

 

「いいね!」

 

「スタジオ借りて、みんなで撮影会とかも楽しそうじゃない?」

 

「それ絶対楽しいやつw」

 

「衣装も合わせたら面白そう!」

 

「八人でテーマ決めるの、いいなw」

 

一気に話が膨らんでいく。

 

「エオルゼア観光もしたい!」

 

「温泉とか行ってみたいな」

 

「温泉いい!」

 

「みんなで浴衣着て撮影しようぜw」

 

「それ、撮影会じゃんw」

 

「いいじゃん、撮影会でw」

 

笑い声が重なっていく。

 

さっきまで攻略の話をしていたのに、いつの間にか次に何をして遊ぶかという話になっていた。

 

「でも、紅葉ならグリダニア方面かな?」

 

「温泉だったらどこがいいんだろ」

 

「景色がいいところも探したいね」

 

「じゃあ、みんなで候補出そうよ!」

 

「いいねー!」

 

一つの案が出るたびに、別の案が重なっていく。

 

それだけで、なんだか楽しかった。

 

私は、その会話を聞きながら笑っていた。

 

紅葉を見に行く。

 

スタジオで撮影する。

 

みんなで衣装を合わせる。

 

エオルゼアを観光する。

 

温泉に行く。

 

どれも攻略には関係ない。

 

でも、なんだかすごく楽しそうだった。

 

「……こういうのも、いいな」

 

ぽつりと呟くと、

 

「でしょー?」

 

とポムが笑った。

 


 

休憩が終わる時間になっても、話はなかなか終わらなかった。

 

「次の休み、どっか観光するのもありだな」

 

「でも私は撮影したい!」

 

「私は温泉!」

 

「じゃあ全部やればいいじゃんw」

 

「それ一日で終わらないよw」

 

「じゃあ何週かに分ければいいじゃん」

 

「それもう固定じゃんw」

 

その言葉に、みんなが笑った。

 

私は、その笑い声を聞きながら、ふと先週のことを思い出した。

 

あのときも、最初は七人だった。

 

アンディが来られないと分かって、

 

それでもみんなで行こうと言って。

 

私は少しだけ、

 

「“みんなで”って、何人なんだろう」

 

と思った。

 

八人揃っていることが「みんな」なのか。

 

来られる人だけでも「みんな」なのか。

 

誰か一人がいなくても、残った人たちで楽しめるなら、それも「みんな」なのか。

 

あのときは、答えが分からなかった。

 

でも今、こうして八人で笑いながら話していると、少しだけ違う見え方がしてきた。

 

「みんなで」というのは、人数のことだけじゃないのかもしれない。

 

同じものをすることでもない。

 

誰かは紅葉に行きたくて、

 

誰かは撮影がしたくて、

 

誰かは温泉に行きたい。

 

それぞれ違うことを言っているのに、

 

「それ楽しそう!」

 

と笑い合える。

 

それも、きっと「みんなで」なんだ。

 

そう思ったら、なんだか胸の奥が少し軽くなった。

 


 

その日の攻略が終わったあと。

 

みんなが少しずつ解散していく中で、クラゲが言った。

 

「先週、楽しかった?」

 

「うん、楽しかった!」

 

ミナは少し考えてから続けた。

 

「固定も楽しいんだけど……先週みたいに、みんなで遊ぶのも好きみたい」

 

「うん」

 

「攻略じゃなくても、八人で集まってるのが楽しかったんだと思う」

 

クラゲは少しだけ笑った。

 

「ミナらしいね」

 

「そうかな?」

 

「そうだと思うよ」

 

私はその言葉を聞いて、少しだけ考えた。

 

地図も楽しかった。

 

今日の攻略も楽しかった。

 

そして、その途中で出てきた紅葉や撮影や温泉の話も、すごく楽しかった。

 

同じ八人で集まっていても、攻略する日と、ただ遊ぶ日は、少し違う。

 

どちらも楽しい。

 

でも、それだけじゃない。

 

八人全員が同じものを好きじゃなくてもいい。

 

同じ遊びをしなくてもいい。

 

「これやってみたい」と誰かが言ったときに、

 

「いいね!」

 

と一緒に笑える。

 

そんな時間も、私にとっては「みんなで」なのかもしれない。

 

固定って、攻略をするためだけに集まるものだと思っていた。

 

でも、もしかしたら。

 

一緒に笑ったり、くだらない話をしたり、何をして遊ぶか考えたり。

 

そういう時間も全部ひっくるめて、

 

「この八人で遊ぶ」

 

ということなのかもしれない。

 

そう思ったら、これからの固定が少しだけ楽しみになった。

 


 

その日の夜。

 

ログアウトする前に、私はふとカレンダーを開いた。

 

次の固定の日。

 

その次の予定。

 

まだ何も決まっていない日もある。

 

紅葉を見に行くのかもしれない。

 

スタジオで撮影するのかもしれない。

 

温泉に行くのかもしれない。

 

もしかしたら、結局いつものように攻略するだけかもしれない。

 

それでもいいと思った。

 

八人で同じことをすることだけが、「みんなで」じゃない。

 

誰かがやりたいことを話して、

 

誰かが「それいいね」と言って、

 

そこからまた別の遊びが生まれていく。

 

そんなふうに、みんなの「楽しい」が少しずつ重なっていけばいい。

 

そしてたぶん。

 

私がまだ知らない「楽しい」も、この先にはたくさんある。

 

そう思いながら、私はログアウトのボタンを押した。

 

次に八人で集まったとき。

 

今度は、誰がどんな「楽しい」を持ってくるんだろう。

 

そんなことを考えながら、その夜は眠りについた。

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