「また来週、エオルゼアで。」   作:*いろは*

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第18話|それぞれの「楽しい」

 

【挿絵表示】

 

次の日曜日。

 

固定の攻略が始まる少し前。

 

いつものように八人が集まると、先週の休憩時間に出た話が、また自然と出てきた。

 

「そういえば、紅葉どうする?」

 

最初に口にしたのはポムだった。

 

「あー、言ってたね」

 

「撮影会もしたいって話してたよね」

 

「温泉もなw」

 

「観光も!」

 

次々と声が重なる。

 

私は少し笑いながら、みんなの話を聞いていた。

 

先週は、その場の勢いでいろんな案が出ただけだった。

 

でも、一週間経っても覚えているということは。

 

みんな、案外こういう遊びも楽しみにしているのかもしれない。

 

「じゃあさ、どれからやる?」

 

ポムが聞く。

 

「紅葉!」

 

「撮影!」

 

「温泉!」

 

「観光!」

 

ほとんど同時に声が上がった。

 

「バラバラじゃんw」

 

「ほんとだw」

 

みんなで笑う。

 

「私は撮影したいなー」

 

ポムが言う。

 

「せっかくだし、衣装も合わせたい!」

 

「それならスタジオ探す?」

 

「いいね!」

 

「私は紅葉見ながら歩くのもいいな」

 

オルカが言った。

 

「景色見ながら、ゆっくりできるの楽しそう」

 

「じゃあオルカさんは観光派か」

 

アンディが笑う。

 

「そうかもw」

 

「俺は温泉かな」

 

レオンが言った。

 

「普段あんまり行かない場所で、ゆっくりするのも楽しそう」

 

「温泉いいよなー」

 

クラゲも賛成する。

 

「じゃあ、カイは?」

 

「俺?」

 

突然振られたカイが少し考える。

 

「……俺は、普通に攻略したいけどw」

 

「えっ」

 

ポムが声を上げた。

 

「撮影会より?」

 

「うん」

 

「温泉より?」

 

「うん」

 

「紅葉より?」

 

「……それはちょっと迷うなw」

 

「迷うんじゃんw」

 

また笑いが起きる。

 

カイは笑いながら続けた。

 

「いや、別に撮影とか嫌いじゃないけどさ。みんなで攻略して、前より先に進めたりするほうが楽しいんだよね」

 

「あー、カイっぽいw」

 

「そう?」

 

「うん。なんとなくw」

 

カイは少し照れたように笑った。

 

私は、その会話を聞きながら、なんとなく納得していた。

 

そういえば、カイは攻略中、いつも楽しそうだった。

 

新しいギミックが出てくると、すぐに考え始める。

 

誰かが失敗すると、

 

「次はこうしたらいけそう」

 

とすぐに次の方法を探す。

 

私には少し難しいことでも、カイにとっては、それを考える時間そのものが楽しいのかもしれない。

 

「アンディは?」

 

今度はポムが聞いた。

 

「俺?」

 

「アンディさんは何したい?」

 

アンディは少し考えてから答えた。

 

「俺も攻略かなあ」

 

「やっぱりw」

 

「でも、みんなで観光とかも普通に楽しそう」

 

「じゃあ攻略が一番?」

 

「うーん……」

 

少し考えて、

 

「八人で攻略してる時間が、一番好きかもしれない」

 

そう言った。

 

「なるほどー」

 

ポムが頷く。

 

「じゃあミナは?」

 

「私?」

 

突然自分に話が向いてきて、少しだけ考えた。

 

先週から、ずっと考えていたことだった。

 

「私は……」

 

紅葉。

 

撮影。

 

温泉。

 

観光。

 

攻略。

 

どれも楽しそうだと思う。

 

でも。

 

「私は、みんなでいるのが一番楽しいのかも」

 

そう言うと、ポムが笑った。

 

「ミナらしい!」

 

「そうかなw」

 

「だって、なんでも楽しそうにしてるもんw」

 

「たしかにw」

 

みんなが笑う。

 

私は少し恥ずかしくなって笑った。

 

でも、本当にそうなのだと思う。

 

何をするかよりも。

 

誰といるか。

 

そのほうが、私にとっては大きいのかもしれない。

 


 

結局、その日は次の遊びを一つに決めることはしなかった。

 

「じゃあ、紅葉の時期に合わせて撮影しようよ」

 

「その前に温泉行ける日も探そう」

 

「観光もしたい!」

 

「攻略もちゃんとやろうなw」

 

そんな話をしながら、いつもの固定攻略が始まった。

 

そして、攻略が始まると。

 

カイはいつも以上に楽しそうだった。

 

「今のいけた!」

 

「次、もうちょっと早く動けばいける!」

 

アンディも、

 

「おお、今のよかった!」

 

と声を上げる。

 

その声を聞いていると、私まで嬉しくなった。

 

攻略を楽しんでいる人がいる。

 

撮影を楽しみにしている人がいる。

 

温泉を楽しみにしている人がいる。

 

観光を楽しみにしている人がいる。

 

そして私は、みんなで話している時間が楽しい。

 

同じ八人で遊んでいるのに。

 

楽しいと思う場所は、少しずつ違う。

 

そのことが、不思議と嫌ではなかった。

 

むしろ、

 

「そうなんだ」

 

と知ることが、少し面白かった。

 


 

攻略が終わったあと。

 

いつものように、少しだけ雑談をしていた。

 

「じゃあ、来週どうする?」

 

「普通に攻略でしょw」

 

「だよねw」

 

「紅葉はその次でもいいしね」

 

「うん」

 

みんながそんな話をしている中で、私はふと思った。

 

以前の私は、

 

「みんなが楽しいと思うこと」

 

を考えるとき、

 

みんなが同じものを楽しめることを想像していた気がする。

 

八人で同じ場所へ行って。

 

八人で同じことをして。

 

八人で同じように笑う。

 

それが「みんなで」なんだと思っていた。

 

でも、違った。

 

カイは攻略が好き。

 

アンディも攻略が好き。

 

ポムは撮影がしたい。

 

オルカはゆっくり景色を見たい。

 

レオンは温泉に行きたい。

 

それぞれ違う。

 

それでも、今こうして八人で話している。

 

誰かの「楽しい」を聞いて、

 

「それもいいね」

 

と言える。

 

自分が一番やりたいことでなくても、誰かが楽しそうに話しているのを聞くのは、私にとっても楽しい。

 

それなら。

 

「みんなで」って、同じものを好きになることじゃないのかもしれない。

 


 

ログアウトする前。

 

私は今日の会話を思い返していた。

 

同じ八人。

 

同じ固定。

 

同じように集まっているのに。

 

それぞれ見ているものは、少しずつ違う。

 

今は、それでいいと思えた。

 

むしろ、違うからこそ、

 

「そんなのも楽しそう」

 

と新しい遊びを知ることができる。

 

私が知らなかった楽しさを、誰かが教えてくれる。

 

誰かが知らなかった楽しさを、私が見つけることもある。

 

そうやって、それぞれの「楽しい」が少しずつ重なっていけばいい。

 

そんなふうに思いながら、私はログアウトした。

 

このときの私は、まだ知らなかった。

 

同じ場所にいても、同じ時間を過ごしていても。

 

「楽しい」の大きさや、そこにかける気持ちまで同じとは限らないことを。

 

そして、その小さな違いが。

 

いつか、八人の間で少しずつ形を変えていくことを。

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